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特別講演[2-C]

『通常の活動では接触できない『超優秀層』を採用する方法』

中川 智尚氏
株式会社ワイキューブ 取締役副社長
中川 智尚氏(なかがわ ともひさ)
プロフィール:京都大学卒業後、リクルートを経て、ワイキューブ設立に参画。12年もの間、延べ1000社近くの採用支援に関わる。不動産、リフォーム、外食、メーカー、商社、情報など得意業界は多岐に渡り、最近では、某官公庁の採用プロジェクトなど特殊分野も指揮。

大量動員~厳選採用活動の問題点。
~果たして母集団のなかに採用ターゲットは含まれていたのか

中川 智尚氏 photo本日、「『超優秀層』を採用する方法」をお話しする前に、一つの失敗・成功事例としての当社の採用活動について触れておきたいと思います。

7年前に遡りますが、当社は、応募者の母集団を大きくするために「多くの学生に会うこと」を第一目標に掲げ、採用活動を展開していました。具体的には、1500人~2000人といった大人数を収容できる会場を押さえるなどして、大量の学生を相手に会社説明会を行っていたのです。

その結果、新卒採用の動員数が増加すると共に知名度が上がり、人気企業ランキングの上位にランクイン。5000人を動員した2003年にはランキング116位、10150人を動員した2005年には32位に浮上しました。

しかし、しばらくすると、説明会に来ている学生のなかに話を聞いていない人・眠っている人などが見受けられるようになりました。また、2007年には12628人を動員したにもかかわらず、人気ランキングの順位は66位に。そこで、当時の採用活動を改めて分析、見つめ直すことになったのです。

では、この採用活動の何が問題だったのか――それは、大規模な会社説明会そのものだったのです。注目度の高い人気企業で、誰でも申し込めば参加できる会社説明会があれば、「とりあえず、行っておこう」という軽い気持ちで参加する学生の割合が高くなります。つまり、優秀な人材を採用するために、多くの学生に会おうとしたことが裏目に出てしまったのです。

そこで今度は、エントリーしても簡単に説明会に参加できない状況に変え、入口で選抜する手法にシフト。欲しい人材がいなければ、新たに募集をかけ直す厳選採用に変えました。すると、2008年、2009年は採用ブランディングに成功。優秀な学生を採用することができました。しかし、この採用活動も“本当に欲しい人材を集めることができたかどうか”を振り返ってみたところ、弱点を見つけることになったのです。

その弱点は何かというと、厳選採用をしても、「母集団に求める人物像が含まれる割合は変えられない」ということです。例えば、コンサルティング業界にはコンサルティングに興味がある人材が応募しがちですが、実際に企業が欲しいのはビジネス志向の強い人材だったりします。しかし、いかに採用活動を行っても、ビジネス志向の高い人材は応募してこない。当社でも似たようなことが起こっていたのです。

そこで2010年度は、これまでにない採用活動手法を取り入れて、取り組むことにしたのです。

エンターテインメントを採用活動に組み込むことで、新たな層にリーチする

中川 智尚氏 photo 2010年度、大量動員時代・厳選採用時代を経て、当社が試験的に行ったのは、「普通の採用活動では会えない層」に会うための採用活動です。それは、ネットゲーム「脱出ゲーム」からヒントを得た「リアル脱出ゲーム」、題して「終わらない会社説明会からの脱出」という会社説明会でした。この「リアル脱出ゲーム」とは、リピート率9割、20代から爆発的な人気がある参加型リアルイベント。つまり、就活生であれば、誰もが興味を持っているだろうゲームイベントです。

このイベントのフローをご説明します。企業はゲーム参加者を絞り込むために、インターネット上に難易度が高めの問題を公開、問題を解いた人だけに参加資格を与えます。その後、会場に集められた参加者はチームに分けられ、閉じ込められた会場から制限時間内に脱出するために、謎を解いていくことになるのです。

この採用手法の長所を、ゲームフローと共に見ていきますと、まずは、若者に人気の「リアル脱出ゲーム」という手法を使うことで、これまでにリーチできなかった層の動員が可能となります。また、会社説明会であるリアル脱出ゲームに参加するには、こちらが用意した難易度が高めの問題を解く必要があるため、会社説明会以前に、さらに求める人物像を絞り込むことができるのです。その後、実際にゲームをプレイする場面では、チームで問題を解く姿を通して、通常の採用活動では見られなかった参加者の本質――性格や能力、思考タイプを見ることができます。

中川 智尚氏/講演 photoつまり、「リアル脱出ゲーム」を使った採用活動では、応募者の母集団に、これまでリーチできなかった優秀層が多く含まれるだけでなく、選考過程において応募者の本質をより明らかにすることができ、その結果、より求める人物像に近い人材を採用することが可能になるのです。

実際、2010年度の当社の「リアル脱出ゲーム~終わらない会社説明会からの脱出」の結果を振り返ると、通常ルートでは546名の動員のうち2名を採用したのに対し、リアル脱出ゲームルートでは108名の動員のうち4名を採用。特に後者では、そもそもの母集団に優秀な学生がより多く集まり、そのなかでもユニークな経験・才能を持つ人材を採用することができました。つまり、当社は「リアル脱出ゲーム」という新たな手法を用いたことで、「通常の採用活動では接触できない『超優秀層』を採用する」ことに成功したのです。

この「リアル脱出ゲーム」を始めて今年で2年目。今後、どのような展開が生まれるのか可能性は未知数ですが、採用活動の現場に一石を投じたことに疑いの余地はありません。採用担当者のなかには、“採用活動にエンターテインメント”という組み合わせに対し、一瞬、戸惑ってしまう方もいることでしょう。しかし今後は、「通常の採用活動では接触できない『超優秀層』を採用する」ためにも、既成概念に縛られることなく、新たな採用活動手法を導入していくことが必要なのではないでしょうか。

株式会社ワイキューブロゴ

株式会社ワイキューブ


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