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HRペディア 掲載日:2021/07/27

【ヨミ】ジンテキシホン 人的資本

人的資本とは、人の持つスキルや能力などを資本と見なして、投資の対象とする考え方です。企業経営において、人材戦略は重要です。単に労働力として従業員を見るのではなく、その能力あるいは状態を把握し、具体的な採用・育成戦略を練る必要があります。策定した戦略を基に人材に投資を行い、収益につなげます。
 
企業だけでなく、投資家も人的資本に着目しています。その表れが、人的資本を開示するためのガイドライン「ISO30414」です。製造業から知識労働へとビジネスの構造が変化する中で、企業が持続的な成長を担保するために、人的資本についてどのような取り組みを行っているかを投資家もしっかりと知るべきだとする流れは、今後ますます本格化していくでしょう。

1.人的資本(ヒューマン・キャピタル)とは

人的資本(ヒューマン・キャピタル)とは、人の持つ能力やスキルを資本と見なす概念のことです。教育と経済成長における因果関係を明らかにする経済学において、概念として使われてきました。

経済協力開発機構(OECD)の定義によると、人的資本は「個人の持って生まれた才能や能力と、教育や訓練を通じて身につける技能や知識を合わせたもの」とされています。一方で企業に焦点を当てた場合は「企業や特定産業の成功に直接的に係わる労働力の技能や能力」という定義です。技能などにとどまらず、健康状態や従業員満足度などを含めて人的資本と考えることもあります 。

近年の急激なビジネス環境の変化に伴い、企業経営においても人的資本の考え方は重要性を増してきました。

教育や訓練、経験により蓄積された知識や技能は労働生産性向上に寄与するため、人材は資本であり投資の対象となります。企業が実施する教育訓練などは、まさに人的資本への投資といえます。

(1)人的資本と人的資源の違い

人的資本の「資本」とは経済活動の基となる生産3要素のことで、 土地・資本・労働を指します。

人的資本と似た言葉に人的資源もありますが、人的資源の「資源」とは経済活動や社会生活において人間が利用できるものすべてです。企業を経営していく上で欠かせない四つの要素である、ヒト・モノ・カネ・情報の「ヒト」のことを人的資源といいます。

資本には人的資本以外に「財務資本」「製造資本」「知的資本」「自然資本」「社会・関係資本」などがあり、基本的に「投資」の対象です。資本に対して投資を行うことで将来価値を増幅させます。一方の資源は「消費」の対象であると考えられています。

上記のように考えると、資本と資源の意味合いの違いをイメージできるでしょう。

参照:資本|weblio辞書

(2)広義の人的資本と狭義の人的資本

人的資本には複数の捉え方があり、どのような文脈で用いられるかによって、定義がやや変動します。

一つは、人的資本へ投資することは直接的に経済的利益がある、という考え方です。教育訓練などによる人的資本への投資が、企業の利益にダイレクトに影響を及ぼします。

もう一つは、人的資本への投資は間接的にしか経済的な利益に結び付かない、という考え方です。人的資本への投資によって個人のスキルアップや能力開発、あるいは心身の健康に好影響を与えることで、間接的に企業や社会の経済発展につながるとするものです。

企業経営における人的資本はどちらかというと前者のほうで、投資は「教育訓練」や「福利厚生」などを指し、投資により得られる便益は基本的に売り上げや利益となります。

(3)人的資本に関する研究

人的資本の研究は、18世紀の経済学者アダム・スミスが起源とされています。アダム・スミスは資本の一つとして人的資本を定義し、学校教育とOJTによって人的資本は獲得できるとしました。

その後も、人的資本について経済学者によってさまざまな研究がなされており、その多くは教育と経済との関係性を論じたものです。

代表的なものに1964年に出版されたゲーリー・ベッカーの著書『人的資本』があり、1976年には日本語版も出版されています。ベッカーは同書の中で「十分な意欲をもち、教育・職場訓練・健康・その他の人的資本に十分投資を行い、経済制度が妨げることがなければ、どのような個人でも国でも繁栄できる」と記しています。

