講演者インタビュー
部課長研修の全面改訂により「パーパス経営」と「人的資本経営」を同時に実現するためのアプローチとは
株式会社インヴィニオ 代表取締役/組織能力開発コンサルタント/日本CHRO協会主任研究委員
土井 哲氏
厳しい経営環境の中、改めて自社の存在目的=パーパスを定義し独自性を打ち出そうとする企業が増えています。一方、人的資本こそが企業価値を左右する最大要因であるという考えの下、投資家の期待に応えるべく、人的資本の充実に着手し始めた企業も増えています。本講演では、部課長研修を一新し「パーパス経営」と「人的資本経営」を同時に実現する手法について、活動システムマップを使用した事例と共に要点を解説いたします。
―― 今回の貴社講演はどのような課題をお持ちの方向けの内容でしょうか?
パーパス経営や人的資本経営などが次々と打ち出される中、それらの実現にむけて人財育成体系のあり方や、階層別研修の見直しを考えていらっしゃる方向けの講演です。
経営陣がいくら独自性のあるパーパスや理念を掲げても、その狙いを正しく理解し、日々の業務に落としこむ管理職がいなければ「絵に書いた餅」です。また、人的資本の充実にむけて人財開発に投資を行っても、それが会社の打ち出すパーパスや理念の方向性と合っていなければ、株主の理解を得ることはできません。
私たちは活動システムマップ(以下CASM)を可視化し共有することで、パーパスや理念を現場の業務に落とし込むとともに、それらを実現するためのリスキルの方向性を明確にする方法論を開発しました。この手法を部長や課長が習得することで、パーパス経営の実現は加速し、なぜそのような能力開発に投資を行うのか、株主に対してもロジカルに説明することが可能になります。
―― 今回の講演の聞きどころ・注目すべきポイントをお聞かせください。
ポイントは、部・課長層に「戦略と組織能力と人財のアラインメント(整合性作り)」という概念を理解してもらうこと。そして部長層にはCASMを描く手法を学んでもらい、パーパス実現ための一連の活動を可視化し、それを実現する“チェンジ・リーダー”に変わってもらうこと。
一方、課長層には、部長が描いたCASMの実行推進役として、メンバーの役割を明確にし、活動に必要なスキルをメンバーに改めて習得させて(リスキリング)、実行度合いの評価とフィードバックを行って、貢献実感、成長実感を感じてもらえる “エンゲージメント・クリエーター”に変わってもらうことです。
活動システムマップは、戦略実現に必要な組織能力を「一連の活動」として表現するもので、マイケルポーターがその著書の中で紹介しました。インヴィニオは、パーパスや理念など経営が実現したいことを中核に置き、その実現にはどのような組織能力が必要か、組織能力の発揮のためには、具体的にはどのような活動が行われる必要があるかを体系的に示す、“CASM/組織能力と活動システムマップ™”という手法を編み出しました。
この武器を使いながら、部長層と課長層の役割分担を明確にすることで、経営層の掲げたパーパスや理念の現場への落とし込みが実現されるとともに、なぜいま、そのスキルの習得に投資するのか、パーパスや理念とひもづけて社内外の利害関係者に説明することが可能となります。
―― 講演に向けての抱負や、参加される皆さまへのメッセージをお願いします。
階層別研修という場を用いて、部長層、課長層にCASM作成のスキルを獲得してもらうだけでなく、人事部門の方々にもこの手法をマスターしてもらい、部長、課長の議論相手となりながら、部のビジョンの実現にはどのような活動を推進すべきか、一連の活動を導けるようになってもらうことが理想です。
CASMは、人事部門の方々がHRBPとしての役割を担っていく上で強力な武器になりますし、CASMで導かれた「一連の活動」を促進するには、どのようなスキルが求められるか、どのような人材が必要か、どのような制度が望ましいかなど、人事戦略を考える上での重要な情報を収集することにもつながります。ぜひ導入をご検討ください。
- 土井 哲氏(どい さとし)
- 株式会社インヴィニオ 代表取締役/組織能力開発コンサルタント/日本CHRO協会主任研究委員
- 84年東京大学経済学部卒業後、東京銀行に入行。在職中に米国MITスローン経営大学院にてMSを取得。92年McKinsey & Co.に入社、通信業界、IT業界のコンサルティングに従事。97年にインヴィニオの前身である(株)プロアクティアを設立。以来、人材開発・組織開発分野のコンサルティングに従事。
「日本の人事部」「HRカンファレンス」「HRアワード」は、すべて株式会社HRビジョンの登録商標です。
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