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【ヨミ】ソーシャルジェットラグ シャカイテキジサボケ

ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ぼけ)

「ソーシャル・ジェットラグ(Social Jet Lag)」とは、平日と休日との就寝・起床の生活リズムのズレを指します。日本語では「社会的時差ぼけ」などと訳され、ドイツの時間生物学者であるティル・ローエンバーグ氏により、2006年に提唱された概念です。睡眠習慣は、平日は仕事や学校などの社会的制約がある環境下にありますが、休日はその制約がないため、生物時計に沿うことになります。このズレが大きいほど体内リズムは乱れやすくなり、睡眠に起因するさまざまな問題を引き起こす要因となります。

ケーススタディ

在宅勤務とオフィス出社の使い分けも
ソーシャル・ジェットラグを引き起こす?

平日は「寝る間も惜しんで」働き、休日に「寝だめ」をする。社会人にはよくあるライフスタイルですが、休日の寝だめは不調や病気のもとといわれています。体内時計がずれることで時差ぼけ状態になり、より疲れを感じるようになるからです。夜型の生活を送ることで、日光を十分に浴びないことによるうつ病のリスクや、ホルモンの乱れによるがんのリスクが高まることも指摘されています。

平日と休日の生活習慣の差もさることながら、在宅勤務とオフィス出社の使い分けも、睡眠習慣の乱れにつながる恐れがあります。新型コロナウイルス感染症の流行によって、2020年から在宅勤務によるテレワークを導入する企業が増加しました。しかし、完全リモートとする企業がわずかで、多くの場合は「必要に応じて出社」という形をとっています。

在宅勤務は通勤の必要がないぶん、それまで通勤時間とその準備にかけていた時間を睡眠に充てることができます。しかし、オフィスに出社する日は以前と同じ時間に起き、衣服を整え、朝食を食べ、電車や車などを利用して職場に向かわなければなりません。在宅勤務のときよりも、1時間ほど多く準備の時間が必要になるのではないでしょうか。そういう点で、在宅勤務と出社の使い分けは、睡眠習慣のズレを引き起こしやすい環境といえるでしょう。

近年は「健康経営」の観点から、従業員の健康管理を経営課題にする企業が増えていますが、食事や運動に関する事例が多く、睡眠の支援を行っている事例はあまり多くはありません。そうした中、ロート製薬株式会社では「睡眠改善プログラム」を導入し、従業員の睡眠習慣の改善や主体的な健康づくりを支援しています。

今後は、時間や場所にとらわれない多様な働き方が増えることが予想されます。企業や人事担当者は、勤務形態や就業時間帯の違いによる生産性の低下や体調不良が起きないよう、これまで以上に従業員の健康管理に取り組んでいく必要があるでしょう。

・参考
ロート製薬が従業員の「睡眠改善プログラム」を導入(ロート製薬)

企画・編集:『日本の人事部』編集部