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日本の人事部 人的資本経営

【ヨミ】パーパス パーパス(Purpose)

「パーパス(Purpose)」は、一般に「目的、意図」と訳される言葉です。近年では、経営戦略やブランディングのキーワードとして用いられることが多く、その場合は企業や組織、個人が何のために存在するのか、すなわち「存在意義」のことを意味します。

パーパス/Purpose存在意義パーパスブランディング企業理念ミレニアル世代ザッカーバーグ生きがい

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1. パーパスの使われ方

ビジネスにおいては、「パーパス・ドリブン・ブランディング」や「パーパス・ドリブン・マーケティング」といった言葉で表現されます。パーパスの後に「ドリブン」を入れず、単に「パーパス・ブランディング」として使われることも少なくありません。

ビジネスシーンで多く耳にするパーパスとは、社会とのつながりを強く意識し、社会における企業の存在意義を明確に宣言するもの。つまり「社会において、企業が何のために存在し、事業を展開するのか」を示すことです。

例えば、パーパスを重視しているP&Gグループは、1987年に「自社製品に最高のクオリティーと価値を与え、世界中の顧客のニーズを満たす」というパーパスを掲げました。約180ヵ国で製品を提供する同社は、材料調達において紛争鉱物(紛争地域の武装勢力への資金提供となる鉱物)を排除するなど、世界各地でパーパスを起点としたさまざまな取り組みを行っています。

2.なぜ今、パーパスが注目されるのか

自社は何のために存在するのか、在籍する社員は何のために働いているのか――企業や組織、個人の存在意義を意味する概念、パーパスを重視する経営スタイルが、海外のビジネスシーンをはじめトレンドになりつつあります。

ビジネス特化型SNSを運営する米国のLinkedInが、2016年7月に3,000人のビジネスパーソンを対象に実施した調査では、「人々の生活や社会に対してポジティブなパーパスを掲げる企業で働くならば、給与が下がってもいい」と答えた人は全体の49%と、ほぼ半数を占めるという驚くべき結果が出ました。そのうち「給与が1~5%下がってもいい」は20%、「5~20%下がってもいい」は19%、残りの10%は何と、「20~100%下がってもいい」と答えたのです。なぜここまで、パーパスの考え方が広がっているのでしょうか。

参照:Purpose: A practical guide p.23|Linkedin

(1) 新型コロナウイルス感染症の拡大

2020年、新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、世界中に大きなインパクトを与えました。こうした状況を受け、企業は自分たちのパーパスを見つめ直すようになりました。社会情勢が大きく揺れ動く中で、パーパスは企業の指針となり「自分たちがあるべき姿、今やるべき事業活動」がおのずと見えてきます。

実際にコロナ禍において、日本のさまざまな企業が、人々の生活や医療環境を守るための取り組みを行いました。

例えば、トヨタ自動車株式会社は、医療現場を支援するべく「ココロハコブプロジェクト」を立ち上げました。プロジェクトの一環として、三つの工場で医療用フェイスシールドの生産に取り組み、2020年4月にはフェイスシールドの生産を月産4万個(約2,000個/日)レベルで開始しています。

また、シャープ株式会社は危機的なマスク不足を受けて、2020年3月よりマスクの生産を開始しています。マスクの初回抽選販売においては、当選倍率が100倍以上となり、多くのメディアに取り上げられるなど話題を呼びました。

出典:トヨタグループ、医療用フェイスシールドの生産を本格化|トヨタ自動車株式会社
出典:シャープのマスク抽選販売、第1回に470万人以上が応募--当選倍率は100倍以上に|CNET Japan

(2) DXの推進

リモートワークをはじめとしたデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進によって、社内稟議などの意思決定プロセスも大きな影響を受けました。

ハンコレスが実現して「ハンコをもらうための出社」がなくなったとしても、複雑な稟議プロセスが残ったままでは、DXの恩恵を十分に享受できません。「ハンコレス」「ペーパーレス」と目に見える部分だけを変えるのではなく、意思決定プロセスそのものを変えていく必要性に迫られているのです。

適切に権限委譲が行われ、スピーディーに意思決定が行われるためには、パーパスを組織に浸透させることが重要です。複雑な稟議による意思決定はいわば責任分担の仕組みです。事業責任者が自らの判断で迅速に意思決定するには、パーパスの理解・浸透が必要不可欠といえます。

