ウィズコロナ時代における、働く人のストレス解消方法とメンタルヘルステックの活用可能性に関する調査
働く人の半数弱がメンタルヘルステックに関心を持ち、
20代の5人に1人は活用していることが明らかに
株式会社NTTデータ経営研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:山口 重樹、以下 当社)は、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社(本社:東京都品川区、代表取締役社長:塚本 良江)が提供する「NTTコム リサーチ」登録モニターを対象に、10月10日の世界メンタルヘルスデーに向けた「ウィズコロナ時代における、働く人のストレス解消方法とメンタルヘルステックの活用可能性に関する調査(以下、本調査)」を実施しました。
本調査では、コロナ禍における働く人のストレス増加とメンタルヘルステックの急増を背景に、20~50代の働く人を対象に、コロナまん延以降に実践しているストレス解消方法とメンタルヘルステックの利用に関する意識について調査を行いました。その結果、以下のことが明らかとなりました。
【主なポイント】
- 精神的健康度が低い人が約半数にわたり、コロナのまん延以降にストレスが増加した人の7割弱において、自身の心の健康(メンタルヘルス)への関心が高まっている
- 日常的なストレス解消方法のうち、自身のストレス改善に繋がったものについて、30~50代では1人でできる方法が特徴的であった一方で、20代では、人との繋がりを必要とする方法が特徴的であった
- 専門的な相談窓口の利用については、若い世代になるほど不安感・抵抗感が強く、特に20代では、メンタルヘルスに対するネガティブなイメージを懸念し、周囲からの印象を気にしていることが分かった
- メンタルヘルステックについては、調査参加者のうち、半数弱が関心を持っており、特に20代については、半数以上が関心を持ち、そのうち約2割が実際に利用していることが分かった
【背景】
現代の日本では、生涯を通じて心の不調を経験する人の割合が5人に1人と言われています。特にコロナのまん延以降は、社会情勢や働き方の変化などを受けて、職場においてメンタルヘルスの問題が顕在化されてきており、いまや働く人のメンタルヘルス対策は多くの職場において喫緊の課題だと考えられます。
そのような中で企業ではストレスチェックテストや相談窓口など、メンタルヘルス対策を行っていますが、昨年度、弊社が実施した調査によると、コロナまん延以降にストレスが増加した人たちの相談窓口の利用率は3割程度と低く、まだ浸透してないことが分かりました。その背景の一つとしては、面談した内容が周囲に漏れてしまうのではないかという不安があることも示唆されました。一方で、昨今では、「メンタルヘルステック」と呼ばれる、ウェブやアプリといったICT技術を活用し、メンタルヘルスケアを行うサービスが急増してきています。こうしたメンタルヘルステックには、いつでもどこでも利用可能であることや比較的安価であることなど、様々な利点が挙げられますが、その一つとして、利用していることが他者に明らかになりにくいということが挙げられます。
そこで本調査では、現在のウィズコロナ時代における、働く人のストレス解消方法の実態を明らかにするとともに、新たなストレスケアとしてのメンタルヘルステックに着目し、メンタルヘルステックの活用可能性を明らかにしました。
【主な調査結果・考察】
1. 精神的健康度が低い人が約半数にわたり、コロナのまん延以降にストレスが増加した人の7割弱において、自身の心の健康(メンタルヘルス)への関心が高まっている
本調査では、「WHO-5精神的健康状態表」を用いて調査参加者の精神的健康状態(メンタルヘルス不調の程度)を測定し、合計点数が13点未満の参加者については「精神的健康度が低い」とみなしました。集計の結果、487名(43.1%)において精神的健康度が低い状態にあることが分かりました。さらに精神的健康度が低い人のうち、約7割はワークエンゲージメント(注1)が低いことが分かり、約6割はストレスコーピングの程度(注2)が低いことも分かりました。
加えて、コロナ以降にストレスが増加している人の約6割は、コロナ以降に自身の心の健康(メンタルヘルス)への関心も高まっており、メンタルヘルスケアのニーズが高まっていることが伺えます.
