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従業員のパフォーマンス最大化に向けたHRテクノロジー活用事例

<協賛:Unipos株式会社>
  • 斉藤 知明氏(Unipos株式会社 代表取締役社長/Fringe81株式会社 執行役員)
  • 長久 良子氏(ボルボ・カー・ジャパン株式会社 人事総務部 ディレクター)
  • 石黒 卓弥氏(株式会社メルカリ Manager, Organization & Talent Development)
TECH DAYパネルセッション [TD]2019.12.25 掲載
Unipos株式会社講演写真

自社で働く従業員に最高のパフォーマンスを発揮してもらうための「働きがい、EX(従業員体験)」が注目されている。そこで活用されているのが従業員同士で感謝を伝え合い、隠れた貢献をクローズアップするHRテクノロジーだ。Uniposの斉藤氏、ボルボ・カー・ジャパンの長久氏、メルカリの石黒氏が働きがいを高める組織づくりについて議論を交わした。

プロフィール
斉藤 知明氏( Unipos株式会社 代表取締役社長/Fringe81株式会社 執行役員)
斉藤 知明 プロフィール写真

(さいとう ともあき)東京大学機械情報工学専攻。学業の傍ら、株式会社mikanにてCTOとしてスマートフォンアプリ開発に従事。その後、Fringe81株式会社に入社。一年間エンジニアとしてアプリ開発等を行った後、Unipos事業責任者となる。2017年12月28日、Unipos株式会社の代表取締役社長に就任。


長久 良子氏( ボルボ・カー・ジャパン株式会社 人事総務部 ディレクター)
長久 良子 プロフィール写真

(ながひさ りょうこ)新卒で日産自動車株式会社に入社しアフターセールス部門に配属。北米、欧州への補修部品・アクセサリーの販売や企画を経験後、2001年に人事部門に異動。アジアリージョン人事担当時は1年間タイ日産に赴任、アフリカ・中近東・インドリージョンで人事部長を務めた後、2018年4月より現職。


石黒 卓弥氏( 株式会社メルカリ Manager, Organization & Talent Development)
石黒 卓弥 プロフィール写真

(いしぐろ たかや)NTTドコモに新卒入社後、マーケティングのほか、営業・採用育成・人事制度を担当。また事業会社の立ち上げや新規事業開発なども手掛け、2015年1月にメルカリに入社。
メルカリでは採用を中心とした人事企画を担い、2019年2月より現職にて組織・人材開発の領域を担当。
複数のスタートアップにて人事領域のアドバイザーも務める。


個人のエンパワーメントが強く求められる時代に

まず斉藤氏が、働きがいやEX(Employee Experience、従業員体験)が注目される理由について語った。

「今年の始めに経団連の中西会長が『終身雇用を前提に企業運営、事業活動を考えることには限界がきている』と語り、話題になりました。こうした発言が出たのはなぜでしょうか。背景にあるのはVUCA時代、不確実性の時代の到来です。世の中の情報の質が向上し、良いものが良いと認知される時代になりました。その結果、新規参入、既存代替が簡単にできるようになってしまった。企業は『顧客対応品質』『断続的な進化』によって、常に進化し続けることが求められます。事業やサービスがどんどん変わっていくため、新たな人材を入れる必要がある。結果、終身雇用ができなくなったのです」

市場は激しく変化し、生産人口は年々減少しつつある。だからこそ今「個々人のエンパワーメント(力を与えること)」が必要になっている。一方で労働力はどんどん流動的になり、多くの若者は転職に意欲的で、転職活動をポジティブに捉えている。このような中で企業は従業員に対し、自社で働いてもらう理由を提示しなければならない。

「企業に務める人材に最大のパフォーマンスを発揮してもらうために、今はなぜここで働くべきかを定義する『オファー』が必要です。そこで『働きがい』『EX(従業員体験)』という概念が注目されています。本日はEXの最前線で活動する長久良子さん、石黒卓弥さんに、自社における働きがいやEXの状況についてうかがいます」

