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一人ひとりのリーダーシップが組織を変える
主体的に動き、変化に強いチームをつくるには

  • 井手 直行氏(株式会社ヤッホーブルーイング 代表取締役 社長)
  • 日向野 幹也氏(早稲田大学 大学総合研究センター 教授)
  • 中竹 竜二氏((公財)日本ラグビーフットボール協会 理事/株式会社チームボックス 代表取締役/一般社団法人日本ウィルチェアーラグビー連盟 副理事長/一般社団法人スポーツコーチングJapan 代表理事)
東京パネルセッション [L]2020.01.17 掲載
講演写真

人事分野に限らず、仕事の本質は「コミュニケーション」に尽きる。上司・部下・社外取引先など、立場の異なる者同士が業務を頼み、頼まれ、連鎖していく。こうしてできあがった規模も構造も少しずつ違う「チーム」を円滑に運営できるかどうかの肝が、リーダーシップである。人事はどのように社員一人ひとりのリーダーシップを育てていけばいいのか。ヤッホーブルーイング代表取締役社長の井手直行氏、早稲田大学大学総合研究センター教授の日向野幹也氏、日本ラグビーフットボール協会理事の中竹竜二氏が議論した。

プロフィール
井手 直行氏( 株式会社ヤッホーブルーイング 代表取締役 社長)
井手 直行 プロフィール写真

(いで なおゆき)1967年、福岡県出身。国立久留米高専電気工学科卒業。ニックネームは「てんちょ」。大手電気機器メーカーにエンジニアとして入社。広告代理店などを経て、97年ヤッホーブルーイング創業時に営業担当として入社。2004年楽天市場担当としてネット業務を推進。看板ビール『よなよなエール』を武器に業績をⅤ字回復させた。08年より現職。全国400社以上あるクラフトビールメーカーの中でシェアトップ。14年連続増収増益。著書に『ぷしゅ よなよなエールがお世話になります』(東洋経済新報社)


日向野 幹也氏( 早稲田大学 大学総合研究センター 教授)
日向野 幹也 プロフィール写真

(ひがの みきなり)1978年東京大学経済学部卒業、83年同大学院博士課程修了、経済学博士(東京大学)。同年より2005年まで東京都立大学経済学部勤務。同年立教大学に移籍し、2006年より経営学部ビジネス・リーダーシップ・プログラム(BLP)を主査として立ち上げ発展させ、全学向けプログラム(立教GLP)も立ち上げた。2011年頃よりアクティブ・ラーニングとアクション・ラーニングの両分野で内外の顕彰を受けた(国際アクション・ラーニング機構の年間賞など)。2016年4月からは早稲田大学に移籍して全く新しくリーダーシッププログラム(LDP)を開始する一方で、多数の大学・高校・企業でリーダーシップ開発コンサルティング中。著書に『大学教育アントレプレナーシップ』(ナカニシヤ出版、2013年)、松下佳代編著『ディープ・アクティブラーニング』(勁草書房、2015年)第9章、『高校生からのリーダーシップ入門』(ちくまプリマー新書、2018年)など。


中竹 竜二氏( (公財)日本ラグビーフットボール協会 理事/株式会社チームボックス 代表取締役/一般社団法人日本ウィルチェアーラグビー連盟 副理事長/一般社団法人スポーツコーチングJapan 代表理事)
中竹 竜二 プロフィール写真

(なかたけ りゅうじ)1973年福岡県生まれ。早稲田大学人間科学部に入学し、ラグビー蹴球部に所属。同部主将を務め全国大学選手権で準優勝。卒業後、英国に留学。レスタ―大学大学院社会学修士課程修了。三菱総合研究所等を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督を務め、自律支援型の指導法で大学選手権二連覇など多くの実績を残す。2010年退任後、日本ラグビー協会初代コーチングディレクターに就任。U20日本代表ヘッドコーチも務め、2015年にはワールドラグビーチャンピオンシップにて初のトップ10入りを果たした。2014年、企業のリーダー育成トレーニングを行う株式会社チームボックス設立。2018年、コーチの学びの場を創出し促進するための団体、スポーツコーチングJapanを設立、代表理事を務める。著書に『新版リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは』(CCCメディアハウス)など多数。


14年間連続増収増益のクラフトビール会社、その理由はチームビルディング?!

