参加者の声
講演を通じて課題解決のヒントが得られ、
参加者同士の交流を通じて人事としての視野を広げることができる
りゅうごう・のりこ●大学卒業後、SRL、ベネッセコーポレーションを経て、ウシオ電機に入社。SRLでの一時期を除き、一貫して人事として、人材育成や組織開発、労務、ダイバーシティ推進などに取り組む。ウシオ電機では人材戦略部長として、人事業務全般の遂行に携わる。
2009年にスタートした「HRカンファレンス」は、2019年で10年目を迎えました。これまで多くの人事担当者が参加されていますが、ウシオ電機株式会社 人材戦略部長の流郷紀子さんも、「HRカンファレンス」を有効に活用しているお一人です。明確な目的をもって講演を選び、聴講することで、ご自身の人事業務に役立てているという流郷さんに、「HRカンファレンス」の見どころや利用法、印象に残った講演などをうかがいました。
ウシオ電機では、人材戦略部長として人事部門全体を見る立場に
――まず、流郷さんのこれまでのキャリアについてお聞かせください。
大学時代は工学部で学び、卒業後は臨床検査を行う株式会社エスアールエル(SRL)に入社しました。まず研究所に勤務し、その後、本社で人事業務を担当するようになったのですが、異動直後は給与計算など労務関連の言葉の意味がよくわからず、苦労しましたね。
試行錯誤しながら業務にあたるうちに「人事部門に来たからにはその道のプロフェッショナルになろう」と考えるようになり、社会保険労務士の資格を取得。その後も専門性を高めるべく、大学院で人事労務法務を学びました。SRLに10年間勤務した後は、株式会社ベネッセコーポレーションに転職し、人事として11年間勤務。目標管理制度、人材開発、組織開発、さらに部門人事やホールディングスの人事業務などを通じて、人事関連の領域を幅広く学びました。人事としてベネッセ時代に得られた経験は、非常に大きかったですね。そして3年前の2016年にウシオ電機に転職しました。
――ウシオ電機では、どのような業務を担当されてきましたか。
私が入社する約4ヵ月前に、ウシオ電機では人事制度の変更が行われていたのですが、人材の育成体系が追い付いていない状態でした。そのため、体系化していくことが私の最初のミッションになりました。翌2017年4月からは人材戦略部長となり、人材の育成だけでなく、人事分野全般を見る立場になりました。
一番の課題は、人事が経営戦略に寄り添って機能していないこと
――日々の人事業務を進めていく中で、感じている課題とは何ですか。
社会を取り巻く環境が大きく変化していく中、経営や従業員も変わっていかなくてはなりません。当然、人事部も経営戦略に寄り添って機能する必要がありますが、まだ道半ばであることが一番の課題です。
人事部のメンバー一人ひとりと話をすると「もっと会社を良くしていきたい」「もっと効率的に仕事をして、従業員をサポートしていきたい」と、口を揃えていいます。当社の人事部がこれまでの「管理型人事」から「戦略型人事」へと変化するにはまだ時間がかかるかもしれませんが、人材戦略部という名前に込められた経営の思いに応えられるよう、人事部のメンバーが協力し合い、さまざまな取り組みにチャレンジして課題を乗り越えていきたいと思っています。
二つ目の課題は、当社の人事ビジョンである「驚きと喜びを生み出す輝く集団」となる活動を進め、人と組織を作り上げていくことです。「驚きと喜び」とは何なのかというと、持続的に成長していくために「新しい価値」を生み出すこと。「新しい価値」とは、「ウシオ電機はこんなことができるのか!」「ウシオ電機の技術でとても助かっている!」といった驚きや喜びを、顧客や社会から感じてもらえることです。こうした社会からの認知(=賛辞)を従業員が実感することで、従業員一人ひとりが輝き、組織自体も輝いていきます。なぜなら私たちは「光のメーカー」なのだから、というストーリーを人事ビジョンに込めています。このメッセージを体現できるような人と組織作りに私たちは注力していきたいと考えています。
そして三つ目の課題は、ダイバーシティプロジェクトの推進です。ダイバーシティの実現は、これからの当社の成長に欠かせません。個人の多様性を生かして、人と組織がともに成長することを目指していきたいと思っています。ダイバーシティプロジェクトは、2017年7月にスタート。具体的なプロジェクトとして、女性活躍推進分科会、障がい者雇用分科会、キャリア支援分科会の三つを設けました。これらの取り組みを進めていくことが、経営戦略としてダイバーシティを推進できる人材の育成へとつながっていくと考えています。
