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経営者・人事の視点で取材!業界の傾向と対策
福利厚生アウトソーシングサービスの現状と傾向

社宅や寮、財形貯蓄などを中心とした手厚い福利厚生は、ある意味で日本的な終身雇用制の象徴だったともいえる。その終身雇用が前提でなくなってきた現在、一時は縮小される方向に進んでいた福利厚生が再び注目を集めている。従来型とは異なる福利厚生を担っているのは、専門特化し、内容の濃いサービスを提供している福利厚生アウトソーシング企業だ。
※この記事は2006年11月に作成し、その後、各社のサービスに関する情報を2019年5月に更新しました。

福利厚生を戦略的に活用する時代

人事制度の一環としての「福利厚生」自体は、決して目新しい概念ではない。従業員のための様々な生活支援制度として、多くの企業が導入してきた。現在は法律で義務づけられている社会保険(健康保険や厚生年金など)が最も基本的な福利厚生といえるものだし、退職金制度、社宅・寮、財形貯蓄、保養所…などは、誰でも思いつくだろう。

こうした従来型の福利厚生は、日本的な終身雇用を前提とし、社員に長く勤めてもらうことを目的に制度がつくられていた。福利厚生費は、そのためのコストと考えられていたのである。しかし、90年代のバブル崩壊の時期以降、他のあらゆるコストと同様に、福利厚生費も見直しを迫られることとなった。

この時期に、福利厚生の費用削減、効率化…をテーマにサービスを開始したのが、今回紹介する「福利厚生アウトソーシングの専門企業」である。それまでは各社が自前で持っていた社宅、寮、保養所などの共有化、福利厚生に関連する様々な事務手続きの共同化…などを通じて、大幅なコスト削減を実現した。このサービスは急速に利用企業を増やし、それに伴ってサービス面でもメニューを大幅に充実させ、費用対効果の高いサービスとして定着してきている。

このように、福利厚生アウトソーシングは、もともとはコスト削減や効率化を目的に発達してきたサービスだったが、ここにきて状況が変わってきているという。この数年の景気回復を受けて、企業の目的が「コスト削減」から「人事政策や企業イメージの具体化」のために戦略的に福利厚生を活用する…という方向に変化したためである。

具体的にいえば、福利厚生のどの分野に力を入れるかによって、その企業が何を考えているのかを社内外に発信することができるという考え方だ。
以下はその一例である。

強化する福利厚生 示される企業イメージ
健康診断・人間ドック
健康状態管理システムの導入
メンタルヘルスのサポート
スポーツジムの充実
社員の健康・人間らしさを大切にする企業
資格取得の奨励金制度
語学教室などの自己啓発支援
カルチャースクールなど
社員教育に力を入れている企業
ベビーシッター、託児所の提供、
育児用品
介護施設、介護ヘルパー
介護情報など
育児、介護に取り組む企業
少子化対策、女性にやさしい企業

景気回復に伴い採用競争が激化している中で、優秀な人材を確保するためにも、福利厚生の戦略的活用とそれによる企業イメージの向上は非常に重要と考えられる。

福利厚生アウトソーシングのメリット

現在、企業で導入されている福利厚生を内容別に分類すると以下の8分野になる。

  1. 住宅(社宅、寮、引越)
  2. 医療・健康(健康診断、人間ドック、メンタルヘルス、フィットネスクラブ)
  3. 育児・介護支援(ベビーシッター、託児所、ホームペルパー、介護施設、用品、情報)
  4. 慶弔・災害(冠婚葬祭、贈答品)
  5. 資産形成(財形貯蓄、持株会、ファイナンシャルプランニング、セミナー)
  6. レジャー(ツアー旅行、保養所、クラブ活動)
  7. ライフプランニング(退職準備セミナー)
  8. 自己啓発(資格取得、語学、カルチャー、奨励金)

福利厚生が人事戦略上有効なツールとして活用され始めている現在だが、より多彩になっていくサービスを自社だけで開発し、運用していくのは、実質的に不可能だ。また、仮に実行したとしてもコストは膨大なものとなる。そこで、福利厚生アウトソーシングの活用がいっそう進む状況となってきている。主なアウトソーシング各社は、上記の基本的メニューについてはほぼ全面的にカバーしている。

