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同時多発的な課題の奥に潜む「本質的な課題」を見つけ出し、変革を促すための組織開発

永石 信氏(中京大学 国際学部 教授)
荒金 泰史氏(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ HRアセスメント統括部 主任研究員/マネジャー)

掲載日:2024/03/25
同時多発的な課題の奥に潜む「本質的な課題」を見つけ出し、変革を促すための組織開発

雇用する側の企業や働く社員を取り巻く環境の変化が激しい昨今。これまでの組織運営を変えていく必要性に迫られている企業は、少なくないだろう。一方で、「経営者との連携がうまくいかない」「取り組みに対する現場の反応が鈍い」といった悩みを抱える人事部門は多い。そういった課題に対し、有効な一手として期待されているのが「組織開発」だ。

経営戦略に触れる領域でありながらも、現場の参加が欠かせない組織開発。人事部門としてどこまで踏み込み、どのように推進していくべきなのかに悩む人事パーソンも多いだろう。

2月2日の「HRカンファレンス2024-冬-」~リーダーズミーティング~(以下、リーダーズミーティング)では、「組織開発において人事部門が果たす役割とは」と題したセッションを開催。この中で、「組織開発」のリーディングカンパニーである株式会社リクルートマネジメントソリューションズの荒金泰史氏、中京大学国際学部教授の永石 信氏を招いて行われた、グループディスカッションの内容をご紹介したい。

Profile
永石 信氏
永石 信氏
中京大学 国際学部 教授
荒金 泰史氏
荒金 泰史氏
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
HRアセスメント統括部 主任研究員/マネジャー

永石氏による問題提起1:組織開発とは

セッションは、荒金氏による、日本企業を取り巻く環境の分析からスタート。昨今のSDGs推進や高度化・複雑化するビジネスモデルと変革の必要性、雇用形態や働き方の多様化への対応、人的資本経営の開示といった、外的な要因によって変化を迫られている現状を確認した。荒金氏は、これらの外的変化に促される形で、「組織や社員は内的変化の必要性に迫られている」と述べた。

「同僚や部署のことに関心がなくなってしまう『タコツボ化』や、上司が部下のエンゲージメントの低下に気付けないことで生まれる『びっくり退職』、パワハラ・セクハラなどの『ハラスメント問題』など、これまでの施策ではフォローしきれない課題を感じている企業は多いでしょう。

また、課題が顕在化していなくても、『パーパスやビジョンの浸透がなされていない』といった悩みを多くの人事担当者からうかがうことがあります。こういった変化は避けられるものではありません。いかに内的な部分を変容させて、乗り越えていくかが求められます。その中で、重要な位置づけになるのが組織開発です」

続いて、永石氏が登壇した。永石氏にとって「組織開発」とは「組織の中で起きている本質的な課題に気づくこと」だと言う。

永石 まこと氏 中京大学 国際学部 教授

「組織開発は『可能性を重視し、課題から始めない』という考え方もあります。しかし私は、スタート時点で課題から目を反らすのは違うと考えています。本質的な課題に向き合うことで、その人やその企業にとっての新しい景色が広がります。

また、手段と目的も大切にしています。私の目的は『良い経営の実現』です。そこに向かうための道筋は数多くありますが、本質的な課題感を見落とさずに固定概念が揺さぶられるような経験をすることが、本当の意味での成長につながります。それが人の内面で起きると個人の成長になり、組織の中で起きると組織開発になる。そういった場をいくつ作れるかが重要です」

<永石氏にとっての組織開発>
組織の中で起きている本質的な課題に気付き、向かい合い、その中で「新しい景色が広がったり、固定観念が揺さぶられたり、これから行動を起こすためのエネルギーの源を見つけたりする組織的・個人的経験」を日々の取り組みにつなげながら、よい経営を実現するための継続的な活動

続いて永石氏は、組織開発の活動において「初動で大切にしている点」について言及した。

「組織としての本質的な課題は何かを、組織的に考えて十分に議論することです。目的やパーパスと言い換えていいかもしれません。目的に向かう手段、役割、パートナーシップの大原則、それを明確にした合意をまずはコアメンバーで形成し、組織の中でそのプロセスの輪を広げていく。経営者も含め、組織開発のプロセスを通じて各自の役割に気付き、課題の複雑さを認識する。そうして、全員が『腹落ちしている状態』を作るようにしています」

活動の「初動段階」で大切なこと

問題提起2:ビジネスにおいて組織開発は有効か

では、ビジネスにおいて組織開発はどのくらい有効なのだろうか。永石氏のもとには、「組織開発に取り組んでも、複雑化した現代経営のビジネス環境に対応できるイメージが持てない」といった声が届くという。それに対して、永石氏から「複雑で高度な課題であればあるほど、組織開発の手法でなければ課題解決は難しい」との見解が示された。

