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従業員の健康に対する意識を向上させるアプローチとは
心身の状態を理解して正しい行動を取る「ヘルスリテラシー」の高め方

従業員の健康に対する意識を向上させるアプローチとは 心身の状態を理解して正しい行動を取る「ヘルスリテラシー」の高め方

企業が健康経営の一環でヘルスケアイベントを行うと、普段から健康に気を配る従業員は積極的に参加しますが、一方でまったく関心のない従業員もいます。健康経営担当者からは「本当に来てほしい人が参加しない」「行動変容にまでつながらない」といった嘆きの声も聞こえてきます。どうすれば従業員の健康に対する意識を高めることができるのでしょうか。この問題を解決するために注目したいのが、「ヘルスリテラシー」という概念です。欧米を中心に研究が進み、ヘルスリテラシーの程度がその人の健康状態や生活習慣に影響することが知られています。産業保健が専門でヘルスリテラシーに詳しい、順天堂大学の福田洋特任教授に、概念の捉え方と従業員の健康意識を高めるアプローチについて聞きました。

プロフィール
福田洋さん
順天堂大学大学院 医学研究科 先端予防医学・健康情報学講座 特任教授
順天堂大学 医学部 総合診療科学講座

ふくだ・ひろし/専門は予防医学、産業保健、健康教育・ヘルスプロモーション、ヘルスリテラシー。1993年山形大学医学部卒業、1999年順天堂大大学院医学研究科(公衆衛生学)修了、2011年ミシガン大学公衆衛生大学院疫学セミナー修了。産業衛生指導医、人間ドック健診指導医、社会医学系指導医、労働衛生コンサルタント。さんぽ会(産業保健研究会)会長。著書「ヘルスリテラシー〜健康教育の新しいキーワード」(大修館書店,2016)。

教育が健康に直結する。ヘルスリテラシーという発想

福田先生は総合診療医かつ産業医として、ヘルスリテラシーについて研究を重ねています。

実を言うと、最初は産業医を目指していたわけではなかったのです。きっかけは研修医時代に、糖尿病患者さんの患者教育をしていた頃にさかのぼります。病院を訪れるのは主に会社の健康診断などで異常が見られた中年の男性、いわゆる働き盛り世代の方々です。当時私はまだ駆け出しでしたが、自分なりに工夫を凝らしながら「血糖値が高く危険な状態です」「生活習慣を改めましょう」と伝え、診療にあたっていました。

しかし、患者教育を始めてしばらく経っても、患者さんの血糖値は下がらず、生活習慣も変わりません。食事は好きなものを満腹になるまで食べ、運動もしない、お酒も喫煙もやめない。「わかっちゃいるけど変えられない」と言う患者さんに、私は「なんて不真面目なんだ」とフラストレーションを感じていました。

患者さんの気持ちも理解できますが、指導する立場としてはもどかしいですね。

しかしその態度や考えが大きく間違っていたことに気づきます。厚生労働省の糖尿病実態調査(1997および2002年)の結果から、血糖値が高くて治療が必要な人のうち、なんと半分しか治療を受けていないことが明らかになったのです。私が「生活習慣が変わらない」と失望していた患者さんは、むしろ真面目な方の半分なんだと気づきました。そして私は、約半数の糖尿病を放置している人たちにアプローチしたいと考えるようになりました。彼らの多くは企業で働いています。そこで初めて予防医学や産業医の仕事に興味を持ちました。

「ヘルスリテラシー」とは、どのように定義されるのでしょうか。

ドン・ナットビーム博士(シドニー大学)は、「健康情報にアクセスし、理解して、使える個人の能力」と述べています。彼は、ヘルスリテラシーという概念を提唱し、WHOのヘルスプロモーション用語集での定義の作成にも携わった研究者です。

