人的資本経営2年目に、人事責任者が考えるべきこと~個を起点に、変化に柔軟に対応できる「組織力」を創出する~
島貫 智行氏(中央大学大学院 戦略経営研究科(ビジネススクール) 教授)
冨樫 智昭氏(株式会社リンクアンドモチベーション エグゼクティブディレクター)
2023年3月期の有価証券報告書から、企業に人的資本情報の開示が義務化された。義務化から2年目を迎える2024年、これからは人的資本経営の「開示」だけでなく、「実践」が求められるが、そこにはどのような問題や課題があるのだろうか。また、今後の人事に求められる向き合い方や取り組みは何だろうか。
2月2日に開催された「HRカンファレンス2024-冬-」~リーダーズミーティング~では、人材マネジメント論を専門とする中央大学 戦略経営研究科(ビジネススクール) 教授の島貫智行氏と、「人的資本経営」のリーディングカンパニーである株式会社リンクアンドモチベーションで組織開発本部企画室のエグゼクティブディレクターを務める冨樫智昭氏からの問題提起を受け、日本を代表する企業の人事責任者たちが「人的資本経営2年目に向けて、いま何を考えるべきか」について活発な意見交換・議論を行った。
- 島貫 智行氏
- 中央大学大学院 戦略経営研究科(ビジネススクール) 教授
- 冨樫 智昭氏
- 株式会社リンクアンドモチベーション エグゼクティブディレクター
「人的資本経営」についてさらに学ぶ
人的資本経営は「開示元年」から「実践元年」へ。重要なのは、個人の資本と組織のエンゲージメント
「人的資本経営に、唯一の正解はありません。画一的な正解がない中で、各社ならではの人的資本経営をどのように進めていくのか。本日は、皆さまと議論する場にしたいと考えています」
冒頭、冨樫氏はこのように会の趣旨を伝えた。また、大手企業向け組織人事コンサルティング領域において、ここ1年は人的資本経営に関する相談件数が増加していることを報告。人事責任者や役職者などから、多くの相談が寄せられているという。
次に島貫氏が、人的資本経営2年目に向け、企業が再点検すべきポイントを共有した。
人的資本経営において最も重要なポイントは、経営戦略と人材戦略の連動と言われ、人事部門には、人材戦略の具体化が求められている。しかし、島貫氏は、変化の激しい時代に人的資本経営を実践するには、「戦略構築」よりも「組織力強化」の視点が重要になるのではないかと提起する。
「各社の統合レポートを見ると、経営戦略と人材戦略をいかに連動させているかがクローズアップされています。もちろん、それは重要です。しかし現代においては、頻繁に起こる変化にあわせ、経営戦略も移り変わっていきます。この状況に柔軟に対応できる組織力を持っていることが、経営戦略の転換を可能にし、持続的な成長につながるのです。人事部は、組織力を強化するという視点から、改めて人的資本経営のストーリーを再点検・再考する必要があるのではないでしょうか」
企業の「組織力」を高めるには何が必要か。人事部はどのような観点から、自社の人的資本経営を再点検する必要があるのか。島貫氏は、必要となる三つの「再点検すべきポイント」を掲げた。
再点検ポイント1:人的資本は、企業のものではなく、従業員個人のものである
一つ目の再点検ポイントは、従業員に焦点を当てた人材マネジメント(Employee-focused Human Resource Management)ができているかどうかだ。
人的資本経営においては、しばしば「経営戦略を実現して企業業績を達成することが、人事の役割である」「人材マネジメントの成功は、企業業績が向上したかどうかで評価すべきである」などと言われる。しかし、経営視点のみを重視した人材マネジメントには限界がある。
企業が持続的に成長するには、従業員を「自律的な意思を持つ存在」として認識し、エンゲージメントやウェルビーイングの向上を通じて一人ひとりの主体的な貢献を引き出していく人材マネジメントが必要だと、島貫氏は語る。
「ここで大事なのは、『人的資本は、企業のものではなく従業員のものだ』という視点があるかどうか。従業員個人が有する能力やスキル、知識を起点として顧客価値を作り、それを通して組織業績や企業価値につなげる。これが、人的資本経営の企業価値創出サイクルです」
再点検ポイント2:エンゲージメントやウェルビーイングを高める「従業員体験」をデザインできているか
二つ目の再点検ポイントは、より良い従業員体験のデザインだ。従業員体験(Employee Experience)とは、従業員一人ひとりが、自分が雇用される企業で働くことを通じて得られる「すべての経験」のことを指す。