「過去に私が担当した事例ですが、ある企業に、『数ヵ月後の本社査察の結果次第で廃止される』という局面に立たされた事業部がありました。その事業部の執行役員から依頼を受けて現状をヒアリングしたところ、ビジネスポートフォリオが長年変わらずに売上が激減。前任の役員が管掌する体制が長く続いたことから、『リスクを取らない組織体質』になっているように見受けられました。

要因はそれだけではありませんが、本質的な課題はその風土にありました。しかし、風土変革を進めていく間にも、主力事業の深掘りや立て直し、新しい柱となる新規事業の開拓に着手しなければなりません。数ヵ月後に査察を控える中で、まずは風土をガラリと替え、社員のやる気を引き出し、体制を整えてから事業変革や新規事業開拓を考えるようでは間に合わない。こういった複雑な課題を同時に扱うときこそ、対話をベースにした組織開発が最適なのです。

この企業の執行役員とは月1回のライブトークを行い、その様子を社員が誰でも視聴できるようにしました。対話の中で自らの失敗を受け入れ、本質的な課題を見つけ出し、固定観念が揺さぶられながら少しずつ変わっていく役員の姿を見た社員たちは、自分たちから動き始めました。事業部のトップがリスクをとって動くのなら、自分たちもリスクをとらなければと考えたのです。

以降、これまであった既存事業と新規事業の摩擦なども少しずつなくなり、さまざまなことが一気に動き出しました。そして、数ヵ月後の査察までにキャッシュフローが改善。エンゲージメントサーベイの結果も向上し、事業部存続が決定したのです」

この方法が有効だったのは組織の規模も関係していると、永石氏は言う。事例で紹介された事業部は600人ほどの社員数だったことから、全員が対話の様子をライブで見ることができ、課題の共有化を図りやすかった。永石氏によれば、「1,000人、1万人を超える規模の事業部や企業では、別のアプローチが必要になる」とのことだ。

しかし、この規模に事業部が納まる企業は多く、事例のように課題は一つではない。同時多発的に複数の課題に向き合い、変革を促していくには、組織開発の手法が欠かせないのだ。

荒金氏による問題提起:HRBPの支援事例から見る、組織開発の現在とこれから

ファシリテーターであるリクルートマネジメントソリューションズの荒金氏は、上司と部下の1on1を支援するクラウドサービス「INSIDES(インサイズ)」によるHRBP支援が組織力向上につながり、結果として組織開発の活動となった事例を紹介した。

荒金 泰史氏 株式会社リクルートマネジメントソリューションズ HRアセスメント統括部 主任研究員/マネジャー

同社が提供する「INSIDES」は、上司と部下の1on1を支援するサービスだ。1on1は、すでに実践している企業も多い。しかし、導入にあたってマニュアルやルールを設定したものの、後は現場任せという例は少なくない。また、導入したものの、1on1が本来もたらす効果を発揮しきれていない事例も多くある。その理由として、1on1がうまく進んでいるのかどうかが客観的にわかりにくい点が挙げられる。当事者である上司と部下も然り、企業としてもエンゲージメントサーベイのスコア改善に貢献しているのかどうかが、可視化されにくいのが実状だ。

「1on1の効果を高めるには、現状を可視化することが肝要です。サーベイで個人の心理状態を可視化し、定期的なサーベイ実施によって見えてくる変化を定量的に把握する一方で、HRBPが現場の声を拾って表出化し、現状を共有する。定性・定量の両側面から、組織として着実に前へと進んでいることを示さなければなりません。

HRBPが現場の声を拾い、データで現状を可視化

同時にこの事例では、1on1の結果をマネジメント層が共有し、一人ひとりについて相談し合う場を設けました。定性・定量のデータを、HRBPと現場マネジャー、部長などのマネジメント層がセッションを行うための土台としたのです。それにより、部下とのコミュニケーションに悩んでいるマネジャーは、セッションで他のマネジャーに気軽に相談することができるようになりました。データ化された部下との1on1内容を共有しながら、例えば以前の上司からのアドバイスや、他のグループの上司からの見解を得ることができるわけです。共有の場があることで、現場マネジャーは同様の悩みを抱える担当者と話したり、周囲とコミュニケーションを取りながら部下と向き合ったりすることが可能になりました。