福利厚生アウトソーシングは、簡単にいえば、多くの会員企業をまとめることによってスケールメリットを実現するものだ。代表的な福利厚生アウトソーシング会社の場合、クライアント数は数千社、会員数(クライアントの従業員数)は数十万人から100万人単位に達する。そのため、各種サービスを専門のサプライヤーから仕入れる際に大幅な割引が期待できる。また各種事務作業を共通のシステムで処理することで、月々数百円という安価な利用料金で多彩なサービスの提供が可能になっている。各社のサービスメニューをまとめたカタログは、だいたいどこも電話帖と間違えるほどの分厚さとなっている。

また、利用企業は自社内に福利厚生担当の社員を置く必要がない。従来は、福利厚生の利用については、社内で申請書を書き、それを担当部署が承認する…という流れがあったが、現在はそれをインターネット(Web)などを使うシステムで、すべてアウトソーシング会社が代行しているのが一般的だ。利用状況などは、データにまとめられて毎月フィードバックされる仕組みになっている。

また、近年、アウトソーシング各社が力を入れているのが、コンサルティング機能だ。これは、最新の人事(福利厚生)トレンドを紹介したり、各社の人事制度に整合性の高い福利厚生システムを提案していくものである。アウトソーシングを導入したいのだが、社内の他の規定や施設などとの兼ね合いが複雑で心配…という企業に適切なソリューションを提供するものだ。

注目の福利厚生サービス

人事制度の一環としての「福利厚生」自体は、決して目新しい概念ではない。従業員のための様々な生活支援制度として、多くの企業が導入してきた。現在は法律で義務づけられている社会保険(健康保険や厚生年金など)が最も基本的な福利厚生といえるものだし、退職金制度、社宅・寮、財形貯蓄、保養所…などは、誰でも思いつくだろう。

■カフェテリアプラン

福利厚生に求める内容は、社員一人ひとりの年齢や家族構成、置かれている立場や収入などによって異なってくる。カフェテリアプランは、全員一律の福利厚生ではなく、会社が与えた一定のポイントの範囲内で各自が好きな福利厚生制度を利用するという方式で、近年採用する企業が増えている。社員一人ひとりのポイントの管理などが必要なので、利用状況を管理するシステムが不可欠だが、福利厚生アウトソーシング会社を利用すればこのシステムをASPなどで安価に利用することが可能だ。

■ウェブを活用した利便性

大規模な会員数を持つ福利厚生アウトソーシング会社は、利便性の高いウェブシステムを導入していることが多い。そのため社員は、職場や自宅のPC、あるいは携帯電話などから簡単にサービスにアクセスすることができる。自社で開発をしたら莫大な費用がかかるシステムを簡単に利用できるのもアウトソーシング会社活用の大きなメリットだ。

■健康管理、自己啓発などの新サービス

現在、福利厚生アウトソーシング各社が力を入れている分野に、ライフサポート(健康管理、自己啓発分野のサービス)がある。社宅や保養所といった「ハコもの」が福利厚生の主流であった時代から、社員の「生活の質向上」が求められる時代へとシフトしつつある現在。そのトレンドにふさわしい福利厚生として、様々な新サービスが開発されている。どういった福利厚生がトレンドなのか、アウトソーシング会社所属の専門家から情報を得てみてはどうだろうか。

■内定者、OB向けサービス

現職社員と同様の(またはそれに近い)福利厚生を、内定者や退職者にも提供しようというもの。内定者向けは「内定辞退者の抑制効果」を期待するものであり、またOB向けは退職時に一定のポイントを退職祝いとして付与するといった形で、企業年金や退職給付の一環とするものだ。

福利厚生アウトソーシングの代表的企業

社名 商品サービス名
株式会社JTBベネフィット えらべる倶楽部
株式会社リロクラブ 福利厚生倶楽部
株式会社イーウェル WELBOX(ウェルボックス)
株式会社ベネフィット・ワン ベネフィット・ステーション