この考え方は、元々はマーケティング戦略における顧客体験(Customer Experience)からきている。例えば、何度も足を運びたくなるカフェがあるとしたら、その理由はなんだろうか。「コーヒーがおいしい」「雰囲気が良い」「店員の接客が丁寧」「窓から見える景色が好き」といったすべての体験を通して、顧客一人ひとりがカフェを評価し、再来訪するかどうかを決めている。島貫氏は、企業での従業員体験も同じだという。
「従業員体験は入社前の求職・選考の段階から始まっていて、在職中を経て退職後も続きます。退職してからも、『また、あの会社で働きたいな』と思えるかどうか。そういうトータルな従業員体験をデザインできていることが、人的資本経営では重要です」
再点検ポイント3:個人の人的資本を組織力に転換する「四つの従業員価値提案」
三つ目の再点検ポイントは「従業員価値提案」(Employee Value Proposition)という考え方。
企業が従業員に提案(提供)すべき価値には、さまざまなものがある。では、どのような価値を提供すれば、従業員体験が向上するのか。「心理的安全性」で知られるエドモンドソン教授らは、「従業員価値提案」というフレームワークで説明している。
企業が従業員に提案・提供すべき価値は、「短期-長期」と「個人-集合的」の2軸で分けた四象限で分類できる。島貫氏は、とくに「つながり・連帯」と「意義・パーパス」が特徴的かつ重要だという。
- 物理的な待遇:金銭的報酬、福利厚生など
- 能力開発・成長の機会:学習機会、キャリア支援、ジョブローテーションなど
- つながり・連帯:人間関係、感謝、心理的安全性など
- 意義・パーパス:企業の存在意義、仕事の意味付けなど
「大事なのは、『従業員のニーズを満たす価値を提供すれば、従業員体験が向上する』ということではなく、『これらの価値提供を通じて従業員体験を最大化することで、個人の人的資本を組織力に転換する』ことです。それが経営戦略の実現や企業業績の達成につながります。人的資本経営の実践を成功させるには、従業員だけでなく企業の成長にも貢献するように、これらの四つの価値をトータルに提供する必要があるのです」
三つの再点検ポイントを提起した上で、島貫氏は次のように語った。
「人的資本経営においては、企業を『強くする』ことも重要ですが、企業という組織を『豊かにする』という視点も重要です。そのとき、さまざまなスキルや知識を持つ『個人』を起点にして組織力を高め、いかに企業価値を向上できるか。そのストーリーを描くことが、人的資本経営2年目に必要ではないでしょうか。」
人的資本経営を推進する企業の悩みと課題
続いて、企業の人的資本経営の推進・実現を日々支援する冨樫氏が登壇。企業の実態を踏まえて、人的資本経営の推進の各段階でどのような課題があり、人事責任者・担当者は何に悩んでいるのかを語った。
人的資本経営に関して寄せられる相談は大別すると、「開示」「実践」「評価」「設計」という四つがある。この1年間はとにかく、多くの企業が人的資本に関する情報の「開示」に奔走していたと冨樫氏は説明する。
「『開示』が一段落した今、聞こえてくるのは、『いまあるデータや取り組みの範囲内でとりあえず開示はしたが、ストーリー性や独自性がない。今後はどうしたらいいのか』といった声です」
一方、昨年の「開示」を通じて対外的な見せ方を一定整えた企業からは、「実践」についての悩みをよく耳にする。「いろいろな施策を考えて取り組んでいるが、なかなかうまく進んでいない」「数値目標は設定したが、2~3年後に結果が悪くなったら、企業評価も下がりそうで不安だ」という声。
あるいは、各種人事施策の「実践」は今のところ大きな問題なく進んでいる企業からは、「評価」の悩みが寄せられる。「取り組みによってKPIの数値は上がったが、果たしてそれが本当に事業成長、企業価値向上につながっているのかはわからない」「e-Learningの受講率が15%上がったが、それがどう株価に影響するのかを経営層や投資家に説明できない」という相談がある。
最後の「設計」では、「全体のつながりが曖昧で、中長期の計画・ストーリーがない」「目先の必要なことをバラバラに対処している状態だ」「どうしたら全体像を描けるのか」という悩みが出てくる。
人的資本経営の取り組みにおいて企業が抱える悩みの実態を伝えつつ、冨樫氏は次のように語る。
「人的資本“開示”と人的資本“経営”は別ものです。人的資本“経営”は、人への投資を通じて企業価値を向上させるアプローチです。そのためには『設計→実践→評価』のサイクルを回すことが必要です。このサイクルを回せていれば、自ずと『開示』は実現できるでしょう。
『開示』が一段落した今、ここからが人的資本経営の本番です。自分たちが人的資本経営を通じて何を目指していくのかを、改めて考える必要があるでしょう」
