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特別講演[3-b]

組織を「真の自律した集団」に変革する
~キャリア開発と組織開発のアプローチ~

株式会社日本マンパワー マネジメントコンサルタント
秋本 暢哉氏(あきもと・のぶや)
プロフィール:1962年生まれ。企業向け人事教育サービスの営業マネージャーを経て、法人向けのキャリア開発研修のプログラム開発及び講師養成の責任者を務める。現在は企業向けキャリア開発支援施策から、対話アプローチを中心とした組織開発に関するコンサルティングやファシリテーションを行なっている。

「自律できない社員」と「まとまらない職場」

秋本 暢哉氏/講演 photo本日は、『真の自律した集団を実現する手法』として、「自ら成長する個人を育てる」キャリア開発と、「組織の一体感を強くする」組織開発の手法をご紹介したいと思います。

まずは、キャリア開発支援の目的からお話します。個人の視点でいえば個人の自律。会社の視点では、個人の自律を通じて組織を成長させることがその目的です。個人の自律を高めるには、個人の「やるべきこと(Must)、できること(Can)、やりたいこと(Will)」の三つの領域を考えて、それらが重なる部分を大きくしていくことが目的になります。

キャリア開発支援は個人の自律を高め、個人の主体性や当事者意識の高まりへとつながります。すると、職場で周囲を巻き込んで新しい仕事に取り組んだり、自律感をもった個人同士がお互いを尊重し合ったり、仕事面で協力したり、支え合う関係性が生まれたりする。結果として、自律集団が生まれてくるはずなのですが、実際は会社や職場によって、その効果に差が出ているのが現状です。

では、効果に差を生んでいる職場の問題とは何でしょう。それは仕事のタコ壺化や、コミュニケーション不足です。職場がそうなった理由としては「行き過ぎた成果主義の人事制度」「仕事が細分化・複雑化」「慢性的な人員不足」「雇用形態の多様化」などが上げられます。これらによって、せっかくキャリア開発研修やキャリアカウンセリングを受けた社員も職場の影響を受けるなかで、徐々に主体性やモチベーションが低下してしまうのです。

ここでイメージしてみてください。まとまりのない職場チームとは、どんな状態でしょう。チームの中に「当事者」以外の人がいる状態ではないでしょうか。例えば、身勝手な行動を取る「反対者」、批評ばかりする「評論家」、ただ見ているだけの「傍観者」などがいて、職場の「まとまり」や「つながり」を妨害しているのではないでしょうか。言い換えれば、自律集団というのは、全員ではありませんが、「当事者」が多い組織であり、それを作るためには、自律した個人のつながりを強くし、「組織に強いまとまり」を産み出す必要があります。そこで、弊社はキャリア開発の視点から個人の自律を強化するとともに、最近では、組織に強いまとまりを産み出すための組織開発のアプローチを強化しているのです。

「成功の循環」へとつながる三つの要素

講演資料マサチューセッツ工科大学ダニエル・キム教授が提唱された「成功の循環モデル」をご存じでしょうか。これは、職場における業績向上に影響を及ぼす要素について考えられたものです。「関係の質」をスタートに、成功につながる「質」の連鎖を描いています。

関係の質
相互信頼、壁がなくオープン、良いコミュニケーション
思考の質
良い質問、活発な質問、アイデアが生まれる、広い視野、高い視座
行動の質
効果的・効率的な行動、積極的、挑戦的な行動、新たな仕組みが生まれる
結果の質
組織目標・個人目標の達成、質的・量的に高い成果

「成功の循環」も参考に、弊社が今、組織に強いまとまりを作る要素として注目しているのは以下の三つの要素です。一つ目は「共創意識」。目標や成果は会社や職場のみんなで創っていくという意識です。目標づくりやプロセスに自分が参画したことで、自分なりの意味を発見する。すると腹に落ちて、納得し協力や協働が生まれます。二つ目は、「相互理解」です。お互いに個性や価値を認め合うと、お互いの強みを活かす動きを取り、お互いに助け合う動きが出てきます。三つ目は「成功と成長実感」です。これがあると自己肯定感や自己効力感が生まれます。自信が高まり、周囲との良好な関係が強化され、高いモチベーションが維持できます。

「対話」と「ポジティブアプローチ」で自分を変える

講演資料では、三つの要素を産み出すコミュニケーションのあり方とはどのようなものでしょうか。それは「対話」と「ポジティブアプローチ」です。まず、対話についてご説明します。対話とは、立場や見解の違いを越えて、テーマを意識し、オープンに話し、聴き、探究することで集合的なナレッジを引き出す手法です。効果としては、参加者のアイデアがつながりあって、新しいアイデアや気づきが産まれやすくなる。また、合意形成が得やすく、参加者の気持ちや意識が一つになることも期待できます。

この対話の手法の一つとして、弊社で行っているのがワールド・カフェです。これは「知識や知恵は、機能的な会議室の中で生まれるのではなく、人々がオープンに会話を行い、自由にネットワークを築くことのできる『カフェ』のような空間でこそ創発される」という考え方に基づいて生まれました。模造紙を敷いた大きなテーブルを皆で囲み、カフェのような雰囲気の中で、その紙に自由にアイデアを書き込みながら話し合いを行っていきます。

講演資料もう一つのポジティブアプローチでは、組織や人の強みや価値に焦点を当てて、自分たちの目指す姿を共有し、それに向けて現在からどう伸ばすかを考えます。その対極にあるのが、目標と現状のギャップを埋めていくギャップアプローチです。英国のポジティブ心理学者のアレックス・リンレイの調査結果では、強みがもたらす効果として、個人と組織のパフォーマンスが上がる、チームワークが改善する、今まで強みを発揮できない人の強みを発揮できる、ダイバーシティを受け入れやすくなるなどが挙げられています。ポジティブアプローチとして弊社が行なっているワークの1つが「私のGood Job」です。自分のGood job(成果を上げた、良い経験をした、成長した仕事経験) を書き出し、そのとき発揮した知識・使った能力をワークシートに記入し、グループの他のメンバーに対して発表します。他のメンバーは、発揮した能力の中で本人が気付いていない知識や能力があった場合、それをポストイットに書いて体(腕や肩など)に貼ってあげます。自分の強みを自覚して、それを軸に今からどう伸ばすかを考えるワークです。弊社ではこれらの研修を、「ミドル~シニア社員(40歳以上)研修」や「キャリア開発研修」などに盛り込み、実践しています。

これからも、組織の中に強いまとまりをつくることを「縦軸」、個人に主体性を生み出すキャリア開発支援を「横軸」に、その両面を強めながら各企業様での自律的な集団形成をご支援していきたいと思っています。本日はありがとうございました。

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