講演者インタビュー
健康経営の第一人者に伺う
2040年を見据えた「健康経営の進化」とは

特定非営利活動法人健康経営研究会 理事長
岡田 邦夫氏
少子高齢化が進む日本において、働く人の健康問題と労働生産性問題は喫緊の課題です。未来の持続的な企業成長には、従業員が「義務」ではなく「自律的」に健康を築き、働きがいを追求する新たな仕組みが不可欠です 。本講演では、経済産業省が提唱する「健康経営3.0」の概念をもとに、人的資本の変革(HCX)や、高齢化を成長の機会と捉える「高齢化の進化」など、持続可能な企業成長のための新たな戦略を解説します。
―― 今回の貴社講演はどのような課題をお持ちの方向けの内容でしょうか?
少子高齢化が進む我が国において、従業員の高齢化問題をいかに解決するかが企業にとって重大な課題となっています。一方、高齢化は、プレゼンティーズムの要因の一つであり、また、アブセンティーズムにも直結します。
従業員の健康や体力の管理、いわゆる安全配慮義務を前提とした制限のための労働衛生管理はもはや限界にきていると考えられます。
未来を見据えた持続可能な企業経営において、人的資本をいかに価値あるものにするかは、ヘルスリテラシー向上に基づく自己健康管理能力と、自己研さんの積み重ねによるワークキャパシティの拡大に依拠します。
その一つのソリューションとして、健康経営がどのような効果をもたらすのかについて概説いたします。
―― 今回の講演の聞きどころ・注目すべきポイントをお聞かせください。
企業による労働衛生管理はこれまで、健康診断結果に基づいて保健指導や就業上の措置を実施することでした。
しかし高齢化に伴って、一旦就業制限措置を講じると、その後もさらに就業制限が加わり、加齢そのものがプレゼンティーズム、アブセンティーズムの原因となり、持続的経営に大きな影を落とすことになります。
人的資本が加齢とともにその価値を失うことになれば、企業の投資価値がなくなってしまうことを意味します。
働く人一人ひとりが自立的に健康の保持増進を図り、働きがいのある労働生活を送れるようサポートすることが今後ますます重要になってきます。
このような視点から、健康経営の文脈では、高齢化を進化させること、つまり高齢期になっても元気に働くことができるよう、自分の健康価値を常に向上させるための自己投資を促す人的資本投資を経営者が行わなければなりません。
現代社会の流れを敏感にキャッチして、その流れに適応していくことは、まさしく進化の基本です。
弱肉強食の社会ではなく、社会適応できるものが進化を続けることができるのです。
総和の力で社会が進化している現代社会において、その基盤となる人の総和が危うくなっている今こそ、高齢社会に生きる私たちがなすべきことをあらためて考えることが求められています。
―― 講演に向けての抱負や、参加される皆さまへのメッセージをお願いします。
健康管理から「健康づくり」へ。これは、制限から可能性の拡大へと、健康の捉え方を進化させることです。
人口減少が進む現代において、企業も個人も健康への投資を真剣に考える必要があります。
これからの時代、企業が重視すべきは有形資産だけでなく、未来への投資としての無形資産、つまり人への投資です。
一人ひとりのパフォーマンスを高め、技術革新も活用しながら、総和としての人的資源の価値を最大化していくことが求められます。
健康におけるこうしたパラダイムシフトが、自分自身のパフォーマンスを高めるだけでなく、企業、そして社会全体の進化を支えることになります。
- 岡田 邦夫氏(おかだ くにお)
- 特定非営利活動法人健康経営研究会 理事長
- 大阪ガス本社産業医、健康開発センター健康管理医長を経て、統括産業医として2020年まで従事。2006年に特定非営利活動法人健康経営研究会を設立し、健康経営の普及啓発を推進。『「健康経営」推進ガイドブック』(経団連出版)、『これからの人と企業を創る健康経営』(健康経営研究会・共著)など著書多数。

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