エンゲージメント向上に欠かせない「従業員体験」の視点。必要なのはデザイン思考と徹底した対話
石山 恒貴氏(法政大学大学院 政策創造研究科 教授)
橘 大地氏(株式会社PeopleX 代表取締役CEO)
米国・ギャラップ社の2023年版調査レポートで、日本のエンゲージメント指数は145ヵ国のうち世界最低という結果が発表された。その背景には何があるのか。また、この現状を打破するにはどうすればいいのだろうか。
エンゲージメント向上のために欠かせないのが、マーケティングの「カスタマー・エクスペリエンス(CX:顧客体験)」から派生した「エンプロイー・エクスペリエンス(EX:従業員体験)」の考え方だ。ただし、従業員体験の意味を真に理解し、包括的な取り組みができている企業は多くない。
企業は従業員体験をどのように捉え、体験向上に向けてどのようなアプローチをとればいいのか。8月2日に開催された「HRカンファレンス2024-夏-」では、法政大学大学院教授の石山恒貴氏、「従業員体験」や「エンプロイーサクセス」のリーディングカンパニーである株式会社PeopleX代表の橘大地氏による問題提起・現状報告を受け、日本を代表する企業の人事リーダーたちが語り合った。
- 石山 恒貴氏
- 法政大学大学院 政策創造研究科 教授
- 橘 大地氏
- 株式会社PeopleX 代表取締役CEO
- 石山氏による問題提起1:なぜ日本のエンゲージメントは低いのか
- 石山氏による問題提起2:「EXジャーニーマップ」の全体像を把握し、有機的に考える
- 石山氏による問題提起3:デザイン思考と徹底した対話で個々の強みを理解
- 橘氏による問題提起と発表1 :企業の持続的成長のためにはエンプロイーサクセスが必要
- 橘氏による問題提起と発表2:エンプロイーサクセスに必要な三つの視点での支援
- グループディスカッション1:自社において一連の流れを妨げる、うまくいっていない従業員体験は何か
- グループディスカッション2:効果的な従業員体験を実現するために、人事としてできる支援は何か
- 石山氏による全体総括
- 本セッションのまとめ
- 当日知見をご共有くださった皆さま
石山氏による問題提起1:なぜ日本のエンゲージメントは低いのか
石山氏はまず、日本における従業員エンゲージメントの低さを指摘した。
米国・ギャラップ社の調査レポート(2023年版)によると、日本のエンゲージメント指数はイタリアと並んで145ヵ国のうち世界最低(5%)を記録した。一方、「日常のストレス」は中国、アメリカに次いで3位(42%)と、「エンゲージメントが低く、ストレスも高い」という傾向が顕著になっている。
石山氏は、キャリア構築に関する幸福を指す「キャリアウェルビーイング」に好影響を与える要素として、次の点を挙げる。
- 自分への期待値が明確になっていること
- 自分の強みを職場がよく理解してくれていること
- 自分の能力開発を職場が気にかけてくれること
- 自分の意見を職場が聞いてくれること
- 職場が個人のミッションやパーパスを考えてくれること
「エンゲージメントが低いということは、日本の職場はこれらの要素が不十分なのではないでしょうか」
石山氏はあわせて、グローバルな調査(※)において、人生で最も不幸な瞬間として「上司と過ごす時間」を挙げる人が最多だったと紹介。近年、日本企業でも1on1に力を入れる動きがあるが、「上司が部下と意義ある対話をしないままに1on1の機会だけを増やすと、かえってエンゲージメントが下がる恐れがある」と警鐘を鳴らした。
※ジム・クリフトン、ジム・ハーター(2022)『職場のウェルビーイングを高める』日本経済新聞出版
石山氏による問題提起2:「EXジャーニーマップ」の全体像を把握し、有機的に考える
これまで日本の企業は、給与や退職金、福利厚生制度など「目に見えるもの」に頼って、従業員満足とエンゲージメントを高めようとしてきた。企業の組織目標とミッションを達成するために、従業員の「真の気持ち」やニーズを理解することなく、従業員を動かそうとしてきたともいえる。
