講演レポート・動画 イベントレポート

HRカンファレンストップ >  「HRカンファレンス2024-夏-」講演レポート >  「従業員エンゲージメント」は企業が目標を達成するための動力であり、通過点でしかない

「従業員エンゲージメント」は企業が目標を達成するための動力であり、通過点でしかない

太田 肇氏(同志社大学 政策学部・同大学院 総合政策科学研究科 教授)
上村 千尋氏(ギャラップ・ジャパン株式会社 ラーニング&ディベロプメントコンサルタント)

掲載日:2024/09/30

「日本人はエンゲージメントが低い」。近年、仕事におけるモチベーションや従業員の企業に対する愛着などを語る際に必ずと言っていいほど問題視される事象だ。そこで、事業を持続的に成長させるために、従業員のエンゲージメントを高めようと取り組む企業が増えている。しかし、エンゲージメントは個人の「感情」が影響するため、「こうすれば上がる」といった施策は存在しない。従業員のエンゲージメントを高めるために、人事リーダーは何を考え、どう行動すべきなのだろうか。

8月2日に開催された「HRカンファレンス2024-夏-」では、同志社大学教授の太田肇氏、「エンゲージメント」のリーディングカンパニーであるギャラップ・ジャパン株式会社の上村千尋氏から問題提起と現状報告を受けて、日本企業を代表する人事リーダーたちが語り合った。

本記事では、従業員エンゲージメントのことをエンゲージメントと表現する。

Profile
太田 肇氏
太田 肇氏
同志社大学 政策学部・同大学院 総合政策科学研究科 教授
上村 千尋氏
上村 千尋氏
ギャラップ・ジャパン株式会社 ラーニング&ディベロプメントコンサルタント

世界と日本のエンゲージメントの現状:ギャラップ 職場環境の現状2024年メタ分析より

冒頭、ギャラップ・ジャパンの上村氏は、各テーブルの参加者同士で自己紹介を兼ねて各社の参加目的やエンゲージメントに関する課題感を話し合う時間を設けた。

各テーブルを回っていた上村氏は、「現在の日本企業の人事リーダーたちが抱える課題感は世界のCHROが抱えているものと同じだ」と語った。世界各国のCHROが集まった、ギャラップ開催のイベントにおいて、2024年に最も多くの資源・資金が投入されると思われるテーマについて聞いたところ、「研修・ディベロプメント」(68%)に次いで多かったのが「従業員エンゲージメント」(56%)だったという。つまり世界各国の企業においても、エンゲージメントは優先的に対応しなければならない経営課題という認識だ。

さらに上村氏は、ギャラップのメタ分析による職場環境の現状を報告。調査によると、世界の企業においてエンゲージしている従業員の割合は23%であるのに対して、日本国内の従業員はわずか6%だった。この数値は、日本人のエンゲージメントの低さが衝撃的なニュースとして取り上げられた2017年当時から変わっていない。

【図】日本の職場環境の現状 2024年メタ分析

出典:職場でのエンゲージメントと組織の成果との関係:2024 Q12®メタ分析:第11版

また、およそ5人に2人の割合にあたる41%の従業員が「前日に強いストレスを感じた」と回答していること、「今が転職に適した時期だと思う」という回答が前年比で15%上昇し40%になったことにも言及した。日本のエンゲージメントの低さによって生まれる機会損失額は86兆円に上るとも言われており、喫緊の課題となっている。

太田氏による問題提起1:日本人のワークエンゲージメントはなぜ低いのか

次に登壇した太田氏は、「モチベーションが上がる組織作り」をテーマに、日本人のエンゲージメントが低い理由をひもといていった。太田氏は、日本人のワークエンゲージメントの低さに言及。手法の問題や、低く回答(評価)しがちな日本人の特性を差し引いても、日本人のワークエンゲージメントは世界最低水準であるとした。しかし、そんな日本人の中でも、欧米並みにワークエンゲージメントが高い人たちがいる。それは誰か――。

「フリーランスの方々です。例えば起業家、専門職、士業。それ以外でも企業に属さず、フリーで働いている方々のエンゲージメントを調査すると、非常に高いことが分かりました。この対照的な違いをひもとくことで、エンゲージメントを高める本質が見えてくるのではないかと思います」

太田肇氏(同志社大学 政策学部・同大学院 総合政策科学研究科 教授)

では、「典型的な日本企業の社員」と「フリーランス」では何が違うのか。

「ワークエンゲージメントについて原因を分析すると、企業に属する社員は業務における裁量や自由度が低いことが挙げられます。この自由度については、三つに分けることができます。