仕事におけるストレスの原因としては、全体では「対人関係」続いて「仕事の量」が多く挙げられました。さらに、仕事におけるストレスの原因は年代によって違いが見受けられ、20代では「仕事の失敗・責任の発生等」、30代では「仕事の量」、40代では「対人関係」が顕著でした。キャリアの形成段階によって特にストレスと感じる事象が異なることが推察されます。
2. 日常的なストレス解消方法のうち、自身のストレス改善に繋がったものについて、30~50代では、1人でできる方法が特徴的であった一方で、20代では、人との繋がりを必要とする方法が特徴的であった
日常的なストレス解消方法のうち、自身のストレス改善に繋がった方法として、30~50代では、「休む・寝る」「好きな食べ物や飲み物をとる」「ストレッチや運動をする」といった、一人でできる基本的なストレス解消方法が特に多く挙げられました。なお、50代では「ストレス解消方法を実施していない」という割合も高く、上手くストレス解消方法を実施できている人とできていない人の二極化していることが見受けられます。
一方で、20代については、「SNSをしたり(投稿したり、他の人の投稿をみる)、ネットサーフィンをする」が最もストレスの改善に繋がっている方法として挙げられ、その他30~50代と比較すると、「家族や友人に相談する・話を聞いてもらう」や「ボランティアや地域活動をする」といった項目も多く挙げられました。30~50代と比較して、20代は同居人がいない割合が顕著に高い(45.8%)上に、テレワークの実施率も高く(38.5%)、普段、人とコミュニケーションをとることが少ないため、人との繋がりを持つことがストレス解消に繋がっているのではないかと考えられます
3. 専門的な相談窓口の利用については、若い世代になるほど不安感・抵抗感が強く、特に20代では、メンタルヘルスに対するネガティブなイメージを懸念し、周囲からの印象を気にしていることが分かった
本調査では、職場の相談窓口(産業医面談やカウンセラーへの相談など)と、職場とは関係のない相談窓口(電話相談や病院、カウンセリングオフィスなど)、ウェブやアプリを用いたキャラクターやロボット(AIを用いたチャットボットなど)への相談、それぞれに対する不安感や抵抗感を質問しました。
その結果、若い世代になるほど、相談手法に関係なく、自身について相談することへの不安感や抵抗感が強いという傾向が見受けられました。特に20代については、こうした相談窓口等を利用することで、周囲に変なうわさが立てられたり、周りからメンタルヘルスの問題がある人だと思われたりすることを避けたいといった意向が強く、身近な人にこうした相談窓口を利用したと言いづらいと考えていることが分かりました
4. メンタルヘルステックについては、調査対象者のうち、半数弱が関心を持っており、特に20代については半数以上が関心を持っており、2割弱が実際に利用していることが分かった
アプリなどでメンタルヘルスケアやストレスケアができる、メンタルヘルステックについては、調査参加者のうち、45%以上が関心を持っており、約1割が実際に利用していることが分かりました。若い世代になるほど関心が高く、特に20代の認知率が最も高く、2割弱が利用していることも分かりました
その中でメンタルヘルステックの利用者(過去利用含む)に対して目的を聞いたところ、特に「メンタルヘルスに関連する病気の予防(34.5%)」「ストレス解消・緩和(34.5%)」「仕事へのモチベーション向上(29.2%)」が多く挙げられ、7割以上が目的に見合っていると感じていました。特に20~30代は「メンタル面やストレス耐性の強化(30.6%)」を目的としている人も多く見受けられました。メンタルヘルステックについては、不調の改善というマイナスの状態をゼロの状態にするための活用だけではなく、自身のメンタルヘルス(心の健康)をより増進していくという、ゼロの状態をプラスの状態にするための活用もされていることが推察されます。
さらに調査参加者全体に、自身のストレスを緩和・解消するために使いたいと思うアプリサービスを聞いたところ、20~30代は「自身のストレスの要因を可視化してくれるサービス(27.3%)」や「自身のストレス値を可視化してくれるサービス(23.2%)」に対するニーズが高く、40~50代は「自分自身に合うストレスの緩和・解消方法を教えてくれるサービス(18.6%)」に対するニーズが高く、年代によってサービスへのニーズがやや異なることも見受けられました。
【今後について】
本調査を元に、コロナのまん延以降、ストレスが増加しただけではなく、それによって自身のメンタルヘルスへの関心が高まっていることが明らかとなりました。さらに、主観的に有効だと感じるストレス解消方法やメンタルケアの方法については年代別に差があり、特に20~30代といった若い世代においてメンタルヘルステックのニーズが高まっていることが示唆されました。
20~30代の場合、いわゆる「メンタルヘルス」や専門的な相談への抵抗感が強いことが見受けられますが、一方で、メンタルヘルステックへの関心は強いことが分かりました。利用法としては、現在のストレス状態を把握したり、よりストレス耐性を強化したりすることへのニーズが強く、初めから本格的なメンタルケアを行うのではなく、日頃からライトに自身のメンタル状態を把握したり、メンタルケアを行うことができたりするようなメンタルヘルステックが適しているのではないかと考えられます。実際に、24時間365日いつでもオンラインカウンセリングが可能なサービスや、アプリ内でうつ等に効果的な心理療法を受けることができるサービスも出てきています。
40~50代の場合、20~30代と比較すると、専門的な相談への抵抗感は弱いものの、そもそもストレス解消方法を実施していないという割合や自分自身に合うストレス解消方法を教えてほしいという割合も高く、ストレス解消方法については手探りであることが伺えます。一方で、特に主観的に有効だと挙げられた手法をふまえると、まずは「休む・寝る」や「好きなものを食べる・飲む」といった基本的なストレスケアを行う環境(時間や場所)を確保・実践できること、また、その人に合うストレス解消方法を提供できることが重要なのではないかと考えられます。
当社では、このような調査を通じて得た示唆を元に、職場におけるメンタルヘルスの改善・従業員のパフォーマンス向上について、今後も調査や実践に取り組んでまいります。
(注1)仕事に積極的に向かい活力を得ている状態
(注2)ストレスのもと(ストレッサー)にうまく対処しようとしている程度
【調査の概要】
調査対象 NTTコム リサーチ クローズド調査
調査方法 非公開型インターネットアンケート
調査期間 2022年8月5日~2022年8月10日
有効回答者数 1,130人
対象者 20~50代男女の就業者
【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社NTTデータ経営研究所
ライフ・バリュー・クリエイションユニット
シニアコンサルタント 坂井田 萌
コンサルタント 荒川 悠佳
Tel:03-5213-4048
◆本リリースの詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社NTTデータ経営研究所/ 10月6日発表・同社プレスリリースより転載)
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