2.企業経営において人的資本への関心が高まっている背景

人的資本は以前から企業経営において注目が高いテーマでした。そして近年はさらに注目を集めるきっかけが発生しています。

(1)人的資本へ注目が集まる元来の理由

<1>製造主体の経済から知識労働主体へのシフト

企業経営において人的資本へ興味が集まってきた理由の一つに、ビジネスモデルの変化が挙げられます。

製造中心の経済では、原材料の価格や設備投資が企業の業績を左右していました。しかしその後、知識労働主体の経済に変化するとともに、経済活動の内容が大きく変化しました。知識労働主体の経済では、従業員が保有するスキルや知識、あるいは企業が持つ独自のノウハウや企業風土など、人的資本が業績や成長性に大きな影響を与えるようになってきたのです。

<2>グローバル化とダイバーシティ

グローバル化によって、人々の働き方や価値観は多様性を増しました。人材の流動性も高まり、さまざまな考え方や背景を持つ人材が同じ職場で働くようになっています。

国内では、従来の年功序列や終身雇用といった働き方が当たり前のことではなくなりました。ジョブ型雇用を導入する企業も増えています。同質性から多様性に軸足が移る中で、人材戦略をどう策定し運用するかが、企業の経済活動にとってより重要になってきているのです。

<3>少子高齢化や人生100年時代の到来

少子高齢化だけでなく、最近は人生100年時代などといわれるようになりました。定年の期限を延長する国も増えつつあり、日本も2025年には定年延長になるといわれています。
2021年4月1日から、改正された「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」が施行され、会社側に従業員が70歳になるまで就業機会を確保することを努力義務として求めています。

従業員がより長く働く時代になることで、新しい知識を身に付ける「リスキル」や「学び直し」が重要となってきます。企業は既存人材の生産性を維持、向上させるための仕組み作りを行う必要があるでしょう。

(2)近年、人的資本がさらに注目を集めるようになった理由

<1>ESG投資への関心の高まり

ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字からなる言葉です。近年は企業が長期的に継続して成長するために、ESGの観点が必要だとされています。

ESG投資とは、企業の財務指標だけを見て投資を行うのではなく、環境への配慮や社会と良好な関係を築けているか、企業の統制がきちんと取れているか、といった非財務指標も加味して企業の持続的な成長性を判断する投資の手法です。企業の人的資本への重視は、「社会(Social)」に該当するといえるでしょう。

職場環境が企業の生産性、あるいは信頼度やブランドイメージに与える影響は大きく、例えば近年、職場でのハラスメントは増加しており、経営者や投資家、あるいは従業員の関心も高まっています。

<2>SECによる人的資本開示の義務化

ESG投資への関心の高まりなどの背景から、2020年8月に米国証券取引委員会(SEC)が米国の上場企業に対して人的資本の開示を義務化しました。人的資本の開示とは、企業における人的資本の状況を定性的だけでなく、定量的に開示することです。

人的資本を開示することで、それまでの財務指標だけでは見えてこなかった企業の人材投資の状況や人材の流動性、あるいは上述のハラスメントリスクなども可視化されやすくなります。

人的資本の開示は、企業活動において人的資本に対する投資が健全に行われているかどうかを内外に示すことであるといえます。継続して成長する企業であるかどうかを判断する、新たな基準となるかもしれません。

出典:SEC Adopts Rule Amendments to Modernize Disclosures of Business, Legal Proceedings, and Risk Factors Under Regulation S-K

3.人的資本の開示とISO30414

ISO30414は、人的資本の開示に関する国際的なガイドラインとして注目されています。ISOは国際標準化機構の国際規格で、人的資本報告に必要な11領域49項目をまとめたものです。

これまでの人的資本の研究から、教育訓練が人的資本を強化し、企業の生産性を高めることは数多く論じられてきましたが、実際に人的資本を可視化するための標準的かつ国際的な指標は定まっていませんでした。そのため、人的資本の報告も各企業がそれぞれ独自の体裁で公開するにとどまっていました。ISO30414によって、人的資本開示の標準化が進むと目されています。

(1)ISO30414の項目に見る人的資本の可視化法

ISO30414で定められている項目は、企業が現在の人的資本を可視化するのに役立ちます。例えば「賃金」や「離職率」のほか、「ワークエンゲージメント」「従業員満足度」「人材育成に関するコスト」「従業員一人当たりの研修時間」などです。これらのデータに加えて「従業員一人当たりの利益」などを定点観測することで、人的資本の蓄積や投資対効果を算出しやすくなります。

企業経営では従業員一人当たりの売上高である「パーヘッド」を重視して状況を分析することがありますが、効率よく売り上げを積み上げられているか、人的資本に投資した結果、利益率は向上しているかなど、企業経営の面からも推移を見ていくことが重要でしょう。