各部単位で、禅譲しとHRBPが集い、個人ごとのデータをみながら直近のコミュニケーションや編成・アサインを相談しあうセッションを実施

このような話し合いから生まれる対応策は、『組織知』となって集積されていきます。この企業では結果としてエンゲージメントサーベイの数値が向上し、KPIも改善。人的資本の開示にもつながった好事例となりました」

荒金氏が注目するのは、目に見える結果そのものではない。

「1対1のコミュニケーションをどうするのか。組織として一人ひとりに向き合う姿勢を見せ、互いに共有し合うことで組織全体の共通言語が形成されます。加えて、課題は個人ごとに異なるため、複雑な現代に対する本質的な課題に気付くきっかけになったのだと思います」

この事例では、HRBPが『社員の顔が見える範囲で直接動いたこと』が成功の礎となった。ここに人事部門が加わり、どのようなパートナーシップを組んでいくのかは企業ごとに異なり、活動していく上で重要なポイントになるだろう。

事例を踏まえて荒金氏は、「人事部門が組織開発を進める必要性を言語化し、効果的な人事の体制や人事のあるべき役割、あるいは現在の悩みなどを他社の参加者と共有してほしい」と締めくくった。

グループディスカッション:テーマ1「組織開発を例えるなら」

四つのグループに分かれたディスカッションでは、それぞれ活発な議論が交わされた。最初のディスカッションでは「組織開発が何に似ているか」について語り合ったが、各グループから、料理やチームスポーツ、街づくり、オーケストラとなど、さまざまな例が上った。

Aグループ

  • 株式会社Jストリー厶 田中 潤氏
  • 株式会社メンバーズ 武田 雅子氏
  • 日本電信電話株式会社 山下 諭氏
  • アマゾンジャパン合同会社 篠塚 寛訓氏

Bグループ

  • グラクソ・スミスクライン株式会社 小林 いづみ氏
  • ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 西川 絵里氏
  • オルビス株式会社 岡田 悠希氏
  • SCSK株式会社 篠原 貴之氏
  • オリックス生命保険株式会社 石田 雅彦氏

Cグループ

  • i-PRO株式会社 岡本 佐知子氏
  • ウエインズトヨタ神奈川株式会社 長島 賢氏
  • 株式会社NTTデータ・フロンティア 遠座 理人氏
  • 株式会社TMJ 岡本 広明氏

Dグループ

  • 株式会社セブン‐イレブン・ジャパン 佐藤 健一氏
  • 株式会社エビデント 尾佐 達朗氏
  • 株式会社ゲオホールディングス 太田 克己氏
  • 株式会社AOKIホールディングス 岡本 健志氏

ここでは二つのグループが、ディスカッションの内容を発表した。

Jストリー厶 田中氏:「冷蔵庫にあるもので作る料理」というたとえが秀逸でした。高級食材を使ったからといっておいしいものになるとは限らない点や、料理人のさじ加減ひとつで味が変わる点などが似ているからです。人事としては、そのことに気を付けなければならないとあらためて考えさせられました。

ジョンソン・エンド・ジョンソン 西川氏:雨粒の流れ、街づくり、スポーツなどに似ているという意見が挙がりました。雨粒は、窓に当たった雨が他の雨と合流しながら流れ落ちていく様子を想像しました。また、街づくりはランドマークとなる建物を中心に、異なる建物であっても同じコンセプトのもとで作られていく点が似ているという考えです。スポーツに関しても、バスケットボールや野球などのチームスポーツが似ており、特にチームによってカラーが違う点はおもしろいのではないでしょうか。

永石氏:「どのチームのカラーが正解」というわけではない点が良いですね。

グループディスカッション:テーマ2「これからの組織開発における人事の役割とは」

続くディスカッションでは、組織開発の今後をマクロの視点で話し合い、荒金氏の問題提起である「人事にとって組織開発が大切な理由」「組織開発を進めていくための効果的な人事体制・役割、推進の難しさ」などが共有された。

グループ発表では、荒金氏がそれぞれの発表内容について追加質問する場面も見られ、さらに議論が深まった。

Aグループ

Aグループでは最初に、「人材開発よりも組織開発のほうが楽しい」という声に賛同が集まった。また、HRBP部門を持つ企業が多かったことから、人事部門とHRBP部門の役割分担についてより具体的な議論が交わされた。

メンバーズ 武田氏:人材開発を一人ひとり行うよりも、組織全体を変えていく組織開発のほうがゴールに近いのではないかといった話が出ました。事業部門への働きかけは、持続的な成果という観点からの声掛けで理解を得られる可能性がある一方で、全社的な働きかけをするときは人事だけでなく、経営企画や広報も巻き込んでいく必要があるとの認識に至りました。

