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世界114ヵ国、130万人の「英語能力ビッグデータ」から見えた、次世代リーダーを育成するヒントとは

  • Vincent Marcon氏(EF Education First Japan, Account Director)
東京特別講演 [C-1]2019.12.24 掲載
イー・エフ・エデュケーション・ファースト・ジャパン株式会社講演写真

「次世代リーダーに必要とされる要件の度合は英語能力と比例している」。世界100ヵ国、230万人から取得した「EF EPI英語能力指数」のビッグデータからは、こうしたリーダーの傾向が見えつつある。日本人の苦手な英語能力をどうすれば身に付けられるのか。企業人事が行うべき英語教育のヒントを探った。

プロフィール
Vincent Marcon氏( EF Education First Japan, Account Director)
Vincent Marcon プロフィール写真

(ビンセント マルコン)日本で8年間、外資系企業に主に営業職として従事。イタリア系フランス人であり、若い頃から異文化、ランゲージ・バリアなどのコンセプトを経験、学習する。現在はEF Education Firstにて外資系企業・日系企業に語学教育ソリューションを通じたグローバル化をサポートしている。


個人も法人も無料で受験できるテストで英語能力指数を判定

イー・エフ・エデュケーション・ファースト(EF)は114ヵ国に612のオフィス&スクールを有し、従業員数5万2000人の世界最大級の教育会社だ。語学教育、リーダーシップ教育のワンストップソリューションを実現し、取引先社数は2500社、受講者は数百万人を数える。最初にマルコン氏がEF SET(EF英語標準テスト)について解説した。

「世界中で現状把握のための英語能力テストEF SET(EF英語標準テスト)を提供し、2011年から英語能力をベースとした地域や国々のランキングを示す総合的なインデックスEF EPI(英語能力指数)を発表しています。EF SETは個人でも法人でも受けることができ、ハーバード大学の教育大学院やイタリア政府なども利用している無料の英語能力試験です。テストはパソコン、タブレット、携帯電話と各デバイスで受験できます。テスト結果はすぐに自分のメールアドレスに届き、法人での受験も結果がすぐに見られるため、すぐに分析を始めることができます」

EF SETの受験者は230万人。対象国と地域は100におよび、性別は男性41%、女性59%、受験者年齢は18歳以上だが、受験者の中央値年齢は23歳。フォーチュン500の企業で広く使われ、他にもハーバード大学や東京大学、リンクトイン、政府関係ではイタリアの文部科学省が中学生向けに活用している。

次に2019年のEPI国別ランキングを紹介した。

「1位オランダ、2位スウェーデン、3位ノルウェー、4位デンマークと10位までを見ると北欧の国が目立ちます。日本は53位で、昨年は49位でした。EPIのレベルでみると日本は5段階の上から4番目のLowになります。能力定義は『観光客として英語を話す国および地域を旅することができる』『同僚とちょっとした会話ができる』『同僚からの簡単なメールを理解することができる』となっています」

次に世界の地域の平均スコアをみると、アジアは53.00。世界平均が53.13であり、ほぼ真ん中だ。アジア全体としては悪くないスコアといえる。次に全世界の年齢別スコアをみると18~20歳は52.99、21~25歳は53.08とほぼ変わりがない。

「高校に入ってから大学卒業まで、スコアは同じくらいです。社会人になって26~30歳では54.36と、少し伸びます。しかし31~40歳になると、52.45までダウンしてしまう。リーダーへと向かう段階でありながら、スコアが落ちることには問題があります」

講演写真

次にマルコン氏は、アジアの詳細について解説した。国別ランキングでは5位シンガポール、20位フィリピン、26位マレーシア、33位香港と続く。昨年と比べてスコアが伸びている国の上位をみると、上から台湾、ミャンマー、アフガニスタン、中国。日本は少し下がっている。次に日本の詳細に目を移すと、日本国内の地域スコア比較では概して都市部のほうが高くなっている。アジアと比較しても、都市部ではあまり差はない。

「日本の性別スコアをみると、男性51.30、女性51.78と女性がやや高い。世界平均は男性53.03、女性53.23であり、男女の差は同じ程度です。トレンドとしてはこの男女差が徐々に埋まりつつあります。年齢別スコアでみると、日本は18~20歳53.00、21~25歳52.45とここで少し下がり、26~30歳53.22で戻すものの、次の31~40歳49.48では大きく下げています。31~40歳で下がる現象は世界的にも多く見られ、これを私たちはリーダーシップギャップと呼んでいます」

英語能力が高いほど、イノベーティブで生産性も高い

ここでマルコン氏は、英語能力と仕事との関係について紹介した。英語能力とグローバル人材の採用・育成・保持の側面における力の関係をみると、トレンドとしては英語能力が高いほどグローバル人材における力も高くなっている。次は英語と研究力。こちらも英語能力が高いほど、イノベーションにつながる力である研究力が高くなっている。英語と生産性の関係では、1時間当たりの生産性は英語能力に比例して高くなっていた。

「英語とGood Country Index(地球ならびに人類に対する貢献度の高さ)をみると、こちらも英語能力に比例。英語と男女共同参画も、英語能力とほぼ比例しています。また、英語能力が高いほど、情報収集能力=コネクション力も高くなっています。世界で書かれるレポートの多くは英語であることも、その一因です。個人で英語能力が高いとどんなメリットがあるかをみると、やはり収入が高くなっています。世界中どこも同じです。英語ができれば、グローバルの大手企業に入りやすくなるなど採用面でも有利です」

