本日は、従業員と企業の幸せな関係をつくる「ワークハピネスカンパニー」のつくり方について、お話しいたします。
まず始めに、ちょっと悲しいお知らせです。現在、日本の全人口の約10人に1人は心の病にかかっています(WHO調べ)。さらに、サラリーマンの10人中6人は仕事にやりがいを感じていません(当社調べ)。多くの時間を職場で過ごすのに、仕事にやりがいを感じない人が半分以上もいるというのは本当に悲しいことです。
でも逆に、うれしいお知らせもあります。日本では毎日、数百万時間もの肉体ワークが行われています。これはいわゆるワークアウト、フィットネスクラブにいる時間です。お金を払ってまで、体づくりに挑戦している人はこんなにいるのです。
それに、日本には約3300万人のアーティストがいます。これはガーデニング人口です。また、約2700万人のアーティストが世界に向けて作品を発表しています。これはブログ人口(SNS、ツイッターなど含む)です。日本には創造への欲求がある人が、こんなにもいるということです。実は、私たちの周りは、「貢献・挑戦・創造」といったモチベーションを満たしてくれるものであふれているのです。
それでは、人はなぜこれらのことに意欲的なのでしょうか。日本はすでに安心、安全が保障され、物質的にも満たされていますから、多くの人の欲求は「自己実現」へと向かいます。しかし、今のところ、欲求の向かう先が仕事ではない人が多いのです。私は、この「貢献・挑戦・創造」といったモチベーションが仕事で味わえないだろうかと考え、人が活き活きと働ける「ワークハピネスカンパニー」をつくることを思い立ちました。
これから上げていく7つの条件は、すべてをバランスよく導入することが重要になります。一部のみの導入では、かえってうまくいかなくなります。
(1)経営理念(価値観とミッション)の共有
私はこれまでに数千もの会社の経営理念を調べてきましたが、意外なことに、ほとんどの企業で「貢献・挑戦・創造」といった基本的価値観がうたわれていました。そして、ミッションには「社会の発展に貢献する」といった内容のものが多いのです。
また、私は研修やセミナーなどで何千人もの人たちに「あなたの人生理念は何ですか?」という質問もしてきましたが、突き詰めて聞いていくと、人の人生理念も「貢献・挑戦・創造」といったポイントに集約されるのです。
私は、「貢献・挑戦・創造」といったモチベーションは人間の本質ではないかと思います。すると経営理念と人生理念は重なってくるわけですから、企業と私たち個人の思いは一緒ということになります。ですから、この点を共有することは非常に大切です。
(2)行動ガイドライン
最低限の行動規範をつくることで、個人それぞれが一つの基準から判断ができるようになります。
(3)タイムリーなフィードバック
自分が行った仕事について、すぐに結果がわかると、それが仕事を続けるモチベーションにもなります。測定可能な手段で、フィードバックをすぐに受けられる仕組みをつくるべきです。
(4)大きな自由裁量
最低限のルール以外はできるだけ自由にして、個人の主体性を引き出すことが大事です。誰でも自由であることは好きですし、そこから挑戦意欲も湧いてきます。
(5)基礎トレーニング
基本レベルのスキルを保つ努力は、常に必要です。
(6)意識されない評価・報酬制度
私たちは、評価・報酬制度を意識しすぎると、やる気を失ってしまい、創造性も出せなくなってしまいます。できるだけ透明で公平で、ときどき意識する程度の制度がベストです。
(7)モラールの高い仲間
人して最低限の規律を覚えるためには、モラールの高い仲間も必要です。
私の会社では、毎朝、社員に経営理念を問いかける質問をしています。質問内容は例えば「貢献することの意味は?」「挑戦することの価値は?」といったシンプルなものですが、必ずポジティブなことを考えられるような質問ばかりです。
日々の仕事に追われていると意欲も落ちてしまいがちですが、このような自分への問いかけがあると、気持ちを上に向け続けることができます。毎日、自分の考えを確認しながら、目線を上げていると、日々の仕事の価値も上がっていくのです。皆さんも、ぜひ、いい問いかけの習慣をつくっていただきたいと思います。