健康経営 powered by「日本の人事部」 人生100年時代の働き方を考える

株式会社クレディセゾン:
がんとともに生きていく時代 
社員が治療と仕事を両立するために人事ができることとは(前編)

株式会社クレディセゾン 取締役 営業推進事業部長 兼 戦略人事部 キャリア開発室長 武田 雅子さん

  • facebook
  • X
  • note
  • LINE
  • メール
  • 印刷

人によってまったく違うがんの治療計画

 社員からがんを告白された場合、人事としてどう対応すればいいのでしょうか。

まずは今後のスケジュールを調整していくことになりますが、がんの場合、すぐに治療計画がわかるわけではありません。例えば一例として、告知から手術の日取りが決まって、手術を行って、腫瘍を病理検査にかけてから、術後どのように治療を行っていくかどうかが判明します。ですから、少しずつわかる範囲内で話し合いつつ、そのつど柔軟に業務スケジュールを組んでいくことが求められます。

株式会社クレディセゾン 取締役 営業推進事業部長 兼 戦略人事部 キャリア開発室長 武田 雅子さん

私のように術後、放射線治療とホルモン治療を行うこともあれば、術前に抗がん剤を用いて、あらかじめ腫瘍を小さくしてから手術を行うこともあります。おそらく皆さんの周りにもがんを経験された方が少なからずいらっしゃると思いますが、その症例や治療例がすべての患者さんに当てはまるわけではありません。「そういうがんなら、こうするべきだよね」などと、自分の記憶の引き出しに照らし合わせて、型に当てはめないように気をつけてください。人事として何か定型的に行えることはないんです。一人ひとりと向き合い、オーダーメイドで今ある制度の中でできることを考えることが大切なんです。

がんは治療や自身の状態によっても波があります。心も含めて、状況はさまざまに変化します。通常の傷病なら「手術すれば、あとは良くなるだけ」ですが、私の場合はホルモン治療の影響もあって、うつのような症状も現れました。「一度話し合ったから大丈夫」ではなく、本人も人事も、お互いにしっかりと変化についていつでも話し合える環境を整えるべきです。

 本人の心へのサポートも重要ですね。

告知直後は、大きく気が動転していることが多いですからね。ともすると「辞める」と言い出す人もいます。ただ、がん治療は長期になることが多いので、経済的な面を考えても、可能であれば仕事は続けた方がいい。その時々の感情で決めてしまうと、のちのち後悔することにもなります。特に男性のほうが辞めようとする人が多いんです。「正社員でフルタイム働かなければ」という固定観念が強いぶん、それ以外の選択肢を考えられず、極端な決断に走ってしまいがちなようです。女性は育児などライフステージの変化で、勤務形態や雇用形態が変わることもありますし、抵抗感が少ないのかもしれません。

これはいろいろな方に話しているのですが、仕事できちんと果たすべき役割があるということは、生きる上でとても大事なことなんです。一人で家に引きこもっていたら、やはりつらいですよ。育児の場合でも、赤ちゃんと二人きりになって気が滅入ってしまった、という母親のエピソードをよく聞きますよね。がんを治療しながら働いている人は大勢いますから、「がんとともに生きていく」という意識に変えていかなくてはならないと考えています。


  • facebook
  • X
  • note
  • LINE
  • メール
  • 印刷

あわせて読みたい

記事

ワコールに学ぶ女性の健康支援。内勤・外勤を問わず、すべての社員が健康に働くために

社員の9割以上が女性という株式会社ワコールでは、がん検診を中心とした女性の健康支援を進めており、2021年度の乳がん検診受診率は93%。内勤・外勤という働き方の違いもある中で、すべての社員にきめ細やか...

2022/10/14 関連キーワード:健康経営 女性の健康 がん検診 コラボヘルス

記事

誰もがイキイキと働ける職場へ
臨床心理士・関屋裕希の ポジティブに取り組む「職場のメンタルヘルス」
【第9回】ストレスチェック制度の「医師による面接指導」をバージョンアップ!

ストレスチェック制度で従業員に介入できるタイミングは、三つ(図で黄色に示した箇所)あります。一つ目は結果を返却するタイミング、二つ目は高ストレスの基準に該当した労働者に医師による面接指導を勧奨するタイ...

2021/08/20 関連キーワード:ストレスチェック メンタルヘルス 休職 産業医 ポジティブに取り組む「職場のメンタルヘルス」

記事

誰もがイキイキと働ける職場へ
臨床心理士・関屋裕希の ポジティブに取り組む「職場のメンタルヘルス」
【第6回】復職することがゴールではない! イキイキと働き続けるための「復職支援」

厚生労働省が実施している労働安全衛生調査によると、メンタルヘルスを理由に過去1年間で連続1ヵ月以上休職した労働者の割合は0.4%で、この割合は事業所が大きくなればなるほど高くなるものの、従業員300名...

2021/05/27 関連キーワード:復職支援 メンタルヘルス マネジメント セルフケア ポジティブに取り組む「職場のメンタルヘルス」

記事

朝型勤務、がんとの両立支援、日吉独身寮新設
全てにひも付く、伊藤忠流「企業戦略としての健康経営」とは

総合商社の伊藤忠商事では、かねてより社員の健康管理や働き方改革にも力を入れてきました。「健康経営銘柄」にも2年連続で選定され、注目を集める同社ですが、がんや長期疾病を患う社員の支援や健康経営も視野に入...

2018/08/28 関連キーワード:がん 両立支援 健康経営 伊藤忠商事 朝型勤務 社員寮

記事

「生活習慣病」「がん」「メンタルヘルス」「女性の健康」「たばこ」五つの柱で進める健康経営~「JAL Wellness」の目指すもの~:日本航空株式会社人財本部 健康管理部 兼 運航本部 運航乗員健康管理部 今村 厳一さん

「全社員の物心両面の幸福の追求」を企業理念に掲げる日本航空(JAL)グループ。その実現には社員の「心身の健康」が不可欠という考えのもと、健康推進プロジェクト「JAL Wellness」を発足。「生活習...

2018/01/18 関連キーワード:健康経営 企業事例 生活習慣病 メンタルヘルス がん たばこ 女性の健康