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従業員は事業を動かすプロフェッショナル
ヤフーが進めるコンディショニング発想の健康経営

湯川高康さん(ヤフー株式会社 執行役員 ピープル・デベロップメント統括本部長 CCO)
市川久浩さん(ヤフー株式会社 グッドコンディション推進室長)

関連キーワード  健康経営 ヤフー プレゼンティーズム

健康経営は本来、病気の手前にある“何となく”の不調である、プレゼンティーイズムに目を向けるのがあるべき姿です。IT企業大手のヤフーはプレゼンティーイズム対策に乗り出すべく、「コンディション」をキーワードにさまざまな角度から健康経営の方向性や枠組みを構築していきました。執行役員でCCO(Chief Condition Officer)を務める湯川高康さんと、施策を取りまとめるグッドコンディション推進室長の市川久浩さんに、健康経営に対する考え方や施策の方針をうかがいました。

プロフィール
湯川高康さん
湯川高康さん
ヤフー株式会社 執行役員 ピープル・デベロップメント統括本部長 CCO

2003年、ヤフー株式会社入社。採用、労務、給与厚生リーダーを担当。2012年、経営体制変更時に評価と報酬制度を刷新。2014年、ピープル・デベロップメント戦略本部長に就任。2018年、執行役員 コーポレートグループ ピープル・デベロップメント統括本部長に就任。2019年4月より現職。オフィスや健康管理を含む人事全般を統括。

市川久浩さん
市川久浩さん
ヤフー株式会社 グッドコンディション推進室長

2004年、ヤフー株式会社入社。カスタマーサポート部門の子会社取締役、CS本部 本部長、ヤフー子会社の株式会社IDCフロンティア 経営戦略本部 本部長などを経て、2017年10月より現職。

社員のパフォーマンス最大化を目指した施策づくり

ヤフーでは「UPDATE コンディション」というコンセプトのもと、健康経営に取り組んでいますね。

市川:従業員の健康施策は初代社長のころより、安心・安全を提供する福利厚生の一環で行われてきました。私のいるグッドコンディション推進室の前身は、2005年に開設された健康推進センターです。その後、2012年に2代目社長に就任した宮坂学(現・東京都副知事)は、プロのビジネスパーソンとしての体調管理の重要性を訴えるようになります。

大きな転機は、2016年の本社移転です。新オフィスのコンセプトを打ち出した際、オープンコラボレーションやハッカブルなどと一緒に「グッドコンディション」がキーワードとなりました。また、当時は日本でのサービス開始から20周年を迎え、次の20年に向けた新ビジョン「UPDATE JAPAN」を掲げたタイミングと重なります。そこから「UPDATE コンディション」という形で本格的な健康経営がスタートしました。

当時の社長である宮坂が出した「UPDATEコンディション宣言」を、現CEOの川邊(健太郎氏)が受け継いで宣言。湯川がCCOを担当し、健康経営を推進しています。湯川は人事部門の統括と、ヤフーグループの健康保険組合(YG健保)理事長も兼任しています。

「コンディション」にはどのような意図が込められているのですか。

湯川:プロのアスリートは試合本番に照準を合わせて、いろいろと準備します。トレーニングに始まって、作戦を練ったり道具を手入れしたりします。そして何より大切にしているのが、体調管理です。試合のその瞬間に全力を発揮できるよう、多くは専門家の力を借りてコンディションづくりに臨みます。

湯川高康さん(ヤフー株式会社 執行役員 ピープル・デベロップメント統括本部長 CCO)

コンディションは、私たちビジネスパーソンにとっても重要です。どんなに経験豊富で高いスキルを持っていたとしても、コンディションが悪ければ十分に力を発揮できません。私たちも事業を通じてお金をいただいている以上、プロに変わりはありません。働いている時間を試合に置き換えれば、そこでのパフォーマンスを最大化することに、もっと目を向けてもいいのではないかと考えました。

アスリートの世界なら、チーム専属でコンディションをサポートするスタッフがいます。それと同じで、従業員たちのコンディションづくりを会社がバックアップしようというのが、私たちの試みです。

市川:サッカーチームに例えれば、ゲーム開始前、ピッチに立つまでの体調を整えるサポートを会社が担い、ゲームでベストパフォーマンスを出すための準備を自ら行い、試合で結果を出すことは、社員やマネジメントが担うといった役割分担ができればと考えています。