一つは仕事をする上での自由度。日本の企業の場合、仕事を自分で決めることは難しく、上司から与えられるケースが一般的です。二つ目はワークライフバランスの自由度。残業が多くプライベートな時間を持ちにくいため、仕事と私生活を自分の裁量で調整することは難しいのが現状です。そして三つ目がキャリアの自由度。これは、自分が思い描くような職業人生を形成できるかどうかの自由度です。多くの日本企業では人事部主導で異動があり、自分の思うとおりのキャリア形成はまだまだ難しい。転職機会の少なさも一因に挙げられます」

これらの自由度の低さに加え、仕事に対するモチベーションの違いがある。モチベーションには「内発的モチベーション」と「外発的モチベーション」があり、内発的モチベーションは内側から出てくる「仕事が楽しい」「面白い」「挑戦しがいがある」という気持ちだ。この気持ちにも、自分で仕事を決められる場合とそうでない場合では大きな違いが生まれる。

「外発的モチベーションは、仕事の結果に対して与えられるお金や地位と言った報酬、または自身の目的によって起こります。この報酬の魅力と、報酬が得られる可能性(=期待)をかけ合わせたものがモチベーションであり、『努力をしよう』という動機付けになります。フリーランスであれば報酬は交渉が可能、目標も自ら決めることができます。そして、自分が成果を上げれば必ず報酬に反映されるのですから、報酬が得られる可能性(=期待)も大きいものになります。結果、モチベーションは高くなるわけです。企業に属する社員をフリーランスに近づけると、エンゲージメントが高まるのではないかと考えています」

太田氏による問題提起2:企業でフリーランス的な働き方を実現するには

フリーランス的な働き方の実現にまず必要なのは、業務分担の明確化だ。いわゆる「ジョブ型雇用」がそれに近いが、日本企業では制約が多いため簡単には導入できないと太田氏は言う。

「日本ではジョブ型雇用の社員であっても、職務がなくなったからといって容易には解雇できません。実際にジョブ型を取り入れた企業でも従来どおりの異動がある『ハイブリッド型』や『日本市場型』と呼ばれるスタイルになっている事例が多いのです。ハイブリッド型の場合、メンバーシップ型とジョブ型、双方の長所が消えてしまう可能性もあります」

さらに太田氏は、ジョブ型雇用がこれからの時代に合っているのかと疑問を投げかける。

「ジョブ型の源流は、少品種大量生産型の大企業が業務を事業部、課、個人へとブレイクダウンし、個人の分担を決めることにあります。経営環境が変化し、流動性が高い中で一人ひとりのジョブを明確に規定して契約する考え方は、柔軟性に欠けます。何より、ジョブ型だと『役割をこなすこと』に関心が向くため、イノベーションが生まれにくくなってしまうのです」

そこで太田氏が提案するのが、「自営型」という働き方だ。自営型とはどのようなものなのか。

「自営型とは、雇用されているか否かにかかわらず、半ば自営業のようにある程度まとまった仕事をこなす働き方と定義しています。現代ではデジタル化によって効率化が進み、かつて数人で行っていた仕事を個人で完結できるようになりました。ある程度まとまった範囲を自らの裁量で進められるため自由度が高く、目標を立てやすくなります。

あらためて自営型と定義していますが、こういった働き方はすでに増えており、出版業界や広告業界ではフリーランスが集まってプロジェクトごとにチームを組んで仕事をしています。また、メーカーでも、製販一体で製造の担当者が販売まで関わるケースや、マーケティングまで関わる事例が増えています。製造現場では昔からある、機械の組み立てを一台丸ごと担当する『セル生産』が相当しますね。小売りやサービス業でも一人の従業員がさまざまな業務をこなすマルチタスクスタイルが増えています。

このように業務を自営型で任せていくと、一人ひとりの特性が生かされやすくなり、エンゲージメントは向上すると考えられます。一人が大きな範囲の仕事を受け持つことから人材不足に対応できますし、当然、効率化による無駄の排除も進みます」

従業員の働き方が変われば、組織も変化しなければならない。同じ立場で仕事を進めていく自営型が広がれば、階層はなくなりフラットになっていくはずだ。もともと組織の階層は情報伝達のためのシステムとしての役割も担っていることから、組織の境界はあいまいになる。そうなると、「組織はあくまでも『仕事の場』になり、マネジャーの役割も変わっていくだろう」と太田氏は語る。

