厳選採用時代の中途採用に必要な「企業の意識」とは
厳選採用のもう一つの顔 企業が「厳選」されることもある
連日のように「大学生の厳しい就職活動の状況」が報道されているが、企業による「買い手市場」「厳選採用」が定着しているのは、中途採用でも同じだろう。ある程度以上の企業では、「大量に応募してくる候補者の中から、本当に優秀な人材を見分けるにはどうしたらいいのか」というのが、採用に関する大きな課題になっているようだ。だが、厳選採用時代では、企業も厳選される存在といえる。しかし、企業側ではそのことを忘れてしまうケースもあるようだ。
候補者の数は多いが…
「先月、ホームページをリニューアルされましたが、その後の反響はいかがですか」
医薬品業界の有力企業であるM社の採用マネジャーと直接話す機会があったので、そうたずねてみた。これまでM社は、主に人材紹介会社経由で中途採用を行ってきたが、直接の募集も強化するため、自社のホームページ内で採用コーナーを拡充したのだった。
「思った以上にいいですよ。有望な若手や第二新卒を中心に採りたいと思って始めたのですが、応募が多すぎて、本当にいい人材を見分けることは大変だと気づきました。現在、一次面接を進めているところですが、数が多いため連日面接が続いています」とマネジャーは上機嫌だ。
「最近、若手社員の早期離職が増えているという話をよく耳にしますが、第二新卒クラスの募集にこれだけ応募が多いのはそれが理由なんでしょうね。私たちは数多く採用するのではなく、本当に熱意のある人材だけに絞り込んで採用し、じっくり育てていきたいと思っています。そうなると、どうしても『厳選採用』になってしまいますね」
改めて説明するまでもないだろうが、厳選採用とは、採用予定人数に達しなくても、自社が求めるレベル以上の人材がもういないと判断したら、そこで採用を打ち切るというものだ。特に中途採用では、しばらく間をおいて再募集すれば、新たな転職希望者から応募があると考えられ、無理に採用レベルを下げる必要もない。まさに「買い手市場」の時代ならではの採用スタイルといえるだろう。
数日後、私の手元にM社の若手募集に良いのではないかと思われる転職希望者の情報が入ってきた。先日の話では「自社募集と人材紹介会社からの推薦を併用する」とのことだったので、紹介してみることにした。
「実は、ちょうど内定を出し終わったところなんです。今回はほとんどの人が入社してくれそうなので、また次回にお願いできますか」
M社の自社募集は順調に進んでいるようだった。私はM社の若手募集情報に「いったん終了」のチェックマークをつけた。