「リスキリング」を取り巻く企業と働く人の現状とは――。
戦略推進の肝は働く人のマインドセット
守島 基博氏(学習院大学 経済学部 経営学科 教授/一橋大学 名誉教授)
後藤 礼子氏(株式会社ベネッセコーポレーション DX人財開発部 部長)
ゲームのルールが変わった――。いま、経営のグローバル化、デジタル技術を使った新たなビジネスモデル展開などにより、多くの企業が経営戦略・組織構造を変え始めている。その中で重要な経営課題として注目されているのが、「リスキリング」という人材戦略だ。
リスキリングの定義や推進方法、成功要因、さらにはリスキリングを取り巻く組織と働く人の現状、そこに対する人事の正しい向き合い方とは何なのか。2月2日に開催された「HRカンファレンス2024-冬-」~リーダーズミーティング~では、学習院大学教授の守島基博氏、「リスキリング」のリーディングカンパニーである株式会社ベネッセコーポレーションの後藤礼子氏からの問題提起・現状報告を受けて、日本企業を代表する人事リーダーたちが語り合った。
- 守島 基博氏
- 学習院大学 経済学部 経営学科 教授/一橋大学 名誉教授
- 後藤 礼子氏
- 株式会社ベネッセコーポレーション DX人財開発部 部長
「リスキリング」についてさらに学ぶ
リスキリングは「企業の成長」と「個人の成長」をつなぐ経営戦略
守島氏による問題提起1:リスキリングを推進する主体は誰か
最初に登壇した学習院大学教授の守島氏は、「リスキリングを成功させるために必要なこと」と題して、リスキリングの目的や背景、現状や課題について語った。
守島氏の問題提起は、「リスキリングを推進する主体は誰か」という問いから始まった。「リスキリングの主体は、あくまでも企業や社会、政府であり、個人が主体の“学び直し”ではない」と守島氏は言う。
「リスキリングとは、企業の戦略や産業構造を転換する際に必要な人材を確保するための人材戦略です。いまはDXやAIといった新しい技術習得のためのリスキリングに焦点が当たっていますが、大事なのは新しい技術そのものではなく、それらの技術が引き起こす“ビジネスモデルの転換”。それにより、企業にとってまったく新たな仕事が出現するということです。リスキリングの主体は企業・社会・政府などの『戦略(産業政策)を決める立場』にある人たちや組織である、という認識が重要です」
進める主体は企業であるとはいえ、「学習とは、働く人が自律的な意図や自発的な意欲を持って行わないと成果が出ない」と守島氏は言う。
「企業の経営戦略の転換や人的資本経営の推進といった文脈で議論されることが多いリスキリングですが、忘れられているのは、働く人のモチベーションやエンゲージメントといった『学ぶ意欲』との関連ではないでしょうか。
学ぶこと自体が嫌だという人もいます。ただ、多くは『これを学んでください』『あなたが学ぶべきはこれです』と言われてしまって、“やらされ感”が強くなって、自発的に学ぶ意欲は湧いていないのです。
企業がリスキリングを推進する上で最も重要なのは、学習環境や学ぶコンテンツを整備することではなく、『いかに人々に意思や意欲をもって自律的に学んでもらえるか』。そのためのコンテクスト(文脈)や動機づけの仕組みづくりです。私は、リスキリングの成否を握っているのはスキルではなく、マインドの問題だと捉えています。そして、そこが人事の力の発揮のしどころなのです」
だが、「自律」はそう簡単なものではない、と守島氏は言う。
「自律には、キャリアを自分で開発する『キャリア自律』、自分の力で目標を設定して仕事を進める『仕事自律』、また自分一人の意思と力で学ぶ『学習自律』などがあります。
しかし、『自律』はそう簡単なことではありません。キャリア自律にしても、これまで自分のキャリアを会社任せにしてきた人もいるでしょう。仕事自律にしても、中には自分で仕事の責任をとることを極力避けてきた人もいるかもしれません。そうした中で、いかに人の『自律』を支援できるか。そのためには、これまで以上に“丁寧な”人事施策が必要です」