DXの推進によってビジネスを変革するためには、「自分たちが何のためにそれを行っているのか」という原点に、すべての従業員が立ち返る必要があります。

(3) ミレニアル世代とパーパス

パーパスを明確にしない企業はもはや生き残れない、とまでいわれる理由の一つは、それが若い世代、特に米国で「ミレニアル世代」(2000年代に成人あるいは社会人になる世代)と呼ばれる人々の価値観にマッチしているからです。Facebook共同創業者で会長兼CEOのマーク・ザッカーバーグ氏が、2017年5月に母校ハーバード大学の卒業式で行った演説が話題を呼びましたが、自らもパーパスを重視するザッカーバーグ氏はスピーチの中でこう語りかけました。

「『人生のパーパスを見つけなさい』というような、よくある卒業式のスピーチをしたいわけではありません。僕たちはミレニアル世代だから、そんなことは本能的にやっているはずです。自分の人生の目標を見つけるだけでは不十分で、僕たちの世代にとって大切な課題は、『誰もが人生の中で、自らの存在意義を持てる世界』を創り出すことなのです」

出典:Mark Zuckerberg's Commencement address at Harvard|The Harvard Gazette
訳出は『日本の人事部』編集部による

ザッカーバーグ氏は、ミレニアル世代にとってパーパスを持つことは当たり前であり、誰もがパーパスを持てる世界を創ることが重要だと説いています。ミレニアル世代は現在の20~30代であり、これから消費やビジネスの中核を担う存在といえます。パーパスを見直し、ミレニアル世代の共感を得ることは、企業にとって今後さらに重要な意味を持つようになるといえるでしょう。

3.パーパスとMVVの違い

存在意義という意味で使われるパーパスは、ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)と混同して使われることがあります。そこで、パーパスとMVVの違いについて解説します。

(1) ミッション

ミッション(Mission)は「使命」や「任務」と訳されることが多く、企業が果たすべき使命として定義されます。パーパスと意味が共通する部分もあり、ミッションの中にパーパスを含有している企業も珍しくありません。

パーパスとミッションの違いとして、社会とのつながりを強く意識しているかどうかが挙げられます。パーパスは、ミッションよりも社会との関連性を意識し、将来なりたい姿ではなく現在あるべき姿を指す傾向があります。

(2) ビジョン

ビジョン(Vision)は「展望」や「理想像」と訳されることが多く、企業がなりたい未来を定義するものです。ビジョンを策定することで、企業やチーム、個人が成し遂げたい目標・ゴールを具体的にします。ミッションと同じくビジョンについても、企業によっては、パーパスとしてのテーマを含有しています。

(3) バリュー

バリュー(Value)は「価値」あるいは「価値観」と訳されることが多く、ミッションやビジョンを受けての行動指針です。ミッションやビジョンを実現するために必要な、企業や従業員のあるべき姿を具現化しています。企業が求める人材像や、ハイパフォーマーの条件として、バリューの合致が提示されることも少なくありません。

4.パーパスを見直すメリット

パーパスを見直すことのメリットは、企業のサステナビリティ向上に帰着します。企業は、利益を追求するだけでなく、現代の社会課題にフォーカスして活動することで、従業員や社会、投資家といったステークホルダーから「信頼」と「共感」を得られます。その結果、ブランドの認知向上やロイヤリティ(loyalty)の向上、ひいては利益の増加にもつながるのです。

支援してくれるステークホルダーの数が多ければ多いほど、企業の持続的成長の可能性が高まります。企業は、信頼と共感でつながる応援団員を増やすためにも、パーパスを明確にし、パーパスに基づいて社会課題に向き合い続けることが求められます。

(1) ステークホルダーからの共感を得られる

パーパスを見直す具体的なメリットは、前述のとおり、ステークホルダーからの共感を得られることです。パーパスを設定し、実際に取り組むことで、そのパーパスに共感するステークホルダーからの支持が集まります。

ESGとパーパス

近年、社会的に意義があると注目されているのが、「ESG」というキーワードです。ESGとは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」の頭文字を取った言葉です。

