(1) 味の素株式会社:
スーパーフレックスタイム制、時間単位有休など、
「働き方改革プロジェクト」による生産性の向上
味の素株式会社では、2008年にワーク・ライフ・バランス向上プロジェクトを発足し、さまざまな取り組みを通じて、組織の生産性と従業員の働きやすさ、働きがいの向上を実現してきた。2014年度連結決算では過去最高益を更新した一方で、総実労働時間は11年度以降2000時間以下となり、有給休暇の取得日数も15日以上と着実に増加しているという。14年からは、新たに「スーパーフレックスタイム制」「時間単位有給休暇」「テレワーク(在宅勤務、サテライトオフィス勤務、モバイル勤務)」を導入。「スーパーフレックスタイム制」はコアタイムを設定しないフレックスタイム制度であり、「時間単位有給休暇」は有給休暇を時間単位で取得できる制度だ。働き方改革においてどのような成果を実現できるのか、今後の動向が注目を集めている。さらに同社では14~16年度に、管理職も含めた全社平均の総実労働時間の50時間削減と有給休暇取得日数の3日増という高い目標を設定。引き続き働き方改革に注力していく姿勢だ。
(2) イケア・ジャパン株式会社:
ダイバーシティ& インクルージョンをベースとした「同一労働・同一賃金」などを実現し、パートタイマーを「正社員化」
「より快適な毎日を、より多くの人々に」提供するスウェーデン発祥のホームファニッシングカンパニー、イケア・ジャパンは、「ダイバーシティ&インクルージョン(多様性の受容)」、「セキュリティ(長期的な関係構築の保障)」、「イクオリティー(平等な機会創出)」を柱に、コワーカーの様々なライフスタイルに応えるため、2014年9月から新しい人事制度を導入。「パートタイマー」や「フルタイマー」という考え方を原則廃止。「同一労働・同一賃金」などを実現し、実質的にすべての従業員を「正社員化」した。同社では、従業員は「コワーカー」(=一緒に働く仲間)と呼ばれ、フラットな組織で会社が運営されている。その流れの中で、今回の人事制度改革が実現した。同社は、「これまで推進してきたワークライフバランスやダイバーシティに基づく多様な働き方の浸透を一層進め、併せて“平等な機会創出”のための仕組み作りを進めることで、真の成長を実現していく」としている。
【企業情報】http://www.ikea.com/jp/ja/about_ikea/newsitem/20140416_hr
(3) SCSK株式会社:
残業時間の削減、年休取得推進に全社一丸で取組む
「スマートワークチャレンジ」
ITサービス企業のSCSK株式会社は「働きやすい、やりがいのある会社」を目指して、健康経営の推進に力を入れている。その中で象徴的な取組みが「スマートワーク・チャレンジ」を核とした「働き方改革」だ。
社員の平均残業時間20時間以下、有給休暇100%取得を目標に、フレックスタイム・在宅勤務など制度面での充実と共に、達成インセンティブ、バックアップ休暇、一斉休暇など、さまざまな仕掛けを導入。それらに加えて、さまざまな機会を通じて経営者が全社員にその想いを伝え続けることで、全社一丸の取組みとなり、大きな実績に繋がっている。
2014年度は、平均残業時間18:16、有給休暇取得率98%(取得日数19.2日)と当初の目標を達成。これらの成果はダイバーシティ推進の環境整備にもつながっている。2015年度からは、健康維持・増進に有効な行動習慣の定着を目的とした「健康わくわくマイレージ」と称する施策をスタートさせ「健康経営」をさらに推進させていく構えだ。
【企業情報】https://www.scsk.jp/
(4) 株式会社エンファクトリー:「専業禁止」を掲げ、社員に「複業」を推奨
オンラインショッピングなどを展開する株式会社エンファクトリーでは、「専業禁止」を掲げ、社員にパラレルワークを推奨している。専業禁止とは、複数の事業を掛け持つ「複業」を推奨すること。現在、半数の社員が複業を実践しているという。「専業禁止」といっても必ず複業が必須ではなく、自身が積極的に選択できるということ。多くの企業が「副業禁止」を規則とするなか、大変珍しい取り組みと言える。同社では人材の自律、そして自立を促すことを目的に、この施策を導入。実際、人材の育成の上でメリットは大きいそうで、残業時間が約20%減少するなどの効果もあったそうだ。会社に所属しながら他にやりたいことができる手段を設けることには、優秀な人材の退職を避けるという狙いもある。また独立した場合もフェローとして連携し、相利共生という考え方のもとお互いメリットが取れる関係性を構築することもできる。社員は自身のキャリアをいかにデザインし、企業はそれとどのような関係を築いていくのか。新しい雇用のあり方、働き方として、注目される。