(2)日本における関連法規

国内でも人的資本に関連するさまざまな取り組みが行われています。2020年に改正された「労働施策総合推進法」により、従業員301人以上の企業は2021年4月1日より中途採用比率の公表が義務化されました。中途採用比率の公表は、中途採用における環境整備を目的に行われます。こちらも人的資本を可視化することに役立つでしょう。

政府も成長戦略実行計画で「社会全体で人的資本への投資を加速し、高スキルの職に就ける構造を作り上げる必要がある」と記しています。今後ますます人的資本公開の流れは本格化すると考えられます。

参照:令和3年4月1日から常時雇用する労働者数が301人以上の企業において正規雇用労働者の中途採用比率の公表が義務化されます|厚生労働省

参照:成長戦略実行計画(p. 5)|首相官邸

4.企業における人的資本を強化するために何が必要か

(1)人材版伊藤レポートによる「3P・5Fモデル」

企業における人的資本を高める方法として参考すべきものに、2020年9月に経済産業省から発刊された「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書(人材版伊藤レポート)」があります。レポートでは「3P・5F」モデルとして、重要なポイントとなる「三つの視点(Perspectives)」と「五つの共通要素(Common Factors)」を紹介しています。人材戦略に取り掛かる前や、再考する際の参考によいでしょう。

出典:人材版伊藤レポート(p. 32)|経済産業省

<1>人材戦略における三つの視点

人的資本を高めるには、人材戦略をどう策定するかがポイントです。人材版伊藤レポートでは、人材戦略の個社性を認める一方で、共通する部分も多いとしています。

レポートでは、重要な三つの視点として「視点1:経営戦略と人材戦略の連動」「視点2:As is - To beギャップの定量把握」そして「視点3:企業文化への定着」が挙げられています。それぞれを簡単に説明しましょう。

・経営戦略と人材戦略の連動
急速に変化する経済環境の中で、持続的に企業価値を向上させるためには、経営戦略・ビジネスモデルと表裏一体で、その実現を支える人材戦略が不可欠となります。

例えば中期経営計画に取り組む企業では、計画の見直しに合わせて人材戦略も見直します。企業の注力する事業が変われば必要な人材も変わってくるので当然のことですが、新規事業に必要な人材のイメージがつかめないなどの理由で、経営戦略と同時進行で人材戦略を見直すことが難しいこともあるようです。

経営戦略の実現に必要な人材ポートフォリオの中には、新規事業の展開に直結しない共通人材もあるため、共通人材の充足を目指しつつ、個別に経営戦略に沿った人材獲得や人材育成を実施するなど、自社の人材戦略のスタンスを決めておくことも重要でしょう。

・As is - To beギャップの定量把握
As is - To beギャップとは「As is=現状」と「To be=理想」との「ギャップ=隔たり」を具体的に数字で把握することです。把握した数字を基に必要な人材の採用計画を作成していきます。

実務では採用だけでなく退職も含めた全体の要員計画の検討も必要でしょう。いくら採用しても退職者が多ければ必要な人材を確保することはできないからです。例えば企業全体の要員計画の中で不足している人材をAs is - To beギャップで定量把握して、具体的に必要な人材の採用計画や在籍社員への教育訓練計画を立てます。併せて従業員の定着率アップを図り、離職率を見ながら随時見直していきます。見直す場合には、PDCAサイクルを継続的に繰り返して行うと効果的でしょう。

ギャップの把握はステークホルダーに対して、人的資本・人材戦略を定量的に把握・評価して開示する場面でも必須です。投資家に対しては、定性的な評価や従業員数などの一部の数値のみを開示するのではなく、リスキルや人材投資などのリターンや投資対効果を定量的に記載した内容が求められるからです。

・企業文化への定着
企業文化は企業理念や企業の存在意義、持続的な企業価値の向上につながるものです。日々の事業活動や取り組みで醸成されます。

企業の中には「社是」を掲げて従業員に周知している場合もあります。社是は会社の経営指針を社内外に示すものです。社員は社是に基づいて行動することになるため、企業文化の礎となっていることも珍しくありません。

「企業文化」とは、言い換えれば人材戦略が目指す一つのゴールともいえます。そのため自社がどのような企業文化を目指すのかを、人材戦略策定時にしっかりと検討することが重要でしょう。