教育学者としてのバックグラウンドがあり、研究を通じて教育と健康の関係性を明らかにしたのです。アメリカの健康戦略「Healthy People 2010」の策定には、彼の提唱したヘルスリテラシーの概念が用いられました。アメリカ国民の半数は、ヘルスリテラシーが不足していると判明しました。特に注目したのは、州や地区によって、健康診断の受診率、人口に占める未熟児や低体重児の割合に違いが見られた点です。原因を探ると、経済や社会、教育などの地域格差が、そのまま健康状態の差として表れていることがわかりました。ナットビーム氏は、教育が重要な社会経済要因であると同時に、健康の向上には教育が関連すること、すなわちヘルスリテラシーの重要性を訴えました。

ヘルスリテラシーは、病気や体調を崩したときの正しい対処(ヘルスケア)や、健康を維持し病気を予防する生活(疾病予防)、健康にまつわる正しい情報の収集や発信(ヘルスプロモーション)に影響を与えます。国内でも、ヘルスリテラシーの程度と健康行動に相関関係があること示した研究結果が数多くあります。最新の研究では、健康経営の文脈で、ヘルスリテラシーと生産性の関連も指摘されています。

また、個人のヘルスリテラシーだけでなく、健康経営のゴールは組織のヘルスリテラシー向上であると言われています。組織の中にヘルスリテラシーの高い人がいると、健康増進活動が盛んになり、健康状態が底上げされます。企業でいえば、ヘルスリテラシーの高い従業員が増えると、安全衛生委員会の活動が活発化したり、運動習慣や健康的な食習慣が定着したりするなど、組織全体のヘルスリテラシーが高まり、最終的にはパフォーマンスや生産性の向上につながります。健康経営を進めるうえで、従業員のヘルスリテラシーは重要なカギを握っているのです。

ヘルスリテラシーが備わっている状態とは。中性脂肪1000mg/dLのリスクが実感できる?

「健康情報にアクセスし、理解し、使う」とは、どのような行動をすることなのでしょうか。

発熱を例に考えてみましょう。朝起きて、「ゾクゾクして寒気が止まらない、体が熱くてだるい」と思ったとします。体温計で熱を測ったところ、39.0℃でした。さて、皆さんはどうしますか? このご時世ですから、新型コロナウイルス感染症のことも心配し、おそらくただ事ではないと、医師の診察を受けたり、体を休めたりすることに専念するでしょう。

同じ発熱でも36.8℃程度なら、「微熱があるな」と感じながらも、無理のない範囲で普段通りに過ごすかもしれません。つまり発熱に関しては、重症度が実感でき、どのくらいの熱だと問題があるのかわかりやすいのです。

では、「会社の健康診断で血液検査をしたところ、中性脂肪の値が1000mg/dLだった」場合はどうでしょう。熱が出たときと同じように、自分の状態を理解し、適切な行動ができるでしょうか?すでに脂質異常の治療を受けている人や医療従事者ならともかく、多くの人は1000mg/dLという数字を見てもピンとこないのではないでしょうか。

中性脂肪の基準値は150 mg/dL未満ですので、1000mg/dLは、かなり重症の部類に入ります。動脈硬化だけでなく、急性膵炎(すいえん)のリスクもあり、投薬も含めた治療が必要なレベルです。しかし、自覚症状はないため、数値からは体内状態や影響がなかなかイメージできず、「どれぐらいヤバイか(レッドカード)」が認識しづらいのです。実際に、私が遭遇した従業員の方で、「去年は1200mg/dLだったから、1000mg/dLまで改善した!」と喜んでいる人もいました。医療従事者から見ると、先ほどの39.0℃の発熱の人と同じように、放って置けない人というイメージになります。

ヘルスリテラシーが備わっている状態とは。 中性脂肪1000mg/dLのリスクが実感できる?