この自営型の組織を従来のメンバーシップ型のピラミッドの図に合わせると、頂点のない土台(仕事の場)の上に各個人がいるイメージとなる。太田氏はこれを「自営型のインフラ型組織」と呼び、「飛躍した組織体系に見えるかもしれませんが、ソフトウエア関連や情報システム関連の会社は、すでにこのような形に近づいてきています。いずれは多くの企業が、インフラ型の組織に近づいていくと思っています」と締めくくった。

参加者との質疑応答

続いて、太田氏の問題提起に関して参加者との質疑応答が行われた。

FWD生命保険 樋口氏:自営型の雇用契約はどのような形態になりますか。雇用されている状態なのか、あるいは業務委託としてのインディペンデントコントラクターのような働き方をイメージすればよいのでしょうか。

太田氏:雇用されている状態と独立している状態、その両方を想定しています。中国や台湾、アメリカなどではすでに、場合によっては雇用されたり、あるいは独立したり、再び雇用関係に戻ったりといった働き方があります。

ただし今回は「雇用されている自営型社員」に焦点を置くため、その範囲で例を挙げると、「プロジェクトを丸ごと受け持つ」「製品の企画段階から営業まで担当する」といった形が想定されます。社内ベンチャーなどがこれに当てはまります。

武田薬品 上場氏:大きな範囲で仕事を任される人は、スキルがあることが前提になります。日本のように新卒を採用し育てていく人材育成方法では難しいと感じました。

太田氏:いきなり任せるのは難しいでしょう。そこで、最初の3年間はメンバーシップ型や徒弟制度のスタイルで働き、経験やスキルを積ませます。3年たった時点で本人が希望したら、自営型の働き方へシフトする。それが現実的ではないでしょうか。

東京エレクトロン 古澤氏:大きなプロジェクトになれば、自営型の組織でも階層ができると予想されます。本当にフラットな組織で、仕事を1から10まで任せて完結できるのでしょうか。

太田氏:確かに、階層がなくなるわけではありません。グループリーダーのような形が広がっていくイメージです。業種や職種によってバリエーションがありますが、「その仕事・スキルを持って独立できるか」が基準となるため、仕事の守備範囲外であれば別の人材が入る形になります。

インテージホールディングス 今井氏:自営型の働き方は、果たして組織である必要はあるのでしょうか。必要があるなら、どのように評価すると、組織として一体感を持てますか。

太田氏:最終的に組織である必要はないのかもしれません。ただ、「組織」のイメージそのものが時代とともに変わっていきます。プロジェクトごとに最適なメンバーを集めることが一般的になると、組織自体も従来のものとは異なってくるはずです。おそらく、ネットワーク組織のような形に近づいていくと思います。

評価については、歩合制、能力主義、成果主義、年功制などさまざまな形があります。独立を前提とすることで固定給が可能になる場合もあるでしょう。ただし、どちらの場合でも上から目線の評価ではなく、市場の評価で行うと納得度が高いと思います。

参加者との質疑応答の様子

上村氏による問題提起1:エンゲージメントの効果

エンゲージメントが高いとどうなるか。上村氏はメリットとして、収益性や生産性の向上、離職率や欠勤率の低下などについて触れた。

「エンゲージメントが高いチームと低いチームを比べたとき、収益性については23%、生産性には18%の差がありました。顧客ロイヤリティエンゲージメントも上位チームのほうが10%、ウェルビーイングに関しては70%も高くなっています。

また、上位チームは下位チームより欠勤率が78%も低かったのです。離職率は51%低く、エンゲージメントの高いチームは多方面で高いパフォーマンスを示すことが分かっています」

これらは、企業がエンゲージメントを高めた先にある一つの成果だ。

上村氏による問題提起2:エンゲージメントは「高めて終わり」ではない

ギャラップが行うエンゲージメントサーベイでは、心理学に基づいて設定された「12の質問」を基本に、各企業のニーズに沿った質問を追加設定している。「12の質問」は、サーベイでの質問項目であるのと同時に、エンゲージメントを高めるための行動指針がわかりやすいように設計されている。

【図】エンゲージメントの階層 ギャラップ

「12の質問」には、「1週間のうちに一度でも」といった期間の尺度も示されている。例えばQ3「仕事をする上で、自分が最も得意なことをする機会が毎日ある」からは、得意なことをする機会をマネジャーが毎日作ることでエンゲージメントが高まることが分かる。

