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特別セミナー[E]

日本式リーダーからの脱却
~グローバルリーダー育成に不可欠なタレントマネジメント~

株式会社イー・コミュニケーションズ CTO ソリューション事業部長
齋藤 康寛氏(さいとう・やすひろ)
プロフィール:東京大学工学部卒業後、産業用制御装置のシステム開発に従事。2001年、設立間もない株式会社イー・コミュニケーションズへ参画し、資格検定関連のシステム開発に携わる。2010年より、コーナーストーンオンデマンドの日本展開立ち上げに邁進し、日本企業に向けたタレントマネジメントの普及に強い想いを抱く。

リーダーとマネージャーの違いは何か

齋藤 康寛氏/講演 photo本日は日本のリーダー育成の現状、日本企業がリーダー育成のために取り組むべきこと、そしてリーダー育成におけるタレントマネジメントの活用についてお話したいと思います。最初に、本日のテーマでもある「リーダー育成」において「リーダー」とはどう定義すべきでしょうか?日本ではリーダーとマネージャーの線引きがあいまいですが、欧米では古くから明確にこの二つを分けています。John P. Kotter著の『リーダーシップ論』によれば、リーダーは針路(ビジョン)を設定し、動機付けと啓発を行いながら、組織メンバーの心を統合しビジョンを達成する。一方、マネージャーは計画の立案と予算策定を行い、コントロールと問題解決を行いながら、組織化と人材配置により計画を達成する。

日本では従来、マネージャーとしての役割によって成果を出してきた人が多いのですが、現在の変化が激しい時代においては、マネージャーとしての役割ではなかなか成果が出なくなっています。よりリーダーとしての役割が求められるのです。

2011年にDDIが行ったリーダーシップ開発の効果に関する調査によると、経営者ならびに各階層のリーダーに対する、組織内の過去5年間のリーダーシップ開発の効果がどの程度だったかという質問に対して「Very High」または「High」という回答は、グローバル平均で37%、インド42%、中国27%という結果に対し、日本はわずか12%でした。組織内のリーダーシップの質に関する質問でも、日本は他に大きく引き離されています。国際的にみて、リーダーシップの質に大きな差があり、その差がさらに広がる傾向にある点が非常に危惧されます。

日本では日本式リーダーしか育たない

では、なぜ日本ではリーダーが育たないのでしょうか。理由は三つ考えられます。一つ目は文化の違いや人事制度の違いです。日本では従来、職能資格制度により知的熟練を高めるOJT中心のキャリア形成方法が主流で、若いうちからリーダーシップを発揮する経験が不足しており、リーダーが育ちにくい環境がありました。また、品質の良いものを作るためのマネジメントを行えば成果が出ていた時代背景も影響しています。さらに、農耕民族的な横並び主義で、突出することを良しとしない文化の影響も大きいと考えられます。

二つ目の理由は企業内教育投資額の違いです。ASTDと産業能率大学の2010年の調査によると、従業員一人あたりの教育投資額はグローバル平均が9.7万円に対して、日本は3.7万円と、日本の投資額が大幅に少ないのです。

三つ目の理由は人材育成の体制や人材育成戦略の問題です。日本では人材育成戦略が経営戦略に直結していないケースが多くなっています。その原因としては、人事と人材開発が連携し難い体制となっている点があります。また、人材開発担当者が研修の実施管理に終始しており、人材育成戦略に踏み込めていないことも影響していると考えられます。

それでは、リーダー育成について、グローバルに展開する日本企業はどのように考えているのでしょうか。平成23年の経済産業省「企業の人材マネジメントの国際化に関する調査」によれば、さまざまな課題の中で、「グローバルに活躍できる幹部人材の育成」が重要で、かつ課題があると回答している企業が最も多くなっています。多くの企業で、その重要性は感じているものの、その取り組みに着手できていない、または、取り組んではいるものの効果が出ていないというのが現状です。