グループディスカッション:人的資本経営で、本当に目指したいものは何か
セッション後半では、参加者によって2回のグループディスカッションが行われた。
Aグループ
- ホーチキ株式会社 谷 亘氏
- NOK株式会社 江上 茂樹氏
- 高砂熱学工業株式会社 谷口 哲也氏
- サイボウズ株式会社 恩田 志保氏
Bグループ
- GMOインターネットグループ株式会社 目黒 隆幸氏
- 丸紅株式会社 鹿島 浩二氏
- エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 奥田 智行氏
- DAIWA CYCLE株式会社 佐々木 尚子氏
- アサヒビール株式会社 三浦 一郎氏
Cグループ
- 株式会社明治 山口 恭子氏
- 株式会社ハピネット 秋元 真弓氏
- ユニアデックス株式会社 白井 久美子氏
- ランジェコスメティーク株式会社 峠ヶ かおり氏
- 株式会社ベイシア 割石 正紀氏
Dグループ
- コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社 東 由紀氏
- 株式会社NTTデータグループ 矢口 武史氏
- 株式会社UACJ 鈴木 宏氏
- カルビー株式会社 流郷 紀子氏
1回目のテーマは、「人的資本経営で、あなたが本当に目指したいものは何か?」。冨樫氏からの「人的資本経営を行うにあたり、会社で(あるいは、あなた自身が)本当に大事なKGI/KPIは何だと思いますか?今掲げている指標にこだわらず、改めて問い直してみてください」という問いに対して、参加者それぞれの本音や生の意見が語られた。
Aグループ
Aグループでは、従業員の幸福度などの測定方法(数値化)が難しいという意見や、エンゲージメントと業績向上の関係性に関する意見などが出た。
Aグループで挙げられたKGI/KPI
- エンゲージメントスコア(従業員の幸福度や貢献実感度として捉えた場合)
- 数値ではなく目指すものとして、パーパス&バリュー共感度
- コンピテンシー発揮度
- 休んでもらうことは大事なので、休日取得率
- スキル取得状況
- ハイパフォーマー定着率
- ポジション充足率
- (本当は「従業員の幸せ度」にしたいが)時間あたりの生産性
- 結果的に自社のパーパス達成度につながるので、自社が提供するサービスの利用者数
Bグループ
Bグループでは、エンゲージメントスコアの確認方法に関する話題が上がった。他にも、従業員の「笑顔」や、女性にとって働きやすい環境は男性にとっても働きやすい会社につながるなどの意見も出た。
Bグループで挙げられたKGI/KPI
- 従業員の「笑顔」
- エンゲージメントスコアで、組織別、年代別など細かく見ます
- 自由なアイデア創出に重要な、心理的安全性
- 女性従業員の満足度・勤続年数。結果的に、男性にとっても働きやすい環境になると考えます
- コンプライアンスサーベイスコア
GMOインターネットグループ 目黒氏:私たちのチームで出たKGI/KPIは、エンゲージメントや女性従業員の満足度、笑顔です。従業員の「気持ち」がパフォーマンス発揮の原動力という点から、私たちのチームではこれらの意見があがりました。笑顔を計測するのは難しいので、コミュニケーション施策の参加者数、対話の場の数、イベント開催頻度などで測るイメージをしています。
Cグループ
Cグループでは、従業員の「健康」を指標として考えることに肯定的な意見が複数出た。
Cグループで挙げられたKGI/KPI
- エンゲージメントスコア
- 健康第一、元気が一番なので人間ドック受診率
- パーパスへの共感度・理解度・行動変容度
- eNPS(Employee Net Promoter Score:職場推奨度)
- ROE×ESG指標+自社らしさ
- 一人あたりの売上高・営業利益
- NPS(Net Promoter Score:顧客ロイヤルティ)+エンゲージメントスコア+売上(利益)の合計値
- CAGR(Compound Annual Growth Rate:年平均成長率)
明治 山口氏:「従業員の力あってこそ」ということで、従業員の人間ドック受診率100%を重要指標とする会社があります。また、KGI/KPIの設定ではありませんが、健康については「事業を通して健康の価値を提供していきたい」という意見も出ました。
Dグループ
Dグループでは、エンゲージメントの活用に関するさまざまな意見が出た。さらに、「考えたKGI/KPIを有価証券報告書などで外部へ出す際に分かりやすく記載するのが大変」という声も上がった。
Dグループで挙げられたKGI/KPI
- エンゲージメントスコア
- 活躍している従業員の割合を確認する、全員活躍度