中性脂肪以外にも、健康診断結果にはさまざまな数値が載っています。それを見て、レッドカードかイエローカードか、個々人が判断できるようになるのが理想だと考えています。

現在の日本人のヘルスリテラシーはどの程度なのでしょうか。

聖路加国際大学の中山和弘先生らの調査(2015)によると、欧米と比較してあまり高いとはいえないというデータがあります。識字率や情報感度は高いため、情報を集めたり理解したりする段階で苦労することは少ないのですが、情報を元に行動につなげることは苦手です。

また、特定健診のデータを用いた我々の調査によると、主な生活習慣病のハイリスクの患者さんのうち未治療の方の割合が、糖尿病で5割、高血圧で7割、脂質異常症で9割いることがわかりました。

多くの人が治療していないのは、不真面目だからではありません。働き盛り世代においては、仕事の忙しさや企業の健康風土(健康経営)の浸透不足に加えて、健康診断の結果から自分の生活習慣病の重症度をイメージできず、リスクを正しく理解できないなど、不十分なヘルスリテラシーが関係していると思われます。

健康促進施策を考える前にヘルスリテラシーレベルを「知る」

個人や職場のヘルスリテラシーを高めるには、何から始めるとよいのでしょうか。

研究会や学会での議論や研究を通じて、私は職場でヘルスリテラシーを生かす戦略を、「知る」「合わせる」「下げる」「高める」「広める」という五つにまとめました。

ヘルスリテラシーを活用する五つの戦略
  • ヘルスリテラシーを「知る」
  • ヘルスリテラシーを「合わせる」
  • ヘルスリテラシーのハードルを「下げる」
  • ヘルスリテラシーを「高める」
  • ヘルスリテラシーを「広める」

ポイントは「高める」の手前に三つのステップがあること。企業の健康施策では、いきなり「高める」に着手しがちです。しかしまずは従業員のヘルスリテラシーレベルを調査し、実態を「知る」ことから始める必要があります。

職場のヘルスリテラシーを「知る」には、どのような方法があるのでしょうか。

代表的なツールに、帝京大学の石川ひろの教授が開発した「CCHL(Communicative and Critical Health Literacy)尺度」があります。特定の疾患を持たないオフィスワーカーのヘルスリテラシーを測るもので、五つの質問に「全くそう思う」から「強くそう思う」の五段階で回答します。

CCHL尺度(石川ひろの、2008)
  • 1)新聞、本、テレビ、インターネットなど、いろいろな情報源から情報を集められる
  • 2)たくさんある情報の中から、自分の求める情報を選び出せる。
  • 3)情報を理解し、人に伝えることができる。
  • 4)情報がどの程度信頼できるかを判断できる。
  • 5)情報をもとに健康改善のための計画や行動を決めることができる。

集めた回答から、組織全体、事業部別・職場別の傾向を分析したり、スコアが低い人を抽出したりできます。すると、ターゲットに「合わせた」アプローチが考えやすくなります。健康情報の発信でも、どこまでハードルを「下げる」といいのかがわかり、多くの人に有用な発信ができます。

「知る」「合わせる」「下げる」のステップを経て、初めてヘルスリテラシーを「高める」ことができるようになります。従業員個人のヘルスリテラシーが高まると、次は従業員同士でスポーツサークルをつくったり、喫煙している同僚に禁煙を勧めたりと、周囲に健康の知識を「広める」動きが出てきます。最も有効なのは、社長のヘルスリテラシーが高まることで、全社的な禁煙や健康経営の推進の原動力になります。ヘルスリテラシーが高い従業員が増えていくと、将来的には健康的な風土や文化の醸成につながります。

ネガティブなアプローチで行動は変わりづらい。知的好奇心をくすぐることがヘルスリテラシーを高めるカギ

情報レベルを「合わせる」「下げる」には、どうしたらいいのでしょうか。

実際の体の状態を見せるなど、さまざまな工夫が考えられます。たとえば「中性脂肪1000mg/dL」がどれほど危険な状態なのかイメージできないのは、実際の血液の状態を見たことがないからかもしれません。健康な人の血液と、中性脂肪1000mg/dLの方の血液を写真で比較して見てもらうと、遠心分離した脂質異常症の方の血液には乳び(血漿が脂で白く濁った状態)が見られ、まるで「家系ラーメン」のようなインパクトがあります。