コンディション管理は自己責任の範囲と考えている会社がほとんどです。

湯川:当社は福利厚生も、従業員が会社で力を発揮してもらうためのものと捉えて施策を設計しています。健康経営を始める前から、ヘルスキーパーによるマッサージをワンコインで受けられる施策を設けていました。エンジニアなどは一日中パソコンに向かうことが多く、眼精疲労や肩こり、腰痛に悩まされる従業員が多かったからです。

あくまでも、パフォーマンスの発揮に合わせた施策設計が大事です。この軸がぶれると、「なぜこの施策が?」と経営にも従業員にも思われてしまう。資源は有限ですから、意志を持った投資をしています。コンディションは“病気にならない”だけではありません。プレゼンティーイズムの解消に加え、快適な状態になることも重要です。会社に出社すればいいのではなく、出社時にいかにいい仕事をしてもらうか。そのために必要な投資は行う、という考えです。

コンディションマネジメントの発想を従業員に浸透させるには、何がカギとなりますか。

湯川:やはり、トップのコミットメントが大きいですね。社内外に向けて、CEO自らが健康宣言を発信することです。それも流行しているから行うのではなく、従業員のコンディションが組織の成長に左右するから取り組んでいるという本気度を、言語化するのがポイントです。

そうでないと、現場はやらされ感でいっぱいになるでしょう。「どうせ健康経営銘柄を取りたいだけだろう」と思われるようではいけません。私もCCOを拝命している中で、コミットは大きな責任だと感じています。

コンディションの2軸――未来のリスク低減と現在の成果向上

コンディションマネジメントの方針を教えてください。

市川:まず、私たちは「心身の状態=コンディション」と呼んでいます。コンディションは、三つのステージに分けられます。一つは病気やケガや痛みがあって、マイナスの状態をゼロにする段階。次に、病気やケガを防ぐ、予防や再発防止の段階。そして予防のさらに上、活力と元気と集中力に満ちて快調な理想の段階です。これをメンタルとフィジカルの二つの側面で見ることができます。

図:Yahooが実施するコンディションステージ

(提供:ヤフー株式会社)

そして、コンディションの理想と現状のギャップを埋める行為を「コンディショニング」と定義しています。ヤフーは設立から20年以上経ち、従業員数は6000人を超えました。IT企業の中では老舗の部類に入り、平均年齢も少しずつ上がっています。それに伴って健康課題にも変化が生じています。さらには会社の事業戦略も刻々と変わっており、あらゆる条件に対応できるコンディショニングが大事だと考えています。

そこで、コンディションマネジメントの定義を、二つに分けました。一つは、健康リスクを減らすためのものです。「予防、再発防止」に対応するものですね。将来さらに平均年齢が上がることを考えると、今のうちから生活習慣病予防に取り組むなど、未来を考えた施策が必要だと考えたのです。もう一つは、今の成果を上げるために、「病気、痛み」を改善し、「活力、元気、集中力」を高めるためのコンディショニングです。

マイナスの人は現時点で体に問題があるわけですから、早急な対応が必要です。健康診断後の精密検査の受診勧奨や健康指導などのフォローを会社として行います。一方、疾病予防やプレゼンティーイズムの解消は、本人の意思と主体性が大事になってきます。

コンディションの把握から対応までの流れはどうなっていますか。

市川:コンディショニング・マネジメントサイクルという概念を取り入れています。最初のステップは「測定」です。健診や日々の活動量など、自身の状態を目に見える形にします。次が「理解と気づき」。測定結果から健康課題を抽出するプロセスです。その次は「環境」で、やることに応じて、取り組みやすい状況をつくることがカギになります。最後は「実行」で、専門家の指導やアドバイスなど、サポートがあることで取り組みの効果が期待できます。

自分の体の状態を測る体組成計測定会
(提供:ヤフー株式会社)

実行の後にまた測定して、コンディションの変化や新たな健康課題を理解する。これを繰り返していくことで、コンディションを向上させようというサイクルです。会社はそれぞれのステップにおいて、必要な機会やサポートを提供します。特に私たちが注力するのは、健康リテラシーの向上と自覚です。健診結果が悪いと自分にどのような不利益が起こるのか、逆に健康的だとどんな恩恵を受けるのか。正しい情報の提供と同時に、「頭ではわかる」という段階から行動につなげるだけの動機づけがポイントになります。