ビジネス関連の講演と言えば、一人ないし数名の登壇者の話を、聴講客が静かに聴くというのが一般的だ。ただ中竹氏によれば、海外のビジネスカンファレンスでは、面識のない参加者同士が休憩時などに積極的に話し、ガヤガヤとした雰囲気が一般的という。

今回の講演は、リーダーシップや主体性がテーマ。そこでまずは中竹氏の発案で、隣り合う席の参加者同士、1分間自己紹介しあうことで場の空気を和ませた。

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「人間にとって『触れる』というのはとても大事なこと。主体性は、手が触れあう回数でも変わってくると言われ、例えば主体性の高い人は手の動きが多い。ほんの短い時間自己紹介するだけでも手は動くので、なにか(会議前などに)“スイッチ”を入れたい場合は手の動きを意識するといい」と中竹氏はいう。

ここで、自己紹介を兼ねたミニプレゼンが行われた。最初は井手氏。クラフトビール「よなよなエール」で知られるヤッホーブルーイングには1997年に入社し、2008年から社長を務めている。

1997年は同社創業のタイミングで、地ビールブームの追い風もあった。しかし、わずか数年でそのブームが終焉。8年連続赤字など苦戦する時期もあったが、2004年以降14年連続で増収増益が続いている。

井手氏は「倒産寸前の時期もあった」と振り返るが、常日頃から一番大事にしていたのが「チームづくり」だという。

「私が社長に就任した2008年ごろは本当にひどい状況で、当時いた20人くらいの社員全員が、自ら動くことがほとんどありませんでした。私が指示をしないと、本当に動かない。誰もが『他人任せ』で、ほかの社員がやってくれると思っているような状況でした」

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そのため、一人でやる仕事はそこそここなせても、複数人でやる比較的大きな仕事の進みが悪かった。会議をしても成果が出にくく、なにより社内に元気がない。

「朝礼で私一人だけがしゃべって、周りは聞いているだけ。中途入社の新人に『お通夜みたい』と言われたことが、その後ずっと心にひっかかっていました」

井手氏は我流でチームづくりに取り組んでいたが、いよいよ限界だと悟り、外部セミナーを頼った。受講の成果は大きかったという。

「まずなによりも、トップである自分が変わらなければいけないことに気づきました。それまでの私は『相手』を変えようとばかりしていたんです」

井手氏は、自身が受けたセミナーを社内で展開。また普段の仕事でも、社員間のコミュニケーションを特に重視しているという。

そもそも「リーダーシップ」とは?

続く日向野氏はもともと経済学者であったが、立教大学で2006年、当時日本初であった“(卒業単位として認められる)正課としてのリーダーシップ教育”分野で教鞭(きょうべん)を執ることとなり、以来この分野で活動している。2006年当時は、そもそも「若手人材に対するリーダーシップ教育」は、外資系や一部コンサルティング会社でしか認知されていなかったという。リーダーシップ教育はその他の大学にも広がり、いわばブームの状態だと日向野氏は話す。

「背景には、企業の人事部で“権限によらないリーダーシップ”が重視されるようになってきたことがあります。それまでの上意下達型のリーダーシップでは、外部環境の変化に追いつけないという認識が生まれてきたのでしょう」

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そもそも「リーダーシップ」とは、最も広義においては、「複数の人物で成果を出すために、(一人または何人かが)影響力を使う(またはその影響力)」こととされる。その「影響力」の拠りどころが、旧来型のリーダーシップ概念では「役職・権限・カリスマ性」であるのに対し、日向野氏らが専門とする新概念では「個人の行動や人々の関係性」を位置付ける。これが最も顕著な違いだという。

リーダーシップ教育ではジェームズ・M・クーゼス、バリー・Z・ポズナーらが権威として知られるが、日向野氏らは彼らの論をさらにまとめ、リーダーシップ発揮のための最小3行動を「目標共有」「率先垂範」「相互支援」と定義する。