ここでは事実を提示しているのがポイントです。データの悪さで脅すのではなく、サイエンスとしての面白さを伝えています。視覚で捉えることで、「へぇ!」と思わせる要素を含んでいるのです。

ベストセラーとなった漫画『はたらく細胞』(清水茜、講談社)のように、身体のしくみを伝え、知的好奇心をくすぐることで、もっと知りたいという欲求につながり、ヘルスリテラシーが高まるという循環が期待できます。「血圧200mmHgの圧はどのくらい?」「気になる疾病の最新治療」「新型コロナウイルス感染症の最新情報」など、健康や医療の領域には、「へぇ!」と思わせる知識がたくさん転がっています。

多くの人は、失って初めて健康のありがたみを知ります。そうなる前に、毎年の健診結果や日ごろのちょっとした自覚症状、日々の新型コロナウイルス感染症のニュースなど、自社の課題に合わせて、関心の高い医療・健康の情報がタイムリーに発信され、学びが進むと、従業員個人と組織のヘルスリテラシーの向上につながります。

健康経営を推進する多くの企業では、企画や施策に従業員が参加してくれない、キャンペーンで健康活動が一時的に活発化しても継続しないといった悩みも抱えています。

セミナーの内容自体はもちろん重要ですが、従業員の皆さんは、忙しい毎日を過ごしています。それが平日の昼間に1~2時間拘束されるものだとしたら、よほど関心が高い人しか集まらないでしょう。健康情報の発信においても、ターゲットを絞り、利便性を考慮し、マーケティングや行動経済学を駆使した集客戦略が必要です。

また、情報の伝わり方も変わってきました。少し前まで、健康情報は、医師などの専門家の情報がマスコミなどを通じて人々に一方向に伝わるのが一般的でした。しかしインターネットやSNSが発達し、種々の情報ソースに気軽にアクセスでき、多くの人とつながるようになった今、情報の伝わり方は双方向的で複雑です。個々の従業員が情報の受信者であり、発信者にもなり得ます。

いいコンテンツさえあれば多くの従業員が参加し、ヘルスリテラシーが高まるわけではないのですね。

はい、ここまでヘルスリテラシーの重要性について述べてきましたが、「良質な情報さえあれば人は集まる、関心を持つ」というわけではありません。例えばセミナーであれば、「セミナーで伝える内容」と「セミナーに参加してもらう戦略」は別に考える必要があります。集客には、ナッジ(Nudge)が活用できます。行動経済学の知見を活用した、「人々がよりよい選択を心地よく行えるように後押しするアプローチ」です。

ナッジ実践の枠組みとして、EASTのフレームワークが知られています。EASTは,「Easy(簡単に)」「Attractive(印象的に)」「Social(社会的に)」「Timely(タイムリーに)」の頭文字で,好ましい選択を無理なく行えるよう促し、行動変容を後押しします。

ネガティブなアプローチで行動は変わりづらい。知的好奇心をくすぐることがヘルスリテラシーを高めるカギ

具体的な工夫の例を挙げると、「Easy」では、セミナーを1時間の集合型から10分間のオンデマンドにすることで、飛躍的に参加のハードルがさがります。「Attractive」では、情報の発信者に顔が知られている社内の保健師を選定することで、「それなら聞いてみよう」と親近感が湧くかもしれません。「Social」では、部署別対抗のウォーキングキャンペーンなど、仲間を誘い競争するゲーム性を取り入れるなどの工夫が可能です。「Timely」では、新型コロナウイルス感染症の流行状況に合わせた旬の情報を取り上げるなどの工夫が考えられます。

これらのナッジは、「わかっちゃいるけど変えられない」という人の認知バイアスに作用します。参加のハードルをクリアできれば、その先はやはりコンテンツが重要で、参加者のリテラシーに「合わせて」、コミュニケーションを図っていくことが求められます。特にデザインは重要です。細かすぎる文字や、恐怖心をあおる説教臭い表現、長時間拘束のイベントなどは、誰からも見向きもされません。