例えば、環境では「二酸化炭素の排出量の削減」「再生可能エネルギーの使用」。社会は「ダイバーシティの推進」「ワーク・ライフ・バランスの実現」。ガバナンスは「積極的な情報開示」「透明性のある公正な経営」などが挙げられます。

企業の成長性を見極める要素の一つとしてESGが注目されており、昨今のメディアでは「ESG投資」という言葉を頻繁に見かけるようになりました。ESGを推進する企業に対して、積極的に投資をする投資家が増えているのです。ESGはパーパスを見直す上で、重要な要素といえるでしょう。

(2) 従業員のロイヤリティ(loyalty)やワークエンゲージメントが向上する

パーパスを見直すことで、従業員のロイヤリティやワークエンゲージメントが向上するというメリットもあります。パーパスを掲げて働く意義を明確に指し示し、その内容が企業と従業員の共通項になることで、従業員は誇りをもって業務を遂行できるようになります。その結果、従業員の企業に対するロイヤリティが高まり、ワークエンゲージメントも高まりやすいのです。

また、従業員のロイヤリティ(loyalty)やワークエンゲージメントが高まることで、個人の力を最大限に発揮しやすくなります。生産性とワークエンゲージメントの向上については、相関関係があることも明らかになっています。

このようにパーパスを企業経営や組織運営に取り入れることを「パーパス・マネジメント」といいます。誠実で真摯なパーパスは、従業員を鼓舞してチームワークを強固にし、生産性を高めるでしょう。

パーパス・ブランディングで注意すべき「パーパス・ウォッシュ」

パーパス・ブランディングを行う際は、「パーパス・ウォッシュ」に陥らないよう注意する必要があります。

パーパス・ウォッシュとは、環境に配慮しているように見せて実態が伴っていない「グリーン・ウォッシュ」という言葉から派生した言葉です。パーパスを掲げているけれど、実際には行動が伴っていないなど、見せかけだけの状態を意味します。看板に偽りありの状態では、ステークホルダーからの信頼を失うかもしれません。

パーパス・ブランディングを推進する際には、「掲げるパーパスが正しい情報か」「パーパスが実際の取り組みとして落とし込まれているか」「メッセージだけではなく実態が伴っているか」などを確認することが必要です。

5.企業やブランドのパーパス事例

パーパスの中身は、企業によってさまざまです。そこで、パーパス経営を実践している4社の事例を紹介しましょう。

(1) ソニー

ゲームや音楽、映画など、多岐にわたる事業を展開するソニーグループ株式会社のパーパスは、次の通りです。「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」。

同社は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、さまざまな取り組みを始めました。

コロナ禍でスタートした「Play At Home」イニシアチブは、同社の子会社のエンターテインメントコンテンツを生かした取り組みの一つです。期間限定でのゲームタイトルの無料配信や、創作活動を行う小規模インディースタジオを支援するために、日本円で約11億円の基金を設立しています。

また、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた世界中の人々の支援をするべく、日本円で約108億円の支援ファンド「新型コロナウイルス・ソニーグローバル支援基金」も設立しました。ファンドの最初の支援として、「Covid-19 Solidarity Response Fund for WHO(COVID-19連帯対応基金)」「国境なき医師団(MSF)」などの医療団体に、日本円で約11億円を寄付しています。こうしたコロナ禍における迅速な取り組みは、掲げたパーパスにふさわしい同社ならではの取り組みといえるでしょう。

参照:Sony's Purpose & Values|ソニーグループ株式会社

(2) ナイキ

スポーツ関連商品を扱う多国籍企業、ナイキのパーパスは、次の通りです。「スポーツを通じて世界を一つにし、健全な地球環境、活発なコミュニティ、そしてすべての人にとって平等なプレイングフィールドをつくり出す」(訳出:『日本の人事部』編集部)。

同社の取り組みでは、米プロフットボールNFLの元選手であるコリン・キャパニック氏を起用した「Dream Crazy」キャンペーンが有名です。2016年、キャパニック氏は、試合前の国歌斉唱中に、膝を突いた姿勢で人種差別に抗議しました。事態を知ったドナルド・トランプ大統領(当時)は猛反発し、NFL側もキャパニック氏を解雇せざるを得なくなりました。