パッケージ型福利厚生アウトソーシングサービス『WELBOX』

カフェテリアプランに豊富な実践とノウハウ

株式会社イーウェルは2000年に設立され、パッケージメニュー「WELBOX」、カフェテリア運用を主とした福利厚生アウトソーシングサービスを提供しています。全体での受託実績人数は約374万人、契約団体数は1299社。中でも、カフェテリア運用は約89万人、436団体と高い実績を誇る。また、財形貯蓄などのBPOサービス運用、健康支援サービスも含めたトータル提案が多い点も特徴だ。

「当社は東急不動産と豊通シスコムとの共同事業会社となっており、設立時より大手企業を中心に福利厚生アウトソーシングで実績をあげてきました。カフェテリアプランは、もともと米国が発祥ですが、日本ではやはりこうした大手企業が先行して導入してきましたので、当社も自然と多くの事例を経験し、ノウハウを蓄積してきたわけです」。こう語ってくれたのは同社常務の小室氏だ。

カフェテリアプランは、企業が会員(従業員)に付与したポイントの管理をいかに行うかが運用上のカギとなる。同社は、各企業がカフェテリアプランを導入して何を実現したいのかを正確にヒアリングし、提供するシステムをカスタマイズすることで、最適なプラン導入をサポートしている。「運用面での効率化、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)という考え方をベースに、他にも様々な人事部の業務を代行しています。財形貯蓄や従業員持株会など、システムの運用が煩雑になりがちな業務についても、ぜひご相談いただきたいところです」(前出・小室氏)。カフェテリアプランの導入・運用で鍛えられたノウハウが他の福利厚生サービスにも応用されている。

また、旅行関係のサービスは、ネット最大手の「じゃらん」と独占提携。豊富な選択肢の宿・ツアーをさらに格安に利用でき好評だ。現在、力を入れている新サービスは、従業員と家族の健康管理を一括でできる「KENKOBOX(ケンコーボックス)」。企業だけでなく健康保険組合での活用も見込まれている。

WELBOXの利用料金はサービス利用料と補助金(預り金)で構成されている。補助金は人気の宿泊施設やトップシーズンの利用に手厚く設定し、会員企業の従業員が、年間を通じてリーズナブルに利用できるように設定している。また、企業にも経費の有効活用という大きなメリットを提供している。

●低コストでも充実した福利厚生/全国の施設やサービスと提携しているため、企業が個別に施設と契約した場合にくらべて、低コストで充実した福利厚生がすぐに利用できます。

●カスタマイズでメッセージ性を/補助金の運用により、子育てや介護、特定地域の宿泊施設などにより手厚い割引を加え、企業からのメッセージが伝わりやすいように、カスタマイズすることができます。

●豊富なメニューと告知媒体/20代~60代まで、ライフステージに応じた幅広いメニューをご用意。冊子やWeb、メールマガジンなど、多種多様な媒体で従業員様や家族にしっかり届くサービスです。

費用 従業員数によりプランが異なります。
お見積りさせていただきますのでご相談ください。
例)サービス利用料
  1,000人以上 月額400円/人
  100~999人 月額500円/人
導入社数 872社 ※2017年4月期実績
サービス形態 代行・アウトソーシングコンサルティング

福利厚生×健康経営×教育支援サービス「ベネフィット・ステーション」

福利厚生のワンストップ・ソリューション企業

1名の中小企業から上場企業まで、9,555社以上、1,042万人の導入実績(2019年5月現在)があり、東証一部上場企業で福利厚生アウトソーシングを利用している企業のうち、2社に1社が株式会社ベネフィット・ワンを利用している一大サービスだ(同社調べ)。

「当社の特色は、何といっても選択肢が豊富なことです。大手企業のご利用が多いということは、全国に様々なニーズを抱えた会員の方がいらっしゃるということ。そのため、あらゆるサービスで選択肢を増やし、また新メニューの導入も積極的に行っています」と話してくれたのは同社ヒューマン・キャピタル研究所所長の可児氏。

