講演者インタビュー
“両利きの経営”の実現に向けた戦略人事のあり方~戦略と組織能力のアラインメント
株式会社インヴィニオ 代表取締役/組織能力開発コンサルタント/日本CHRO協会主任研究委員
土井 哲氏
新たなパーパスやビジョン、あるいは戦略を打ち出し実現するには、それを実現できるだけの“組織能力”が必要です。もし御社が“両利きの経営”を掲げるのであれば、それに必要な組織能力を開発する事こそが真の“組織開発”と言えます。この講演では、“両利きの経営”に必要な組織能力をいかに特定するか、そしてそれをいかに開発するか、二つの異なるアプローチと戦略人事の果たすべき役割を提示します。
―― 今回の貴社講演はどのような課題をお持ちの方向けの内容でしょうか?
平成の30年間にグローバル市場における日本企業の存在感はすっかり薄れ、令和に入ってもまだ成長の糸口を見出せていないように感じられます。VUCAの時代、一つの事業・ビジネスモデルが永続することはあり得ず、既存事業の生産性を上げ、収益性を高めながら、周辺領域あるいは全くの新規領域を開拓するというのは多くの企業が直面する課題であり、そのような中で急速に注目を浴びているのが「両利きの経営」です。
そもそもなぜ自社は両利きの経営ができていないのか現状を理解するための分析手法がほしい、「コングルーエンス・モデル」というものを勉強したが、KSFをどのように導くのか、またKSFを実現するためのあるべき人材や組織構造、組織文化をどのように導くのか具体的な手法を知りたい。また現状からあるべき姿にむけて何を変革していくのか、その変革において人事部門として何ができるか考えたい、などの課題を抱える方向けの講演です。
―― 今回の講演の聞きどころ・注目すべきポイントをお聞かせください。
コングルーエンス・モデルにおける「戦略・目標」「KSF」「人材」「公式の組織」「組織カルチャー」をどのように整合的に設計するのか、具体的な手法を提示するとともに、アラインメント=整合性を確保する鍵が“設計の順序”であることをお示しします。
まず、重要なのは「戦略とは何か」を理解することです。いろいろな定義が存在しますが、誰にも理解しやすく、コングルーエンス・モデルを自社に落とし込む際に役立つのは、マイケル・ポーターの定義です。「競争戦略の本質は差異化である。意図的にライバルとは違う一連の活動を選び、独自の価値を提供することである」。ここで、注目していただきたいのは、二つのキーワード〜「独自の価値」と「一連の活動」です。この二つの言語化、可視化、具現化を支援できるようになることが「戦略人事」の肝であるというのが私の持論であり、日々の活動が一新されることで、新たな組織能力が形成されます。
では、企業内で実際にどのように進めていくのか、二つのアプローチがあります。一つはみなさま自身がファシリテーター役を務め、事業のリーダーシップチームとともに、「独自の価値」を言語化し、「一連の活動」を可視化することです。もう一つの方法は、事業部長・部長層に言語化・可視化の方法を学んでもらい、事業部門ごとに新たな活動を推進できるよう仕向けていくことです。本講演では私自身が関わった二つの事例をお話しします。
―― 講演に向けての抱負や、参加される皆さまへのメッセージをお願いします。
初めて「戦略人事」という言葉を耳にしてから四半世紀が過ぎようとしています。しかし、人事部門の方にとって戦略を理解することはハードルが高いようです。当たり前ですが、人事部門の方が戦略を立てる必要はありません。事業部門が二つのこと(独自の価値と一連の活動)を明確化するプロセスを支援すれば良いのです。そして一連の活動が促進され、組織能力が高まるよう、人事制度や組織体制を整えれば良いのです。日々の活動が一新されることで戦略の実現力=組織能力が高まります。組織能力の開発こそ「組織開発」です。本講演を通じて戦略→組織能力→活動→組織体制・人事制度が整合的に設計できることをご理解いただければ幸いです。
- 土井 哲氏(どい さとし)
- 株式会社インヴィニオ 代表取締役/組織能力開発コンサルタント/日本CHRO協会主任研究委員
- 84年東京大学経済学部卒業後、東京銀行に入行。在職中に米国MITスローン経営大学院にてMSを取得。92年McKinsey & Co.に入社、通信業界、IT業界のコンサルティングに従事。97年にインヴィニオの前身である(株)プロアクティアを設立。以来、人材開発・組織開発分野のコンサルティングに従事。
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