しかし2019年、ナイキは同社の30周年キャンペーンで、キャパニック氏を起用したのです。「何かを信じたら、たとえそれがすべてを犠牲にすることであっても、ためらわずやろう」というメッセージと共に、全世界に向けて動画を配信しました。このナイキの取り組みは、メディアやSNSで大きな話題を呼びました。

出典:Breaking Barriers|Nike Purpose

(3) ネスレ

食品飲料メーカーであるネスレのパーパスは、次の通りです。「ネスレは、創業者アンリ・ネスレの精神を受け継ぎ、栄養を中心としたネスレの価値観に導かれ、食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高める製品、サービス、知識を個人と家族の皆さまにお届けするためにパートナーとともに取り組みます」。

同社は、SDGs(持続可能な開発目標)の達成を支援するための、2030年に向けた具体的でグローバルな数字目標を三つ設定しています。

  • 5,000万人の子どもたちが、さらに健康な生活を送れるように支援
  • ネスレの事業活動に直結するコミュニティに暮らす3,000万人の生活を改善
  • ネスレの事業活動における環境負荷ゼロ

例えば、自社の調理食品ブランド「マギー」を使った料理教室を世界各地で展開しているのも、取り組みの一つです。この取り組みによって、消費者が栄養バランスの取れた食事を摂取できるように支援しています。

ほかにも、農村で暮らす人々の生活を向上させることを目的に、コーヒーのサステナビリティプログラムを実施しています。農村の開発を支援し、コーヒーの長期的供給を確保することで、農業従事者の高齢化や低収入、気候変動など、さまざまな課題の解決に取り組んでいるのが特徴です。

参照:ネスレの存在意義|ネスレ日本株式会社

(4)ユニリーバ

日用品・食品メーカーで、パーパス・ブランディングのパイオニアであるユニリーバのパーパスは、次の通りです。「サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”に」。

パーパスに基づくさまざまな取り組みがある中で、例えば、水の消費量という自社のビジネスモデルと密接に関わる社会課題に目を向けています。「シャワーや入浴、洗濯の際に使う水の消費量削減」を目的にした行動見直しプログラムや、トイレの水を流すことなく消毒・消臭が行えるトイレ用スプレーの開発に取り組んでいます。

また同社は、一度使われただけで廃棄されてしまう製品パッケージを減らすため、容器のリユースを手掛けるショッピングシステム「Loop」と提携し、同システム内で購入できる自社商品を開発しました。

調味料の「ヘルマンズ」やパーソナルケア製品「ラブ ビューティ アンド プラネット」、歯みがきタブレット「Tooth Tabs」など、食品から日用品まで、さまざまな商品が展開されています。Loopで販売される製品の容器には、主にアルミニウムとガラスが使われ、パッケージの再利用が可能です。

参照:パーパスを通して利益を生み出す:パイオニアとして学び続けた8年間|ユニリーバ・ジャパン

※※Loopとは:リユース容器を利用した、ゴミを出さないグローバルなショッピングプラットフォーム。耐久性に優れたパッケージで消費者に商品を届け、消費後はパッケージを回収し、洗浄した後、中身を詰め替えて再利用するビジネスモデル

6.パーパスの策定、運用方法

パーパスの策定に関して、正解はありません。なぜなら、企業が「自分たちは、社会に対してこのような存在意義を発揮したい」と抱いた信念がパーパスとなるからです。

ただ、目に見えない思いの部分を言葉にして体現するのは、難しいことです。そこで、どのようにパーパスを策定し、運用していくべきかを詳しく解説します。

パーパスの条件

パーパスに必要な条件は、以下の五つです。

(1)現在の社会課題を解決するものか

パーパスに必要な条件は「現在の社会課題を解決するもの」であることです。パーパスは「将来どうあるべきか」という理想論よりも、現代社会において顕在化している課題にフォーカスします。今まさに自分たちの身の回りに起きている課題に向き合うからこそ、ステークホルダーが自分ごととして捉えられ、共感と推進力を得られるのです。

(2)自社の利益につながるものか

企業は営利団体です。そのため、パーパスは単なる無償奉仕ではなく、企業の利益につながるものでなければなりません。利益が出ない活動を続けると、企業の存続が困難になる上、投資家や従業員などのステークホルダーに不安を与えてしまいます。

