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過労死白書

『過労死白書』とは、『過労死等防止対策白書』の略称で、日本における過労死の実態や防止対策の実施状況などに関する報告書として、国会に提出される法定白書のことです。2014年に施行された過労死等防止対策推進法で毎年作成するよう定められ、厚生労働省が初めてまとめた平成28年版過労死白書が16年10月、閣議決定されました。“過労死ライン”とされる月80時間の残業時間を超えた正社員がいる企業は全体の2割以上、正社員の4割近くが高いストレスを抱えて働いているなどの実態を示した上で、職場環境の改善や働き方の見直しなどを訴える内容となっています。

ケーススタディ

5社に1社が“過労死ライン”を超える残業
初の「白書」から見える過重労働の現実とは

働き方改革を進める政府は今年10月7日、過労死等防止対策推進法に基づく『平成28年版過労死等防止対策白書』、いわゆる『過労死白書』を閣議決定しました。今回が初めての国会報告となる白書は、全280ページ。過労死や過労自殺をめぐる現状や防止策、残業が発生する理由などが解説されているほか、過労死が1980年代後半から社会問題に発展し、91年に結成された「全国過労死を考える家族の会」の活動が同法の制定につながった経緯などについても紹介されています。

同白書によると、2015年度に過労死で労災認定された人は96人。未遂を含む過労自殺では93人が労災認定されています。02年度には160人にのぼった過労死による労災認定件数は14年ぶりに100人を割ったものの、過労死・過労自殺をあわせた認定件数は近年、200件前後で高止まりしています。最近では、大手広告代理店勤務の女性新入社員の過労自殺が労災認定された問題で、社会に衝撃が走り、あらためて議論が巻き起こっています。

長時間にわたる過重な労働が心身に疲労の蓄積をもたらし、過労死の最も重大な要因となることは論をまちません。わが国の労働者一人当たりの年間総実労働時間はゆるやかに減少していますが、白書によると、これはパートタイム労働者の割合の増加によるものであり、パートタイマーを除く一般労働者の年間総実労働時間は2000 時間前後で高止まりしているのが実情です。

今回の白書には、厚労省が15年12月から今年1月までの間に、企業約1万社(回答は1743社)と労働者約2万人(同約19000人)を対象に実施した調査の結果も盛り込まれました。それによると、「過労死ライン」の月80時間を超えて残業をしている正社員がいる企業の割合は22・7%で、業種別にみると、「情報通信業」「学術研究、専門・技術サービス業」では4割を超えています。一方、労働者への調査では、正社員の36.9%が高いストレスを抱えていることが分かりました。業種では、「医療・福祉」(41.6%)や「サービス業」(39.8%)の割合が高くなっています。正社員で、自身の疲労の蓄積度について、「高い」「非常に高い」と答えた人は32.8%。睡眠時間も、45.6%が「足りていない」「どちらかといえば足りていない」と答えており、その理由(複数回答)として最も多く挙げられたのは「残業時間が長いため」(36.1%)でした。

過労死の実態解明には、「労働時間や職場環境だけでなく、商取引上の慣行等の業界を取り巻く環境や生活時間等の労働者側の状況などといった、多岐にわたる要因およびそれらの関連性を分析していくことが必要」(同白書)との観点から、厚労省では、約2万人の労働者を10年間追跡する大規模調査や、長時間労働と健康に関する研究を推進する方針です。

企画・編集:『日本の人事部』編集部