実際の人材戦略ではヘッドハンティングをする場合も、中途採用をする場合も、選考の基準は自社の人材戦略で求める人材となります。いかに優秀で仕事のできる人材でも、企業文化に合わなければ、結果を出すことは難しいでしょう。前職で大きな成果を出した社員が想定したような結果を出せないことも珍しくありません。能力を十分発揮できないことや、企業文化が自分の仕事のスタンスと合わないなどの理由で早期に退職する例もあります。

それほど企業文化が企業経営に与える影響は大きいものです。どのような企業文化を醸成させるのか、参照点を明確にすることが重要です。

<2>人材戦略における五つの共通要素

人材版伊藤レポートでは人材戦略における五つの共通要素として「1.動的な人材ポートフォリオ」「2.知・経験のダイバーシティ&インクルージョン」「3.リスキル・学び直し」「4.従業員エンゲージメント」「5.時間と場所にとらわれない働き方」を挙げています。それぞれの要素を見ていきましょう。

・動的な人材ポートフォリオ
「動的な」とは、変化する状況に合わせて柔軟に対応することを意味します。また「人材ポートフォリオ」とは、事業活動に必要な人材を分類し可視化したものです。動的な人材ポートフォリオを持つことは、経営戦略実現のために必要となる人材を質・量の両面で充足するために状況を把握し、最適化を図り続けることです。

人材の適材適所を実現するには、現状をリアルタイムに把握することが重要です。変化のスピードの速い現代では、人材ポートフォリオにおける現状課題を埋めるリードタイムが競争力に直結するため、常に現状の人材ポートフォリオを把握できるよう、データを整備することが望ましいでしょう。

経営戦略の実現に必要な人材の確保に多くの企業が取り組んでいます。しかし実現するのは難しく、2021年に『日本の人事部』が実施した調査でも「採用・配置・育成ができている」「どちらかというとできている」と回答した企業は全体の3割程度でした。

出典:人事白書2021 p.19

持続的な企業成長を実現するためにも、経営戦略上重要な人材のポートフォリオを作成し、常に現状を把握することが重要です。

・知・経験のダイバーシティ&インクルージョン
中長期的な企業価値向上のため、経験や感性、価値観、専門性といった知と経験のダイバーシティを事業活動に積極的に取り込み、成果として形にしていくことが求められます。

女性や外国人など多様な属性、他業界での経験など専門分野の多様性を効果的に取り込むことで、個人の掛け合わせを原動力としたイノベーションを生み出すことが可能になります。また、これらをしっかりと推進するためにKPIを設定するとよいでしょう。

KPIとは「重要業績評価指標」のことで「Key Performance Indicator」の頭文字です。目標の進捗を測る「物差し」として、達成具合を継続的に計測して、達成のプロセスを数値に置き換えて考える方法です。

売り上げなどを重要業績とすることもありますが、キャリア採用率や、幅広い事業領域に関わる人材の成長支援、教育施設の設置などをKPIとして設定することも可能でしょう。

・リスキル・学び直し
事業環境の急速な変化や価値観の多様化に対応するため、従業員のリスキル・スキルシフトの促進、専門性の向上が必要です。今まで以上に社員のキャリア構築を支援することが重要となるでしょう。

働き方の変化に対応するためには、新たな環境でも転用可能な専門性や強み、またIT(情報技術)リテラシーやスキルの向上は必須です。今後はITや人工知能(AI)で補い切れない、クリエイティブなスキルも重要となります。

組織改革を実現していくためには、経営層が率先してリスキルや学び直しを実践することが求められます。そうしたトップの姿勢は、デジタルトランスフォーメーションなどの企業改革を推進することにもつながります。

デジタルトランスフォーメーションはDXと呼ばれ、最新のデジタル技術を駆使しイノベーションを起こすための企業変革を指す言葉です。ビジネスモデルの変革は現代の経営戦略において重要なキーワードですが、それを実現するためには社員が変革に付いていかねばならず、その変革に耐え得るためのスキル・学び直しをいかに実現していくかが、人材戦略上でも重要なポイントになります。

・従業員エンゲージメント
従業員がやりがいや働きがいを感じながら、主体的に仕事に取り組める環境を与えることが必要です。個人の成長ベクトルと、企業の目指す成長や組織目標をシンクロさせることで、より持続的に企業価値を向上させられます。

企業理念や存在意義、経営戦略や目指すビジネスモデルなどを従業員に積極的に発信して、対話し、共感を得ることが重要です。そうすることで従業員も自発的に行動でき、個々が持つ能力やスキルが発揮されていくのです。