問題提起2:どうすれば、個人の自律的な学びが生まれるか
個人の自律的な学びを起こすために、人事にはどのような仕組みづくりや視点が必要なのか。動機を引き出すための積極的な取り組みを行うと同時に、公正で厳しい評価の両面が必要になると守島氏は話した。
「自律的な学びを起こすための仕組みはいろいろと考えられますが、私は底流にある考え方として三つの視点が重要だと考えています。
一つ目は『未来の提示』です。学ぶことで自分のキャリアや賃金、ポジションなどがどう変化するかを伝えることです。そのためには、前提として企業戦略が明確であることが必要です。二つ目は『小さな成果の確認』です。具体的には、小さな目標を設定する、丁寧にフィードバックする、タイムリーに賞讃する、といったアプローチがあるでしょう。三つ目は『自分化の作業』です。単に企業の求めるものを学ぶのではなく、働く人のキャリアなどに埋め込む作業が重要だということです」
問題提起3:リスキリングは「評価制度のあり方」を問い直す
「一方で、現実的にはこれらの動機づけ施策だけでは不十分であり、人事としては『学ばない/学ぼうとしない』人への対応も必要になります。期待されたレベルで学んでいない場合は、そのことをシリアスに伝える必要があります。
自律的な学びのためには、動機づけの仕組みをつくると同時に、配置転換や降格・降給を含めたペナルティーも必要になるでしょう。ペナルティーを動機づけにつなげるには、丁寧なフィードバックが欠かせません。リスキリングでの動機づけ問題は、『評価制度をいかに有効に機能させるか』という問題でもあるのです」
リスキリングは、日本企業にとって近年、最も重要な人材戦略の一つである。成功のためには、企業の一方的な指示だけでは不十分であり、働く個人が自律的に学ぶマインド変革が必要だ。そのため、人事としては「自律的な学びを起こす、動機づけの仕組み」をつくらなければならない。それは新しい人事施策というわけではなく、人事の基本中の基本である「評価制度」の問題につながる。
「リスキリング」を進めていくと、今後あらためて「評価制度をいかに機能するものにするか」という問題が、人事の重要マターとしてクローズアップされるだろう、と守島氏は締めくくった。
後藤氏による問題提起1:「個人の変容」が「組織的な変容」につながっていない
続いて登壇した株式会社ベネッセコーポレーションの後藤氏は、「リスキリングを取り巻く“組織”と“個人”との現状」と題して、「日本企業におけるリスキリング」の取り組みの現状、および自社が行った調査(※)結果を踏まえて「個人から見たリスキリングの“本音”とは何か」を語り、それらから見えてきた「人事施策を考える上で重要なポイント」に触れた。
(※)『リスキリングに関するインサイト調査』(2023年11月実施/webリサーチ/対象:全国/20~60代男女 事象テーマに関する行動を行っている人)
まず後藤氏は、日本企業におけるリスキリングの現状と課題について、次のように問題提起した。
「日本企業における『リスキリングの必要性』に対する社会認知は、かなり高まっていると思います。実践事例も増えつつあります。しかし、社員の学習が促進され、それが企業の成長や組織のケーパビリティ(組織能力)にどうつながっているのかと問われると、現状ではまだ明確には答えられないと思います。
次に示す図は、私たちが定義している『リスキリングに期待される成果』の指標です。今年初めて『リスキリングアワード』と称して多くの企業に活動事例をご応募いただき、リスキリングでビジネスインパクトを創出する10社にアワードを進呈しました。多くの企業ではまだ、学習環境やプログラムの整備といった『個人の変容』にとどまっており、『組織的な変容』につながる手前の段階でした」
問題提起2:リスキリング先進企業から学べることは何か
リスキリングに関する課題をどう解決すればいいのだろうか。リスキリングの先進企業の事例を見ると、示唆を得られるポイントが三つあると後藤氏は言う。