コンピテンシーを再構築するためのヒントを得るために参加
――流郷さんが「HRカンファレンス」に最初に参加された理由・きっかけをお教えください。
最初は「HRカンファレンス2015-秋-」で開催された、ビジネス・ブレークスルー大学大学院・川上真史教授によるランチ・ミーティング「コンピテンシーの本質」に参加しました。当時はベネッセに在籍し、コンピテンシーの再構築を検討していた時期で、そのためのヒントが欲しいと考えたのです。人事としての問題意識・課題認識や抱えているテーマとリンクした形で、「HRカンファレンス」に参加したことになります。
イベントに参加するからには、人事担当として何らかのヒントを得たいと考えるのは当然のこと。自分だけ、あるいはチーム内の限られたメンバーだけで検討していると、どうしても自分たちの「枠組み」の範囲内で考えてしまいがちです。「HRカンファレンス」に参加することは、こうした「枠組み」を取り払うきっかけとなります。同じ人事課題であっても、調査統計や数値を用いた話や、違う目線からの施策・対応が得られるのは、非常にありがたいですね。
自社の人事課題を踏まえて、参加する講演を選択
――前回参加された「HRカンファレンス2019-春-」のタイムスケジュールと、講演を選ばれた理由、受講された感想をお聞かせください。
「HRカンファレンス2019-春-」では四つのセッションに参加しましたが、いずれも現在取り組んでいる「ダイバーシティプロジェクト」につながるテーマを扱ったものでした。森中謙介氏(新経営サービス人事戦略研究所 シニアコンサルタント)による特別講演「シニア社員の活躍を促進する!65歳定年時代の再雇用制度・定年延長制度の作り方」を選んだのは、ベテラン社員の活躍支援が社内で大きなテーマとして挙がっていたからです。
また、ダイバーシティを推進していくにあたり、「キャリア支援」が一つの課題なっていました。人事として、どのように制度を構築していくのか。そのヒントを得るため、水野みち氏(日本マンパワー フェロー)と石川章泉氏(東海東京ファイナンシャル・ホールディングス 人事企画部長)の特大会場講演「人生100年時代、企業が取るべきキャリア形成支援戦略とは」と、若松夕香氏(クレディセゾン 戦略人事部人材開発課長)、鈴木潤氏(SCSK 人事グループ人材開発部人材開発課)、伊達洋駆氏(ビジネスリサーチラボ 代表取締役)の3氏よるランチ・ミーティング「『現場視点』で考える従業員のキャリア開発支援」に参加しました。
小川庸一氏(レイヤーズ・コンサルティング シニアマネージャー)による特別講演「これからのグループ経営に資するシェアードサービスの在り方とは」に関しては、今後グループという視点での人事業務の効率化・集約化が検討の視野に入るだろうと想定し、学びを得るために参加しました。
時間 | 講演形式 | 講演タイトル |
---|---|---|
13:00 - 14:00 | 特別講演 | シニア社員の活躍を促進する!65歳定年時代の再雇用制度・定年延長制度の作り方 |
時間 | 講演形式 | 講演タイトル |
---|---|---|
9:30 - 10:30 | 特別講演 | これからのグループ経営に資するシェアードサービスの在り方とは |
10:45 - 11:55 | 特大会場 | 人生100年時代、企業が取るべきキャリア形成支援戦略とは |
12:10 - 14:10 | ランチ・ミーティング | 「現場視点」で考える従業員のキャリア開発支援 |
ヒントや参考にするのは有効だが、単に真似をしてはいけない
――「HRカンファレンス」のおすすめの活用法を教えてください。
これからの人事は、世の中の動向や潮流をしっかりと把握していなければなりません。自社の問題だけを考えるのではなく、広く外に目を向ける姿勢が欠かせないのです。そのためには「HRカンファレンス」などを通じて、他の企業の取り組みや工夫、課題解決の仕方をしっかりとキャッチアップする必要があります。
ただし、メンバーに対しては「単に他社のまねをしてはいけない」といっています。自社とは置かれた状況や構成要員、組織風土などがそもそも異なるわけですから、ただ単に他社の事例や手法をまねても意味はなく、むしろ、自社の優位性を失いかねないからです。
まねをするために聞きに行くのではなく、自分の発想や視野の広がりを求めること。自分の会社の中に閉じこもるのではなく、社会という大きな器の中で物事を考えること。そういう視点を持って参加することで、今まで自社で当たり前だと思ってやってきたことが、実は当たり前ではなかったと知ることもあると思います。その結果、自社におけるものの見方が変わってきます。もちろん、その逆があるのも事実。他社の動向を見て、「意外と自社の方が進んでいるな」などと感じることもあるでしょう。