「ヒューマン・キャピタル研究所は、企業向けの福利厚生コンサルティングを行います。メンバー5名が、クライアント企業の福利厚生に関する課題解決のための提案を行っています。こうした活動で拾い上げたニーズやシーズを新しいサービスメニューの開発にフィードバックしています」。

時代のニーズに即したサービスという意味では、現在最もよく利用されているのは、育児や介護支援といったライフサポート系のメニュー。利用全体の約60%をこの分野が占めるため、新サービスの開発にも特に力を入れている。最近好評なのは、託児所の利用が1時間あたり700円割引になる育児クーポン「すくすくえいど」。

「豊富な選択肢を用意していますが、逆にどれがいいのか迷って選びにくい…という声もお聞きします。そこで当社のサイトではユーザーレビューである「レーティングボード」を設け、ベネフィット・ステーションを利用した方の感想を読めるようにしました」(前出・可児氏)。また、同じサービスが他でより安く提供されていた場合に価格をそろえる「ロープライス・ギャランティー」、全国のローソンの端末(ロッピー)で各種チケットやクーポンを受け取れる…など、会員の利便性を考えたサービスを次々と打ち出している。

パソナグループ各社との連携を生かし、福利厚生・人事アウトソーシングのワンストップ・ソリューション企業を目指している。

●独自ではカバーしづらい分野を広く網羅!/フィットネスクラブ、育児・介護、自己啓発、レジャー・エンターテインメント、グルメ、物販、宿泊施設割引など、ニーズを網羅する140万件超のメニュー。

●従業員の健康管理と促進をまとめて対応/健診データの管理や、リスク予想機能による健康意識の向上、また、従業員が楽しみながら健康になれるポイントプログラムを用意。貯まったポイントは健康支援商品と交換可能

●内定者からリーダー向けまで、幅広い学びを/約800講座の幅広いeラーニング講座がいつでも何度でも受講できるため、従業員のスキルアップを支援可能。もちろん受講管理・レポート機能も充実。

費用 <ホワイトプラン>
●従業員数:1~10名、入会金:2万円、月会費:6,000円/社
●従業員数:11~100名、入会金:10万円、月会費:600円/人
●従業員数:101~1000名、入会金:30万円、月会費:600円/人
●従業員数:1001名~、入会金:100万円、月会費:600円/人
導入社数 1万2300社 ※2020年4月期実績
サービス形態 代行・アウトソーシングコンサルティング
対応分野 カフェテリアプラン保養所福利厚生コンサルティング

導入にあたってのポイント

福利厚生アウトソーシングのサービスを導入する際のポイントだが、以下のような点を十分に考慮したい。

■アウトソーシングの導入目的
冒頭でも述べたように、トレンドは福利厚生メニューによって、社員の生活支援への取り組みや企業姿勢を示すという考え方だ。もちろん、経費の有効利用、社内業務の簡略化、人員削減といったコスト面からの導入も決して間違っているわけではない。費用対効果を十分検討し、有効に活用したい。

■料金体系
大きく分けて、一括方式と清算方式がある。一括は、定められた一定額の会費を支払うことですべてのサービスを利用できる方式。一方、清算方式はあらかじめ預けておいた補助金の中から使った分だけを清算する仕組みだ。使わなかった補助金は返金、または次期に繰り越されるが、利用が予定以上に多かった場合には追加料金が発生することもある(通常、オーバーしそうな場合は利用に制限をかけることが多い)。自社の事情を十分検討し、無駄のない料金体系を選びたい。

■カフェテリアプラン
一人ひとりのニーズにきめ細かく応えることができるカフェテリアプランだが、導入には既存の福利厚生制度(人事制度)との整合性を十分チェックする必要がある。アウトソーシング各社のコンサルタントや営業担当に相談し、導入時に混乱のないようにしたい。
サービスのラインナップ自体は、大手各社でそれほど大きい違いはないのが現状だ。それだけにカスタマイズの要望などにきめ細かく対応してくれるかどうか、また一人当たりの額はそれほど大きくなくても、社員全員をまとめるとかなり大きな金額にもなるため、見積もりなどはあらゆる条件を組み込んで慎重に検討したいものである。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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