このようなアプローチに対し、近年新たに注目されるのが、「EX(従業員体験:エンプロイー・エクスペリエンス)ジャーニー」の考え方だ。EXジャーニーでは、雇用前から雇用後に至るまでに従業員がする一連の経験を「旅」と捉え、有機的に従業員の気持ちを考える。
石山氏は、従業員体験を「点」ではなく一連の流れ、つながりとして設計し、体験向上に向けて取り組んでいく必要があると語る。
ここで石山氏は「EX・ジャーニーマップ」を紹介。従業員体験を「日常接点」から「退職後リレーション」に至るまで13のプロセスに分類し、一連の流れとして捉えて体系化したものだ。
「これまでの従業員体験は『雇用中』しか見ていませんでした。本当に従業員の気持ちに寄り添おうとするなら、雇用前や雇用後も含めて、いかに有機的な体験を創り出せるのかが問われます。転職する人が増える中、従業員が退職の意思表明をしてから退職するまでの一連の体験を向上させる『オフボーディング』は、今後ますます重要になっていくでしょう。
『従業員の旅』の全体像から有機的に従業員のニーズを把握しようとすると、それは人事部だけの仕事ではなくなってきます。人事部門のみならず、企業のあらゆる部門が、従業員体験が機能するよう意識して取り組む必要があります。また、日本では『上司との関係性』がエンゲージメントを左右する大きな要因になっているため、コーポレート部門が中間管理職を支援する取り組みも大切です」
石山氏による問題提起3:デザイン思考と徹底した対話で個々の強みを理解
石山氏は、従業員体験においては「デザイン思考」が極めて大事だと言う。
デザイン思考はマーケティングにもよく使われる考え方だ。特定の顧客一人を徹底的に分析する「N1マーケティング」のように、現在は「一人の顧客の気持ち」を突き詰めて考えることが重視されている。
米国の企業家であり、自動車を普及させたヘンリー・フォードの言葉に「もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは『もっと速い馬が欲しい』と答えていただろう」というものがある。交通手段が馬車だった時代、自動車を知らない多くの人々は「自動車が欲しい」とは言わなかった。これと同じで、単純に従業員に求めるものを聞いても、彼らの真のニーズにはたどり着けない可能性が高い。
近年、エンゲージメントへの関心の高まりを受けて、エンゲージメントサーベイを導入する企業が増えている。石山氏はサーベイの重要性を認めつつも、「数字がすべてを語ってくれるわけではない」と強調する。サーベイ結果の背後に何があるのか。従業員の本当の気持ちは、深い対話と洞察がなければ把握できない。
「デザイン思考になるとは、自分が他人の気持ちになって、さらにその人が考えられていないところまで、もう一歩踏み込んで思考を巡らせることです。人々が行動していないこと、言っていないことにも目を向ける考え方は、従業員体験にも有効でしょう」
従業員体験を向上させるポイントは、従来の「管理」や「コントロール」によるアプローチではなく、デザイン思考に基づいてさまざまなアイデアを試し、プロトタイプで検証していくことだ。その際に大切なのが「洞察」「観察」「共感」で、マスマーケティング的な発想ではなく、「従業員一人ひとりがしないこと、言わないこと」に目を向けることが求められる(※)。
従業員への深い洞察、共感を伴わない施策は、従業員にとって表面的な取り組みに感じられてしまう。だからこそ、従業員との徹底した対話を通して、個々人を理解することが欠かせないのである。
※ティム・ブラウン著(千葉敏生訳)(2014)『デザイン思考が世界を変える』早川書房
橘氏による問題提起と発表1 :企業の持続的成長のためにはエンプロイーサクセスが必要
株式会社PeopleXの橘氏は、従業員体験向上や、従業員の成功に向けた支援である「エンプロイーサクセス」を紹介した。同社が掲げるエンプロイーサクセスは、「企業の持続的成長のために社員が能力発揮できるよう支援する概念」のことだ。
エンプロイーサクセスは欧米で広く浸透しており、日本でも昨今、新たに関心が高まっている分野だ。橘氏は、エンプロイーサクセスが求められる背景として、次の三つを挙げる。
