講演者インタビュー
「人的資本経営」のKPI設定・開示に対応するための、現実的なアプローチとは ー楠本和矢の捉え方-
HR Design Lab.代表/自律的変革コンサルタント
楠本 和矢氏
社会的課題となっている「人的資本経営」。いずれ取り組みの進捗状況をKPI化し、外部に公開する流れが来ることでしょう。「とりあえず、KPI化できるものを選び、外部に発信する」という方法では、企業としての信頼や、組織に対する評価を著しく損ねる恐れがあります。では、どのようにKPIを設定し、外部に開示していけば良いのでしょうか。本講演では効果的KPIの設計のポイントにフォーカスを当て、事例を交えながらご案内いたします。
―― 今回の貴社講演はどのような課題をお持ちの方向けの内容でしょうか?
「人的資本経営」がテーマアップされ、経営陣からもオーダーがあり、社内で何か着手しなければいけないのだが、どこから着手すればよいかわからず、最初の具体的な一歩が踏み出せないという状態であったり、HRに関する各種取り組みのKPIを設定し、外部に公開する方針を立てているものの、どのように指標を設定/測定し、何を外部公開していけばよいか、手掛かりがないといった課題をお持ちの経営者および人事部の責任者の方に、それらを解決していくためのヒントをお伝えすることが、本講演の趣旨です。
このようなビッグテーマが掲げられたときによくあるのが、「取り組みの事実ありき」となり、体裁だけは整っているものの、内容に全く実効性がなく、現場の労力だけが増えて誰のためにもならないという、本末転倒の状態です。そのようにならないようにするためにも、ぜひ楠本和矢の考え方を聞いてみて下さい。
―― 今回の講演の聞きどころ・注目すべきポイントをお聞かせください。
人的資本経営について、総論として異を唱える人は誰もいないとは思います。しかし、あまりにも総論過ぎるので、各社がその本質的な意味合いを解釈して実効性を意識しなければ、結局キーワードだけが上滑りし、効果の実感のないまま、いつの間にか消えていく、というよくあるパターンに陥ってしまいます。
そもそも「人的資本経営」は、何のために、誰のためにやるのでしょうか。株価に少しでもいい影響を与えるために、ESG投資の対象銘柄になればOKなのか、当局からの覚えがめでたければOKなのか。それらが主たる目的かと言えば、それはNOでしょう。目的が今ひとつ不明確ということもあってか、なんとなく横並び的な取り組みも目立ちます。ISO30414の各項目をベースに、文言もほとんどそのままに、やるべきことを網羅的に広げているような取り組み事例も目立ちます。あまりに多くの企業が、同じようなテーマを掲げているので、疑問に思ってしまいます。例えば、さまざまなガイドラインにもある「女性管理職比率」というKPIを掲げる企業は多いのですが、それは全ての企業に必要でしょうか。目的をきちんと見据えなければ、あっという間に形骸化が進みます。
そうならないようにするための、「人的資本経営」に対する、リアリティのある考え方をお伝えします。
―― 講演に向けての抱負や、参加される皆さまへのメッセージをお願いします。
「人的資本経営」というキーワードが登場し、大きく変わりそうなことは、「改善KPI」を設定してPDCAサイクルを回し、外部に公開する、というものです。しかし、あまり考えずに汎用的なKPIを設定しただけだったり、とりあえず今までの取り組みに、単に指標を施して「人的資本経営のKPI」として開示しただけだったりするケースも散見されています。
だから、このテーマは意味が無い、やっても無駄だ、というつもりはありません。ビッグキーワードが、変革のきっかけになることもあります。仕方なくやるのではなく、その状況をテイクチャンスし、一気に本質的な事業変革を進めていくツールとする、という発想を持つべきだと考えます。
- 楠本 和矢氏(くすもと かずや)
- HR Design Lab.代表/自律的変革コンサルタント
- 神戸大学卒。丸紅株式会社、外資系コンサル会社を経て現職。多くの企業支援案件の統括役を務める、某社のHR専門組織の代表に着任後、実践に基づくHRソリューションを開発提供。著書に『トリガー 人を動かす行動経済学』『パワーファシリテーション』『人と組織を効果的に動かす KPIマネジメント』など。
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