「12の質問」に沿ってマネジャーが行動することで、従業員のエンゲージメントは上がる。しかし、エンゲージメントは常に変化し続けるため、「一度高まったら終わり」ではなく、常に高い状態を維持していかなければならない。

「試しに、職場の中堅クラスでエンゲージメントが高そうな方に、『今日、自分にとって一番大事なのはどの項目か』と聞いてみてください。意外と、新入社員にも向けた問いであるQ1が大切と言われるかもしれません。長く勤めて多くの業務を担っている人でも『何を期待されているのかがよく分からなくなってきた』と感じることがあるのです」

エンゲージメントは感情だと指摘する上村氏。「世界の中でもエンゲージメントが高い企業は、常に従業員エンゲージメントを高める施策を打ち続けている」と強調した。

上村千尋氏(ギャラップ・ジャパン株式会社 ラーニング&ディベロプメントコンサルタント)

上村氏による問題提起3:エンゲージメントを高める鍵はマネジャー

続けて上村氏は、エンゲージメントを上げるヒントとして、一人あたりの生産性を方程式で表現した。

一人あたりの生産性を方程式で表現

「生産性向上には、スキルだけでなく、互いに尊重や信頼感を持つ『相互関係』が大きく影響します。加えて部下に期待するとともに必要なツールを提供することがマネジャーの仕事です。

さらに、『報酬と承認』も大切な要素です。報酬が多くても、承認されなければマイナスの効果しかありません。

ここで触れた『相互関係を築くこと』や『適切な期待をかけること』、『報酬と承認を与えること』は、マネジャーにしかできない仕事と言えます」

生産性を高めるためのキーパーソンはマネジャーなのだ。

グループディスカッション1:過去、自らがエンゲージしていた瞬間

発表を伴うグループディスカッションは、四つのグループに分かれて前半と後半に一度ずつ実施。付箋に書き出したキーワードをフリップチャート上でカテゴライズしながら、議論を進めた。

Aグループ

  • 株式会社ゲオホールディングス 太田 克己氏
  • 東京エレクトロン株式会社 古澤 光弘氏
  • 株式会社ジャスト 杉山 夏美氏
  • 東京海上日動あんしん生命保険会社 佐藤 順子氏
  • 株式会社インテージホールディングス 今井 輝夫氏

Bグループ

  • i-PRO株式会社 岡本 佐知子氏
  • FWD生命保険株式会社 樋口 知比呂氏
  • 株式会社ティーガイア 大和田 成伸氏
  • カルビー株式会社 流郷 紀子氏
  • 寺田倉庫株式会社 木村 哲章氏

Cグループ

  • 株式会社NSD 三池 真優子氏
  • オリックス銀行株式会社 加藤 晃朗氏
  • 武田薬品工業株式会社 上場 啓司氏
  • 三菱地所ホテルズ&リゾーツ株式会社 水沼 良則氏

Dグループ

  • アイホン株式会社 都築 健太郎氏
  • 株式会社ドミノ・ピザ ジャパン 影山 光博氏
  • 株式会社ニーズウェル 小菅 弘毅氏
  • 株式会社日立社会情報サービス 一ノ間 隆氏
  • リネットジャパングループ株式会社 田辺 信裕氏
  1. 今までのキャリアで、自分が最もエンゲージしていたときを振り返り、そのとき自分がエンゲージしていた様子をどう表現しますか(感情、思考、行動など)。
  2. 自分のエンゲージメントが高まる中で、マネジャーのどのような行動や様子が効果を表していましたか。

一つ目のディスカッションでは、参加者が入社したての頃のエピソードを話し合い、象徴的なキーワードをフリップチャートに貼った。代表して二つのグループが発表した。

グループディスカッションの様子

Bグループ

カルビー 流郷氏:自分の経験や実力よりも多少難しい「ストレッチ目標」を達成した瞬間に充実感があったというエピソードをうかがいました。その瞬間の感情を表現する言葉としては、「熱意」「高ぶり」「わくわく」「ドキドキ」などが挙がりました。

Aグループ

東京エレクトロン 古澤氏:「自己肯定感」「自律的」「自分で決めた」といったキーワードが出ました。また、「さまざまなことに関心が向く」「周囲への配慮」といったワード。来た仕事は何でも受けるという「受容性」のほか、「自分らしさ」「自分が主役」「成長実感」「挑戦している」といった言葉も並びました。また、「徹夜を辞さない」といったワードもありましたね。