グッドコンディション推進室が主体となって推進しているのですか。

市川:そうです。グッドコンディション推進室には六つの機能があり、医療サポートからコンディショニングの企画、東京本社のレストラン「BASE」とカフェ「CAMP」の運営なども手掛けています。また、本社内のビルで健診クリニックを運営するジョイントベンチャーや、YG健保とも連携しています。

YG健保は2018年4月に設立しましたが、自社で健保を運営することで、従業員の健康にまつわる統計データがより詳細に取れるようになりました。現時点では、年に一度の健診結果が中心です。例えば健診時の問診票から、健康への関心度を五つのレベルに分けたところ、従業員の4割が健康や生活改善に興味のある「関心期」に当てはまりました。健康活動をしようとしている「準備期」と合わせ、実際に生活改善を試みている「実行期」への変化を促すことが、私たちの役割と言えます。

やらされ感を生む管理から、社員のプロ意識を高める施策へ

現在は、どのような施策に取り組んでいますか。

市川:コンディショニングは食事、運動などの身体活動、休息の3軸のバランスが大切です。健康課題は一人ひとり異なります。生活習慣病対策にメンタルケア、禁煙対策、女性のための健康支援など、いろいろな選択肢を用意する必要があるので、医療職による直接的なサポートのほか、セミナーやイベントを開催するなど啓発活動を行っています。そして、オフィス環境の整備ですね。休養室やマッサージ室の設置、また東京本社に限られますが、レストランや仮眠スペースなどを設けています。

市川久浩さん(ヤフー株式会社 グッドコンディション推進室長)

情報発信はイントラネットが中心です。そこでイベントや制度の案内、コンディショニングに役立つ情報を発信しています。また、レストランもコンテンツであると同時に、社員向けメディアの一つと位置づけています。昼食だけで一日3000食出ますし、朝食は毎日1000食提供しています。従業員たちが日常的に利用しており、自然と健康情報に触れる場となっているんです。コンディショニングを意識するきっかけづくりにおいて、重要な拠点です。

確かに貴社はレストランの充実に力を入れている印象があります。

市川:食事は、コンディショニングの重要な要素ですからね。しかし新しいことばかりに取り組んでいるわけではありません。インフルエンザ予防接種の補助など、これまで取り組んできた施策も基本路線は踏襲し、一部は今のコンセプトに合うようにブラッシュアップしています。

がん治療と就労の両立支援も、その一つです。支援は以前から行っていましたが、相談窓口があることがあまり知られていませんでした。また、休暇のしくみが両立支援という視点で考えると不十分な部分もありました。そこで、休暇の仕組みを両立支援にも活用できるよう整えたり、主治医と産業医との連携強化も行なったりして、2017年に「がん治療と就労の両立支援」をあらためてパッケージ化しました。そのうえで、全従業員を対象にがん教育のeラーニングを実施し、社内の制度や相談窓口についてアナウンスしています。実際にがんに罹患(りかん)した社員の相談窓口の利用率は、ここ数年で上昇傾向にあります。

施策を選定するうえで、どのような点を重視していますか。

市川:前提となるのは、コンセプトであるUPDATEコンディションと、自社のカルチャーに合っていることです。推進室のメンバーは他社事例も立案時の参考にしていますが、そのまま取り入れることはありません。ヤフーらしさのひとつを挙げるならば、インセンティブに依存しすぎないようにしています。

理由は二つあって、一つはインセンティブがなくても行動し続けることが本質的だと考えているからです。期間限定で、前日の歩数によって社内カフェのドリンクを無料にするイベントを行なったところ、身体活動を始めるきっかけづくりとしては非常に有効でした。インセンティブの終了後に、きちんと習慣化できているようにしていきたいですね。

もう一つの理由は、インセンティブの費用を永続的に予算化できない可能性があるからです。限られた資源の配分を考えたとき、インセンティブ費用が予算化できなくなることもあります。そのような場合、その施策はできなくなってしまいます。そのため施策の自立は、重要なファクターだと考えています。社内レストランも会社が運営費を一部負担していますが、社員が支払う食費で運営していくことが重要です。