次に13~22歳、中学生、高校生、大学生のスコアを紹介した。世界の地域別にみると13歳時はどこもほぼ同レベルであり、小学校教育のレベルはほぼ同じことがうかがえる。しかし、年齢が上がるにつれて差が生まれる。もっとも伸びていないのはアジアだ。

「年齢(14~22歳)とリスニングとリーディングのスコアの関係を見てみると、リーディングのほうがスコアは低くなっています。22歳で社会人になるとより低くなってしまうので、企業はリーディングをしっかり学ばせる必要があります」

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最後に、企業関連のスコアが紹介された。業界別のスコア比較をみると、上位は医薬、金融、IT業界。もっとも低いのは政治、教育業界。人が学ぶ教育業界が低いという意外な結果が出ている。次に職種別のスコアをみると、高いのは法律関係、ファイナンス、R&D、マーケティング、IT。逆に流通、管理および事務は低くなっている。

「役職別でスコアをみると、世界中どこでもスタッフ、役員よりもマネジャーのスコアが高くなっています。スタッフからマネジャーになるときは、『見えない障害=グラスシーリング』を超える必要がありますし、マネジャーはグローバルに現場をまとめる必要があり、高い英語能力が必要になります。その先、役員となると英語能力よりも他のスキルが求められるようになります」

英語能力ビッグデータから見えた、日本の次世代リーダーの要件

ここでマルコン氏は参加者に、「日本人の異文化コミュニケ―ションについて考えるゲームをしましょう」と語りかけた。「次の項目について、日本はどちらに当てはまるかを考えてみてください」。ハイコンテキストとはコンテキストの共有性が高い文化のことで、伝える努力やスキルがなくても、互いに相手の意図を察し合える文化。逆にローコンテキストは、あくまでも言語でコミュニケーションを取ろうとする文化のことだ。

コミュニケーション(ローコンテキストか、ハイコンテキストか)、評価(直接的か、間接的か)、リーダーシップ(平等主義か、階層主義か)、意思決定(合意的か、トップダウンか)、信頼(タスクベースか、人間関係ベースか)、不同意(直面か、直面を防ぐか)、スケジュール化(線状か、柔軟か)

「The Culture Map(Meyer, 2014)によれば、日本は、コミュニケーションはハイコンテキスト、評価は間接的、リーダーシップは階層主義、意思決定は合意的、信頼は人間関係ベース、不同意は直面を防ぐ、スケジュール化は線状、という結果になっています。他の国をみるとスウェーデンは日本のほぼ真逆、イギリスは中間的で、中国は日本に近い。では、この4ヵ国の人が一つのチームのメンバーだったらどうなるでしょうか。とりあえず伝わる言語がないと何もできないので、英語能力は必須。しかし言語だけではなく、相手の文化を知ることが重要なことがわかります。相手は何を評価するのか、どんなことに怒るのかを知っておかなければなりません」

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最後にマルコン氏は、英語能力から見た日本の次世代リーダー、そして企業が取り組むべき英語教育について指摘した。まずは英語能力ビッグデータに基づいて考えた、2020年の日本の次世代リーダーの要件だ。

「次世代リーダーは女性である確率が高く、若い。企業では26歳ごろからの育成が求められます。英語能力の育成は公的機関からの教育が足りないため、企業による投資が不可決。そして、マーケットが既にグローバルであるため、異文化を正確に理解している必要があります。次世代リーダーは現在、一般スタッフ層にいるため、今のうちからスタッフ教育を行う必要がある。そして、そのリーダーは自分のスキルに合う収入を欲しがるでしょう」

次に2020年の日本の次世代リーダーに対して、英語能力を育成するメリットは何かを語った。メリットは四つ。一つ目は、異文化の知識を持つことで、交渉力や生産性が上がる。二つ目は、マネジャーになった際に採用時の企業イメージが向上すること。異文化への理解があるイメージはこれから重要だ。三つ目は、赴任がしやすいこと。これで企業のノウハウが広がる。四つ目は、好奇心があること。海外にある情報を収集しようするため、それがイノベーションに繋がる。

最後にマルコン氏は、従業員に英語能力を獲得させるために、企業が行うべき五つの推奨行動について語った。

「一つ目は、現在のレベルから目標レベルまでのギャップを埋めるために必要な学習時間に基づき、現実的なゴールを設定すること。二つ目は、英語の重大な弱点を識別するために全従業員にテスト受けてもらうこと。必要な人材がどこにいるのかがわかります。三つ目は、職種別の英語コースで研修させること。普段が忙しい営業はオンラインで、社内にいる事務職は集合研修と変えることも可能です。四つ目は、役職ごとに最低基準をつくり、基準が守られているかどうかを確認すること。定期的に必要な行動ができているかをチェックします。例えば『ミーティングで自分の意見が英語で言えているか』『プレゼンテーションをリードできているか』『交渉を任せられるのか』などです。最後の五つ目は、受講者を応援するためには、役員やマネジャーが部下に背中を見せて、これまでの経験などを共有していくこと。自らも研修などに参加して、学びへのモチベーションを見せることが英語教育では大事です」

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