講演者インタビュー
評価報酬制度を変えてもエンゲージメントが向上しない理由
~運用設計を見直し、社員の行動に直結させるポイントとは
セレクションアンドバリエーション株式会社 代表/グロービス経営大学院 准教授/行動デザイン総研 所長
平康 慶浩氏
人事制度を変えたがエンゲージメントが改善しない、収益が伸びていない、近年このような相談が増えてきました。その理由は「求める行動をとれば高い評価を与える」や「厳しい目標を達成したら賞与を増やす」など、信賞必罰の仕組みだけができているからです。本講演では制度の運用設計の見直しについて、多くの企業を変えてきたポイントをお話しします。損得だけでは伝わらない社員の行動を変える運用設計を一緒に考えてみましょう。
―― 今回の貴社講演はどのような課題をお持ちの方向けの内容でしょうか?
人事制度を変えたけれど効果が出ない、むしろ業績や、社内の雰囲気 が悪化してしまった。そんなお悩みを持つ企業の経営層や人事部長にぜひ参加いただきたいです。組織は、「正しい制度」を入れただけでは変わらないからです。
たとえば、ある会社はジョブ型人事制度を導入したのですが、業績が悪化していました。何が原因なのかとご相談を受け制度内容を精査してみると、確かに職務記述書が作成されて、等級も職務基準で設計されてはいました。
しかし、昇給は年功的なままで、評価結果も相対的に調整されていました。また、昇格するかどうかは過去実績で判断され、報酬水準は労働市場とは全く関係のない状態。これでは確かにジョブ型人事としての成果は出ません。
とはいえ制度そのもの改定は難しい。そこで運用部分の設計を行い、実効性のある改革を進めました。そんな実例に基づいたお話をいたします。
―― 今回の講演の聞きどころ・注目すべきポイントをお聞かせください。
人事制度は人の感情に配慮した設計が必要です。
たとえば「メリハリの効いた評価報酬制度」を導入するだけでは、社員の足の引っ張り合いや、チームワークの低下を招く可能性があります。「業績連動型報酬」を導入した結果、賞与をもらってしばらくの間、社員の活動量が減ってしまうような例もありました。役職定年制度や、給与水準を引き下げての再雇用制度も、結果としてやる気のない人材を社内に抱え続けることになりかねません。
業績を高めたいと思って導入した人事制度が、むしろ業績を悪化させてしまうのは、人の心の動きを想定しないからです。
私たちセレクションアンドバリエーションでは、経営視点からのあるべき姿としての人事制度を設計した上で、その制度を活用する今いる従業員たちの行動特性をしっかり見極めて、運用プロセスを設計します。安定的な生活を求めて働いている人たちに、新しいチャレンジをして欲しいのなら、まずは管理職が部下のチャレンジを促すようなコミュニケーションルールを設定します。その上で、チャレンジしたことについて高く評価するような制度を設計します。またその結果をどれくらい昇給や賞与に反映することが望ましいのかについて、それぞれの会社の過去の昇給経緯などを踏まえて慎重に設計します。
人は決して合理的に考え行動するものではない、という人間の「限定合理性」に基づいた運用設計をぜひご活用ください。
―― 講演に向けての抱負や、参加される皆さまへのメッセージをお願いします。
本講演を聞いて、「自社でも実践できればいいな」と思うだけでは、組織は変わりません。
いつから行動を始めるか。
そのためにいつから検討プロジェクトを立ち上げるのか。そんなことを意識しながらぜひご参加ください。
そのための具体的な事例を数多くご用意してお待ちしています。
- 平康 慶浩氏(ひらやす よしひろ)
- セレクションアンドバリエーション株式会社 代表/グロービス経営大学院 准教授/行動デザイン総研 所長
- 人と組織の成長をあたりまえにしたいという理念のもとで、人事コンサルティングファームのセレクションアンドバリエーションを立ち上げる。大企業から中小企業まで幅広い制度設計と運用支援実績を持つ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所などを経て現職。
「日本の人事部」「HRカンファレンス」「HRアワード」は、すべて株式会社HRビジョンの登録商標です。
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