株式会社インヴィニオ 代表取締役/組織能力開発コンサルタント/日本CHRO協会 主任研究委員
土井 哲氏
VUCAワールドにおいて最も重要な経営課題の一つは、環境変化を先読みし、柔軟に対応できる可変性の高い組織能力を構築することです。鍵を握るのは、未来起点でジョブを定義し、必要な知識・スキルを学び直す「リスキル」と、変化することが当たり前というマインドセットの醸成です。本講演では、育成体系の抜本的変革と評価基準の変更で、この困難な課題を解決する方法論を提示します。
―― 今回の貴社講演はどのような課題をお持ちの方向けの内容でしょうか?
多くの企業において、社員の育成体系といえば、次世代経営者を生み出すための選抜型研修、部長職、課長職、係長職など各階層の職務遂行に必要な知識やスキルを学んでもらうための階層別研修、新入社員のオンボーディングを促す新人研修、部門で求められる専門知識やスキルを学んでもらうための専門知識習得研修などで構成されていました。
しかしながら、先が読みづらいVUCAワールドにおいては、環境変化にスムーズに対応できる、柔軟性と可変性、さらには機敏さ(アジリティ)をもつ組織をいかに作るかが最大の経営課題となっています。皆さんの会社の育成体系は、そのような組織の実現に資するものとなっているでしょうか? 人材育成体系を再構築したい、変化に強い組織を作りたい、社員のアジリティやレジリエンスを高めたい、そのような課題意識を持つ方のために具体的な方法論と事例をご紹介する講演です。
―― 今回の講演の聞きどころ・注目すべきポイントをお聞かせください。
組織能力の可変性を高める鍵は二つです。一つは社員の“リスキル”。もう一つはマインドセットの変革です。
リスキルにおいては、各部門のメンバーがこれからの事業戦略にそって未来志向で自分たちの果たすべきジョブを定義し、そのジョブの遂行に必要な知識・スキルを導き、各自の現在の知識・スキルレベルの現状を評価してギャップが認識できるよう、体系的な方法論を提供することが重要です。手軽に導入できるサブスクリプション型のコンテンツを導入して、「自由に学んでください」というだけでは戦略に合致した知識やスキルの習得にはつながりません。
そしてもう一つ重要なのは、変化が当たり前だというマインドセットの醸成です。組織内の85%以上の人は変化を嫌うと言われます。変化に対する抵抗を抑えるには、変化が当たり前だと考える組織文化を作り上げるしかありません。階層別研修を組織文化変革のタッチポイントと捉え直して、研修内容を一新し、管理職の意識を一気に変える方法論を提示します。
また、これを補強するために、なぜ変わらないとだめなのか、変わることでどのようなメリットが得られるのかなどを話しあう1on1を実施することや、何かを変えた人、新たに何かを学んだり身につけたりした人を評価する一方で、新しいことを学ばない人、同じやり方、同じスピードでしか仕事をしていない人の評価を下げるなど評価制度との連動についても触れたいと思います。
―― 講演に向けての抱負や、参加される皆さまへのメッセージをお願いします。
平成の30年間にグローバル市場での日本企業の競争優勢はすっかり失われ、世界の企業の時価総額ランキングの上位から日本企業の名前はすっかり消えてしまいました。日本人一人ひとりの競争力が下がっているのではないでしょうか? そのような中、ISO30414が米国企業に適用され、日本企業にも適用されるのは時間の問題です。上場企業には、どのように組織能力の向上を図り、人的資本の充実に取り組んでいるかを開示する必要性が出てきました。組織能力の刷新に欠かせないのが現有社員一人ひとりのリスキルであり、マインドセットの変革です。従来のやり方にとらわれず、未来起点、顧客起点での人的資本再構築のヒントが提供できれば幸いです。
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