講演者インタビュー
女性活躍推進法を業績向上の機会にする仕事のマネジメント――人事基盤としての役割定義
株式会社みのり経営研究所 代表取締役
秋山 健一郎氏
人事制度の基盤が社員の属性に焦点を当てている限り、女性を含む多様な人材は活用できない。社員が何をしたら会社に貢献したと言えるのか、それをどう評価するのかを明示する責任は会社側にある。多様な人材の様々な力を会社へ貢献する力に変えるのは、社員の役割を明確に定義することが出発点である。女性活躍推進法で求められる状況把握・行動計画を実質的な業績改善につなげる手法を解説する。
―― 今回の講演のポイントについて、お聞かせください。
4月から施行される女性活躍推進法により、従業員数301人以上の企業は、自社の女性の活躍状況の把握と、行動計画の提出並びに報告が義務付けられました。これを機会に単なる法令対応のためではなく、女性活躍はもちろん、多様な社員の力を活用して会社の業績を向上させるマネジメント手法があることを、理解していただきたいと思います。
長時間労働、ワークライフバランスなどの課題が多様な社員の活用を妨げています。社員処遇の仕組みが「能力あるいは意欲・態度」などの属人的な要素を中心に組み立てられている限り、仕事のやり方は変わりません。社員はいくら良い結果を出しても、上司がそれらを不足していると判定すれば、良い評価を得られないのです。上司に認められる唯一の方法は、上司の気に入るやり方で仕事をすることですが、結果的にそれは無限定な仕事のやり方、果てしない長時間労働へとつながって行くのです。
このような状態では、実質的な女性活躍あるいは多様な社員の活用は望めません。多様な人材が活躍するためには会社・上司がアウトプットとして何を求めているのかを明示することが出発点です。人事制度の基盤を役割定義にすることは、どのような属性を持った社員でも、その処遇は会社が求めるアウトプットに基づいて決まる仕組みを導入するということです。女性活躍推進のための行動計画を、みのりあるものとしていくためのアプローチを、解説したいと考えています。
―― 貴社の強みや特徴について、お聞かせください。
みのり経営研究所は設立以来12年間、社員の役割を中心とした人事制度の基盤づくりと、多様な社員が活き活きと働けるための人事制度構築や社員研修を支援してきました。コンサルタントは皆、20年以上の経験を積んでいます。近年は仕事・役割を軸とした人事制度の重要性が叫ばれ、概念的な理解が広まりつつあります。ところが残念なことに、肝心の仕事・役割を定義する手法も経験も無く、結果として財務的な数字のみに頼るか、能力定義を微細化してお茶を濁している会社が多いのが実情です。
みのりはこの12年間、さまざまなお客様とあらゆるレベルの仕事・役割の定義づくりを行ってきました。場合によっては、組織づくりまで展開することもあります。構造的には立派な組織も、内部の構成員が何をなすべきか不明確では、機能不全に陥るのは明らかです。みのりが提案する仕組みは、組織の健全な発展と、多様な社員の自発的な創意工夫を通じた成長を同時に達成させるものです。
―― 講演に向けての抱負や、参加される皆さまへのメッセージをお願いします。
女性活躍推進の具体的・効果的進め方を、仕事・役割に基づく人事制度とのつながりで説明します。女性を含めた多様な人材の活躍を推進するためには、三つのレベルで考えて行く必要があります。社員、特に管理職の意識のレベル、人事上の制度仕組みのレベル、そして組織の風土のレベルの三つです。今回の講演では時間の制約がありますが、なるべく具体的な事例に即して説明します。女性活躍推進の真のあり方は、女性を優遇することではありません。女性の持つ力を活用することです。そのためには、多様な人材を活用する人事制度の基盤を構築することが重要です。それは同時に、推進する社員の意識の変革、結果としての風土の変革を意味します。
- 秋山 健一郎氏(あきやま けんいちろう)
- 株式会社みのり経営研究所 代表取締役
- 一橋大学商学部卒。三井物産株式会社、いすゞ自動車株式会社等での実務経験を経て、ヘイコンサルティンググループにてパートナー、プライスウォーターハウスクーパースコンサルティングにて戦略・人事コンサルティングサービスのパートナーを歴任。組織/人事/戦略分野を中心に20年以上のコンサルティングを経験。
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