部署や年齢、性別も超えて役員をロールモデルに――
あいおいニッセイ同和損保に学ぶ
「女性管理職の育成」とは
人事部 ダイバーシティ推進室長
福岡 藤乃さん
あえて遠い人同士で組む、メンター制度の“隠れ目的”とは
先ほどご紹介いただいた女性管理職メンター制度の取り組みは、「メンター・アワード2013」において優秀賞を受賞するなど、高く評価されています。あらためて同制度のねらいや立ち上げの経緯をお聞かせください。
懸案である女性役員の誕生に向けて、「女性管理職へのさらなる成長機会の提供」および「女性管理職の経営に対する意識の向上と支援」を目的にメンター制度を導入しました。男性役員にロールモデルとしての役割を担ってもらい、その豊かな経験をもって、メンティーである女性管理職の視野を広げ、経験不足を補うのが弊社の女性管理職メンター制度のねらいです。
2011年度にトライアルとして、まず10組でスタートしました。導入にあたっては、メンター・メンティーを集めて、制度の趣旨やメンタリングの進め方を徹底するキックオフ説明会を開催。この説明会には社長も同席し、「女性管理職を育てるのは役員の仕事だ」と檄(げき)を飛ばしました。本格実施となった昨年度は、メンティーの対象を首都圏以外で働く女性管理職まで広げ、メンターにも役員のほか本社理事や部長クラスを含めて、全国21組に拡大しました。
最大の特徴は、女性管理職に男性のメンターをペアリングしていることですね。
現実的に女性の役員がいないという制約があります。また、先述したように弊社は合併会社ですから、カルチャーの違う環境で育った多種多様な人材が混在し、部門が違うとお互いにあまり交流する機会がありません。そこを逆手にとり、年齢や所属部門、出身会社が異なる“遠い人同士”でペアリングしました。異動が少なく多様な経験を積むチャンスがなかった女性管理職に、広い視野をもってもらいたい、キャリアアップに必要な社内ネットワークを構築してもらいたいと考えたわけです。
指名されたメンター・メンティーに、不安や困惑はありませんでしたか。
最初はあったと思います。私もトライアルに参加したのですが、それまで話をしたことがなく、出身会社や部門の異なる役員と何を話していいものかと戸惑いました。
当初、参加者を選ぶにあたっては、男性役員にメンターを依頼するより、メンティーになる女性管理職を説得するほうが大変だったんです。「役員の方に相談するなんておそれ多い」という声や、逆に「私には必要ない」といった意見もありました。最初に指名したのがライン長ばかりで、もうメンターの支えなど求めない、自立した女性が多かったからかもしれません。ただ、この制度には先述した二つの目的のほかに、経営層に女性管理職の良さを知ってもらう「役員への意識付け」という“隠れ目的”もあるんです。女性管理職には、このねらいを伝えて、引き受けてもらいました。
ダイバーシティ推進室としては、どのようなフォローを行なっていますか。
メンタリングの実施期間は8ヵ月で、月1回1時間が基本です。毎回、メンターとメンティー両者が記載したメンタリングシートを提出してもらい、私たちはそれを基に、計画どおりに実施できていないペアにはヒアリングを行うなど、進捗を管理しています。また、実施期間中にはメンティー全員を集めた「中間意見交換会」を開催。メンタリングを通じて感じた効果や課題を語り合い、あらためて自己を見つめ直す機会としています。