・日本企業の中途・キャリア採用へのシフト
大企業の中途採用比率は10年間で約10%から40%に上昇しており、2028年までには70%に到達すると言われている。中途社員をいかに採用し、定着させるかが日本の新しい価値観になりつつあるが、現実として新卒採用に比べて中途・キャリア採用の育成体制は未整備であり、2年以内の離職率は30%超になっている。
・既存社員のスキルアップ・リスキリングの必要性
産業構造の転換に伴ってDXの必要性が高まっており、既存社員もDXを中心とした知識・ノウハウを学び直す必要に迫られている。一過性のトレンドに終わらせず、従業員が学び合うカルチャーづくりを企業が支援していく必要がある。
・人的資本経営によるエンゲージメントへの関心の高まり
人を大切にし、エンゲージメント向上に取り組む会社であるかどうかが、投資家にとって重要な判断材料となっている。中途採用比率が急速に高まっている中、今までどおりの指揮命令・マネジメント方法で持続的な成長を遂げるのは難しくなっている。人的資本経営の要請もあり、エンプロイーサクセスへの注目が高まっている。
橘氏による問題提起と発表2:エンプロイーサクセスに必要な三つの視点での支援
橘氏は、エンプロイーサクセスの概念を導入することで、企業は次の効果を期待できると話す。
- 働きがい向上による企業の労働生産性の改善
- 社員の定着率向上と離職率の低下
- 顧客満足度向上による企業業績への貢献
このように、エンプロイーサクセスは従業員の自己実現といった個人的な問題にとどまらず、会社全体の業績や未来を左右しかねない重要な経営課題となる。
エンプロイーサクセスは一朝一夕で実現できるものではないため、以下の三つの視点からさまざまな施策を組み合わせて継続的に支援を行う必要がある。
- エンゲージメント(仲間意識を高める)
- イネーブルメント(成長環境をつくる)
- セレブレーション(賞賛機会を増やす)
橘氏はエンプロイーサクセスのポイントを次のように語る。
「入社時、異動時、昇格時の即戦力化支援が非常に重要です。特に中途社員のオンボーディングにおいては、会社のカルチャーや既存社員になじむための配慮と、業務スキル習得のための支援を両立することが欠かせません」
「イネーブルメント」「セレブレーション」「エンゲージメント」の支援自体は日本企業にとって特別新しい視点ではない。シャッフルランチ、飲み会、全社総会など、日本企業は長らく、相当なコストを投下してアナログな機会を提供してきた。一方、アメリカでは現在、テクノロジーの活用によってコストを低減する取り組みが進んでいる。
橘氏によれば、欧米にはエンプロイーサクセス・プラットフォームが300種類以上あり、HR領域で最も活用されるプラットフォームになっている。出社したらエンプロイーサクセス・プラットフォームを開くのが社員の日課だ。毎日オンラインで全社的な交流が行われる。人事の視点からは、会社を俯瞰することで、この部門にはどんな人が合うか、どんな趣味を持った人がこの会社になじみやすいかといったことも見え、データを活用した新しい採用戦略も可能になる。
「従業員のライフステージの変化に対応するためにも、テレワーク・オフィスワークを選択して働くハイブリッド勤務の実現は待ったなしです。ハイブリッド勤務において三つの視点から支援するためにも、テクノロジーの活用が必要なのです」
グループディスカッション1:自社において一連の流れを妨げる、うまくいっていない従業員体験は何か
続いて、グループディスカッションが行われた。
Aグループ
- 株式会社NSGホールディングス 池田 岳倫氏
- 株式会社グリーンズ 鈴木 直子氏
- ファストドクター株式会社 佐田 雅弥氏
- ポラス株式会社 石田 茂氏
Bグループ
- 株式会社インターネットイニシアティブ 西森 大輔氏
- エプソンアヴァシス株式会社 花村 章子氏
- PAIG Japan Automobile Investment合同会社 福井 茂貴氏
- 株式会社みんなの銀行 花谷 禎昭氏