続いて、二つ目のディスカッションについてもキーワードやエピソードが発表された。

グループディスカッションの様子

Aグループ

ゲオホールディングス 太田氏:上司からの言葉や行動では、「任せてもらえた」「失敗があっても見守ってくれた」などが挙がりました。「期待をしてくれていることが伝わった」「挑戦させてもらえた」といった声のほか、「情報共有があり、何でも言うことができた」という意見もありました。

Bグループ

i-PRO 岡本氏:「任せてくれる」「褒めてくれる」「守ってくれる」というキーワードが出ました。面白いと思ったのは「エンジョイメント」です。「楽しい雰囲気を作ってくれる」という視点は独特で、他にないキーワードでした。

Cグループ

オリックス銀行 加藤氏:「認知」「承認」がキーワードに挙がりました。部下のことを認めて、「あなたがいてくれて本当にありがたかった」と存在価値を認めてくれる言葉を掛けてもらうとエンゲージメントが高まるといった意見がありました。武田薬品工業の上場さんの元上司はブラジル人女性だったそうですが、ハグなどの情熱的な表現で承認してくれたそうです。

Dグループ

日立社会情報サービス 一ノ間氏:キーワードでは、上司からの「任せる」という言葉や 「心配なことがあっても見守る」「期待してくれる」「新しいことに挑戦させてくれる」「情報共有があるために何でも言い合える。心理的安全性が高い」などが挙がりました。

グループディスカッション2:エンゲージメント向上に取り組む目的と大切なもの

  1. エンゲージメントの向上に取り組む目的
  2. エンゲージメントの向上において大切なもの

二度目のディスカッションでは、エンゲージメントの目的と向上するための重要事項について議論。あらためて目的を語り合うことで、それぞれの企業のミッションやバリューに通じているものがあるなどの気付きが得られたようだ。

Aグループ

東京海上日動あんしん生命保険 佐藤氏:「会社の成長」や「ウェルビーイング」といったキーワードが挙がり「従業員本人だけでなく、家族まで含めた幸せを考える必要がある」という意見がありました。成長については、ビジネスの伸長、企業価値の向上に加えて、その先にある社会貢献や公正公平な社会の実現に向けて、会社として貢献していくところまでが含まれるだろうと話しました。

Bグループ

FWD生命保険 樋口氏:会社目線でいうと、企業業績や企業価値の向上が大きなテーマであり、その中にはサステナブル(持続可能)な成長も入っています。従業員の視点では、ウェルビーイングや幸せに加え、従業員自身の成長・キャリアアップも含まれるだろうという話になりました。

グループディスカッションの様子

Cグループ

武田薬品工業 上場氏:目的を四つのキーワードにまとめました。一つ目は「持続可能性」。二つ目が「イノベーション」で、イノベーティブなソリューションを社会に提供すること。三つ目が「社員のウェルビーイングや幸せ」で、四つ目が「業績、パフォーマンス、収益性」です。この四つは互いに関係性があり、収益やパフォーマンス、社員の幸せ、革新的なソリューションの提供が実現しなければ持続可能性もないことから、最終的な目的は「持続的な成長かもしれない」という結論になりました。

Dグループ

リネットジャパングループ 田辺氏:エンゲージメントを行う目的は「会社の業績のため」という意見に集約されました。逆説的にはなりますが、会社の業績がすべてを癒やしてくれ、エンゲージメントを高めることにもつながるのではないかという話をしました。

グループディスカッションの様子

全体総括

最後に、上村氏がグループディスカッションを以下のように総括した。

上村氏:エンゲージメントの向上ばかりに目線を置くのではなく、企業が達成しようとしているものに着目してください。エンゲージメントは通過点でしかありません。

企業が達成したい目標を社内で言語化してください。次は、マネジャーが部下に伝えやすいように、さらに分かりやすい言葉で発信します。マネジャーに自分の職務が組織の目標にどうつながっているのかを伝え、彼らが動きやすいように教育機会やツールをそろえるのが人事リーダーの責任です。

企業とは、社会の荒波を推し進む一隻の船だと考えてください。社内でエンゲージメントが高い人は、この船を推進する動力です。必死になって船をこぎ、目標に向かって進もうとしています。エンゲージしていない従業員は、ただ乗っているだけの人です。まったくエンゲージしていない人は、逆に向かってこいでいる人と言っていいでしょう。

エンゲージしている人が社内に20%、エンゲージしていない人が50%、まったくエンゲージしていない人が30%だとしたら、船はどちらに進むと思いますか。エンゲージメントは、企業の目標にどれだけのスピードで近づくことができるのかを表す数値なのです。

