講演者インタビュー
「ゼロイチ人材」を育てる仕組みとしての出向起業~社外に人材を送り出す意義と制度設計~
経済産業省 経済産業政策局 産業人材課 課長補佐
林 美穂氏
既存事業中心の環境下で、新規事業開発は企業の共通課題となっており、「ゼロイチ人材」を育成することは容易ではありません。こうした中で、経済産業省は64件の“社外”での挑戦を後押しし、人材育成に貢献してきました。本講演では、このスキームを一部取り入れたdocomo STARTUPの人事、並びに東レ、ライオンの出向起業経験者を招き、社外に人を送り出す意義や制度設計、仕組み化のポイントを紹介します。(協賛/一般社団法人社会実装推進センター)
―― 今回の貴社講演はどのような課題をお持ちの方向けの内容でしょうか?
次のような課題を持つ方にご参加いただきたいと思っています。
まず、新規事業人材・経営幹部候補の発掘・育成に課題を有している方です。あらゆる企業で重要性を増す「新規事業開発」。今後の経営幹部人材には、新規事業開発の経験・知見が必ず求められる一方、既存事業中心の業務環境下で、その経験・知見を得ることは非常に難しいという課題があります。本講演は、出向起業・スピンアウトといったスキームを参考に、尖った個人が社内外で活躍できる環境の必要性を議論します。
次に、社内新規事業プログラムの出口などで、出向起業・スピンアウトを検討中の方にもご参加いただきたいと思っています。実際に出向起業の事例では、この「社内プログラムの出口」というパターンが最も多く、大企業内で実行可能な事業領域が限られていることが見受けられます。本講演では、実際に外に出た経営者、送り出した制度側の両方の立場から、制度設計上にポイントを議論します。
―― 今回の講演の聞きどころ・注目すべきポイントをお聞かせください。
本講演のポイントは大きく3点あります。
【(1)新規事業創造プログラムdocomo STARTUPのポイント解説】
社員が自ら会社を設立し、マイナー出資により出向起業・スピンアウトを支援する制度docomo STARTUP([https://startup.docomo.ne.jp/)を立ち上げた担当者が、1年で5者を出向起業・スピンアウトさせた実績を踏まえて、制度設計にあたってのポイントを解説します。
【(2)実際に出向起業・スピンアウトした経営者の体験談】
実際に出向起業・スピンアウトを行った経営者が、会社の「外」に出たことの意義やメリット・デメリットについて、体験談を含めて語ります。東レグループ、ライオン社からの背景・パターンが異なる2件の出向起業・スピンアウト事例について、事業開発の成果、会社への還元方法、個人と会社の関係性の変化などを解説します。
【(3)今後の検討の参考になる資料集の共有】
ご参加いただいた方に、過去の出向起業・スピンアウト者のその後を調査したフォローアップ調査結果や、実際の出向起業・スピンアウト時に用いる契約書フォーマットなどの資料集を共有することを予定しています。
―― 講演に向けての抱負や、参加される皆さまへのメッセージをお願いします。
組織や仕組みで戦う既存事業と比べ、個人の突破力が求められる新規事業。出向起業・スピンアウトは尖った「個人」の力を最大限に発揮する手法のひとつであり、「組織」が「個人」との関係性をどう捉えているのか、そのスタンスが問われるスキームだと感じています。
短期的な損得にとらわれず、長期的視野に立てば、個人のチャレンジを応援することによって、組織の人的資本・文化資本には必ずプラスが生まれるはず。ぜひ皆さん、出向起業・スピンアウトを快く送り出しましょう! 本講演を通じて、もし独立したとしても、その人は「仲間」であり、自社の事業領域を広げてくれる希少な「人的資本」だということを、広めていきたいと考えています。
- 林 美穂氏(はやし みほ)
- 経済産業省 経済産業政策局 産業人材課 課長補佐
- 2015年に人事院で採用され、国家公務員の働き方改革関連法令の改正、マネジメントやキャリア形成支援、エグゼクティブコーチング事業に従事。現在は、経済産業省にて産業人材政策を担当し、特に、人的資本経営や出向起業支援に取り組む。
「日本の人事部」「HRカンファレンス」「HRアワード」は、すべて株式会社HRビジョンの登録商標です。
当社はプライバシーマーク取得事業者です。類似のサービスやイベントとの混同にご注意ください。