- 楽天証券株式会社 西本 智美氏
Cグループ
- 株式会社桐井製作所 高橋 泰広氏
- 株式会社ニッペコ 武田 宏氏
- 富士フイルムシステムサービス株式会社 西村 領介氏
- 株式会社ブレインパッド 鈴木 由美子氏
- 株式会社ベイシア 割石 正紀氏
Dグループ
- 株式会社オズマピーアール 白井 洋介氏
- オリックス生命保険株式会社 加藤 紘一氏
- 三ッ輪ホールディングス株式会社 塩崎 智氏
- レノボ・ジャパン合同会社 澤邉 裕子氏
最初のテーマは「自社においてEXジャーニーの一連の流れを妨げる、うまくいっていない従業員体験は何か」。A~Dの4グループに分かれてディスカッションを行った後、各グループの代表者が話した内容について発表した。
Aグループ
Aグループでは「社内公募で手が挙がりにくい」「部署間のナレッジ共有ができていない」などさまざまな課題が話されたが、議論が進む中で、中途社員のオンボーディングが共通課題であることが浮き彫りになった。
ポラス株式会社 石田氏:会社として新卒のオンボーディングには力を入れていても、中途のオンボーディングは不十分です。「OJT」とはいうものの、現場に中途社員を育てる余裕がなく、十分に教えられないまま評価に入るのが実情です。また、遂行された仕事の良否、業績の良否を判定するはずの評価が、結果を数値化するだけの「査定」になってしまっています。中途社員は何も教えられないまま査定だけされるので納得感が持てず、査定が悪ければ退職してしまう悪循環に陥っているのではないでしょうか。
Bグループ
Bグループでは、目標設定や評価、育成にまつわる課題が議論に挙がった。マネジャーがツールや制度を活用できていなかったり、マネジャーのコミュニケーションスタイルに問題があったりすることが、従業員体験向上の妨げになっているという意見が出たことから、管理職に対する支援の必要性が話された。
エプソンアヴァシス株式会社 花村氏:会社として制度やツールを改定しても、実際に活用する中間管理職にあたる人の関わり方によっては従業員体験が妨げられてしまうなど、人事施策の実効性は中間管理職に依存していると思います。また、「その中間管理職である本人が良い従業員体験をできていないのではないか」という問題提起もありました。
Cグループ
Cグループでは、評価・育成、人事部門から従業員へのコミュニケーション、中途採用のオンボーディング、キャリア開発、社内のナレッジ共有など、話題が多岐にわたった。従業員のニーズをくんで新たな人事制度をつくっても、想定ほど活用されない課題についても話し合われた。
株式会社桐井製作所 高橋氏:会社や人事部門の思いと、現場の思いがかみ合わないことを実感しています。たとえば社内副業の制度をつくろうとしても、社員は「どうやって副業の時間を捻出すればいいのか」「本業の評価はどうなるのか」といった懸念が払しょくできず、なかなか制度が活用されないということも予想されます。
Dグループ
Dグループでは、若手の離職や、若手社員とのコミュニケーションの難しさなどが課題として出た。リモートワークが普及し、コミュニケーションの場がオンラインに移行したことで、相互理解のハードルが上がっている側面もあるという。
三ッ輪ホールディングス株式会社 塩崎氏:「若手社員は飲み会を好まない」と思い込みがちですが、実際に若手社員と話すと、意外とやりたがる人もいます。従業員の本当の気持ちにアクセスするためには、徹底した対話や深い洞察が大切です。Dグループでは、経営者がランチ会で従業員と対話している企業もありました。
グループディスカッション2:効果的な従業員体験を実現するために、人事としてできる支援は何か
続いて、「効果的な従業員体験を実現するために、人事としてできる支援は何か」をテーマに二度目のグループディスカッションが行われた。
Aグループ
Aグループでは社内公募や越境学習という従業員体験を良くする視点として、「情報の共有化」が議論の焦点の一つになった。各部門が何をしているのかを社内で公開することにより、部門間の垣根が低くなる。その職場でどのような経験ができるのかわかれば、社内公募や越境の活性化にもつながると考えられる。
