健康経営 powered by「日本の人事部」 人生100年時代の働き方を考える

印刷する印刷する 

【ヨミ】ブラックバイト

ブラックバイト

ケーススタディ

違法なノルマや過密シフトで学業に支障
「辞めたくても辞められない」学生の窮状

景気回復で人手不足や人件費の高騰が深刻化する中、現場を支える戦力として重要性を高めているのが学生アルバイトです。企業がいかにアルバイトへの依存を強めているか――牛丼チェーン「すき家」が経費削減のために、バイト一人に店舗業務をすべて任せる通称“ワンオペ”(ワンオペレーションの略)を常態化させていた問題は、その典型例といっていいでしょう。

中京大学の大内裕和教授が、同大の学生約260人に対して、アルバイトに関するアンケート調査を実施したところ、全体の約6割が「販売ノルマを達成できないと商品の買い取りを強要された」「働く曜日と時間を変えてもらえず試験を欠席した」など、労働法に抵触するおそれのある働かされ方や学業に支障が出る労働環境を経験していました。こうした過酷なアルバイトのあり方を、大内教授は「ブラックバイト」と名付けました。

労働問題に詳しい井上幸夫弁護士(第二東京弁護士会)によると、典型的なブラックバイトの特徴は次の4点です。(1)労働時間に見合った給料を支払わない(2)仕事のミスに罰金(賃金カット)を科す(3)上司が大声で怒鳴ったり暴力を振るったりする(4)当初の契約に反して学業に支障が出るような働かせ方やシフトを命じ、長時間働かせる――(1)~(4)はいずれも違法であり、一つでもあてはまればブラックバイトだと考えていいと、井上弁護士はいいます。事業者としては逆に、現場のこうした違法行為からブラックバイトと名指しされると、企業イメージが大きく傷つきかねません。

ブラックバイトが横行する背景として、一つには企業が経費削減のために非正規雇用の比率を高め、従来なら正社員が担っていた負担の大きい業務まで、アルバイトに肩代わりさせるようになったという変化があるでしょう。もう一つ、学生側にも事情はあります。20年前には大学生一人につき10万2240円だった仕送りの額は、その後の不景気で7万円前後にまで落ち込み、現在もほぼ変わっていません。親の収入減や学費高騰の影響などもあり、学生の五人に一人が生活費のために何らかのアルバイトをしている状況です。しかも学生以外のフリーターも増えているため、アルバイトとはいえ、一つの職をめぐる競争が激化。「ここは嫌だから」といって、すぐに次のバイト先が見つかるわけでもありません。学生たちにとっては、たとえブラックバイトであっても、“辞めたいけれど辞められない”のが実情のようです。

企画・編集:『日本の人事部』編集部