(栗田 芳和氏)
最初に、「タレントマネジメント」についてご説明します。その本質には二つのポイントがあります。まず一つは、社員一人ひとりとビジネスの関係性を明らかにすること。二つ目は、社員一人ひとりの付加価値を最大化することです。
では、タレントマネジメントで活用すべき人材情報とは何でしょう。人事で一般的に活用している情報に加え、スキル管理や採用管理、目標・評価管理といった多くのプラスアルファの情報が必要になります。
お客様からは「なぜこれほどの情報が必要なのですか」とよく聞かれますが、何かを変えようとするときは「見える化」なしでは進みません。見えないものを理解することはできませんし、理解できないものは改善することができないのです。
では、「見える化」とはどういう取り組みなのでしょうか。一つ目は「個の知識を共有データへ変換する」ことです。育成、評価、キャリア情報といった情報の多くは個人の頭の中にとどまっています。それらをどこまで顕在化し、広く共有化できるのかが課題です。
二つ目は「一時点の独立したデータを連続性のある複合的なデータに変換する」ことです。瞬間で見るデータと経年で見るデータとではメッセージが変わってきます。また、それぞれのデータを関連付けることで、単独データでは気づかなかった様々なことが見えるようになってきます。
一つ事例をご紹介します。あるメーカーから、後継者育成のためのタレントマネジメントシステムの構築依頼がありました。条件は「経営トップが自ら情報を確認できる」「グローバル人材がアクセスできる環境をつくる」「後継者候補データをいろいろな角度から分析できる」の3点でした。
実作業では、人事システム内にあるデータが限られていたため、別のシステムやエクセルデータから情報を加え、また、周辺システムと連携させながら「見える化」を行いました。このようなシステム構築で大事なことは、パッケージから考えるのではなく、目的を明確にしておくことです。本当に見たいものが見えるシステムにしなければ意味がありません。
これからの人材マネジメントでは、システムの姿も変わっていきます。これまでは「全体最適に基づいた個別最適」という考えでしたが、これからは「個別最適を積み上げた全体最適」へと変わっていきます。主導は「人事」から「経営・ライン」へ、管理も「全体・均一」から「個別・多様性」へと移ります。今後はこのような視点でのシステム作りが重要になるでしょう。
(斉藤 由美氏)
ここからは、人材マネジメントシステムとはどんなものなのかについて、ご説明します。既存の人事システムは、給与・労務管理からスタートし、マスタ管理・台帳管理へと発展してきました。
しかし、人材マネジメントシステムは、そもそもの導入目的が違います。その目的とは「経営戦略実現」「現場マネジメント」「従業員活性化」です。そして、人材マネジメントに携わるすべての人に“人材情報のインフラ”として提供できることが重要です。
人材マネジメントシステムに求められる要件としては、以下の6点があげられます。第一に、経営者、マネージャーが使えるシステムであること。人事以外の人が直接使えることが重要です。二点目は、人と組織の効果的な可視化が実現できること。人材データは量も多く、漫然と集めただけでは扱えません。どれだけ目で見てわかりやすい形にできるのかがポイントです。
三点目は検索機能が豊富で柔軟性があること。並べる人の種類によって、違うアプローチも生まれてきます。四点目は、会計や営業などのデータと関連性分析ができること。各種のデータ同士を連携させて分析することで、既存の人事データだけでは見えてこなかったような、価値のある情報を得ることができます。
五点目は、意思決定を支援する機能があること。そして六点目は、仮説・検証作業を行うことができること。よくお客様から「過去データの分析はどんな役に立つのか」と聞かれますが、例えば、過去の成功パターン、失敗パターンなどを様々な角度から分析できれば、未来を予測することも可能です。
弊社の人材マネジメントシステムでは、要望の多い「直感的操作」「可視化」「一覧性」といった工夫を加えています。
例えば、人材情報の照会画面では、ワンクリックで一度に9つの関連情報を表示することができ、また、組織図作成を支援する機能では、出力する組織の範囲や対象者の条件を指定することも可能です。
画面上でのシミュレーション作業を支援するワークボード機能では、例えばチーム編成を考える際に、人選したメンバーのスキルや適性、評価ポイントなどをレーダーチャートで横並びに表示することも可能です。
会社の目的に合ったカスタマイズを行いながら、個を活かすマネジメントにぜひ活用していただきたいと思います。