株式会社NSGホールディングス 池田氏:社内公募などさまざまな制度があったとしても、どのような体験ができて、自分がどうなっていくのか、というリアルがイメージできないと人は動きません。そのため情報を公開して、今後のキャリアの可能性を提示することが大事なのではないかという話が出ました。事業サイドとコーポレートサイドの間で人材交流の仕組みをつくることも社内の活性化につながるのではないでしょうか。
また、ある企業では、従業員の家族を巻き込んだアプローチとして、コーポレートサイトの社内専用ページの一部を従業員の家族も閲覧できるようにすることで、「お父さんはこういった部署で働いているんだよ」と家族に話す従業員が多くなり、結果として社内が活性化したという事例も共有されました。
Bグループ
Bグループでは、中途社員向けオンボーディングプロセスの導入や、社内におけるコミュニケーション機会の提供などの事例が共有された。階層別に会社のミッション・バリューについて話し合う機会を設けることで、仲間意識が生まれたという。
株式会社みんなの銀行 花谷氏:中途社員向けオンボーディングプロセスの導入により従業員体験が向上した話や、他部署の見学など相互理解を促進する機会を設けることで、部署間の理解が深まった話が出ました。オンボーディングに限らず、強制的に他部署の人と交流する機会や階層別に関係性をつくる仕掛けも必要だと考えます。自分の部署以外のさまざまな階層の従業員とのコミュニケーションを通して、会社に対する主体性を育んだり、部門間の理解を促進したりするなど、より業務を円滑に進められるようになるのではないでしょうか。
Cグループ
Cグループではコミュニケーションの重要性が議論され、他部署を知る機会の創出や、有志が集まってコミュニケーションを取る機会を設ける取り組みなどが紹介された。同時にマネジメントの重要性についても話し合われ、育成目線での評価が行えるよう、管理職のフィードバック力を高めるための支援が必要ではないかとの意見も出た。
株式会社ニッペコ 武田氏:「マネジャー支援」「聴く」「納得感」などいくつかのキーワードが出ました。評価は実績だけではなく、将来における成長の期待も考慮するべきです。ただし、管理職には時間的余裕がないことも多いため、適切なフィードバックが行えるよう、マネジャーを支援する仕組みが必要です。また、自社の存在意義を従業員が理解できるようにするために、自社で働くことのメリットをしっかり伝えていくのも人事の役割ではないでしょうか。
Dグループ
Dグループでは、Slackなどのツールを活用したコミュニケーション活性化の例や、サーベイ活用にまつわる課題などが議論された。「サーベイやアンケートで出てくるニーズは、従業員が本当に求めているものなのか」「サーベイを繰り返しても言語化できる課題しか見えてこない」といった指摘もあり、従業員のアンメットニーズ(満たされていない欲求)をすくいあげることの重要性が認識された。
レノボ・ジャパン合同会社 澤邉氏:「Slackの導入で社内コミュニケーションが活性化した」「従業員が自分の個人的な情報を開示することで周りとの距離感が縮まった」といった、コミュニケーションにまつわる成功事例がありました。コミュニケーションの機会提供をする中でアンメットニーズを拾い上げていくことについて、人事として貢献できる部分があるのではないでしょうか。また、評価のようなマネジャー特有の課題について、マネジャーをサポートする仕組みをつくることで従業員全体のエンゲージメント向上に取り組んでいる企業もありました。
石山氏による全体総括
石山氏:グループディスカッションや全体発表では、従業員体験を向上させるための取り組みとして、オンボーディングの開催や社内ネットワーク構築の仕組みづくり、リーダーの孤独に対する取り組み、従業員がスムーズに異動・越境を行うための情報公開の仕組み構築などが挙げられていました。