――これまでの「HRカンファレンス」の中で、最も良かった講演は何ですか。
一つの講演に絞るのは難しいのですが、ランチ・ミーティングで登壇者だけでなく他社の人事担当者とグループディスカッションできたことが、強く印象に残っています。同じ人事として、会話が弾みます。実際に取り組んでいく中で悩みを打ち明け、同じような課題認識を共有することができたのは非常に良かったです。
ビジネスの中身は違っても、人事担当として置かれている立場は一緒ですから、とても勇気づけられます。ディスカッションでは、ベテラン人事の方だけではなく、若い人たちからも活発に意見が出るので大きな励みになりました。
ランチ・ミーティングでは参加者同士で議論を交わせるのも魅力の一つ
――参加者視点で見た「HRカンファレンス」の魅力とは何でしょうか。
インターネットが発達した現在において、知りたい情報を検索して知ることが容易になりました。しかし、それだけでは自分が関心のあることにしかリーチできないので、限定的な情報収集といえます。
「HRカンファレンス」のようなリアルな場では、関心のあることだけでなく、それ以外の情報や関連する事例も聞くことができます。すると、自分が関心のあること以外にも重要なことが世の中にはたくさんあると知ることができるでしょう。これは情報化社会にあって非常に意味のあることで、個人の成長を大きくうながしてくれるはずです。
例えば現在、採用を取り巻く状況は変化が激しくなっています。その変化に対して追い付けていなくても、「HRカンファレンス」に参加すれば、自分では気付けなかった採用に関する動向や手法を会得することができます。特にテクノロジー活用が進む人事分野では、数年前までは考えられなかったことが現実化しており、知らないままでいることは、人事や企業にとって致命的なことになりかねません。
このような課題を持って「HRカンファレンス」に参加することで、自分の中で漠然としていた点と点が線としてつながり、視野や発想が広がっていきます。人事業務の場合、つながりの事項が多岐に渡るので、「HRカンファレンス」は気づきの場として、非常に大きな意味を持つのではないでしょうか。
参加者同士で思いもよらない情報や知見を共有することができる
――「HRカンファレンス」に参加したことがない方にメッセージをお願いします。
経営戦略と連動した人事になるためには、人事部という組織の中に閉じこもっていてはいけません。特に「HRカンファレンス」の場合、イベントを通じて得られるモノの質と量が非常に大きい。興味関心のあるテーマの講演を探し出し、実際に参加することで、思いもよらない情報や知見を得ることができます。というのも、「HRカンファレンス」には人事の人たちがたくさん集まっているからです。出会った人事の方々と会話をし、交流してみる。それによって、自分の中にある人事の常識や考え方、選択肢などが確実に広がっていくと思います。
私自身の経験からも、自社以外の人事の方とのつながりからは、非常に多くのものを得ることができます。こうしたつながりは、思わぬところで実を結びます。変化の激しい時代だからこそ、人事担当者間のコミュニケーションはますます必要となるでしょう。
その第一歩として、無料で参加することができる「HRカンファレンス」は価値のあるイベントではないでしょうか。初心者の方でも、コンテンツが非常に盛りだくさんなので選択の幅が大きく、自分や自社の課題にマッチした講演に出会うことができるはずです。
また、質疑応答などの場面で、他社の人事が持つ悩みや課題を聞けることも非常に有益です。人事としていろいろな視点や観点、考え方を学ぶことができます。
――今後、「HRカンファレンス」に期待されることは何ですか。
人事担当者同士が直接対話できるような場をもっと増やしてほしいですね。対話する場に登壇者が参加したり、ファシリテーターがいたりすると、ディスカッションの中身がより深くなると思います。
さらに、経営層から人事に向けたメッセージや要望が聴けるとありがたいです。人事はどうしても施策本位で考えがちですが、「戦略人事」の重要性が叫ばれる現在、経営層に対して人事がいかに寄り添っていくかが問われています。経営層が人事上の課題や解決策をどのように考え、対応しようとしているのか。一段高い示唆を、「HRカンファレンス」の場で知ることができればうれしいですね。
(東京都千代田区のウシオ電機本社にて)