従業員の皆さんにとって、「コンディショニングの観点で望ましい」と自ら判断して行動を選択することを意識されているのですね。

市川久浩さん(ヤフー株式会社 グッドコンディション推進室長)

市川:そうですね。ですから従業員が「管理されている」と感じるようなことは、基本的にやらないようにしています。例えば、ゲートを通るときに体重を自動で計測するソリューションなど、技術自体は既にあるので、やろうと思えば実践し管理もできるかもしれません。しかし、会社が常に従業員のコンディションを事細かに把握しているというのは、従業員にとって心地があまり良くないと思います。お酒を飲んだ翌日は、二日酔いになることもありますよね。それが理由で本調子でないことは、本人が自覚して復調に向けた行動をとればよい話で、会社が管理することではないと考えています。

「健康経営」というと経営という言葉の響きのせいか、トップが主導して会社側が従業員に働きかけるものという印象を与えがちです。しかし、それでは十分でなくて、従業員もプロのビジネスパーソンとして、コンディショニングに対する高い意識を持っていてほしい。会社が用意する制度や環境を、自分からうまく活用するスタンスになることが理想だと考えています。

健診結果とレストランの人気メニュー集計から生まれた「揚げ物税」

データの活用にも取り組んでいるそうですね。

市川:レストランでのデータを2016年から収集しています。食器の裏にICチップが貼られていて、自分が食べたものの栄養素をツールで可視化できる仕組みを取り入れています。また食費は給与天引きを採用しており、社員証で決済すると同時に何を食べたかが記録される仕組みです。

レストランでのデータに加え、YG健保からの健診結果の統計も現在少しずつ利用しているところです。健保が契約しているアプリを、全社員に貸与しているiPhoneにダウンロードするようお願いしています。このアプリでは、自分の健診データや医療費データを確認したり、自分の活動量を見たり、日々の行動を記録したりすることができます。またグループ対抗の「ウォーキングラリー」のようなイベントも行う機能あり、10月に実施した際には、1200名以上、約570チームの参加がありました。健保立ち上げから2年目になり、やっとデータ活用の素地が整ったという段階ですね。

貴社のレストランというと、最近では「揚げ物税」「お魚還元」が話題になりました。

Yahooが取り組む「揚げ物税」「お魚還元」

市川:2019年の10月より、新たに導入した仕組みです。ランチメニューのうち、揚げ物料理の一部を100円値上げし、魚料理の価格を150円値下げしました。揚げ物料理の消費を減らして魚の消費を促すための試みです。この制度の導入に、健診データやレストランでのランチのデータが活用されています。

まず2017年度の健診結果のデータから、健康診断を受診した社員のうちLDL(悪玉)コレステロールに何らかの所見が認められた人の割合が高いことがわかりました。また、レストランでのランチの集計データを見ると、食事における脂質の割合が推奨値である25%を上回り30%を越えていました。

その背景を探ってきた結果、揚げ物料理が人気でよく出ていたことがわかりました。また、レストランのデータをさらに詳しく見ると、魚料理は今ひとつ人気がありませんでした。特に煮魚や焼き魚など油の使用を抑えた調理法の料理は、敬遠される傾向がありました。魚の中にはLDLコレステロールを下げる働きのある、EPAやDHAを多く含むものもあります。つまり全体の傾向として、揚げ物料理を食べる頻度を抑え、魚料理をもっと積極的に摂る必要があると判断し、「揚げ物税」と「お魚還元」を取り入れることになったのです。

実際に効果はあったのですか。

市川:始めて2ヵ月も経たないので、健康効果についてはまだ何ともいえません。けれどもレストランでのメニューの選択は、明らかに変化が起こっています。揚げ物料理の出る数は実施前の3分の1に減り、魚料理は3倍に増えました。同じ価格の揚げ物料理と魚料理を並べた場合、「揚げ物税」と「お魚還元」を換算すると差額は250円になりますから、インパクトはなかなか大きいですよね。

そのほかに、データを活用した施策はありますか。

湯川高康さん(ヤフー株式会社 執行役員 ピープル・デベロップメント統括本部長 CCO)市川久浩さん(ヤフー株式会社 グッドコンディション推進室長)