「一つ目は『経営戦略と人材育成戦略の連動』です。多くの日本企業では人材育成領域と戦略人事領域が分離しており、リスキリングを含め人材育成を担っている人事メンバーは学習プログラムや環境の整備に目がいきがちです。しかし、先進企業を見ると、地道できめ細かな運用設計により人材育成戦略から経営戦略への道筋が作られていると感じます。
二つ目は『個の学びを活かす機会と制度』です。学ぶだけではなく、学んだことを活かす機会が重要です。先進企業では、ポスティング制度や越境学習など、学んだことを活用して実際にチャレンジできる機会をセットで整備しています。
三つ目は『学びに向かう文化醸成』です。『勉強している暇があったら仕事をしてくれ』という風土がまだ残っているとしたら、学習している人をたたえる『ラーニングカルチャー』が必要です」
問題提起3:心に火を灯す人事施策をめざして
後藤氏はこうした企業側の現状と課題に触れつつ、同社で実施したインサイト(内面洞察)調査結果に基づき、個人の視点から見たリスキリングの問題点や課題についても問題提起した。
「多くの人はリスキリングに対して『やらされ感』『押し付けられ感』を持っていることがわかりました。また『型にはめようとしている感じ』『成長の実感や達成感がない』『これまでの自分のスキルが否定されているようだ』という意見が多く、『リスキリングは社会から自分が否定されている』と感じている人が多いという事実が見えてきました。インサイトを掘り下げていくと、背景には、『自己肯定感の低さ』や『自分の人生への主体性のなさ』といった『自分軸の喪失』があるようです」
こうしたイメージがある限り、リスキリングの成功は難しいだろう。では、どうすればいいのだろうか。
「リスキリングはこれまでの自分のスキルや価値の否定ではなく、『社会から肯定され、私がなりたい自分になるためのもの』という捉え方が重要。人事施策においては、自分起点で『いまの自分から、ありたい未来につながるストーリーを描くこと』という捉え方が必要なのです」
その上で、一人ひとり違う「学びの動機づけポイント」を見つけながら丁寧な支援を行う必要性を語った。
「学ぶ動機づけのポイントは、人によって異なります。『自分の力を活かしたい』という“ポテンシャル発揮意欲”が学ぶきっかけになる人もいれば、『いまの逆境を乗り越えたい』という“ハードル突破欲求”で学ぶ人もいます。また、『自分はこうありたい』という“自己実現欲求”から学ぶ人もいれば、『周囲から評価や承認されたい』という“貢献欲求”で心に火がつく人もいるでしょう。
一人ひとりのマイストーリーを描くことで、その人に合った『学びのポイント』を見つけることが重要だと思います。そのために、一人ひとりの社員の“心に火を灯す”人事施策が必要なのです」
そして最後に、こうした企業の戦略・制度・文化から個人の心情までをくみ取った「リスキリングへのトータル的な取り組み」を通して、人がいつでも新しいことを学ぶことができる「『最終学歴』ではなく『最新学習歴』を誇れる社会」を作っていきたいと結んだ。
参加者との質疑応答
次に、守島氏と後藤氏の問題提起に関して、参加者との質疑応答が行われた。
シスコ 宮川氏:自律的なリスキリングを進める上では、一人ひとりの「マインドセット」を変える必要があると感じました。これまで日本の教育現場では、いかに「他者が決めた正解に到達するか」という教育が行われてきました。そのため、「自分としてどうありたいか」という視点が欠けているように感じます。
でも、「自分の能力は自分次第で変えることができる」という「グロースマインドセット」という考え方があるように、人は変わることができます。マインドセットのあり方に関する知識や教育が、学校でも企業でも必要になるのではないでしょうか。