短期的には利益につながらなかったとしても、長期的に見てブランドが浸透し、利益に寄与するパーパスを策定することが理想といえるでしょう。

(3)自社が行うことに対し合理性が伴うものか

パーパスでフォーカスする課題は、自社のビジネスに密接に結び付いている課題であるべきです。自社のビジネスとは全く関連性のない領域にフォーカスしたとしても、市場の理解が得られなかったり、長期的な利益に結び付かなかったりする可能性があるからです。

また、新しい領域は知見やノウハウも乏しく、初期投資が高くなりやすいというデメリットがあります。パーパス策定時には、「自社が行うことに対して合理性が伴うものか」という視点が必要です。

(4)自社が実現可能なことか

パーパスは、自社が実際に取り組めて、実現可能なことでなければ、掲げる意味がありません。あまりにも壮大過ぎるパーパスを掲げると、実現不可能であることが目に見えてしまい、ステークホルダーをしらけさせてしまうかもしれません。

パーパスが夢物語にならないよう、「そのパーパスを策定して、実現できる未来を具体的に想像できるか」と考えることが重要です。

(5)従業員をモチベートさせ得るものか

パーパスは、従業員のモチベートにつながるものである必要があります。魅力的な誇れるパーパスであることで、従業員一人ひとりが自分ごととして捉え、その企業で働く意義を見いだせるのです。働く意義が明確になり、モチベーションが上がることで、ロイヤリティ(loyalty)やワークエンゲージメント、そして生産性の向上にもつながります。

不景気などで会社の危機が訪れたとき、従業員の迷いや不安を払拭する道しるべとなるよう、「自分たちはどこに進むのか」を明確にするパーパスを掲げることが重要です。

パーパス・ブランディングの実施

パーパス・ブランディングは、「パーパスを決めて終わり」ではありません。広告メッセージに折り込むだけでも足りないでしょう。企業全体に浸透させ、実際の活動に落とし込むために、事業活動としてプロジェクトを立ち上げて取り組むべきです。

前述のとおり、実態が伴わないパーパス・ブランディングは「パーパス・ウォッシュ」となる可能性があります。パーパス・ウォッシュに陥ると、ステークホルダーからの信頼を失いかねず、一度失った信頼はなかなか取り戻せません。

パーパス・ブランディングの評価

パーパス・ブランディングの取り組みを実施した際は、内容を評価し、レポーティングするべきです。成果が出た場合は、社内外にレポートを共有することで、ステークホルダーのエンゲージメントを高められます。

取り組みのスケールが大きければ大きいほど評価は容易ではありませんが、行動の結果を共有することで、ステークホルダーに「パーパスの実現のため、取り組みをしっかり行っている」と理解してもらうことができます。

事例として紹介したネスレやユニリーバでも、パーパス・ブランディングの取り組みをウェブサイトなどでレポーティングして共有しています。ネスレのレポートは、取り組み一つひとつに関して、具体的な数字を挙げながら「掲げていた目標」「現在までの進捗状況」「今後の目標」をまとめているのが特徴です。

ユニリーバのレポートは、パーパスに基づいた10年間の活動を、公式サイト上にまとめています。読者が直感的に受け取りやすいよう、イラストをメインにし、「取り組んでいる活動内容」「目標に対する現在までの進捗状況」などを簡潔に説明しているのが特徴です。

7.パーパスを学ぶための書籍など

パーパスについて学ぶための書籍や論文をご紹介します。

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2020年10月号(パーパス・ブランディング)

出版:株式会社ダイヤモンド社

パーパス・ドリブンの組織をつくる8つのステップ(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー論文)

出版:株式会社ダイヤモンド社
著:ロバート・E・クイン、アンジャン・V・セイカー

パーパス経営 30年先の視点から現在を捉える

出版:東洋経済新報社
著:名和高司

BCG 次の10年で勝つ経営 企業のパーパス(存在意義)に立ち還る

出版:日本経済新聞出版
著:ボストン コンサルティング グループ

上場企業に義務付けられた人的資本の情報開示について、開示までのステップや、有価証券報告書に記載すべき内容を、具体例を交えて解説します。

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企画・編集:『日本の人事部』編集部

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