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【ヨミ】カロウシボウシキホンホウ

過労死防止基本法

ケーススタディ

KAROSHIが社会問題化して四半世紀
「国の責任」で効果的な対策の推進を

過労死の問題に詳しい関西大学の森岡孝二教授によれば、働きすぎに起因する過労死という言葉が広く使われるようになったのは1988年から。日本の状況が欧米に伝わり、海外でも「KAROSHI」で通じるほど大きな社会問題となって四半世紀が経つというのに、過労死はいまだ後を絶ちません。過労による精神疾患や若者の過労自殺が増加するなど、事態はむしろ深刻化しています。

厚生労働省の調べによると、2012年度に長時間労働などで脳・心臓疾患を発症し、労災認定を受けた人のうち、死亡者は123人。うつ病などの精神障害で労災認定された人のうち、自殺者(未遂を含む)は過去最多の93人にのぼりました。

労働者が会社に、労働条件や職場環境の改善を申し出るのは容易ではありません。また個々の事業者も、企業間競争が激化するなか、自社だけを改善するのは難しいと二の足を踏みがち。国が主体となって総合的な対策を講じなければ、過労死や過労自殺の広がりに歯止めをかけることはできない――かねて「過労死防止法」制定の必要性が叫ばれていたゆえんです。

2011年11月には、過労死遺族や支援する弁護士らの呼びかけで過労死防止基本法制定実行委員会(略称:「ストップ!過労死」実行委員会)が結成。法律の制定を求める100万人署名の運動が展開され、政治を動かすきっかけとなりました。13年6月には超党派の議員連盟が発足し、同年12月に野党共同提案の形で法案を提出。与党・自民党の修正を経て、現在開会中の通常国会で成立する見通しです。

同法の最大のポイントは、過労死の防止対策を効果的に進める責任が国にあることを、初めて明記した点にあります。国が取るべき対策としては、過労死の調査研究や国民への啓発、相談体制の整備、過労死問題に取り組む民間団体への支援などが盛り込まれ、調査研究や取り組みの結果を毎年、報告書(白書)にまとめることも義務付けました。また、労働者や経営者の代表、専門家、過労死遺族から成る「過労死等防止対策推進協議会」を厚労省に設置。法案成立を受けて、具体的な防止策を盛り込んだ過労死防止大綱の検討を進める運びとなっています。

企画・編集:『日本の人事部』編集部