市川:直接的なコンディショニング施策ではありませんが、効果検証にデータを活用しています。その一つとして、イントラネット上の情報発信とレスポンスの関係を調査中です。従業員の関心を引き、きちんと届けるためには、どのようなタイミングでの告知や情報公開が効果的か、試行錯誤を続けています。WebはPV数やページ上でのリアクションが数値で出るので参考にしやすいですね。

従業員の健康を後押しする施策は、基本的に「良いもの」ばかりです。自社に限ったことではなく、どの企業の健康施策にもいえることです。特に私は今のポジションに就くまで全く異なる部署にいたせいか、なおさらそう思います。だからこそ、もっとたくさんの人に、コンディショニングにつながる情報や支援の制度があることを知ってほしいですし、それらの効果的な届け方を見出していきたいと考えています。

健康リテラシーを補い、働いていない時間も含めたサポート

これまでのお取り組みで、従業員のコンディションはどのように変化しましたか。

市川:正直なところ、やっと仕込みが一段落ついた段階で、検証はまだまだこれからです。いろいろな施策が並行して動いていますし、フィットする施策は社員それぞれで違います。また、施策が狙うターゲット層と実際の利用者にズレがないかなど、検討すべき余地はまだたくさんあります。

湯川高康さん(ヤフー株式会社 執行役員 ピープル・デベロップメント統括本部長 CCO)

湯川:経営視点で見れば、いつまでにどうコンディションを変化させるか、具体的な目標値を立てることは不可欠だと判断しています。投資に対してどのような結果を得られたのかがはっきりしない限り、さらなる投資は難しいからです。

市川:人の体はそう簡単に変わるものではありませんから。足の長い取り組みになるので、辛抱しながらになりますね。現状での数値管理は、健診結果が中心です。全社平均が全国平均に比べてよくないものを、いかに改善していくか。血中脂質の数値や肝機能の所見割合など、生活習慣病予備軍を減らしていくことを挙げています。これは最初のほうで説明した二つのコンディションの定義のうち、未来のリスクを減らすほうの指標になります。

一方、今の成果を上げるためのコンディションをどう定義するか、どう測っていくかはこれからの検討課題といえます。今のところは、アンケートのようなものに回答してもらう方法も一つのやり方だと考えています。本来はある瞬間をスナップショットで切り取るのでなく、客観的で恒常的な情報を取得することが必要だと思うので、なかなか難しいですね。施策も今のところ、未来のリスク軽減にあたるものが多くなりがちなので、もう少し今のパフォーマンスに目を向けたものを増やしていければと思います。

より長期で見て、取り組みたいことはありますか。

湯川:地域特性や職業特性へのアプローチですね。調査を通じて、生活習慣や健康課題の違いが如実に表れているのがわかりました。例えば東北地方にある事業所の従業員は、全国平均に比べると明らかに食塩摂取量が多く、運動不足の傾向があります。特に冬はその差が顕著です。古くから漬物など塩気の強い保存食を食べる習慣で有名ですが、実は即席麺を食べる頻度も他の地域よりも多いんです。お米やパンとほぼ並列で選択肢の一つになっているようです。また雪や寒さの影響で、車での通勤や移動がどうしても多くなるんですね。その習慣による影響が健診結果に反映されています。そうした地域性に対して、どのようにケアするかを考えていく必要があります。

市川:ヤフーの従業員のうち、約2割は東京以外の配属です。レストランを設けるなど本社と同じような施策を再現するのは難しく、制約があります。では何で補うかというと、やはり健康リテラシーがカギになると考えています。社員のコンディションが良いことは、会社のためでもあるけれど、一番は社員自身のためなんです。各地の課題に応じて、社員が取り組んでいこうと思えることを提供し続けたいです。

湯川:これからの時代、会社が従業員の過ごす時間を、働いていない時間も含めてサポートできるかが大事になってきます。「給料を払っているんだから、あとは勝手にやってくれ」と突き放すのではなく、ちょうどいい距離感を保ちながら寄り添うことでお互いの関係性が高まり、結果として従業員の高いパフォーマンスを引き出せるようにしていきたいですね。

(取材は2019年11月26日、東京・千代田区のヤフー本社にて)

(取材は2019年11月26日、東京・千代田区のヤフー本社にて)

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