- この会社で働き続けたいか、この会社を人に勧められるか、誇りを持てるかという気持ち
- 中長期での従業員「個人」の目標(やりたいこと、成長したいこと)と達成度
- 組織のPVMV(パーパス、ビジョン、ミッション、バリュー)目標への従業員の満足度、またそれらに対する組織・上司・チームの貢献度。ただし、押し付けにならないようにすることが大事
全グループの共有を総括して、島貫氏からコメントがあった。
「さまざまなKGI/KPIが出てきました。大事なのはそれらの指標そのものではなく、背後にある経営者や人事部門長の価値観や想いだと思います。投資家の方々が『ストーリーを語ってほしい』と言うことがあります。表面的な言葉や数字では見えてこない、人事部門長として実現したい想いを聞きたいからでしょう」
グループディスカッション:人的資本経営の実現へ困っていること、苦労していることは何か
2回目のディスカッションでは、人的資本経営において目指す指標(KGI/KPI)を改善していく上で困っていること、苦労していること、トライしていることなどについて、意見を出し合った。
Aグループ
人的資本経営の実践において苦労している点として、「評価制度のあり方」「エンゲージメントサーベイ活用のあり方」などが挙げられた。「評価はジャッジが目的ではなく、成長支援のためのツール」「エンゲージメントサーベイはスコアよりもアクションが大事」などのコメントやアドバイスがあった。
高砂熱学工業 谷口氏:エンゲージメントサーベイをいかに有効活用するかに関する話題が印象的でした。大事なことは、結果の数値ではなく、結果に基づいて皆で話し合い、具体的なアクションにつなげることです。エンゲージメントのスコアを議論のスタートラインにすることが重要だという意見が出ました。例えば、結果や成功事例を社内に共有して取り組み状況を見える化することで、組織内でディスカッションが生まれ、取り組み・改善につながり、組織が変わり出したという事例がありました。
Bグループ
苦労している点として、「エンゲージメントを高めるための対話の場をいかに作るか」「開示した数字をいかに上げるかという狭い視野になり、本当の目的が見えなくなってしまう」「施策を行うことが目的となり、施策疲れが起きている」などの意見が上がった。
アサヒビール 三浦氏:一番印象深かったのは、コミュニケーション・対話の場をいかに創出するかということ。ある会社では、役員から若手まで、部署を越えた3人のメンバーでチームを組んで継続的な対話の場を設けることにより、実際に効果が出ているそうです。
Cグループ
ディスカッションでは、「人的資本経営に対する経営陣の向き合い方」に関する意見が出た。他にも、「人的資本経営」「エンゲージメント」「パーパス」といった言葉を使っているのは人事だけで、経営陣や現場には、それらの言葉に対する距離感・嫌悪感があることや、相手の立場や属性に応じた「言葉」を使うことが重要との声があった。人事部門は管理的人事・オペレーション人事の発想が抜け切れていない面もあり、マインドチェンジが必要という意見も出た。
ランジェコスメティーク 峠ヶ氏:「ギャップをいかに乗り越えるか」がキーワードでした。親会社と子会社、人事と現場、管理職と若手など、会社にはさまざまなギャップがあります。ギャップがあるままだと、やりたいことも実現しない。そのとき大事なのは「言葉」です。人的資本経営にしても、相手が理解できる言葉で伝えないと理解されません。人事は経営目線の言葉ではなく、従業員の目線から従業員の言葉で語ることが重要なのではないか、という話になりました。
Dグループ
人的資本経営や変革といっても、本社と営業と工場ではその意味も捉え方も異なる。一律に進めると「それは自分たちに関係がない」という見方も出てくる。そのため、人事は経営視点で変革を行うのではなく、従業員視点で捉えることが必要だという意見が出た。また、「変わる必要性」を押し付けるのではなく、変わった先にある充実感や幸福感、安心感を伝えることが重要ではないかとの意見が出た。
UACJ 鈴木氏:人的資本経営の第一歩は従業員を大事にすることだ、という話から始まりました。そのためには、会社からの押し付けではなく従業員に変わってもらう「仕組み」が必要です。その仕組みの結果として、気がついたらエンゲージメントが上がり、パーパスが実現し、業績目標も達成する。あくまでも結果なのですが、そういう仕組みづくりが重要だという話になりました。
人材ポリシーを明確にし、人事部改革のスタートラインに立つ
二つのディスカッションで議論された内容を踏まえて、島貫氏から人的資本経営再点検の新たなポイントが加えられた。