齋藤 康寛氏/講演 photoでは、日本企業がリーダーを育成するためには、何をすべきでしょうか?まず、前提として、冒頭で紹介したマネージャーとリーダーの違いを認識し、マネージャー的でリーダーシップが不足している日本式リーダーと、変化の激しい時代にグローバルで活躍できるグローバルリーダーで、必要とされる要件の違いを理解する必要があります。その上で、グローバルリーダーとしての素養がある人材を選抜し、リーダー育成を行う必要があります。

そして、日本企業がこれから行うべき施策は四つ。一つ目は人事と人材開発の連携。二つ目はリーダー像の明確化。三つ目は経営層のコミットメントを得て、組織全体を巻き込むこと。四つ目は自社の戦略に合わせた人材育成戦略を策定、実行すること。そして、この人材育成を戦略的に行うためにもタレントマネジメントの活用が欠かせません。

選抜して育てる“タレントマネジメント”

リーダー育成におけるタレントマネジメントの活用例を紹介しましょう。北米最大の事務用品卸売企業であるUnited Stationersでの活用例です。この会社は1992年に15億ドルだった年間売上が、5社の企業買収によって2010年に48億ドルまで伸びました。そのため二つのビジネス課題とそれに伴うリーダー育成の必要性が生じたのです。

  • (1)ビジネスの成長を加速させたい →より高い能力をリーダーに求めたい
  • (2)M&Aによるシナジー効果の発揮 →優れたリーダーが必要

人材に関する課題としては、今後の成長に伴う人材不足への対応、将来的な幹部層の退職に伴うリーダー人材不足への準備と、ゼネラル・マネージャーとしてもっと幅広い経験を持ったリーダーの必要性の高まりがありました。

齋藤 康寛氏/講演 photo2002年に後継者管理の検討を開始し、2003年にタレントマネジメント専属の担当者を置き、本格的な取り組みを開始します。組織開発と人材開発の担当が主幹となってタレントマネジメントのフレームを使用したリーダー育成の仕組みを構築しました。

最初に行ったことは、組織に求められるリーダー像の定義です。このプロセスにおいては、経営層が深く関与し、組織を次のレベルに導くリーダーとして必要とされるコンピテンシーを定義しました。その上で、以下のタレントマネジメントのサイクルを実行したのです。

(1)資質と現状のスキル・知識を把握
職歴、学歴、スキル、リーダーシップコンピテンシーのアセスメント結果等を集約、可視化。
(2)リーダー候補選抜
後継者管理のプロセスにより、リーダー候補を選抜。
(3)育成計画
パフォーマンス管理・後継者計画・その他アセスメントの結果などから育成計画を策定。
(4)育成
対象者ごとに個別の育成プログラムにより育成。例えば、5年以内に2階層以上の昇進ポテンシャルがある人を分類し、個別の育成計画を作成、経営幹部層によるメンタリング等の育成プログラムを実施。
(5)パフォーマンス管理
年間目標の設定、トラッキング、分析。年2回のパフォーマンスレビュー実施。

このサイクルを三つのフェーズに分け、段階的に導入しました。その結果、以下の導入効果が得られたのです。

●タレントマネジメント導入による効果

  • 各レベルでのリーダーの後継者を、その準備状況(いつでも/1~3年後/長期)とともに 把握し、継続的に育成を行えるようになった
  • 人を育成するという文化の醸成
  • 組織内の人材の可視化が実現
  • マネージャーが自部門に必要な人材を他部門から探すことが可能になった
  • 企業内での水平人事異動の候補者を特定できるようになった
  • 退職率の低下

最後に

リーダー育成は、一度仕組みを構築すればそれで完成ということではなく、継続的に見直していくことが必要です。また、リーダー育成を成功させるには、タレントマネジメントの全体の姿を見通しつつ、全ての取り組みを一度に導入することに固執せず、より重要度の高い部分から取り入れることが重要です。そして、段階的に拡大、改善しながら仕組みを構築することが、成功をより確実にする鍵となります。

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