講演者インタビュー
働く場としての魅力を創る“エンプロイヤーブランディング”
ー社員との「選び、選ばれる関係」を構築する
アビームコンサルティング株式会社 戦略ユニット 人的資本経営コンサルティングチーム ダイレクター
佐藤 一樹氏
人的資本経営を成り立たせるには、人材の「質」としての生産性と「量」としての人員数の両面を充足する必要があります。本講演では、その両面の充足のために重要となる、社員や求職者を惹きつける「働く場」としての魅力を創る“エンプロイヤーブランディング”という潮流をご説明します。「自社ならでは」の提供価値をどう定義し社内外に訴求するべきか、そのためにどのような施策を打つべきかについて事例を交えてご説明します。
―― 今回の貴社講演はどのような課題をお持ちの方向けの内容でしょうか?
労働市場はさらに売り手市場になり、デジタル人材をはじめとする高機能人材は業界の壁を超えた獲得競争が激化。人の流動化は痛手となる離職を誘発し、日本社員のエンゲージメントと生産性は長らく低空飛行を続けています。
このような環境の中で多くの企業は(1)採用市場での競り負けと競合他社への人材流出、(2)自社・自身の将来不安と諦めが入り混じった「ぶら下がり」の蔓延、(3)後回しにされたミドルパフォーマーによるエンゲージメントの地盤沈下といった課題に直面しています。このような状況が改善されなければ、人的資本経営を実現する上での必要な社員数(量)や生産性(質)を確保することが困難となり、持続的な成長は不可能となります。
このような状況を打破するには、今一度「働く場」としての「自社ならでは」の提供価値を社内外の労働者に対して訴求し、惹きつける必要があります。本講演ではその解決の方向性を示します。
―― 今回の講演の聞きどころ・注目すべきポイントをお聞かせください。
エンプロイヤーブランディングは採用市場に対する外面をよくするだけの表面的な採用ブランディングではありません。社員に対しては、日々の働く経験をよりよいものにする施策を通してエンゲージメントを高め、それを根拠に採用市場に対しても「働く場」としての価値を訴求していく一つの統合された取り組みを指します。つまりエンプロイヤーブランディングとは「働く場としての会社のブランドイメージを構築し、社内外のターゲットとする労働者を惹きつける取り組み」といえます。
エンプロイヤーブランディング、すなわち雇用主としてのブランディングは欧米では10年以上前から使われてきた言葉です。日本においては「企業が人を選ぶ」という意識が根付いており、これまで注目されていませんでした。一方で、経産省が公表している人材版伊藤レポートでは「選び、選ばれる関係」という形で企業と人の関係性を捉えなおすことを提言しています。
本講演では「選び、選ばれる関係」を創り上げるエンプロイヤーブランディングの実践について国内外の事例と数十社のエンゲージメントサーベイ結果を基にご紹介いたします。特にEVP(Employer Value Proposition)と呼ばれる「働く場」としての提供価値をどのように定義するべきか、そのEVPを訴求するためにどのような施策を打つべきかについて説明します。
―― 講演に向けての抱負や、参加される皆さまへのメッセージをお願いします。
これまで企業は自社や製品・サービスの魅力を顧客に向けて伝えることに注力していました。しかし、現在は企業の持続的成長を支える上で、人的資本がかつてないほど重要になっています。今や、企業が「働く場」としてどれだけ魅力的なのかを社員や求職者に納得してもらうことは、企業の成長を左右する最重要課題の一つです。
エンプロイヤーブランディングという概念を知り、その実践方法を学ぶことで、他の企業に先んじてその課題に取り組むことができるようになります。本講演がその「はじめの一歩」となれば幸いです。
- 佐藤 一樹氏(さとう かずき)
- アビームコンサルティング株式会社 戦略ユニット 人的資本経営コンサルティングチーム ダイレクター
- 外資系コンサルティング企業にて、タレントマネジメント、AIを活用したHRテクノロジー、従業員エンゲージメントマネジメントに関わる新事業の立ち上げをリード。同社に入社後はその経験を活かし、日本企業に対する人的資本経営実現に向けたエンプロイヤーブランディングコンサルティング事業をリード。キャリア論修士。
「日本の人事部」「HRカンファレンス」「HRアワード」は、すべて株式会社HRビジョンの登録商標です。
当社はプライバシーマーク取得事業者です。類似のサービスやイベントとの混同にご注意ください。