守島氏:いま就職活動を行っている学生たちは「どの会社を選べば正解か、どの選択が最善か」という考え方をする傾向があります。正解がないと選べないんですね。でも、「正解」や「最善」というのは自分でつくるものです。キャリアにしても、いま目の前に「正解」があるわけではなく、これから時間をかけて自分でつくっていくもの。私は、学生に対して「もっと迷っていい」と言っています。迷うことをポジティブに評価するキャリア教育が必要だと思います。企業においても同様のことが言えるのではないでしょうか。
明治 山口氏:リスキリングの成果を、「個人の変容」から「組織的な変容」につなげていくことがとても重要だと思いました。しかし、それが難しい。どうすれば、「個人の変容」を「組織的な変容」につなげることができるのか。成功している企業の事例などがありましたら、教えてください。
後藤氏:成功している企業は、個々の人事施策の「つながり」を明確に描いています。その施策にはどういう意味があり、他の施策とどうつながっているのか、そして、最終的な経営目標とどう連動しているのかという「全体的なつながりの関係図」が描けていて、皆に共有されています。たとえば、「リスキリング」の施策と「ポスティング制度」や「越境学習」「副業・兼業促進」などの施策がどこでどうつながっているかが、皆に見えるようになっているということですね。
守島氏:最近では「パーパス経営」が注目されていますが、リスキリングの先進企業では「企業パーパス」を一方的に押し付けるのではなく、「企業パーパス」と「個人パーパス」のすり合わせを丁寧に行っています。そのことで企業パーパスに対する理解も進み、またそれが自分のキャリアにどういう意味を持つかが見えてきて、自律的なリスキリングにつながっています。
グループディスカッション:テーマ「リスキリング~『強制』と『自律』のバランスをどう取るか~」
続いて、グループディスカッションが行われた。
Aグループ
- 中外製薬株式会社 矢野 嘉行氏
- シスコシステムズ合同会社 宮川 愛氏
- 株式会社ファイブフォックス 山口 富美子氏
- 東レインターナショナル株式会社 川勝 淳二氏
Bグループ
- 株式会社セブン‐イレブン・ジャパン 佐藤 健一氏
- トランスコスモス株式会社 中尾 順子氏
- ホーチキ株式会社 谷 亘氏
- 株式会社IHI 岡田 浩治氏
Cグループ
- GMOインターネットグループ株式会社 目黒 隆幸氏
- 株式会社FOOD & LIFE COMPANIES 松尾 孝治氏
- i-PRO株式会社 岡本 佐知子氏
- ユニアデックス株式会社 白井 久美子氏
Dグループ
- 株式会社明治 山口 恭子氏
- サイボウズ株式会社 青野 誠氏
- 株式会社ブレインパッド 西田 政之氏
- コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社 東 由紀氏
Eグループ
- エプソン販売株式会社 青木 晋平氏
- ウエインズトヨタ神奈川株式会社 長島 賢氏
- 三井情報株式会社 蒲原 務氏
- 株式会社ベイシア 割石 正紀氏
グループディスカッションのテーマは「リスキリング~『強制』と『自律』のバランスをどう取るか~」。ディスカッション後の全体発表では、各グループの代表者からまとまった内容が共有された。
Aグループ
Aグループでは、主に「自律的な学びのカルチャーをいかに組織内に浸透させるか」について議論された。そのためには個人の「キャリア自律意識」(キャリアオーナーシップ)が必要である一方、企業側の厳しい「パフォーマンスマネジメント」も欠かせない。また、そのカルチャーが現場に根付くためには現場のマネジャーが「腹落ち」することが重要だ。そのためには、「会社の考え方」と「自分の考え方」をぶつけ合う“対話の場”が必要になる。それらを通して、「いかに、現場のマネジャーが自分の言葉で語れるかが重要だ」という意見が出た。
シスコシステムズ 宮川氏:リスキリングは「自律」が大切ですが、会社として目指す方向性・理想像を示すという点では「強制」が必要になる、という意見が出ました。大事なのは、それを一人ひとりの「マインド」に落とし込むことです。いくら一方的に口で言ってもダメで、人事施策として互いの考えをぶつけ合って納得し合うような「対話」の機会をいかに作るかが必要であり、そこから一人ひとりの「自律」が生まれてくるという話が出ました。
