【ヨミ】シンリテキイバショカン
心理的居場所感
「心理的居場所感」とは、心理学の用語で、心のよりどころとなる関係性や安心感がある環境下での感情のこと。自分らしくいられる、役に立っている、受け入れられていると感じる状態を指します。心理的居場所感のある職場においては、知識の獲得や知見の共有が活発になることがわかっています。職場をはじめ、児童期や青年期における居場所といった年代別の研究や、被災地における居場所といった環境にひもづく研究なども行われています。
組織コミットメントの向上に必要な
「居場所感」の三つの要素とは
職場において「居場所がある」と感じられるのは、どのようなときでしょうか。自分の努力が認められて評価されたとき、同僚と冗談を言い合っているとき、それとも上司が悩みを親身に聞いてくれたときでしょうか。
2016年に発表された論文「企業で働く人の職業生活における心理的居場所感に関する研究」によると、職場の居場所感には三つの要素があるといいます。一つ目は「役割感」。誰かの役に立っていると感じたり、人から頼りにされていると感じたりすることです。二つ目は「安心感」。居心地の良さを感じること、自分はここに居ていいのだと感じることなどが該当します。三つ目は「本来感」。これが自分だと実感できること、ありのままの自分でいいのだと感じられることを指します。
職場に居場所があると感じられることは、組織への積極的な関わりを引き出し、組織コミットメント(組織への帰属意識や組織との心理的距離)を高めます。一方、居心地の良い状態は「転職するより在籍し続けたほうが楽だ」という消極的な関わりを引き出す可能性もあります。
組織に対するポジティブな行動につながるものを「内在化コミットメント」、コスト意識から在籍を続けることを「存続的コミットメント」といいます。先に挙げた三つの要素は全て「内在化コミットメント」を強めますが、「役割感」は「内在化コミットメント」と「存続的コミットメント」の双方を強める役割を果たします。
離職率は人事として気にしなければならない指標の一つですが、「役割感」のみに基づいた居場所感で従業員が自社に定着している場合、必ずしも組織にプラスに働くとは限りません。組織へのポジティブな関わりをしてもらうためには、「役割感」だけでなく「安心感」や「本来感」を実感してもらえるコミュニケーションも必要になるでしょう。
・関連キーワード
組織コミットメント
・参考
企業で働く人の職業生活における心理的居場所感に関する研究(産業・組織心理学研究 30 巻 (2016-2017) 1 号)