エンゲージメントサーベイで、企業の目標に向かってどのように進んでいるのかを確認できると、人事リーダーの皆さんが今やるべきことが見えてくるかと思います。

本セッションのまとめ

太田氏による問題提起
  • 日本人のワークエンゲージメントは世界最低水準だが、フリーランスのエンゲージメントは高い
  • その差は、仕事に対する裁量の自由度、ワークライフバランス、キャリアの自由度にある
  • 一人でまとまった範囲の業務にあたる「自営型」の働き方が、エンゲージメント向上のカギではないか
上村氏による発表
  • エンゲージメントが高い企業は生産性や収益性が高く、離職率や欠勤率などが低い
  • エンゲージメントを高めるためにはマネジャーによる具体的な行動が必要
  • エンゲージメントは感情であり、変化するため、継続的な取り組みが必要
ディスカッション

過去、自らがエンゲージしていたときの感情と上司の行動

  • 成長実感がある。自分らしさが発揮できている
  • 任せてくれる。承認があった

エンゲージメント向上に取り組む目的

  • 従業員本人とその家族を含めたウェルビーイングの実現
  • イノベーション創出
  • 業績向上。その先にある持続性、社会貢献
総括
  • エンゲージメントの向上は、最終目標ではなく過程にすぎない
  • 目標に向かう推進力こそがエンゲージメント

当日知見をご共有くださった皆さま

※所属や役職は「HRカンファレンス2024-夏-」開催時のものです。

有識者・プロフェッショナル

  • 太田 肇氏
    同志社大学 政策学部・同大学院 総合政策科学研究科 教授
  • 上村 千尋氏
    ギャラップ・ジャパン株式会社 ラーニング&ディベロプメントコンサルタント

大手・優良企業の人事リーダー (社名50音順)

  • 岡本 佐知子氏
    i-PRO株式会社 Chief Human Resources Officer
  • 都築 健太郎氏
    アイホン株式会社 管理本部 人事部 部長
  • 今井 輝夫氏
    株式会社インテージホールディングス グループ人事企画部 シニアマネジャー
  • 三池 真優子氏
    株式会社NSD 執行役員 コーポレートサービス本部 人事部担当、総務部担当
  • 樋口 知比呂氏
    FWD生命保険株式会社 執行役員 兼 CHRO
  • 加藤 晃朗氏
    オリックス銀行株式会社 執行役員 総務人事部、ビジネスサポート部、カスタマー・サービス部 管掌
  • 流郷 紀子氏
    カルビー株式会社 人事・総務本部 人財戦略部 部長
  • 太田 克己氏
    株式会社ゲオホールディングス 組織開発室 エグゼクティブアドバイザー
  • 杉山 夏美氏
    株式会社ジャスト 人事部長
  • 上場 啓司氏
    武田薬品工業株式会社 グローバルオンコロジービジネスユニット グローバルオンコロジーヒューマンリソーシーズ Japan OBU ヒューマンリソーシーズ HR ビジネスリーダー
  • 大和田 成伸氏
    株式会社ティーガイア 常務執行役員 CCO 人事・総務 内部監査 コンプライアンス推進 渉外 BPR推進担当
  • 木村 哲章氏
    寺田倉庫株式会社 執行役員 人事担当
  • 古澤 光弘氏
    東京エレクトロン株式会社 人事部長
  • 佐藤 順子氏
    東京海上日動あんしん生命保険会社 執行役員 人事総務部ディパートメントヘッド
  • 影山 光博氏
    株式会社ドミノ・ピザ ジャパン HR部 部長
  • 小菅 弘毅氏
    株式会社ニーズウェル 総務部 部長
  • 一ノ間 隆氏
    株式会社日立社会情報サービス 取締役 経営管理統括本部 統括本部長
  • 水沼 良則氏
    三菱地所ホテルズ&リゾーツ株式会社 人財開発部 部長
  • 田辺 信裕氏
    リネットジャパングループ株式会社 管理本部 CHRO 人事部 部長
「エンゲージメント」のリーディングカンパニー

ギャラップは、85年以上にわたる人間行動経済学の研究を基に、従業員エンゲージメントやウェルビーイングを高め、企業のパフォーマンス向上やビジネス成果に貢献するサービスを提供しています。クリフトンストレングス®(旧ストレングスファインダー)を含む多様なツールを活用し、組織の成長を支援します。

「エンゲージメント」のリーディングカンパニー
このページの先頭へ