「例えばゴミだらけの砂浜を掃除して、きれいな姿にしたいとします。この場合、まずはメンバーに参加を説得しますが、権限がなければ命令はできません。そのため、リーダーが最初に自らゴミを片付けます(率先垂範)。これに同調する人を増やすためには、掃除を効率的に行う道具を融通し、時には炊き出しを振る舞います(相互支援)」

リーダーシップ教育では実践が必要となるが、特にそれを「振り返る」ことが重要だ。

「自分がリーダーシップを発揮しているつもりでも、相手はそう認識していない場合があります。『先ほどのあなたの行動は、こう見えたよ』というように、甘い・辛い両方のフィードバックを受けなければいけません」

新たなリーダーシップ像「オーセンティック・リーダーシップ」

日本ラグビーフットボール協会の中竹氏は、講演直前にラグビーワールドカップ2019日本大会が閉会したこともあり、リーダーシップ論をラグビー日本代表チームと絡める形で話を展開していった。

今大会は、日本代表が初のベスト8進出を果たすなど、大きな躍進を遂げたが、そのきっかけとなったのは2015年大会での南アフリカ戦勝利であり、その原動力がエディー・ジョーンズ監督(当時)のリーダーシップだったことは想像に難くない。

一方で中竹氏は「監督のリーダーシップに加え、当事者全員がリーダーとなって活躍してくれたことが、結果につながった」とも話す。

日向野氏が述べる新旧リーダーシップ論のように、その立ち位置は時代によっても変わっている。圧倒的なカリスマに頼ったリーダーシップの一方で、中竹氏は「オーセンティック・リーダーシップ」を例示する。これは、何らかのロールモデルに沿ってリーダー的に行動するのではなく、「自分らしさ」を発露することが重要だという考え方だ。

加えて、オーセンティック・リーダーシップを考える上では「(個人の)優秀さ」より、「弱さをさらけ出す(Vulnerability)」ことも重要視されているという。

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「ワールドカップの日本代表初戦は、ロシアに勝ったものの、内容的にはミスだらけでボロボロでした。試合後の記者会見で選手の全員が全員『緊張して声が出なかった』『震えていた』と、気持ちをさらけ出していた。こういった発言は、スポーツ選手からはほとんど聞かれないことです。おそらく、選手は普段から気持ちをさらけ出し合っていたのでしょう。私は、だからこそ次のアイルランド戦に勝利できたと考えています」

ディスカッション:ヤッホーブルーイングがリーダーシップ教育をはじめた理由

ここからは三氏によるディスカッションが行われた。

井手:私はそもそも、リーダーシップ論は全く専門外ですが、ひたすら現場で実践してきました。今振り返ると、お二人の(学識的な)説明の内容を、気がつかないままなぞっていたように思います。

日向野:話を聴く限り、井手さんはリーダーシップ開発と組織開発を同時に行われたのだと思います。

井手:私が受けたセミナーは延べ5日、3ヵ月にわたって行われました。修了後いろいろ考えて、セミナーで学んだ内容を会社の人たちにも体感してもらうことにチャレンジ。素人ながらも、私が講師を務めました。毎年1回、10年間やってきて、『リーダーシップを教える側』も体験でき、結果としてチームづくりへの理解が深まりましたね。

中竹:理論から入るのではなく、まさしく実践してきたのですね。学ぶ上では理論も重要ですが、井手さんのように実践から入ることこそ本質的なのかもしれません。経験学習モデルではありませんが、「まずはやってみる」と。

井手:大学での教え方はどうなのでしょうか。やはり理論を徹底的に教え込むのですか。

日向野:大学の場合、さきほどの3行動のようにごく基本的なことだけ教え、すぐ実践に入ります。これは少ししか泳ぎを教えていないのに、海へ投げ込むようなもので、学生はまず失敗します。「泳げないのか。だから勉強が大事なんだ」と気づかせる論法です。ただ、この方法は最近の学生には評判が悪くて少し軌道修正しました。「少しの失敗もしたくない」という風潮があるように感じます。

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井手:なるほど。うちの社内のチームビルディング研修は、内容的には毎年同じなので、一人1回しか参加できない仕組みです。参加は立候補制にしています。「通常業務をやりながらの研修だから大変だよ」と前もって説明しても立候補してくれる人だと、途中で投げ出すこともない。また、受けていない人に(受講を)強要もしません。