講演写真

ディスカッションのテーマ:eNPS(従業員ロイヤルティ指標)や、
CS(顧客満足)にも深く関わるEXとどう向き合うか

石黒:今、メルカリではEXプロジェクトを推進しています。目的は、事業成長に貢献できる組織・人材の課題を抽出し、改善のサイクルを回すことです。出てきた課題には誰が対処するのかを決め、確実にアクションにつなげます。そうした、クローズドループを回す仕組みを社内につくろうとしているのです。ゴールはCX(顧客体験)向上を目的としたEX向上によって、事業成果を最大化すること。実現したいのは、事業成果を最大化にするための包括的な課題抽出と優先順位づけです。そこでEmployee Experience Journeyに基づいたeNPS(従業員ロイヤルティ指標)を活用しています。従業員はパフォーマンスとeNPSが共に高い人がベストですが、現状でパフォーマンスもeNPSも低い従業員については、まずはパフォーマンスを向上させています。

斉藤:両方が低い人の場合、まずパフォーマンスから上げるのはなぜですか。

石黒:従業員全員がeNPSの高い状態であることは、企業にとって本当に良い状態かということに向き合っています 。 例えば、人の成長と企業の成長が噛み合わなければ外に出たほうがいい場合もある。また、企業がすべての従業員 のeNPSを支援することは現実的といえません。制度によるフォローにも限界があります。ただし、eNPSが高くてもパフォーマンスが低い人が増え続けることは問題です。まずはパフォーマンスを上げることを支援することから始めています。

長久:ボルボ・カー・ジャパンは弊社のディーラービジネスを販売業ではなくサービス業と位置づけており、ブランドビジネスを目指しています。これまでは新規の顧客を獲得するフロー型ビジネスでしたが、今は買い替え、整備や車検など顧客と長く付き合うストック型ビジネスに転換しています。そのため、CS(顧客満足)がこれまで以上に重要になっているのですが、CSを上げるためには、従業員がブランドを理解し、それに共鳴した従業員のやりがい、満足、誇りが不可欠です。要するにCSを上げるには、ES(従業員満足度)を上げないといけないわけです。

斉藤:CSがもっとも重要なポジションにあり、それを下支えするものとしてESがあるという構造を取っていらっしゃるんですね。

講演写真

ディスカッションのテーマ:高パフォーマンスを引き出すには、
バリュー浸透と部門を越えたコミュニケーションが有効

石黒:それは三つのバリューの徹底です。一つ目は「Go Bold 大胆にやろう」。イノベーションを生み出すため、全員が大胆にチャレンジし、数多くの失敗から学び、実践しています。二つ目は「All for One 全ては成功のために」。一人では達成できない大きなミッションを、チーム全員が最大のパフォーマンスで実現します。三つ目は「Be a Pro プロフェッショナルであれ」。メンバー全員がプロフェッショナルとしてオーナーシップを持ち、日々の学びを怠らず、成果や実績にコミットします。この三つのバリューは採用面接、評価 のCalibration 、360度評価など、個々の仕事や人事すべてにひもづきます。一般にフィードバックでは上長の当たりはずれなどが起きがちですが、バリューが定まっていれば、会社としての判断が示しやすくなります。

もう一つの取り組みは「Trust & Openness」というカルチャーの浸透です。メルカリは相互の信頼関係を大切にしています。信頼を前提にしているからこそ、情報の透明性が保たれ、組織もフラットになります。メンバーを縛るルールも必要以上に設けていません。一人ひとりの自発的な思考や行動が、個人の成長や組織の強さにつながると信じています。

斉藤:全社集会の場でも、バリューの言葉が何度も聞かれますね。もうこれはインフラといえるのかもしれません。

講演写真

長久:私は組織を見るとき、笑顔の数をバロメーターにしています。コミュニケーションが活発な組織は笑顔も多く、パフォーマンスも高い。私はボルボに入社してまだ1年半です。業績は大変好調ですが、社員一人ひとりが抱える業務領域が多岐に渡っていることもあり、時間や気持ちに余裕が少ないのか、業績のわりには笑顔が少し足りないように感じました。そこでコミュニケーションと笑顔を増やそうと、横のつながりを創出する試みを始めています。

