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【ヨミ】インポスターショウコウグン

インポスター症候群

「インポスター症候群」(シンドローム)とは、何かを達成しても成功を自分の力によるものだとは考えられず、ただ運がよかっただけだと思い込んでしまう、自己評価が異常に低い心理状態のことです。インポスターとは詐欺師の意で、「詐欺師症候群」とも呼ばれます。仕事や社会で経験、実績を重ねてきたにもかかわらず、自分に自信を持つどころか、自分のキャリアは偽りで周囲を欺いているだけだと後ろめたく感じたり、いつか自分が“詐欺師”であることを知られるのではないかといった不安にさいなまれたりするのが、インポスター症候群の特徴です。こうした傾向は有名人や高いキャリアの人に多く、一般に男性より女性のほうが陥りやすいといわれています。
 

ケーススタディ

偽りのキャリア!? あの著名人も苦しんだ
女性活躍推進ブームの裏側で広がる自己不信

人は何かを成し遂げ、成功体験を積み重ねるほど、自信を深めていくものです。しかし一方で、高いキャリアを築きながら、それでも自分を信じられない状態に陥る人も珍しくありません。過去の成功も実績も、自分の力によるものではない。単なる偶然の産物か、あるいは周囲のおぜん立てがあったからできたことで、自分のキャリアは偽物にすぎない――そうした気分に落ち込んでしまうのが、「インポスター症候群」とよばれる心理傾向です。

この問題が注目されるようになったのは、米フェイスブックのCOOであるシェリル・サンドバーグ氏が著書『LEAN-IN (リーン・イン)』で、自らインポスター症候群に悩まされていたことを告白したのがきっかけでした。同氏は次のように記しています。

〈私と同じ事を感じている人はたくさんいたのである。教室で指されて答えるたびに変な事を言ってしまったと感じる。試験を受けるたびに、失敗したと思う。何とか切り抜けた時でも、それどころか見事にやってのけた時でも、今度はみんなを騙しているだけだと後ろめたく思う。いつか自分の貧弱な中身が全部ばれる日が来るのだ、と〉

〈女性の場合、この症状は男性より重くなりやすい。もともと日頃から自分を過小評価する癖が付いているからだ。さまざまな職業について実施された多数の調査の結果、女性は自分の仕事の成果を実際より低く見積もる傾向があるのに対し、男性は高く見積もる傾向があることが判明している〉

翻って日本ではいま、女性活躍推進の機運がにわかに盛り上がり、企業でも経団連役員企業47社の約6割が女性管理職増加の数値目標を掲げるなど、取り組みを本格化させています。しかし現時点で管理職昇進の“適齢期”にあたる女性人材は、もともと各企業に多く残ってはいません。その年代は新卒の採用数が少なかった上に、出産・育児で離職する、いわゆる「M字カーブ」の谷間の世代。女性管理職を増やしたくても、選抜の対象となる母集団は限られているのが実態です。クオーター制やスポンサーシップ制度など“女性優遇”と批判されかねない施策を導入する企業が目立つのも、昇進に値する人材のパイが少ないことと無関係ではないでしょう。

そうした環境下で、会社がやみくもに昇進を後押しすれば、当の女性社員たちは「女性活躍推進のブームに乗っているだけで自分の実力ではない」とかえって自己不信に陥り、キャリアへの意欲そのものまで失いかねないという意見もあります。貴重な女性人財を「インポスター症候群」から守るためには、本人が正しい自己評価を下せるように、なぜ昇進を期待するのか、その合理的な根拠を明確にすることが大切でしょう。

企画・編集:『日本の人事部』編集部