中竹:強要しないのはいいことですね。主体性というのは、自ら手を挙げなければ育たないものなので。

「成果が出る」ことで、リーダーシップ教育への目が一変

井手:最初に私がチームビルディングのセミナーを受けた直後は、私の雰囲気がガラっと変わって、社員たちに「変な宗教にひっかかったのではないか?」と、怪訝(けげん)な顔をされました。一方で、「チームビルディングとやらを学ぶとどうなるんだ?」と、興味を示してくれる人もいた。その人たちを集めて、社内研修を実践してみたのですが、研修を受けていない人からは当然理解されません。「そんなことやるなら仕事しろ、業務時間中にやるな、それで売上が上がるのか」と陰口をたたかれるし、社内の関係性は二分状態に。内戦のようになってしまいました。

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日向野:社内研修自体の成果はどうだったんですか。

井手:まさにそこがポイントで、社員の動きの変化はもちろん、明確な成果が出たんですよ。ウチの会社でこんなことができるのか、と。すると周りの見る目が変わってきて「チームっていいかも」という流れになっていきました。

日向野:ちょっとでも成果が出るところまでもっていくのが、重要だったんですね。

井手:周りの経営者にいろいろ話を聞くと、チームづくりに挑んで諦めたと言う話がよく出ます。だからやっぱり「成果が出るまで諦めない。時間がかかる」。それが大事だと感じましたね。

中竹:「Power of Yet」、まだの力という言葉がありますが、まだできていない、つまり、いつかはできるという思考は、やはり大事です。

「まだ」はコーチングでもよく使う概念で、例えばラグビーのコーチライセンス制度ではNYC(Not Yet Competent)、今はまだ能力はないけれどいずれ十分なところへたどり着けるという表現があるくらいです。

日向野:井手さんの場合、よりセミナーの成果を出すなら、早いうちにスモールサクセスを受講者に体験させるのが重要でしょう。

井手:なるほど。加えて、個人的には成果を社内で共有すること、伝えることも大事だと思いましたね。研修参加者以外にもわかる方法で成果を伝えないと「なんだアイツら、ニコニコしてらぁ」で終わってしまうので。

コミュニケーション手段は多種多様であること

日向野:井手さんが用意してくれた、この図の意味を説明してくれますか。

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(提供:株式会社ヤッホーブルーイング)

井手:これは、ヤッホーブルーイングで行っているコミュニケーションの一覧です。コミュニケーションが得意な人・苦手な人がいるので、なんとなく(雰囲気に)任せていてはダメだということに気付いたんです。

最初のうちは、この図でいうと朝礼しかやっていなかった。でもチームづくりのためには、とにかくたくさんのコミュニケーションをとらなければいけない。でも通常の企業では、この図でいう上半分──「質を高める」ためのコミュニケーション──しか、みんなしたくないんです。売上とか戦略とか。

よく知らない人と会議をしていて「それ、違いますね」と言われたら、誰だってカチンときます。日ごろの他愛もない雑談からお互いを知っていって──図で言う下半分の「量を増やす」ですね──それから、チーム論でいうところの“心理的安全性”を高めてから会議を行えばスムーズだとわかってきたんです。

だから新入社員が入ってくるたびに、雑談やランチタイムや誕生会などをベースとして、常に下半分のコミュニケーションをとっていくべきだろうと。

中竹:これは本当にいいですね。裏話になりますが、ラグビーの日本代表チームも、チームビルディングには相当時間を費やしました。それこそ皆で歌を作るとか。

それと、人前で話すのは本当に緊張することで、例えば若手は大勢の前で話せない。なので三、四人のグループにそれぞれリーダーを割り当てて、そのリーダーの主導で必ず全員に練習の感想などをしゃべらせてコミュニケーション量を増やすようにしました。

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井手:さっきの朝礼ですが、10年経った今でもやっています。8時間労働のうちの30分を朝礼として、島単位でだいだい20分雑談しています。雑談の内容は仕事に関係あるなし問わずで。そして残り10分の掃除時間も、その雑談の延長のまま、ワイワイガヤガヤやっています。

