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【ヨミ】キショウビョウ

気象病

「気象病」とは、気象の変化によって症状が出現する疾患などの総称です。気圧、気温、湿度などの変化に心身がうまく対応しきれないことで症状が出現すると考えられています。頭痛、腹痛、肩こり、うつ病、関節炎、めまい、古傷の痛みなど、症状はさまざま。気圧が急激に下がったときに不調を訴える人が多くいますが、気圧が上がるときに不調が出る人もいます。気象の変化により自律神経が活性化し、交感神経と副交感神経の調整がうまくいかずに症状としてあらわれます。

ケーススタディ

日本人の1000万人が気象病?
多様な働き方で、気象病患者に配慮を

「頭が痛くなってきたので、もうすぐ雨が降るかもしれない……」と、自分の体調を天気予報がわりにしている人はいませんか。体調の変化によって、これからの天気を察知できる人は、気象病かもしれません。実際、そのような体内レーダーを持つ人は多く、日本人の約1000万人が気象病であるという推計もあります(愛知医科大学学際的痛みセンター・佐藤純医師による推計)。

単純計算で日本人の12人に1人が悩んでいる気象病。まだわかっていないことも多いのですが、最近では「内耳」に原因があることがわかってきました。気圧が急に変化すると、耳に外圧を感じます。飛行機やエレベーターの中で耳が痛んだ経験のある人も多いでしょう。気圧の変化を感じた内耳が脳に指令を出し、自律神経に影響を及ぼしているのです。気象病による症状を軽減するためには、耳の血行を良くするマッサージが有効。また、抗めまい薬や酔い止め薬も内耳の状態を整える作用があります。

気象による体調の変化に悩んでいる人が多いにもかかわらず、気象病は軽視されています。これも一つの生理現象のはずなのに、女性の生理休暇のような公的休暇は整備されていない企業がほとんど。休暇制度を整備するまではいかなくても、企業はいろいろな形で配慮ができるはずです。例えば、リモートワークや在宅勤務制度。有給休暇の取得率を上げることも、間接的に気象病患者の休みやすさにつながるかもしれません。

原因がはっきりとしている病気とは違い、気象病は実体がないため、「甘え」のようにとらえられがちです。しかし、気象病は、心臓発作や脳卒中などのきっかけになることもあります。職場のウェルビーイングが議論されている昨今、産休や育休だけにとどまらず、個々の事情を尊重した働き方が求められます。

企画・編集:『日本の人事部』編集部