Bグループ
Bグループでは、自律的なリスキリング推進の要件として、個人(とくにミドル層)の「マインドチェンジ」の必要性が語られた。またその前提として、個人の自律や学習に対する賞讃や支援といった「組織のカルチャーチェンジ」が必要なことも挙げられた。リスキリングの浸透・定着においては、「リスキリング」という言葉の定義や、そもそも「スキルとは何か」の定義も重要であり、リスキリングのネガティブなイメージが独り歩きしないようにすることの重要性も指摘された。
さらに、リスキリングに取り組む上では、リスキリング施策単体ではなく、他の人事施策(例えば公募制やタレントマネジメント、タフアサイン制などの導入)との連動・連携が必要であるとの意見もあった。
IHI 岡田氏:リスキリングを進める上では、個人の「マインドセット」が重要です。そのためには、組織の「カルチャーチェンジ」も必要なので、時間はかかると思います。また、「タフアサインメントの機会を提供する」など、リスキリングしたら具体的にどうなるのかといった未来像について明示することも重要です。さらには、HRデータを活用した「スキルの可視化」や「全社的な人材育成のポリシー」の検討も必要になる、という意見も出ました。
Cグループ
グループCでは、最初に「リスキリング」の背景と意味、人的資本経営におけるリスキリングの位置づけなどについて話された。「なぜ、いまリスキリングなのか。リスキリングのどこが新しいのか」。これまで、経営戦略と人事戦略との連動については検討してきたが、それを個人の自律とどう結び付けるかという視点は、これまで検討していなかったという意見があった。また、学びのモチベーションを維持するには、リスキリングのゴールとなる「どう活かすのか」を明示することの必要性や、他流試合による自己認識の強化が働く意欲につながるという側面も挙げられた。
FOOD & LIFE COMPANIES 松尾氏:「企業戦略」と「個人の志向性」の統合をどう図るかについて議論しました。また、個人が自律的に学ぶコストを企業が負担することに関して問題提起がありましたが、企業が個人の自律的な学習に対して費用や時間を提供することは、そのこと自体が企業の魅力につながるのではないか、という意見が出ました。さらに、学ぶことのゴールを明示することが、学びのモチベーションを高めるとの声がありました。
Dグループ
Dグループでは、経営戦略にもとづく人事改革をする上でのCHROの重要性の話題から始まった議論が、「どの施策が、何にどうつながっているか」という中期経営計画と人事戦略とのひもづけの重要性に展開した。両者をひもづけるためには、人事部門のガバナンス改革と人事部員自身のリスキリングも必要だという声も上がった。
コカ・コーラ ボトラーズジャパン 東氏:メンバー各社の事例・状況を紹介し合ったところ、リスキリングや自律的な学びの度合いは、業界や職種、企業により違いが大きいことがわかりました。社員に学びのリズムができていて、何も言わなくても自発的に学ぶ人が多い企業もあれば、そうでない企業もある。また、経営陣の危機感の違いにより、リスキリングに対する取り組みにも違いがあることが見えてきました。
Eグループ
Eグループでは、「そもそもリスキリングの定義とは何か」から議論が始まった。リスキリングは、単なる新しい業務に必要なスキルを習得することではなく、ビジネスモデルの変革に伴い新たに発生する一連のスキルセットを学ぶことではないか、という声も上がった。その場合、「強制」か「自律」かというより、最初は「強制」から入り、結果として「自律」につながるという流れができると大きな効果・成果につながる可能性があるという意見が出た。また、学んだ先に何があるかを実感できるかどうかが重要であり、自律的な学びをしている人は「未来が見えている」のだろう、という結論になった。
