私たちは、世界38ヵ国で翻訳され、2000万部(国内140万部)を売上げたビジネス書、スティーブン・R・コヴィー著『7つの習慣』を基にした研修プログラムをご提供しています。本日は、経営にインパクトを与える人材開発について、研修を基にお話したいと思います。
まず、皆さんにお聞きします。今はどのような時代だと思われますか。大変変化の激しい「激流」の時代ですね。このような世の中で結果を出すには、どんな心構えが必要でしょうか。もし今が穏やかな波の上ならば、ボートではリーダー(コックス)に従っていればいいわけです。しかし、激流の中ではリーダーの声も聞こえません。すると漕ぎ手が各々判断しないといけない。そのためには、自分の中に判断するための「原則」を持っていなければなりません。そうでないと、一人ひとりに方向性も見えてこないのです。
激流の時代には、どんな人材が必要なのでしょうか。いつの時代でも変わらないものが三つあります。それは「変化」「原則」「選択の自由」です。いつの時代でも必ず変化は起こります。その中でも常に選択の自由はあり、底辺には変わらぬ原則が存在しています。激流の中ではそれら変わらぬものを利用して、乗り切っていく人材が求められます。まさに、「変化に対して原則を応用し、選択と実行ができる人材」です。
この原則とはいったい何でしょうか。それは一言でいえば「変わることのない軸になる考え」「ブレない軸」といったものです。スティーブン・R・コヴィーは原則についてこう語っています。
例えば、これを一本の木だと考えると、原則はいつも目にしている幹や枝、果実のことではありません。普段は目にしない、あなたの中にある根っこの部分のことです。
では、経営にインパクトを与える人材をどのように育成すればいいのでしょうか。そのポイントは「トリム・タブ人材を見つけること」です。トリム・タブとは船や飛行機についている小さな舵のことです。これが動くことで大きな舵が動き、ついには船全体を動かすことができます。スティーブン・R・コヴィーはトリム・タブ人材についてこう語っています。
トリム・タブ人材の特徴は五つあります。一つ目は「自分にできることに集中している」ことで、以下、「地位ではなく貢献にこだわる」「高い人格と能力を発揮している」「周囲から信頼されている」「人を動かし変化を生み出している」と続きます。このような人材は、最初はチームに、そして組織全体、市場にとその影響力を及ぼしていくのです。
世の中には、いくつもトリム・タブ的な例があります。例えば、これは小学校の校長だった、マドリン・カートライトの話です。ある学校に赴任してみると、不潔な学校に、やる気のない教員、無関心な親たちで驚きました。生徒たちは耐え難い環境の中で乱れていたのです。そこでカートライトは学校を変えようと思い立ちます。
まずは、バケツとブラシを買い、清掃の職員にトイレを徹底的に掃除させました。すると、きれいになったトイレの話がたちまち広まっていきました。毎日汚れた服で登校する生徒がいることにも気付き、学校で洗濯機を購入。朝、子どもたちの服を集めて、汚れた服をきれいにしました。そうするうちに、学校に「行動する文化」が生まれていったのです。他の問題も次々に解決して、安心して学べる場所へと変わりました。すべては、小さな行動が始まりでした。
皆さんここで少し考えてみてください。「あなたの会社のトリム・タブ人材は誰ですか」、そして「彼らは来年も、あなたの会社で働いているでしょうか」。最後に「彼らがあなたの会社に決意するために、彼らに何を投資しますか」。どうでしょう、イメージできる人材はいましたか。もしいたとしても、皆さんの仕事はまだ終わりではありません。次の仕事は、トリム・タブ人材が原則を身に付けられるように支援することです。スティーブン・R・コヴィーはトリム・タブ人材の育成について、こう語っています。
皆さんの会社でも、ぜひトリム・タブ人材を育成してほしいと思います。そんな人材が社内にいることが、経営にインパクトをもたらすはずです。本日はどうもありがとうございました。