講演者インタビュー
“組織能力開発”がもたらす事業環境の加速度的変化への対応
~オムロンの新規事業チーム立ち上げに学ぶ~
株式会社インヴィニオ 代表取締役/組織能力開発コンサルタント/日本CHRO協会主任研究委員
土井 哲氏
企業の継続的成長のためには、環境変化に合わせた事業モデル変革や、新商品・新事業を立ち上げることが不可欠です。新しいことにチャレンジし、成功させるには、それを成し遂げられるだけの「組織能力」が必要です。「組織能力とは何か」「必要な組織能力をどのように特定し、実装するのか」について、オムロン株式会社の制御システム事業部門の新規事業立ち上げチームと取り組んだ4ヶ月間の事例を基にご紹介します。
―― 今回の貴社講演はどのような課題をお持ちの方向けの内容でしょうか?
本講演では、ビジネスモデルの変革や新商品、新規事業の立ち上げにおいて、HRBPがどのように支援できるか、実際のケースを取り上げて解説するとともに、その効果について検証します。
ケースとして取り上げるのは、「ソーシャルニーズの創造」が全社的に掲げられる中で、新たな価値創造にチャレンジするオムロン株式会社インダストリアルオートメーションビジネスカンパニーの検査システム事業部DXコト売りチームと約4ヵ月にわたって取り組んだ事例です。
このチームは約2年前に作られましたが、事業の立ち上げは必ずしも計画通りには進んでいない状態でした。そのような状況で、外部からどのような介入・支援を行ったのか時系列で振り返るとともに、どのような変化がチーム内に生じたか、4ヵ月間で何が起こったかなどを検証します。社内で同様の状況を抱えていらっしゃる戦略人事、HRBPの方々にとってご参考になれば幸いです。
―― 今回の講演の聞きどころ・注目すべきポイントをお聞かせください。
戦略人事を担う方にとって、経営陣や事業部門が打ち出したパーパス、ビジョン、戦略などの実現を、組織・人事面から強力に支援することは至上命題であるかと思います。しかし、実際どのようにそれを実行するのか、体系だったアプローチがないのが現実ではないでしょうか。
私たちインヴィニオは、HRBPの育成で定評のある米国のAlignOrg社と提携し、戦略の実行体制を作り上げる手法を獲得しました。それは「組織能力」という概念を媒介にして、事業戦略と人材戦略を連動させるものであり、マイケルポーターによる戦略の定義=「戦略とは、意図的にライバルとは異なる一連の活動を選び、独自の価値を提供することである」を実現するものです。
組織能力は、一連の活動を可視化した「活動システムマップ(CASM)」で表現することが可能です。CASM作成により、(1)戦略実現の鍵を握るキーポジションはどこか(2)それらのポジションに求められる職務(ジョブ)はどのようなものか(3)その職務を担う人材の要件はどうあるべきか(4)一連の活動を促進するためにどのような業務プロセスが求められるか(5)何をKPIとすべきか(6)どのような評価基準が好ましいか、といった戦略人事が明らかにすべきことすべてが見えてきます。
今回ご紹介するオムロンの事例をもとに、CASMというツールの有効性とこのツールが発揮するパワーについて理解してもらえますと幸いです。
―― 講演に向けての抱負や、参加される皆さまへのメッセージをお願いします。
2021、22年度と日本CHRO協会で、日本版HRBP制度について考える研究会の座長を務めました。約80社の方々にご参加いただき、HRBPの果たすべき役割、HRBPに求められる知識・スキルなどについて議論を重ねてきました。日本企業のグローバル市場における競争力の回復にむけて、HRBPの果たすべき役割は大きいということについては共通認識が出来上がりましたが、実際に企業変革や事業立ち上げで事業リーダーをしっかりサポートできる人はまだまだ少ないという印象です。本講演で紹介するCASMというツールは戦略人事にとって強力な武器になりますので、使い方をご理解いただき、活用してもらえたらありがたいです。
- 土井 哲氏(どい さとし)
- 株式会社インヴィニオ 代表取締役/組織能力開発コンサルタント/日本CHRO協会主任研究委員
- 84年東京大学経済学部卒業後、東京銀行に入行。在職中に米国MITスローン経営大学院にてMSを取得。92年McKinsey & Co.に入社、通信業界、IT業界のコンサルティングに従事。97年にインヴィニオの前身である(株)プロアクティアを設立。以来、人材開発・組織開発分野のコンサルティングに従事。
「日本の人事部」「HRカンファレンス」「HRアワード」は、すべて株式会社HRビジョンの登録商標です。
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