【企業情報】http://enfactory.co.jp/
(5) 株式会社クレディセゾン:
休職者の円滑な職場復帰を実現する「復職プログラム」
クレジットカード会社の株式会社クレディセゾンでは、人事部内に健康管理室を設置。がんなどによる休職者が円滑に職場復帰ができるよう、「復職プログラム」を導入している。1ヵ月以上休職した社員が復職する際は、「復職プログラム」に基づいてその可否を判断。就業に際して、何を配慮すべきかを確認する。がんを発病すると、治療が長期間に渡ることが多く、一般的には発病によって退職を選ぶ人も多いが、「復職プログラム」が存在することで、同社の社員は退職を思いとどまり、復職を目指して治療に専念することができているようだ。同社ではがんの治療以外にも、出産や育児など、さまざまな理由で社員が休職しているが、それぞれの状況や事情によって「復職プログラム」が活用されており、社員間に「お互いさま」という意識が高いという。病気になっても退職することなく、休職後の復職を目指す意欲を持ち続けることができる施策と言えるだろう。
(6) 株式会社サイバーエージェント:
退職した社員に「出戻りOK」を伝える「ウェルカムバックレター」制度
Ameba関連事業やインターネット広告代理事業などを展開する、株式会社サイバーエージェントでは、2015年2月から、退職者に対して「向こう2年以内は、元の待遇以上で出戻りを歓迎します」という旨を書いた手紙を郵送する「ウェルカムバックレター」制度を導入した。対象は、会社に非常に大きな貢献をして、「きれいな辞め方」をした退職者。退職してから2年以内であれば、元の待遇以上で歓迎する旨を記載した手紙を郵送する。ただし、レターを送る対象は厳選するという。導入したきっかけは、社員がSNSで「うちの会社も出戻りがOKになればいいのに」と書き込んだこと。出戻り禁止ではないのに、そのような声が聞かれるのは、「出戻りOK」のメッセージを会社が積極的に出していないからだと考え、制度を導入することになった。出戻り人材には「即戦力になる」「どんな人物か分かっている」など、さまざまなメリットがあるが、今後、本施策がどのような効果を発揮するのか、注目されるところだ。
(7) 三起商行株式会社(ミキハウス):
「子育てもキャリア」育児女性の活力発揮で、独自の環境を好機に変える柔軟な人事制度
ミキハウスを運営する三起商行株式会社では、全従業員の約4割が育児期間中女性であるため、「ダイバーシティ」×「フレックスな雇用形態」の取り組みを重視、それぞれの育児環境に合わせた多様な人事制度を用意している。「子育てもキャリア」と銘打ち、仕事から離れている主婦の不安をプラスに変える「子育て経験者採用」を実施。2008年にスタートした「子育てキャリアアドバイザー認定制度」は、産婦人科や子育てファミリー向けイベントでの「プレママセミナー」など、店舗の枠を超えて、子育て世代の応援活動を行っており、270名の認定資格者を輩出している。また、退職者が評価基準を落とすことなく自分のワークスタイルを選んで復帰できる「MHリンク制度」や70代シニア、外国人スタッフの活躍など、柔軟な人事制度と徹底した運用が圧倒的な好業績につながっている。外部・内部環境を人事制度の観点から好機に変える同社の取り組みは、まさに経営と採用の一本化を実現した好例として、多くの人事担当者の耳目を集めている。
(8) 合同会社西友:
再就業を目指す女性のキャリア構築を支援する
「セルフリーダーシップ・プログラム」
スーパーマーケットの西友は、パート社員の正社員化にいち早く着手、社外においても、女性起業家を応援する取り組みを実施する等、社内外において「女性の経済的自立」を支援している。2014年からは、日本女子大学現代女性キャリア研究所、および同大学リカレント教育課程と協働で、女性の再就業のための体験型プログラム「セルフリーダーシップ・プログラム」を展開。再就業を目指す同大学リカレント教育課程の受講生を対象に、5日間にわたる同プログラムを通して、西友の店舗、物流センター、総菜工場などを訪れ、そこで働く女性従業員の働き方、キャリアやリーダーシップに関しての理解を深める機会を提供している。参加者は、職場見学や従業員との議論などを通じて現場の課題を発見・分析し、最終日にはグループに分かれ、西友の役員に課題解決の提案のプレゼンテーションを行う。参加者が企業で働く現場感覚を取り戻し、再就業に向けて具体的な一歩を踏み出すきっかけを与えることを目指している。
【企業情報】http://www.seiyu.co.jp/company/sustainability/
(9) 大和ハウス工業株式会社:
生涯現役「アクティブ・エイジング制度」と、介護のための旅費支援
「親孝行支援制度」
住宅総合メーカーの大和ハウス工業株式会社は、2015年4月から、65歳以降も年齢の上限なく勤務可能な「アクティブ・エイジング制度」と、介護が必要な親を持つ社員の帰省旅費を補助する「親孝行支援制度」を導入した。同社は平成25年に「65歳定年制」を導入したが、今回の「アクティブ・エイジング制度」の導入によって、労働意欲があり、一定の業績が認められるシニア社員が年齢の制約にしばられることなく、勤務を継続することが可能になった。ベテランの持ち味である豊富な経験・人脈をさまざまな現場で活かせるとともに、若手社員へのノウハウの伝承を通じた人材育成につながるなどの成果が現れている。「親孝行支援制度」は年4回を上限に、帰省距離に応じた補助金を支給するもの。遠方に介護が必要な親がいる社員の負担の軽減を図る。本制度の導入によって、介護の問題を抱える社員が安心してキャリアを継続できる環境の整備を目指す。(なお、同社は既に年数制限のない「介護休業制度」を導入済)
(10) 株式会社テン コーポレーション:
外国人スタッフを“活かしきる”ための採用と活用に関する取り組み
「天丼てんや」を運営する株式会社テン コーポレーションでは、上野店での成功事例を基に、外国人の採用・積極活用を実施。現在では、全国で270名以上の外国人スタッフが働いている。上野店が実践したのは、大きく下記の四つ。(1)外国人スタッフ募集時におけるMUST、WANT要件の再整理、(2)あえてのチャレンジ環境を提示することで、“労働”ではなく、やりがいや成長の機会を提供、(3)対等な関係性と主従の関係性を使い分けた育成を展開、(4)シフトの再設計と既存社員の労働環境の改善。今後、国内の労働力が減少していく中、貴重な戦力である外国人スタッフを、いかに“活かしきる”ことができるのか――。多くの外食企業が採用難による既存社員の労働環境悪化や、それに伴うサービスの品質低下などといった問題を抱えているが、それらの問題をいかに解決すればいいのかを示す好例と言えるだろう。
【企業情報】http://www.tenya.co.jp/
(11) 株式会社東邦銀行:
孫の育児のための休暇制度「イクまご(孫)休暇」
東邦銀行は2015年4月に、従業員が孫の育児のために利用する休暇制度「イクまご(孫)休暇」を新設した。同行ではこれまでも、従業員が働きやすい環境作りのために、福利厚生の充実を図ってきた。年次有給休暇のうち取得しなかった分を積み立てて、休暇として利用できる制度(積立特別休暇)は以前から存在したが、積立日数の上限を従来の60日から120日に変更。同時に、これまで「私傷病」「ボランティア」のみだった休暇事由に「介護」「育児」「イクまご」を追加した。「イクまご(孫)休暇」は、従業員が孫の育児を支援する際に利用するもので、孫が小学校を卒業するまでの期間が対象となる。出産だけでなく学校行事での利用も可能で、休暇中も給与は支払われるという。同行ではキャリアの長い従業員に気持ち良く仕事を継続してもらいたいと考え、この制度を導入。それぞれの生活スタイルに応じた制度を準備することで、従業員の仕事と家庭の両立を支援している。
(12) 日本ヒューレット・パッカード株式会社:
「世界共通の人事制度」の下で、人事が現場のビジネスパートナーとなる
「人事営業」
ヒューレット・パッカードは、創立時から培った独自の企業文化「HP Way」に基づいた行動理念の下、職務等級、目標設定、評価、報酬などの面で世界共通の人事制度を運営している。人事部門の組織は、「採用」「教育」などの機能別にチームが存在するが、その上で、日本ヒューレット・パッカードでは、人事が社員を「顧客」ととらえ、事業担当の人事が現場とのインターフェイスを担い、「人事営業」としてビジネスの現場をサポートする。現場のマネジャーが人・組織関連の責任を持つが、労働法や労使慣行、組合との関係などは、現場業務で忙しいマネジャーでは精通できない。また、マネジャーは自分の組織しか見えていないことが多い。そこで、アドバイザー役としての人事が必要とされ、人事営業が生まれた。ヒューレット・パッカードでは社員に「自分でキャリアを考える」といった自律性を求めている。人事営業はマネジャーの人・組織関連の業務や社員の自律的なキャリア開発を支援する役割を担っている。
(13) 野村證券株式会社:
「倫理規定の改定」「アライを増やす啓蒙活動」「研修」などの
LGBTへの理解を促進する取り組み