また、「コミュニケーション、コーチング、アンメットニーズ、プロセス」の4象限に分類して従業員体験を考えているグループもあり、わかりやすくて良いと思いました。コミュニケーションとアンメットニーズが結びついているという観点は、私にとって新たな発見でした。
他にも、役員が従業員からのフリーコメントを読む努力、従業員の納得感を得る努力についても話されていました。経営層が従業員の意見を聞く努力に関しては、従来通り、ある程度時間をかけるアナログな方法と、IT化によるデータ化された意見を確認する効率的な方法のどちらも必要だと感じています。
皆さんの発表を聞いて、各社が既に従業員体験に関する取り組みをされていることがわかって素晴らしいと思うとともに、私自身も勉強になりました。その上で「EX・ジャーニーマップ」のような共通した体型的なものがあると、お互いに従業員体験に関する取り組みの進捗度合いなどを共有しやすくて良いのではないかと改めて感じました。
「従業員体験」についてさらに学ぶ
「選ばれる企業」になるための従業員体験向上~「人」は最も資本効率の良い投資先
本セッションのまとめ
石山氏による問題提起 |
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橘氏による問題提起 |
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ディスカッション |
従業員体験の一連の流れを妨げる要素
効果的な従業員体験のために人事にできる支援
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当日知見をご共有くださった皆さま
※所属や役職は「HRカンファレンス2024-夏-」開催時のものです。
有識者・プロフェッショナル
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石山 恒貴氏
法政大学大学院 政策創造研究科 教授 -
橘 大地氏
株式会社PeopleX 代表取締役CEO
大手・優良企業の人事リーダー (社名50音順)
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西森 大輔氏
株式会社インターネットイニシアティブ 人事部長 社長室長 -
池田 岳倫氏
株式会社NSGホールディングス 人事本部・採用HRチーム部長 -
花村 章子氏
エプソンアヴァシス株式会社 経営企画本部 人事部 部長 -
加藤 紘一氏
オリックス生命保険株式会社 人事部 部長 -
白井 洋介氏
株式会社オズマピーアール 人事室 室長 セキュアベース部 部長 -
高橋 泰広氏
株式会社桐井製作所 総務部 総務グループ シニアマネージャー -
鈴木 直子氏
株式会社グリーンズ 取締役人事本部長 -
武田 宏氏
株式会社ニッペコ 執行役員(人事担当) キャリア支援室長 -
福井 茂貴氏
PAIG Japan Automobile Investment合同会社 人事部 ダイレクター -
佐田 雅弥氏
ファストドクター株式会社 人事部長 -
西村 領介氏
富士フイルムシステムサービス株式会社 経営統括本部 人事総務部 人事企画グループ グループ長 -
鈴木 由美子氏
株式会社ブレインパッド 人事ユニット 人事部長 -
割石 正紀氏
株式会社ベイシア 人事・管理事業部 事業部長 株式会社ベイシアオープス 取締役 ベイシアグループ健康保険組合 理事長 -
石田 茂氏
ポラス株式会社 人事部長 -
塩崎 智氏
三ッ輪ホールディングス株式会社 社長室 副室長 -
花谷 禎昭氏
株式会社みんなの銀行 エンプロイーサクセスグループ グループリーダー -
西本 智美氏
楽天証券株式会社 人事総務本部長 -
澤邉 裕子氏
レノボ・ジャパン合同会社 人事本部長
PeopleXは、社員のスキルアップ、エンゲージメント向上に特化し、企業の人的資本経営を実現する総合型HRカンパニーです。米国で注目されているエンプロイーサクセスの考え方をベースとしたHRプラットフォーム「PeopleWork」をはじめとしたソリューションを提供し、「社員の即戦力化」を支援します。