(山崎 秀人氏)
リーマンショック後、採用市場は売り手市場から買い手市場に移行しました。これによって変わったのは採用活動における人事の姿勢。売り手市場の時代には、「母集団形成」と「歩留まり率」に着目していたのに対し、買い手市場の近年は「母集団における求める人材の含有率」を重視するようになってきたのです。なかでも注目すべきは、一般の採用ルート以外に優秀人材採用のための別ルートを設ける企業が増えていること。学生一人ひとりで成熟度も違いますから、採用においても“平等”ではなく、状況に応じて接する―― “公平”な採用活動をすべきだ、という考え方が浸透した結果だと考えられます。
「優秀な人材」という言葉には様々なイメージがありますが、当社では「組織への適応能力がある人材」だと考えています。そしてこれは“体育会学生”に当たるということを皆様に知っていただきたいのです。
そもそも体育会学生というのは、個人としての目標に向かって努力を重ねるだけでなく、自由が尊重される時代においても階級や序列が厳格に守られた組織で過ごしています。また、主将を頂点としたピラミッド構造の組織のもと、各学生が予算確保、学内外との渉外、会計、新入生勧誘といった役割を担い、企業経営の疑似体験をしているのです。
実際、大手企業のなかには体育会学生の採用比率が30%という例も少なくありません。これは、体育会人口が全国の大学生の5~6%しか占めないことを考えると、いかに彼・彼女たちが「優秀な人材」「魅力ある人材」として評価されているかを証明しています。つまり、目標達成意欲が高く、メンタルの強い体育会学生は、逆境に強い社員となり、企業を支えてくれる――そう判断されたと考えられるのです。
当社のメインコンテンツは企業様に対する体育会学生の採用支援活動です。体育会学生のデータベースとネットワークを構築し、企業様とのマッチングをはかっています。ただ、一般的なマッチングサービスと違うところは、当社では学生と「定期的」「長期的」な接触をすることで、各クラブメンバーの構成や活動スケジュールまで把握。学生との信頼関係を“密接に”結ぶことで、彼らの就活におけるメンター的存在としてのポジションを確立し、企業様への応募者動員や、期待の人材像との当てはめ作業を行っているという点です。つまり、学生たちをしっかりとネットワーク化し、ホールドしていることで、より効率的に企業への誘引がはかれるのが特徴といえるでしょう。
(金田 良典氏)
2011年度の採用市場を振り返ってみますと、おおむね厳選採用の傾向にありました。ただ、そうはいっても、企業様にとって採用活動が決して有利に進んだわけではなく、実際には途中辞退者や内定辞退者が出て、追加募集をかけなくてはならなかったという事態が多かったようです。
では、こうした後手に回った採用ではなく、優秀な人材を効率的に集め、採用するためにはどうしたらいいのでしょうか。
採用には、(1)会う前に選ぶ(2)会った後に抽出する二種類の方法があります。(2)は会社説明会や具体的な選考のなかでの偶然な出会いを待ち、個人情報を取得した後にアプローチする方法。一方、(1)は必然の出会いを作る――企業と学生が会う前に企業に合った学生を選び出し、志望度を高め、応募へと促す方法です。よりよい結果をもたらすのが後者であることは間違いありません。当社は「学生の志望度定点観測」を行い、「徹底したグリップ力」を保つことで、こうした採用活動を可能にします。
ここである生命保険会社様の事例をご紹介します。この企業様は「仕事に対する先入観が強く、学生が集まらない」という課題を抱えると同時に、「営業という仕事柄、年上にかわいがられ、指示も出せる人材がほしい」というご要望もお持ちでした。そこで当社では、体育会学生から様々な就活相談を受けるなかで、“一つの仕事の例として”この仕事の魅力を語りました。そもそも就活前・就活の早い段階の学生たちは、どの業種・職種についても深い知識は持っていませんから、ここで仕事の魅力を語ることは効果的です。その後、興味を持つ学生が100人ほどに膨れ上がったところで合同説明会に学生を誘引。結果的に説明会には「すでに志望度が増している学生を動員」することになり、必然的な出合いを作ることができたのです。
次に、不動産会社様に対する採用支援の事例をご紹介いたします。こちらは一日300件電話をかけるような、投資型マンションの営業職を求めていました。オーダー内容は「体力だけでなく、創意工夫ができ、モチベーションが高い学生。それには、挫折経験がある学生が欲しい」というもの。ここでは当社のデータベースをおおいに活用。当社のデータベースには、大学・学部・クラブ名だけでなく、役職、クラブ活動時間、場所など、様々な項目が含まれているので、そこから挫折に結び付きそうな項目で抽出しました。その後、メールと電話で学生にアプローチしたのです。さらには、会社説明会を予約した学生には、「なぜ予約したのか」をヒアリング。本当に採用に結びつく人材かどうかを見極め、適材でないと判断した際には「あなたにはこの仕事は向かない」とハッキリと伝えていきました。既に私たちは学生たちの性格や志向性も把握し、信頼関係を築いていますから、本音を聞き出すこともできる。だからこそ、採用にいたるプロセスから徹底的に無駄を省くことができたのです。
いずれの例も採用は成功。ここでは二例しかご紹介できませんでしたが、こうした例は数多くあります。ですから今後は、「体育会学生に着目してみること」「(1)会う前に選ぶこと」が、厳選採用における採用成功への一つの道ということをお伝えし、ご提案したいと思います。