講演者インタビュー
報酬・処遇制度見直しの最前線 - ジョブ型人事制度の更なる進化と「ペイ・エクイティ」の実現に向けて
エーオンソリューションズジャパン株式会社 代表取締役社長 パートナー
山下 知之氏
物価の上昇と政府の賃上げ要請などを背景に、大企業を中心に給与の引き上げに関する報道が相次いでいます。ジョブ型人事制度を進化させるためには、人材獲得・維持のため報酬戦略を定め、実行していく必要があります。本講演では、先進的な企業がどのように報酬制度の見直しを進めているのか、人件費の増加をどのようにマネージするのか、男女賃金差の課題にどのように取り組んでいくのか、最新のトレンドを事例と共に紹介します。
―― 今回の貴社講演はどのような課題をお持ちの方向けの内容でしょうか?
上場企業の人的資本・サステナビリティ開示によると、多くの企業でジョブ型人事制度の導入が進んでいます。これらはグローバルに通用する、欧米型の人事制度と同じものなのでしょうか。弊社では、マーケットとの比較の視点が欠けているのではないかという問題意識を持っています。
終身雇用が過去のものとなり、中途採用が活発化しています。優秀な人材は社外に多くの職を得る機会があります。職務記述書を作成し、職務価値評価を実施して職務の椅子の値段を設定するという日本型のジョブ型人事制度改革は、採用したい外部の専門人材を惹きつけることができる制度になっているのでしょうか。また社内の優秀な人材を引き留めるために十分な制度となっているのでしょうか。
本講演では、外部マーケットの視点をいかにして盛り込んでいくかという課題意識を持つ、大手グローバル企業の人事・経営企画の皆さまに向けて、具体的な指針を提示します。
―― 今回の講演の聞きどころ・注目すべきポイントをお聞かせください。
グローバルに事業を展開する多国籍企業では、人材の獲得・維持のために報酬戦略を重視し、外部報酬マーケットやマーケットプラクティスを積極的に参照することが一般的です。事業戦略と人事戦略の一体化が求められる今、グローバル企業においては一歩進んだ報酬・処遇戦略を定めていくことが重要な次のステップになります。
海外子会社では外部報酬マーケットを参照しているのに、日本親会社ではその重要性すらも理解していないケースを弊社では多く見てきました。報酬戦略の策定とそれらの実行は、CHRO率いる人事の重要な役割の一つです。職務記述書の作成と職務価値評価に基づき、職務ごとに椅子の値段を決めるだけの改革では、終身雇用や年功序列といったかつてのガラパゴス化した人事制度を、ベクトルだけ変えたに過ぎません。
海外企業では、人事・雇用に関するマーケットプラクティスを重視しています。プラクティスから逸脱した人事制度は、人材採用を困難にさせるだけでなく、自社の役員や従業員が外部のジョブ機会を得る可能性を引き下げるリスクがあります。35歳を過ぎると転職が難しいと言われますが、日本的なローテーション制度が職務の専門性を高めることを阻害し、年齢・職責と専門性とのバランスを悪化させることが一因です。
講演では、注目されるペイ・エクイティに関する国内外の動向も紹介します。男女賃金差の開示から数歩進んだ取り組みにご注目頂きたいと思います。
―― 講演に向けての抱負や、参加される皆さまへのメッセージをお願いします。
初任給の引き上げがメディアでも注目されています。しかし新卒社員だけでなく、2年目社員から役員に至るまで、人材をいかに処遇するかという課題から目を背けることはできません。報酬の単なる引き上げは人件費の増大を通じ、売上が増大しなければ株主利益を圧迫する要因となります。
報酬の支払いや水準の引き上げは人的資本への投資そのものです。投資対効果をどのように把握するか、多くの企業において議論されています。本講演がそれらを議論する上での一つの出発点、または転換点となることを望んでいます。
- 山下 知之氏(やました ともゆき)
- エーオンソリューションズジャパン株式会社 代表取締役社長 パートナー
- 組織・人事コンサルティング業界世界最大手の一角であるAonグループにおける人事コンサルティング日本法人代表。Aonグループ参画前はゴールドマン・サックス証券投資銀行部門、タワーズペリン 、東京三菱銀行に在籍。一橋大学商学部経営学科卒。公認会計士。ライフネット生命社外取締役(監査等委員、報酬委員長)。
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