野村證券は、組織の多様性を推進する取り組みとして「ダイバーシティ&インクルージョン」を導入。性別や国籍だけでなく、多様な考え方や見方を相互に尊重する等、ダイバーシティの捉え方は多岐にわたるが、特に先進的な取り組みがLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーに代表される性的少数者)への対応だ。まず、2012年に社内の倫理規定を改定。「人権の尊重」の項目に、性的指向や性同一性による差別を行わないとする旨を明記した。また、非当事者でLGBTを理解し、支援する「アライ」を社内に増やすための活動を展開している。2015年には、すべての管理職を対象に、ダイバーシティ研修を実施し、性的指向のような「目に見えない違い」にまで配慮し、尊重することを求めたり、採用面接官向けのガイドラインにLGBTについての項目を追加したりするなど新しい取り組みも開始した。このような取り組みの成果として、社員のLGBTへの理解が進んできたことを意識調査などで実感できているという。
(14) 認定特定非営利活動法人 フローレンス:
「事実婚」「同性婚」の社員にも慶弔休暇を付与する、新しい就業規則
病児保育事業をメインに展開する、認定特定非営利活動法人 フローレンスは、2015年4月21日に新しい就業規則を施行した。フローレンスでは、「本人の結婚」などの場合に、有給の休暇が慶弔休暇として付与されているが、新しい就業規則では、慶弔休暇の対象に「事実婚」「同性婚」が含まれることが明記され、「事実婚」「同性婚」の場合も法律婚した人と同等の権利が付与されるようになった。「事実婚」は「未届の妻または夫と世帯を同一にすること」、「同性婚」は「同性のパートナーと挙式を行うこと、あるいは結婚関係であると相互に認めること」と定義されている。LGBT社員の声を反映して、今回の就業規則の見直しが行われた。フローレンスは、誰もが働きやすい職場をつくるために、多様な人材を歓迎しており、「多様な人材」には、「多様な家族形態」が含まれていると考えているという。フローレンスは、新しい就業規則により「私たちが目指す組織像をより明確に示せたのではないか」としている。
【企業情報】http://www.florence.or.jp/news/2015/04/post1233.php
(15) 全国64行の地方銀行でつくる「輝く女性の活躍を加速する地銀頭取の会」:全国64行の地方銀行が連携し、行員が転居先の別の地銀で働くことができる仕組みを構築
2014年11月、全国64行の地方銀行すべての頭取が賛同して「輝く女性の活躍を加速する地銀頭取の会」が発足。2015年4月には「地銀人材バンク」を創設した。「地銀人材バンク」は、会員各行の(1)専門・高度人材の必要性、(2)地域に根ざした営業基盤、(3)全国ネットワークを組み合わせた、地方銀行ならではの 職員の「キャリアの継続形成」と会員の「即戦力人材の確保」の両立を可能とする取組み。配偶者の転勤などで転居し退職することになった行員が転居先の地銀での再就職を希望すればその地銀に紹介することで再就職を可能にする仕組みを確立した。これまでは転居先に拠点がない場合、退職するか単身赴任を選ぶかの二者択一を迫られたが、全国の地銀によるネットワーク形成によって、就労継続の可能性が拡大。優秀な人材を埋もれさせることなく、キャリアを継続させることができるようになった。全64行のネットワークを活かすことで、一企業の枠を超えて行員の「キャリアの継続形成」と地方銀行の「即戦力人材の確保」の両立を可能にした取組みとして、今後の動向が注目される。
(16) テルモ、タニタなど企業14社による「KENKO企業会」:
企業14社が社員の健康増進の成功事例を共有する「KENKO企業会」
経営トップが主導し、社員の健康増進に取組む企業 14 社が、社員と家族の健康増進の事例を共有する連携組織「KENKO企業会」を設立した。本会では食事、禁煙、BMI、血圧などの健康関連テーマを企業が持ちよって比較することで効果的な施策の立案に役立てることを目的としている。将来的にはデータの分析結果を集約・検証し、どういった取り組みが改善につながったのかを共有。より効果的な手法の開発、施策の改良改善につなげていく考えだ。社員の健康増進は企業の人事部門、健保財政にとっても重要な課題であり、今後の展開に注目が集まっている。参加企業は、ABCクッキングスタジオ、NTTドコモ、オムロンヘルスケア、協和発酵キリン、グリーンハウス、第一生命保険、大日本印刷、タニタ、帝人、テルモ、ニトリホールディングス、三越伊勢丹ホールディングス、LIXILグループ、ルネサンス。今後も参加企業数は増える見込み。
【企業情報】http://www.nitori.co.jp/news/pdf/2015/DC3152AE-0592-DE8F-2427-AAF8D893AAEA.pdf (PDFファイル)