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特別講演[3]

「狩猟型プロジェクトマネジャーに必要なヒューマンスキル
―モチベーションの高いチームを作る―」

伊藤 健太郎氏
アイシンク株式会社 代表取締役
伊藤 健太郎氏(いとう けんたろう)
プロフィール:日本鋼管で船舶用エンジンの製造、環境プラントのプロジェクトに従事。2000年アイシンク設立。プロジェクトマネジメント研修/コンサルティングを実施。著書は『プロマネはなぜチームを壊すのか』(日経BP社2007年)他多数。米国PMP資格、JPM会員、PM学会員、PMI会員。

プロジェクトの成功はモチベーションに左右される

私は、「プロジェクトをいかにして成功させていくのか」について、研究しています。本日は、実際に行われたプロジェクトの成功や失敗の事例を分析した結果を基に、「モチベーション」についてお話していきます。

新商品や新システムの開発など、“繰り返しではない”仕事は全て、「プロジェクト」といいます。「プロジェクトマネジメント」とは、そういった不確実な仕事をどのように成功に導いていくのかということです。プロジェクトが成功するには、「仕組み」だけではなく、「人」が大きく関係しています。そういう意味でも、モチベーションは大変重要なのです。

伊藤 健太郎氏具体的にいうと、プロジェクトの成功は、その80%がプロジェクトマネジャーの「ヒューマンスキル」、残りの20%が「仕組み」にかかっています。この場合のヒューマンスキルを分析していくと、「適切なリーダーシップ」「ストレスをコントロールしていくこと」の二つが、大きな要素であることがわかります。

私たちは、周囲から大きな影響を受けます。例え仕事ではストレスを感じていなくても、家庭や友人関係などのちょっとしたことがきっかけで、大きなストレスになることもあるでしょう。そのストレスが原因で自信を失い、仕事の生産性が下がってしまうこともあります。

しかし、ストレスをゼロにすることはできません。そのため、適正な範囲でコントロールすることが重要になってきます。コントロールがうまくいき、プロジェクトチームとしての仕事が充実すれば、メンバーのモチベーションは高まります。すると、プロジェクトを成功させることができるのです。

本来仕事とは、「やりがい」によるところが大きいものです。例えば、お金によってモチベーションを高めようとすると、却って逆効果になることもあります。そうならないために、プロジェクトマネジャーは、メンバーが力を出せるような仕組みや制度を作ることも大事です。これを「公式なもの」とします。一方で、プロジェクトマネジャーがチームの「文化」を作りだしていくという、「非公式なもの」も重要になります。「公式なもの」と「非公式なもの」のふたつについて、しっかりと考えていかなければならないのです。

ストレスを引き起こす、さまざまな要因とは?

プロジェクトが失敗する要因には、さまざまなものがあります。しかし、ひとつずつ失くしていくことは、決して現実的ではありません。次々に問題は増えていくからです。

図:プロジェクトの失敗要因

次に、プロジェクトマネジメントにおいて、コンフリクト(衝突)となる要素を挙げていきましょう。まずは、「納期」。仕事に締め切りがあると、それがストレスになります。また、人は複数の仕事を並行して行いますが、どれに「優先度」を置くのかということ。その他にも、「人的リソース」や「技術的な問題」などの問題があります。つまり、ストレスが増えていく要因は数多いのです。しかし、それらを全て管理することは不可能です。モチベーションが低下している要因自体を、修復していくべきでしょう。

「職場の悩み」にもいろいろありますが、結局は上司や同僚などとの「人間関係」に関することが一番多い。つまり、仕事を成功させるには、人との関係が大事なのです。ちなみに、職場でモチベーションが下がっている理由として、残業規制やワークシェアなどの影響で、「仕事が思い切りできない」「もっと仕事がしたい」というものもあります。そう意味では、ルールで縛り過ぎるよりも、メンバーをいかに開放してあげるかが重要です。

図:マネジャーに対するストレッサープロジェクトマネジャーは過剰なストレスのなか、仕事をしていかなければなりません。ここでいう「ステークホルダー」とは、上司、客、部下など、あらゆる関係者のことです。それぞれから、曖昧で異なる要求が寄せられます。しかし、仕事が不確実なのは当然です。最初は大まかでも構いません。時間とともに、解消していけばいいのです。

組織から与えられる権限とは、メンバーへの影響力のことです。しかし、プロジェクトマネジャーという肩書きだけで影響力を及ぼそうとしても、プロジェクトは失敗します。メンバーとの信頼関係を作り出し、リーダーシップを発揮していくには、話を聞くことが大変重要です。

大きなプロジェクトを任され、成果を求められるようになると、人は誰でもストレスを感じます。企業がストレスマネジメントに力を入れているのは、そのような背景があるからです。現在、ほとんどの人が24時間ストレスにさらされていますが、それは仕方のないことです。しかし、ストレス自体は悪いものではなく、過剰に受けすぎていることが問題なのです。ストレスが全くない方が問題で、適性レベルに持っていくように、コントロールしていくことが大切です。

狩猟型プロジェクトマネジャーとは?

伊藤 健太郎氏それでは、「狩猟型プロジェクトマネジャー」について、具体的にお話していきましょう。「狩猟型」は、何よりも結果を出すことを最優先します。「成果物を獲得することが誇り」なのです。いくらメンバーのモチベーションが高くても、そのプロジェクトが失敗した場合には、組織は生き残っていけません。逆に、もしモチベーションが低かったとしても、成功すれば「誇り」や「力」になっていくのです。

狩猟型プロジェクトマネジャーの特徴としては、「プロジェクト成功へのシナリオを作れる」「環境依存ではなく、コントロールする」「困難で不透明な状況の中で意思決定ができる」「自他の感情を適切にコントロールできる」「ステークホルダーに影響力を与える」などが挙げられます。

モチベーションは、プロジェクトを成功させるためのひとつの要素です。しかし、それだけではありません。プロジェクトマネジャーの「人間力」も影響してくるのです。なぜなら、リーダーとして、周囲に影響を与えるからです。いくら自分が正しいと思っていても、周りが受け入れてくれなければ、影響力はありません。自分が正しいと思うことを、どのようにメンバーに伝えていくかが重要なのです。

プロジェクトマネジャーに必要なのは、自分のリーダーシップのスキルを広げていくトレーニングです。リーダーが変わればメンバーも変わります。「非公式」ではあるが「適切」なリーダーシップを発揮することで、メンバーのモチベーションは上がり、プロジェクトは成功します。

最後に、狩猟型プロジェクトマネジャーを定義すると、「強くないとプロジェクトマネジャーは生きていけない。優しくないとプロジェクトマネジャーをやる意味がない」ということになるでしょう。そういうマネジャーが組織に増えれば、プロジェクトが成功する確率は上がり、モチベーションやストレスに関する問題も解決していくのではないでしょうか。

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