エプソン販売 青木氏:学ぶ内容に「必然性」があれば、入り口は「強制」から入ることも学びのきっかけとして有意義なのではないか。大事なことは、学んでいるうちに面白くなり「自律的な」学びにつながる流れができることであり、会社としては強制から自律への変化に対する支援を行うことが大事なのではないか、という議論になりました。
守島氏による全体総括
守島氏:とても中身の濃い内容が話し合われたのではないでしょうか。皆さんのディスカッションから見えてきたことは、リスキリングの問題は、経営戦略と人財戦略の関係や評価制度、雇用形態のあり方など、日本の人事の根本的なところに触れるという点です。
リスキリングを成功させるには、人事担当自身も考え方を変える必要があります。今後、経営と直結した戦略人事が進む中で、いままで以上に厳しく公正な評価が必要になるでしょう。また、働く人への人事のスタンスも変えなければいけないかもしれません。そのとき、まさに人事自身の「リスキリング」が問われるのだと思います。
本セッションのまとめ
当日知見をご共有くださった皆さま
※所属や役職は「リーダーズミーティング」開催時のものです。
有識者・プロフェッショナル
-
守島 基博氏
学習院大学 経済学部 経営学科 教授/一橋大学 名誉教授 -
後藤 礼子氏
株式会社ベネッセコーポレーション DX人財開発部 部長
大手・優良企業の人事リーダー (社名50音順)
- 岡田 浩治氏
株式会社IHI 人事部 人財開発グループ 部長 - 岡本 佐知子氏
i-PRO株式会社 Chief Human Resources Officer - 長島 賢氏
ウエインズトヨタ神奈川株式会社 人づくり推進部 採用・育成担当 部長 - 青木 晋平氏
エプソン販売株式会社 経営推進本部 人事部 部長 兼 総務部 部長 兼 Sプロジェクト 部長 - 東 由紀氏
コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社 執行役員 最高人事責任者 兼 人事・総務本部長 コカ・コーラ ボトラーズジャパンベネフィット株式会社 代表取締役社長 - 青野 誠氏
サイボウズ株式会社 人事本部 副本部長 - 目黒 隆幸氏
GMOインターネットグループ株式会社 パートナー健康推進室 室長 - 宮川 愛氏
シスコシステムズ合同会社 執行役員 人事本部長 - 佐藤 健一氏
株式会社セブン‐イレブン・ジャパン 海外事業本部 グローバル人材開発部 総括マネジャー - 矢野 嘉行氏
中外製薬株式会社 上席執行役員 人事・ESG推進統括 - 川勝 淳二氏
東レインターナショナル株式会社 人事・勤労部 部長 - 中尾 順子氏
トランスコスモス株式会社 理事 CX事業統括 デジタルカスタマーコミュニケーション総括 人財開発本部長 - 山口 富美子氏
株式会社ファイブフォックス 営業本部 人財開発担当 部長 - 松尾 孝治氏
株式会社FOOD & LIFE COMPANIES 執行役員 人事・総務担当 兼 人事部長 - 西田 政之氏
株式会社ブレインパッド 常務執行役員 CHRO 人事ユニット統括ディレクター - 割石 正紀氏
株式会社ベイシア 人事・総務法務事業部 事業部長 株式会社ベイシアオープス取締役 ベイシアグループ健康保険組合 理事長 - 谷 亘氏
ホーチキ株式会社 人事部 参与 - 蒲原 務氏
三井情報株式会社 取締役 副社長執行役員 CSO CHRO CDIO - 山口 恭子氏
株式会社明治 人財開発部 部長 - 白井 久美子氏
ユニアデックス株式会社 常務執行役員 CISO・CPO
Udemyは、米国法人Udemy, Inc.が運営するオンライン学習サービスです。(株)ベネッセコーポレーションは、一生涯の学びを通して社会と人々の人生が豊かになるよう、社会人の学びを支援しており、Udemy社とは日本における独占的業務提携を2015年より行っています。