サステナブル人事のケーススタディ
社会の転換期に必要な人材戦略
サステナブル人事の具体的な施策は?
今や、あらゆるところで目にするようになった「SDGs」。ビジネスから離れたところ、たとえば保育園や幼稚園、ファッション雑誌の特集など、以前は想像できなかった場所でも、SDGsという言葉を見聞きするようになりました。社会全体がサステナビリティを意識するようになった今、経営や人事に携わる人たちにとってこの概念はもはや無視できません。
かつて企業の存在意義は、利益を上げて株主に還元することでした。しかし昨今は、資本主義そのもののあり方が問われ、従業員や地域社会など、多様なステークホルダーを巻き込んだ“幸せ”の実現が求められるようになっています。マーケットシェアを拡大し、多くの利益を得るという従来の経営目標に加えて、CO2の排出量を抑え、ジェンダー平等を始めとしたダイバーシティを実現し、従業員のウェルビーイング向上を目指すなど、多くの視点を持たなければならなくなりました。
企業のあり方の変化に合わせて、人材マネジメントも変化を求められています。そこで生まれたのがサステナブル人事という考え方です。かつてのような利益拡大に貢献する人材だけでなく、利益拡大とサステナビリティの両立に資する人材を採用・育成しなければなりません。
昇進昇格や給与など、制度を再考する必要が生じることもあります。実際、欧米企業を中心に、経営陣や従業員の賞与をESG目標の達成度をもとに決定するケースも見られます。賞与というと、企業の一定期間の利益をもとに金額が決まることが一般的でしたが、経営目標が「利益」と「サステナビリティ」の両立となれば、サステナビリティ目標の達成度が報酬に反映されても不思議ではありません。
このほか、サステナブル人事には次のような施策が当てはまります。たとえば、環境やダイバーシティなど、サステナビリティへの意識の高さを採用基準の一つにすること。従業員の目標管理にサステナビリティに関する項目を追加すること。ESGへの理解を昇進昇格の条件にすることなど。
まさに今、社会は転換期を迎えています。未来に歓迎される企業として存続し続けられるかどうかは、サステナブル人事にかかっていると言っても過言ではありません。