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ただ「健康増進」を唱えるだけでは届かない
健康経営を従業員のやる気につなげる「ウェルビーイング経営」の考え方(後編)

森永 雄太さん
(武蔵大学 経済学部経営学科 准教授)

2017/08/09
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森永雄太さん 武蔵大学 経済学部経営学科 准教授
従業員の健康につながる施策に会社をあげて取り組む「健康経営」の考え方が定着しつつありますが、一方で若い人ほど「健康」という言葉を軽くとらえてしまいがちであるのも事実です(前編参照)。健康的な食生活や生活習慣の重要性を頭では理解していても、実際には体に何の問題もないという状況の中で、健康経営という考え方が浸透しづらい職場も多いのではないでしょうか。武蔵大学 経済学部経営学科准教授の森永雄太先生は、「会社や人事担当者が意識的に『健康』という言葉の意味を拡張していくべき」と語ります。健康経営を定着させ、従業員のやる気を引き出していくために大切なこととは何なのか。そのポイントをうかがいました。
Profile

もりなが・ゆうた●神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。2014年4月より現職。経営学の中でも経営管理論、組織行動論を専門としている。これまで産学連携を通じて大学生の社会人基礎力やリーダーシップを育成するプログラムを担当。また、企業や団体を対象とした講演や研修活動にも取り組んでいる。著書に『職場のポジティブメンタルヘルス―現場で活かせる最新理論』(誠信書房)、『日本のキャリア研究―専門技能とキャリア』(白桃書房)など。

会社からの発信がポジティブになる「ウェルビーイング経営」の考え方

―― 若手社員は健康に対する意欲が年長者に比べて低いということでしたが、これはどんな職場でもある程度、共通することではないでしょうか。

そうですね。「健康に暮らしていますか」と質問されたとき、私たちはどうしても負の側面があるかないかを考えてしまいます。本来、健康とは「病気になっていないこと」を意味するものではないはずなのに、若い人ほど現在の体の状態に自信があるので、健康という言葉を軽視しがちです。そのような状態では、会社が健康増進への取り組みを訴えても、なかなか浸透しないでしょう。健康という言葉の意味を、拡張していく必要があるのではないでしょうか。

―― 負の側面から「健康」という言葉をとらえてしまうので、健康増進に向けた取り組みもポジティブに受け止めづらいということですか。

その通りです。ただでさえ日常業務で忙しいのに、新たな取り組みや施策が追加されるわけですから、会社からの発信は考え抜かれたものにしなければなりません。例えばメンタルヘルスの領域では、島津明人先生(北里大学教授)が、メンタルヘルスのプラスの側面をとらえて、「ポジティブメンタルヘルス」を提唱されていますね。メンタルヘルスの領域ではこうした考え方が先行していて、発信の仕方も工夫されています。

私は健康経営の考え方をさらに進化させたものとして、従業員のメンタルヘルスややる気、組織への愛着なども含んだ「ウェルビーイング経営」という概念がいいのではないかと考えています。健康経営が日本で注目されるようになったのは、医療費の増大という切実な問題があったから。これは喫緊の課題であり、早急に手を打っていかなければなりません。しかしこれだけでは、若い人たちも巻き込んでいくことは難しい。「健康経営2.0」のような第二段階へと移行していくには、ウェルビーイング経営という考え方のほうが受け入れられやすいのではないでしょうか。

―― 森永先生は以前、健康経営の「戦略」と「管理」の違いについて述べていらっしゃいました。これはウェルビーイング経営を進めていく上で大切な観点だと思うのですが、詳しくご説明いただけますか。

健康経営には、二つの意味合いがあると思っています。一つは費用対効果を考慮して戦略的に施策を行い、医療費を削減するなど直近の課題に対応していくこと。政策的に進められているものとしては「健康経営銘柄」などの制度もありますね。これは客観的に、定量的に健康経営を評価する上で大切だと思います。

もう一つは、「健康経営を取り入れた結果、職場や従業員がどう変わったのか」を見ていくために、職場が実際に活性化されているかどうかを追いかけていくこと。まさに管理、マネジメントの視点ですね。従業員にどのような変化を求めるかは、企業によって異なります。生産性を一気に高めたいと考える企業もあれば、目の前の数字が落ちても中長期的に生産性が持続していくことを求める企業もあります。企業によってさまざまな背景があるので、どの取り組みが正解だとは一概に言えませんが、「戦略」と「管理・マネジメント」に分けて施策を振り返ることは欠かせないでしょう。


2017/08/09
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