役割分担についてはこれまでの経験から、現場に近くその部門でしかできないことはHRBPに任せ、全社的にも必要な施策であれば本社人事が巻き取り、場合によってはHRBP担当者を人事に呼ぶこともあるといった話をしました。

グループディスカッションの様子

Bグループ

Bグループでは、現場から人事に相談をしてもらうことや、組織開発を行う必要性を現場に気付いてもらうことの難しさなどが語られ、人事という役割の難しさを確認した。

SCSK 篠原氏:組織開発に取り組むにあたっては、本質的な課題が何かを事業責任者と本音で話し合い、引き出していくことが重要であり、人事はそこにコミットしていくべきだろうという話が出ました。当社でも試行錯誤しながら進めているところです。

グループディスカッションの様子

Cグループ

Cグループでは、オペレーションだけの人事から脱却しなければ人事部は無用になるといった危機感から議論がスタート。外資企業経験者の話をきっかけに、外資系との違いや具体的な取り組みが共有され、経営企画と人事の住み分けや人事の役割について深い議論が行われた。

NTTデータ・フロンティア 遠座氏:経営企画や事業戦略といった、人事から見ると「何をミッションにしているのかが見えにくい組織」が現在は経営戦略を担っており、あらためて全社人事は経営戦略に関するミッションに取り組むべきであるという意見に感銘を受けました。そうすることで経営と人事の役割がつながるなど、組織や役割のあり方を定義することが重要だと感じました。

TMJ 岡本氏:当社にも「戦略」や「企画」、またそれに準ずる用語の付いた組織があるのですが、それらの「戦略」の定義をシャープにする必要性を実感しました。CEO、CFO、CHROが三位一体となり、人事が役割を持って活動している事例を聞いて、大きな学びになりました。

グループディスカッションの様子

Dグループ

Dグループでは、外資コンサルタント企業によるコンサルティング事例など、参加者企業のケーススタディが取り上げられた。そして、大切なのは社員がどう思うのかであり、現場に一番近いマネジャーの力量に左右される例が多いなど、幅広い議論となった。

セブン-イレブン・ジャパン 佐藤氏:組織開発というとハード面がフォーカスされがちですが、ソフト面をどうビルドアップするのかが大切だという議論が中心でした。ソフト面を活かす仕組みを作り展開していかなければ、組織開発は進みません。そして、経営者が組織開発の重要性を理解するためには、現場の社員を知る必要があります。

その中で人事が果たすべき役割は、経営者が現場に踏み込んでもらうような仕組みの開発であり、経営者が現場の実情を知った上で会社のミッション・バリューを新たに考える機会を用意することです。スケジュールも含めてバックアップしていくことが重要、という意見でまとまりました。

エビデント 尾佐氏:当グループは4社中3社がリテール(小売)業でしたが、推進担当の悩みとしては、経営陣の中で顕在化している危機感を、店舗を含めて各所に周知していく難しさが挙げられました。特に、事業が成長中で売上が伸びていると顕著です。実は業界全体の成長率を見ると、さらに伸びる可能性があるにもかかわらず、現状で満足して相対的な会社の位置づけを見失いがちであることから、そこを社員と共有していくと変化への活力が 湧くのではないか――といった議論にもなりました。

グループディスカッションの様子

参加者との質疑応答

ジョンソン・エンド・ジョンソン 西川氏:本質的な課題を見つけていくには現場リーダーと信頼関係を築き、自分の思いを語ってもらうことが必要です。その状況を作る、または思いを引き出すためのコーチングについて教えてください。

永石氏:まずは1対1で寄り添えるようになることが大切であり、それにはコーチングの技術が必要です。しかし、組織開発のような大規模な対話の中では、ファシリテーターは「場から消えていること」が理想です。ファシリテーターが消えるというのは、その場の議論で主役が現場になっていることを意味するからです。この“消えるスキル”はコーチングを学ぶだけでは向上せず、組織開発の現場をいくつも経験し、丁寧に対応していきながら学んで行くことが必要で、私自身、今でも大切にしています。

オリックス生命保険 石田氏:社員の行動変容を起こさせることが、実はとても難しいと感じています。最初から危機感があれば良いのですが、現状維持を望む社員は一定の層で存在し、その意識は岩盤のように硬く、自らを変えようとしません。そこをどう突き動かしていけばいいのでしょうか。

永石氏:私なら、いま石田さんが語った内容を社員に聞いてもらいます。誰が語るかは状況によって異なり、現場の責任者が良い場合もあれば、経営者が良い場合もあるでしょう。まずは、漠然とした不安をリアルに語って発信し、その思いを受け止めてもらう場を作るところがスタートだと思います。変わらない可能性もありますが、経営者が行えばインパクトはありますよね。なお、こういった内容は文字情報では熱が伝わりにくいので、実際の声で届けるほうが良いでしょう。