「まず1点目は、『自分が挙げたKGI/KPIの中に、自社らしさはあるか』。たとえば、自社のパーパスや経営理念を反映した独自のKPIはあるでしょうか。エンゲージメントスコアを同じようにKPIに設定していても、それぞれの会社にとっての意味合いや込められた想いは異なるはずです。
2点目は、『人材のコンディションが大事にされているか』。経営戦略の実現につながる人的資本というと、どうしても能力やスキル、専門性が浮かびます。しかし、従業員体験を最大化しようとするなら、従業員の健康や体調、笑顔、感謝の気持ちといった『人材のコンディション』を重視する必要があります。従業員体験はスキルが高いから最大化するわけではなく、一人ひとりが良いコンディションにあるかどうかに影響を受けるからです。
3点目は、『自社の組織力の特徴を捉えているか』です。議論の中でも出てきましたが、組織力のベースになるのは組織文化や風土、パーパスへの共感、従業員同士のつながりなどであり、それらにフォーカスした人材マネジメントが重要です」
これらを進める基盤として、人事部には人材ポリシー(プリンシプル、フィロソフィー)の明確化、そして人事部変革が求められると島貫氏は言う。
「人材ポリシーは、その企業が人材をどう捉えているのか、どう人材マネジメントをするかという、人事の根本に置く考え方のことです。その時々のストラテジー(戦略)を構築するだけでなく、自社が大事にしているポリシー(原則・方針)を明確にしてください。
また、人的資本経営は人事部門にも大きな変革を要求します。今までの人事部の構造や機能、能力とは違ったものが必要なのです。人事部門をどう変えなければいけないのか、人事部の未来像を一緒に考え、実践していきましょう」
ディスカッションは、冨樫氏の次の言葉で締めくくられた。
「本日は、人的資本経営に関して皆さんの想いや悩みを聞くことができました。新しいことをやるときは、常に様々な壁にぶつかります。私は、むしろそこからがスタートラインだと思っています。本日のこの場をスタートラインにして、日本企業の人事部変革を進めていきましょう」
本セッションのまとめ
当日知見をご共有くださった皆さま
※所属や役職は「リーダーズミーティング」開催時のものです。
有識者・プロフェッショナル
-
島貫 智行氏
中央大学大学院 戦略経営研究科(ビジネススクール) 教授 -
冨樫 智昭氏
株式会社リンクアンドモチベーション エグゼクティブディレクター
大手・優良企業の人事リーダー (社名50音順)
-
三浦 一郎氏
アサヒビール株式会社 企画・支援本部 人事総務部 副部長 -
江上 茂樹氏
NOK株式会社 上席理事 社長付 戦略人事担当 -
奥田 智行氏
エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 ヒューマンリソース部長 -
矢口 武史氏
株式会社NTTデータグループ コーポレート統括本部 人事本部 人事戦略統括部長 -
流郷 紀子氏
カルビー株式会社 人事・総務本部 人財戦略部 部長 兼 人財開発課 課長 -
東 由紀氏
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社 執行役員 最高人事責任者 兼 人事・総務本部長 コカ・コーラボトラーズジャパンベネフィット株式会社 代表取締役社長 -
恩田 志保氏
サイボウズ株式会社 人事本部 副本部長 -
目黒 隆幸氏
GMOインターネットグループ株式会社 パートナー健康推進室 室長 -
佐々木 尚子氏
DAIWA CYCLE株式会社 管理本部 総務部 部長 -
谷口 哲也氏
高砂熱学工業株式会社 人事戦略統括部 人事部 担当部長 兼 総務部 担当部長 -
秋元 真弓氏
株式会社ハピネット コーポレート管理室 組織開発部 リーダー -
割石 正紀氏
株式会社ベイシア 人事・総務法務事業部 事業部長 株式会社ベイシアオープス取締役 ベイシアグループ健康保険組合 理事長 -
谷 亘氏
ホーチキ株式会社 人事部 参与 -
鹿島 浩二氏
丸紅株式会社 執行役員 CHRO -
山口 恭子氏
株式会社明治 人財開発部 部長 -
鈴木 宏氏
株式会社UACJ ビジネスサポート本部 本部長付(人材戦略) -
白井 久美子氏
ユニアデックス株式会社 常務執行役員 CISO・CPO -
峠ヶ かおり氏
ランジェコスメティーク株式会社 SBCメディカルグループ経営戦略本部 人事部 部長
経営学・社会システム論・行動経済学・心理学などの学術的背景を基盤にした、基幹技術「モチベーションエンジニアリング」を用いた、組織や人事の経営コンサルティング。コンサルティング・クラウドサービスを通じて「診断」と「変革」のサイクルを提供することで、企業の「従業員エンゲージメント」向上をワンストップで支援。