一つ目は、FIKA(フィーカ)です。これはスウェーデンのお茶の時間で、大切な仲間と語らうスウェーデン文化の代表的なものです。従業員がコーヒーとお菓子を持ち寄って食べながら話をします。会社の補助はありませんが、部門を越えたコミュニケーションの促進のために、今年から始めました。二つ目は、「みんなの食堂」というランチケータリングサービスです。当初は人事総務部が準備し、後片付けを行っていましたが、ボランティアを募ったところ、徐々に定着してきました。「みん食」仲間の輪が広がりつつあり社員からも好評です。こうした新しい施策をうまく活用することで会社を楽しい場所と感じてもらえるような演出を行っています。

斉藤:従業員にとって、うれしい試みだと思いますね。弊社もみんなの食堂を行っていますが、一つだけ、オープンな場所で食べるというルールを設けています。

ディスカッションのテーマ:
取り組みに従業員を巻き込むコツとは

長久:巻き込むコツは三つ。一つ目は、何事も人事主導ではなく、現場にオーナーシップを持たせること。マネジメントまたは現場のキーパーソンを宣教師にします。二つ目は、人事の役割はツールの提供であり、戦略的な黒子に徹すること。導入時の説明は丁寧に行い、現場に足を運び、実際に現物を見せて良さを実感してもらう。とにかく使ってもらえるように工夫します。三つ目は、現場に行ったら従業員とコミュニケーションを取ること。重要なのは人事目線ではなく、同じ目線で話をすることです。人事は特別な存在ではなく、従業員の一人であることを忘れないようにしています。

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石黒:私も、人事が主役にならないことだと思います。キーになるメンバーをとにかく巻き込む。人事総務以外で自社のエースと言うか、バリューを最も体現しているようなメンバーだと考えられる人がいるなら、その人を必ず巻き込む必要があります。そして、会社として取り組むことを「普通」にする。当たり前の文化にする。日々のネタになるくらいメンバーに浸透させていく。日常の生活に入り込むことが大事です。

貢献の見える化が、感謝・信頼し合う土壌をつくり、
人と組織を強くする

続いて斉藤氏が、自社がサービスを行うUniposについて解説した。UniposとはスマートフォンやPCを通して、従業員同士が感謝のメッセージと少額の成果給(ピアボーナス)を送り合うことができるサービスだ。

「Uniposによって、自分の行動が誰かのためになっているという『貢献実感』が得られます。我々のビジョンは『「はたらく」と「人」を大切にする世界へ 』。成果につながるまでのさまざまな貢献を互いに、知り、認め、称え合い、信頼し合う組織をつくるお手伝いをしています。導入実績310 社以上、継続率は99%以上。リアルタイムに賞賛の言葉が全社でシェアされるので、役割や雇用形態を超え、隠れていた貢献にスポットライトが当たっています」

メルカリとボルボ・カー・ジャパンもUniposユーザーだ。石黒氏はその効果について「日常の会話で感謝が当たり前に出るようになっている。最初は気恥ずかしさもあったが、だんだん周囲に見えるように感謝を伝えるようになり、それが浸透につながっている 」と語る。

長久氏も「会社には表彰制度があるが、受賞者には周辺でサポートしている人が必ずいる。頑張っている人の周辺のサポートが見えるようになることは大変よいと感じた。そしてUniposは感謝の言葉を読んでみてもほぼストレスフリー。個人間の感謝の言葉が全従業員で見られるのは効果が高い。実際にいいことをしようとする人が増え、会社の雰囲気もよくなっている。また、生産性が高い部署、ESが高い部署はUniposの利用率が高く、ストレスチェックでも改善度が増している」と、その効果を語った。

最後に石黒氏が「相手を信用することが大事。信用しないコストは実に大きい。生産性は積み重ねであり、互いを信じて動くようにしたい」、長久氏が「会社で過ごす時間は長い。その時間をいかに楽しく過ごせるか。そのために何ができるかを考えたい」とコメントし、パネルセッションは終了した。

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本講演企業

「すべてのはたらく人にスポットライトを」をミッションとし、HRテクノロジー事業として従業員エンゲージメント・働きがいを高め、組織に一体感を生み出すピアボーナス(R)サービス「Unipos」を開発・提供しています。

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