中竹:一見すると無駄な時間のように見えても、それが効率化につながっているんでしょうね。その雑談があるから、本当の仕事の悩みを相談できることもある。専門的に言うと「累積戦略」というやつですね。

なぜ「心理的安全性」が重要なのか

日向野:「コミュニケーション力は最悪の場合、「上司の意向を忖度(そんたく)して先回りする」接待力にいってしまいます。しかしもっとリーダーシップ寄りのコミュニケーション力とは,「関係性を損なうことなく、反対意見を言う能力」です。

井手:やはり、心理的安全性を確保することだと思います。つい先日、20人くらいが参加するリーダー合宿を行い、その中でビジネス戦略を討論しました。白熱して、参加者同士がバチバチと議論するようなこともあるんですが、相互理解が進んでいるので夜の懇親会では全く気にすることなく盛り上がります。

心理的安全性を作ろうとすれば、自然と「○○さんはこういう性格」「□□さんはなにが得意」などがわかるので、忖度はなくなっていくんじゃないでしょうか。

中竹:相手の個性を理解することが、恐らくは肝ですね。オーセンティック・リーダーシップ論では、型にはまったリーダーではなく、相手の人格・性格を理解して、自分自身(リーダー)を相手から理解してもらうこともすごく重要です。

井手:相互理解のために、「ストレングスファインダー」も使っています。34ある人間の資質のうち、上位五つがわかるというオンラインのテストなんですが、社員全員が受けて、結果を全て公開します。チームビルディングの研修にも使っています。

中竹:全員のデータを公開するのはいいですね。会社の場合、データを持っているのが人事だけだということも多いので。オーストラリアの代表チームも、同様のテストであるホーガン・サーベイを行って、チーム全員で公開し合っているそうです。昔、私が早稲田大学の監督をやっていたときも、やはり選手・コーチ全員に受けさせました。

日向野:私の教室でもエニアグラムを行っています。学期の最初、グループ分けにも使うのですが、やはり人にはそれぞれタイプに違いがあることを実感します。

既存のリーダー像はもう限界

中竹:オーセンティック・リーダーシップがなぜ求められるかというと、もう「理想のリーダー像」を追い求めるのは限界だと皆が感じ始めているからでしょう。ロールモデルを追い求めれば、それだけでなんとなく成果が出ていたけれど、むしろ今は弊害のほうが多い。ならば「自分らしさ」を見つけよう、と。

そこで大事になるのが「自己認識」ですが、「外的自己認識」──つまり、他人が自分をどう思っているかについて、自分でどう理解するか──については、目をそらしがちです。自分の評価を他人に聞くのは怖いし、聞いたとしてもつい聞き流してしまう。

オーセンティック・リーダーシップはそうした限界への答えですが、一種の流行でもあり、十年後にはどうなっているのかは興味深いところです。

日向野:他者の評価を聞くのは、やはり怖いものです。最初のうちは「褒め」のフィードバックを優先して、その後、耳の痛いことも言っていくとスムーズですね。

中竹:また、上司-部下ではなく、学生-学生のように同じ立場同士のフィードバックから進めた方がいいですね。

あるカンファレンスでシルク・ドゥ・ソレイユのパフォーマンスディレクターが講演していたのですが、アーティスト間のフィードバックを導入しているそうです。最初のうちは、やはり若手がベテランに対してモノを言えなかったりしたそうですが、少しずつ改善していったといいます。

井手:うちの会社だと、1時間の会議の最後10分間で、「振り返り」をやることもあります。議題を振り返るのではなく、あくまでチームビルディング視点。「あの発言をしたのは、本当はこういう主旨があって」とか「あの時の発言は感情的すぎやしないか」「意見がキツすぎて、心理的安全性がないと思った」といった具合に振り返るんです。

中竹:会社で仕事だけをしていれば、成果が出る訳ではありません。本当に大事なときに言いたいことを言えるか、相手を傷つけずにイヤなことを伝えられるかは本当に難しいことです。何度もトレーニングしていかなければなりません。本日はありがとうございました。

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