グループディスカッションの様子

まとめ:組織開発の経験者が次の組織開発へとつないでいく

荒金氏が問題提起し、グループディスカッションのテーマとなった「人事にとって、組織開発が大切な理由とは?」「組織開発を進めるために求められる人事の体制・役割とは?」という問いは、古くて新しい問いだと永石氏は言う。そして、「そのアンサーはない」。代わりに永石氏が示したのは、自身の経験だ。

「組織開発の分野に私を導いてくれた、当時ナイキでアジアパシフィックCHROを務めていた増田弥生さんという方がいます。増田さんは、『組織の中での人事の役割は、本質的な課題をリファインすること』『経営者と各部門、現場をつなぎ、コアチームとして課題をリファインした後は、各部門の具体的な活動をつないでいく事務局に徹すること』と言っていました。

その後は現場で本質的な課題に向き合い、活動してきた各現場の担当者を集めて、次のコアチームにしていく。現場で動いた経験がある人たちが、次の人事となるイメージを抱いていらっしゃいました」

確かに組織開発では、経験のない、ゼロベースでの活動が可能かという問題がある。そのアンサーとして永石氏は「コンサルティングに入ってもらうのも選択肢」と返し、組織ごとに最適な解決方法を導いていかなければならないとした。

最後に、荒金氏はこう締め括った。

「本質的な課題は何かという問いに対し、ディスカッションでは『本質的な課題が見えてない』『見えにくいことが課題』といった意見が少なからずありました。私自身も、いくつかのお手伝いをさせていただく中で、自分たちでその課題に気付くこと自体が難しいと感じています。しかし、見えていなくても課題は必ずあります。その課題の存在に気付き、どのように共有していくのかが、『組織開発の第一歩』になるのではないでしょうか」

本セッションのまとめ

リクルートマネジメントソリューションズ(組織開発)

当日知見をご共有くださった皆さま

※所属や役職は「リーダーズミーティング」開催時のものです。

有識者・プロフェッショナル

  • 永石 信氏
    中京大学 国際学部 教授
  • 荒金 泰史氏
    株式会社リクルートマネジメントソリューションズ HRアセスメント統括部 主任研究員/マネジャー

大手・優良企業の人事リーダー (社名50音順)

  • 岡本 佐知子氏
    i-PRO株式会社 Chief Human Resources Officer
  • 岡本 健志氏
    株式会社AOKIホールディングス 人事部 部長
  • 篠塚 寛訓氏
    アマゾンジャパン合同会社 人事統括本部 人事部 部長
  • 長島 賢氏
    ウエインズトヨタ神奈川株式会社 人づくり推進部 採用・育成担当 部長
  • 篠原 貴之氏
    SCSK株式会社 人材開発本部 人材開発部 部長
  • 遠座 理人氏
    株式会社NTTデータ・フロンティア 経営企画本部 人事担当 担当部長
  • 尾佐 達朗氏
    株式会社エビデント 人事・総務 ディレクター
  • 石田 雅彦氏
    オリックス生命保険株式会社 執行役員 人事・総務本部管掌 コンプライアンス部管掌
  • 岡田 悠希氏
    オルビス株式会社 HR統括部 部長
  • 小林 いづみ氏
    グラクソ・スミスクライン株式会社 人財本部 人財開発部長
  • 太田 克己氏
    株式会社ゲオホールディングス 執行役員 労使福祉部 ゼネラルマネージャー
  • 田中 潤氏
    株式会社Jストリー厶 執行役員 管理本部 副本部長 兼 人事責任者(CHRO)
  • 西川 絵里氏
    ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 人事部 Head of HR,Medical Company
  • 佐藤 健一氏
    株式会社セブン‐イレブン・ジャパン 海外事業本部 グローバル人材開発部 総括マネジャー
  • 岡本 広明氏
    株式会社TMJ 執行役員
  • 山下 諭氏
    日本電信電話株式会社 総務部門 人材戦略担当 担当部長
  • 武田 雅子氏
    株式会社メンバーズ 専務執行役員 CHRO ピープル&カルチャー本部長
「組織開発」のリーディングカンパニー

当社は、“個と組織を生かす”というビジョンを掲げ、最も重要な経営資産の一つである「人と組織」に焦点をあてたリクルートグループ内のプロフェッショナルサービスファームです。個と組織の力が最大の優位だと言い切れる会社が溢れる社会を実現します。

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