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特別講演[4-a]

成果に直結する研修をどう企画設計するか?

井関 隆明氏
有限会社パフォーマンス・レバレッジ 代表取締役
田鍋 安弘氏(たなべ やすひろ)
プロフィール:(株)野村総合研究所、(株)エスプールの研修&コンサルティング事業の研究開発責任者を経て、2006年4月に(有)パフォーマンス・レバレッジを設立。成果や組織課題の解決に直結する研修&コンサルティングを提供。企業の人事研修担当者向けの情報交換&勉強会を企画開催し、5年間でのべ約1000人以上が参加。

なぜ成果に直結しない研修が行われるのか?

本講演では、まず「なぜ成果に直結しない研修が行われるのか?」について考えます。そして、それらを踏まえて、「成果に直結する研修を、どのように企画・設計すればいいのか?」について考えていきます。

田鍋 安弘氏/講演 photoさて、早速ですが、なぜ成果に直結しない研修が行われるのでしょうか? 弊社では、企業の人材開発担当者の方々との勉強会を行う中で、ある問いかけをしてきました。それは「人材開発担当者や経営者は意味のある研修を提供したいと思っている。また、研修参加者も意味のある時間を過ごしたいと思っている。しかし実際には、研修参加者は企業内研修に対してマイナスのイメージを持っていることが多い。それはなぜなのか?」というものです。

研修参加者は、研修に対して、「机上の空論。現実とは違う」「時間の無駄。戻って仕事がしたい」「話を延々と聴くだけで退屈」「講師の思想や経験の押し付け」というイメージを少なからず持っています。一方の人材開発担当者も、「研修参加者のやる気が見えない」「現場の協力が得られない」「経営層の協力が得られない」「研修の成果が見えない。持続しない」という不満を抱えています。参加者も担当者も研修を意味のある時間にしたいと思っているのに、それがうまくいっていないのです。

それでは、なぜ、このように、誰も喜ばない研修が実施されてしまうことになるのでしょうか? その原因の一つは、「目的成果が明確になっていない」ことです。研修の目的が曖昧で、現場の課題や実情を把握しないまま、研修を行っています。中には予算消化のためにやっているという企業もあります。事実に基づいた人材育成の具体的な方針や目標が社内にないことが問題です。

二つ目は、「目的成果が共有されていない」ことです。研修参加者と人材開発担当者のニーズが最初からずれていて、研修の必要性が研修参加者にきちんと伝わっていないことがあります。三つ目は「少ない時間と予算で過大な効果を期待している」ことです。弊社も、人材開発担当者から「スーパー管理職を2日間で作ってくれ」と時々依頼されることがあります(笑)。また、多くの経営層は人材育成が大事だとは言っていますが、その発言と裏腹に、人材開発の予算は縮小傾向にあります。

田鍋 安弘氏/講演 photo四つ目は「現場や経営層の協力が得られない」ことです。過去に自分が受けてきた古い研修のイメージから脱却できていないため「研修=役に立たない」と印象を持ち、研修を積極的に経営やマネジメントの手段として活用できていない経営層や管理職の方も多いようです。五つ目は「講師やプログラムに問題がある」ことです。例えば、ニーズにマッチするほど研修が練られていなかったり、研修が単発で終わることが多く繋がりがなかったりしています。また、社内で研修を内製化している場合に発生している問題としては、組織にとって必要なことではなく、自分達が教えられるものだけを教えていることがあります。

六つ目は「人材開発担当者自身の主体性が欠如している」ことです。研修内容を変えるのが面倒で、昨年度と同じ研修を単に行うだけになっていることがよくあります。七つ目は「人材開発担当者の力とスキルが不足している」ことです。研修を実施しても、その成果をほとんど測定できていません。何をもって研修の可否を判断するのか、その判断軸が設定共有できていないからです。

成果に直結できない原因の一つは、「古い人材開発観」

私は、これらの原因に加えて、人材開発担当者や企業が古い人材開発観のままで業務を行っていることが大きな問題だと感じています。昔と比べて、人材開発担当には、高い専門性が必要になっているのにもかかわらず、相変わらず担当者が3年周期で交代している企業もまだまだ多いのです。また、人材開発の計画については、本来、5~10年のスパンで検討すべきなのに、ほとんどの企業では、計画と予算を1年ごとに立てている状況です。