近年は、プロでなくとも、スマートフォンや動画作成ツールなどを駆使して、タイムリーに動画コンテンツを作ることができるようになりました。産業医や保健師などもこのようなスキルが必要になってくると考え、研究会などでも取り上げています。

ナッジと組み合わされ、参加者のヘルスリテラシーやニーズ、嗜好に合わせてチューニングされた内容であれば、「また参加しよう」と思うでしょう。主催者側が届けるコンテンツに、信頼と期待が生まれるからです。継続的な参加は健康行動の意欲を喚起し、さらに体調がよくなるなど効果を実感することで、本来の健康への関心の高まり、自ら健康情報を得ようとする意欲、望ましい生活習慣の定着へとつながっていくはずです。それこそが真のヘルスリテラシーの向上と言えます。

ヘルスリテラシーの定着は時間がかかるもの

ヘルスリテラシーの観点で施策を考えるうえで、企業はどのようなことに注目するとよいのでしょうか。

ポイントは自分自身で健康情報が活用できることにありますので、体験を意識した施策を組み立てるとよいでしょう。極端な言い方をすれば、「教えない学び」です。答えを伝えるのではなく、自分で考え、試し、気づく場を提供するのです。たとえば食堂に行き、一定のテーマに沿って自分でランチメニューを選択し、内容を検証するというプログラムなどはどうでしょう。「ファーストフードを食べた翌日のリカバリーメニューを考えてみる」などといったテーマは、関心がある人も多いのではないでしょうか。

また、トップの影響力は大きいと思います。たとえば私が産業医としておうかがいしている設計コンサルタントでは、毎年サーベイを実施し、健康宣言を行い、衛生委員会にて数値目標を設けて従業員のヘルスリテラシーの向上を図っています。社長自ら朝のラジオ体操に参加する、労働組合が率先して従業員のヘルスリテラシーを高める小冊子を作成するなど、従業員主体のヘルスプロモーション活動を行っているのが特徴的です。

入社初期に意識づけを図ることも有効です。こちらも私が産業医でおうかがいしている生活用品メーカーですが、入社時研修にヘルスリテラシー教育を取り入れています。健康体そのものの新入社員に「今は病気が自分と無関係と思っているかもしれませんが、数年後にはこの中の2〜3人は確実にメンタル不調で私と面談します。10年後には、男性社員の半分はメタボで保健指導を受けることになるでしょう」などと話すことが、健康を考えるきっかけとなっています。

従業員自身で体の状態を把握し、コンディションに合わせた選択や行動を取れるようになれたら望ましいですね。

「ヘルスリテラシー」という言葉が生まれる前から、「わかっちゃいるけど変えられない」という人の行動変容にどう働きかけるか、ずっと考え続けてきました。人間の自己決定には、さまざまな要素が絡んでいます。たとえば食生活を変えるにしても、本人のやる気、達成への自信、周囲の励ましやサポートなどが関わってきます。ヘルスリテラシーも、自己決定に関わる重要な要素です。

ヘルスリテラシーは一朝一夕で高まるものではありません。心理学や行動経済学の分野では、二重過程理論という考え方があります。思考には直感的で素早く、印象で判断する「システム1」と、意識的で遅く、論理的な「システム2」があるというものです。ナッジは主にシステム1に働きかけ、ヘルスリテラシーは主にシステム2に働きかけます。大事なのはナッジとヘルスリテラシーを両輪にして、二つの思考を行き来しながら健康に導く選択や判断につなげていくことです。

コロナ禍をきっかけに、多くの企業で従業員の働き方や仕事の進め方が変わりました。その程度や内容はさまざまですが、一つの大きな流れとして、働き手の自律や自立を問うようになりました。これは仕事に限らず、健康管理にもいえることです。従業員のヘルスリテラシーを底上げする、組織的な働きかけが求められています。ぜひ中長期視点で取り組んでみてください。

参考文献: 『ヘルスリテラシー〜健康教育の新しいキーワード』(福田洋,江口泰正編著、大修館書店、2016)
(取材:2022年5月12日)

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「HRペディア「人事辞典」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。


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