副業や兼業を認める風潮が広がる中で、従業員のエンゲージメントを高めるには、柔軟な就業環境の提供や多様なキャリアパスを設定する必要があるでしょう。

・時間と場所にとらわれない働き方
時間と場所にとらわれない新しい働き方が、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で急速に進んでいます。思いもよらないスピードで在宅勤務やリモートワークが普及し、今後もその流れは続くと思われます。

事業継続やレジリエンス(環境変化に伴う組織の対応力)の観点からも、平時から安全かつ安心して働くことができる環境を整えることは重要です。時間と場所にとらわれない働き方が定着すれば、業務プロセスやコミュニケーションの在り方も変わってきます。

在宅勤務やリモートワークなどで直接目が届かない分、いかに部下を管理し、チームを率いていくかをマネジメント層の従業員自身も考えねばなりません。人材戦略上もマネジメント層の育成や支援の重要性は増すでしょう。

出典:人材版伊藤レポート(p. 44)|経済産業省

人材戦略における要素について説明してきましたが、企業が従業員に行う教育訓練については人的資本論でしばしば議論となっています。教育訓練は「転移可能なスキル取得による離職の誘発」につながると懸念されるためです。

しかし、人材版伊藤レポートでは「汎用性の高いスキルや専門性を身につける機会があることは個人を惹きつける魅力ともなる」としています。能力の高い従業員ほど転職に有利であることは事実ですが、高いスキルを身に付けることができ、なおかつ従業員が能力を発揮できる土壌があれば、社外に目が行くことを防げ、離職につながることは少ないでしょう。

また、人材が流動することは悪いことではありません。一定の流動性は企業が発展していく上で必要です。多様な価値観を取り込むことは、中長期的な企業価値向上のためにも有効でしょう。

(2)人材育成などの施策における投資対効果(ROI)の算出

人的資本を強化するためには、人材戦略を策定し、それを基に各人事施策に落とし込むだけでなく、その効果測定を行う必要があります。

例えば、人材育成を行った際には狙ったスキルが身に付いているかどうかをテストする、福利厚生を見直した際には従業員サーベイなどを行うなどして、数値化するとよいでしょう。

またそれらをチームの売り上げや利益率などとひもづけて分析し、満足度との相関関係を確認することも重要です。従業員の満足度を上げることが業績向上につながっていることを、定量的に把握するのです。人材版伊藤レポートにおいても、KPIを置くことの重要性が繰り返し強調されています。

(3)人材データの整備と蓄積

人的資本強化において現状分析を行うことは重要ですが、そもそも分析をするためのデータがないことも多いでしょう。また人事分野においてはまだまだ紙やExcelで管理している場合も多く、情報がさまざまな場所に分散していることもあります。

HRテクノロジーなどを有効活用し、データの整備や統合を行うことは人的資本の可視化に有効です。一元管理していれば、経営戦略で必要となる人材の選定も容易にできます。適任者がいなくても、従業員のスキルなどが可視化できれば、より近い人材を選出し、教育訓練を実施することで適材へと成長させることも可能でしょう。

また満足度調査などを実施して従業員の状況を定点観測することは、これまで可視化できなかった新たな組織課題の発見にもつながります。満足度調査は定期的に実施することが重要です。継続することで、組織内の変化を読み取れるからです。

調査項目に転勤希望や会社に伝えたいことなどを追加すれば、従業員の希望を知り、個々の状況把握にも役立ちます。また、企業側が従業員の声を聞くことで、エンゲージメントが上がり、優秀な人材の外部流出を防ぐ効果もあります。

例えば介護が必要で出身地に戻ることを希望していても、なかなかその声は人事部門まで届きません。個々の事情を把握し適切な対処を行うことで、離職を食い止められることもあります。そういった声を拾っていくことも、投資した人的資本を活用する上では重要でしょう。

人的資本に投資するだけではなく投資対効果を考える場合には、投資した人材が経営戦略に貢献できる状態であるかどうかを把握していかなければなりません。例えば新規事業の中核となる人材に投資して適材となったとしても、事業開始に合わせて赴任できない家庭の事情を抱えていれば投資を回収することはできないのです。

そのようなことが起きないためにも、人材データをさまざまな形で蓄積することは重要です。人材戦略は投資する資本が「ヒト」であることを考えながら進めていくことが求められます。

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