さらに、古い人材開発観により行われている伝統的な研修パターンにも問題があります。具体的には、3つの典型的なパターンがあります。一つ目は、「博打型」と私達が呼んでいるものです。何かよくわからないのだけれど、研修を行っていればいずれ成果があがるだろうという意識で研修が行われているケースです。外部の研修会社や講師を選ぶだけで、研修後に具体的にどんな成果を出したいのか?そのために、研修後に研修参加者にどう行動してほしいのか?が深く考えられていません。

二つ目は、「知識スキル中心型」です。知識やスキルを教えて、現場での活用は自分で考えてくださいといった研修構成になっています。短時間で多くの内容を教えることができるという利点がある一方で、研修成果という点で大きな問題があります。例えば、研修の中でコーチングスキルや権限委譲の重要性について教えたとしても、それらを実際に自分の仕事でどう実践していくのかという現実課題への適用部分の支援が弱いため、スキルが低い人ほど実践していないという本末転倒な状況が発生しています。具体的な実践が行われないので、当然、具体的な成果にもつながりません。

三つ目は、「個人開発型」です。個人の能力向上や行動変容が目的となっている個人開発型の研修は当然必要な研修です。サッカーにたとえると、パスやドリブルの能力を鍛えることにあたります。しかし、個人の力が上がったからといって、チームとしての連携がなければ、最終的なゴールには結びつきません。企業では、そういったチームや組織としての力を強化するための「組織開発型」の研修が行われていない場合がほとんどです。

このように、成果に直結しない研修が行われている背景には、さまざまな課題があります。それでは、そういった課題を乗り越えて、成果に直結する研修を企画・設計するためには、どうすればいいのでしょうか?

成果に直結する研修を、どのようにして企画・設計するのか?

研修を企画・設計する際には、(1)課題と現状レベルの詳細特定、(2)設計開発、(3)実証検証という三つのプロセスが必要です。これらを一つずつ見ていきましょう。

まず、「課題と現状レベルの詳細特定」ですが、まず、組織の課題が何なのか、どこをターゲットにするのかを特定する必要があります。考え方としては「処方する前に診断する」「症状ではなく、構造を捉える」の二つが重要です。症状や原因がわかっていないのに、研修という処方を進めることはできません。構造を捉えていない対処は、そもそも的外れで、根本解決にはならない場合が多く、いずれ元に戻ってしまいます。ヒアリングなどを通じて、本当に自組織の課題にマッチしているのかどうかを見極める必要があります。

しかし、企業も1000人を超えてくると、具体的に課題を捉えるのが難しくなります。この場合は、「研修の汎用性」と「成果の具体性」のバランスをとってください。どちらか一方を上げると、もう一方は下がります。研修を企画する際には、今回はどういうバランスに設定するのかを、意識するようにしてください。

次に、「設計開発」ですが、大前提にある考え方は「そもそもの成果を指標化する」「成果を変えるために行動を変える」「変化の階段を設計する」の三つです。大変難しいことですが、どういう行動が成果へと繋がっていくのかを、設計しなければいけません。

「実施検証」は、最も重要です。大前提にある考え方は、「実践できた原因と実践できなかった原因を分析する」「行動の阻害要因を取り除き行動の促進要因を増やす」の二つです。研修が終わったら、受講者の中で実践できた人とできなかった人を分析し、一体何が違いを生み出したのかについて検証し、それを今後の人材開発につなげていく必要があります。そうしなければ、いつまで経っても進歩せず、同じ失敗を繰り返してしまうことになります。

最後になりますが、この講演での学びを活かすという視点で、皆さんに三つお願いしたいことがあります。一つ目は、これまでに実施した研修の事後結果を追いかけること。この結果を今後の研修に活かすだけで、かなり改善できると思います。二つ目は、今後行う研修や今まで行ってきた研修の企画・設計を、今日学んだ視点から見直すこと。三つ目は、人材開発部門とその担当者の業務そのものを見直すこと。多くの組織では、人材開発や研修に対する自分達の考え方ややり方が、既に古くなっていることにさえ気づいていません。弊社では人事研修担当者の情報交換&勉強会も開催していますので、そこに参加されて他社との違いを把握されることをお薦めしています。また、何かございましたら、ご相談いただければと思っています。本日はありがとうございました。

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