企業人事部門
- (1) イグニション・ポイント株式会社:3年間で5社の法人設立(スピンアウト)を実現「あなたを社長・役員にします!」CXOチャレンジ制度
- (2) 伊藤忠商事株式会社:『がんに負けるな』全社で支え合う伊藤忠商事の「がんとの両立支援施策」
- (3) 株式会社インテージホールディングス:能動的な成長機会創出と自律的な働き方で実施する「プロフェッショナリティ向上施策」
- (4) ザ・リッツ・カールトン東京:ザ・リッツ・カールトンサービスを提供する 企業理念「ゴールドスタンダード」と文化浸透への取り組み
- (5) 株式会社ジュピターテレコム:部門を超えたナレッジの共有とJ:COMのイズム、DNAの継承をはかる 企業内大学「J:COMユニバーシティ」
- (6) ソニー株式会社:人生100年時代に向けたベテラン・シニア社員のキャリア支援施策「キャリア・カンバス・プログラム」
- (7) 大鵬薬品工業株式会社:内製化の波及効果は社内全体に――20代若手グローバルリーダー育成に挑む大鵬グループの企業内大学 Global One Academy
- (8) 株式会社ディスコ:定年退職後の会社業績に連動したディスコ独自の年金制度「業績連動年金」
- (9) 株式会社 電通クリエーティブX:業務量の平準化、OJTの効果向上 キャリア自律の促進を実現する「HRMD」職の新設
- (10) 株式会社東急エージェンシー:「留年は、財産だ。」まわり道してでもやりきった人と向き合う「留年採用」
- (11) 日本電気株式会社:NEC社会価値創造塾 ~新たなリーダーシップ開発プログラムの実施~
- (12) 株式会社野村総合研究所:組織の壁を超えたコミュニケーションをボトムアップで促進する「コミュニケーションサポーター活動」
- (13) 丸紅株式会社:既存の枠組みを超える「人材」×「仕掛け」×「時間」の施策
- (14) 株式会社リクルート住まいカンパニー:新卒入社者に対する活躍予測モデルをベースとした配属最適とオンボーディング
3年間で5社の法人設立(スピンアウト)を実現「あなたを社長・役員にします!」CXOチャレンジ制度
イグニション・ポイントでは、3年間で5社の法人設立(スピンアウト)を実現し、これまでに5名のコンサルタントが経営者として活躍している。
自ら事業を興し、法人設立を希望する社員に対しては、社長・役員が直々にビジネスモデル策定やサービス・プロダクト構想、ブランディング、マーケティング戦略策定を指導するなど、徹底したサポートを実施。法人設立後も、資金調達やアライアンス、組織拡大・強化など、事業成長・拡大のための支援や指導を受け続けることができる。
その礎となる、アントレプレナーシップの醸成にも注力している。毎年「年度目標設定」を実施し、一人ひとりが具体的な目標を設定。月に2回の1on1ミーティングや半期評価面談などを通じて、経営陣・マネジャーが実現に向けてサポートしている。社員が「ゼロから1を生み出す」経験を積む風土が、絶え間ない新規事業創出や新法人誕生へとつながっている。
『がんに負けるな』全社で支え合う伊藤忠商事の「がんとの両立支援施策」
最少人数で最大成果を発揮するという理念の下、全社員が健康で活躍できることを重要な経営戦略と位置づけ、2016年6月に「伊藤忠健康憲章」を制定し、積極的に健康経営に取り組んできた。さらに2017年からは働き方改革政策の一環として新たに「がんとの両立支援施策」を推進。国立がん研究センターとの提携による特別検診、最先端治療体制の構築、がん先進医療費補助、両立支援プラン策定の推進、遺族への子女育英資金拡充、子女・配偶者の就労支援などにより社員一人ひとりの病状や立場に応じた支援を行う。
2018年からは仕事で発揮している能力を闘病にも活用することが、社員にとっても、会社にとっても最善の結果をもたらすものと考え、「業務」と同様に個人業績目標の一つに「仕事との両立」を設定することを評価制度に導入。病気になった社員自身のやる気・やりがいにつながるだけでなく、支え合う風土は組織の活性化・企業競争力を強化するという考えによるものだ。
能動的な成長機会創出と自律的な働き方で実施する「プロフェッショナリティ向上施策」
インテージホールディングスは、国内25社のグループシナジーの創出を実現し、さらなるプロ意識の向上を図るため、2017年度から以下の3施策を実施している。
(1)グループジョブチャレンジ
グループ各社で中途採用を募集しているポジションを、原則すべてグループ内でも公募。社員一人ひとりが能動的に自分のキャリアを考え、チャレンジする環境を実現
(2)ラーニング/ナレッジイベント
グループ各社で実施しているナレッジイベントで、参加者制限が不要なものはグループ社員全員が参加できるように変更。6ヵ月で50件のイベントが開催され、のべ2040名が参加、600名弱が自社以外での学びの場を得た
(3)フルフレックス・リモートワーク
コアタイムを撤廃し、始業・終業時刻を日単位で決定できる「フルフレックス」と、対象者や回数の制限なく働く場所を柔軟に選択できる「リモートワーク」を各社で順次導入。導入に当たっての定期的なアンケートはポジティブ/ネガティブコメントともすべてグループ内に共有し、互いによりよい環境を作ることを目指している
上記はいずれも「能動的に成長できる機会」と「自律的に時間と場所を選択できる環境」構築を目指すもので、大きな効果を上げている。
ザ・リッツ・カールトンサービスを提供する 企業理念「ゴールドスタンダード」と文化浸透への取り組み
ザ・リッツ・カールトン東京では、ザ・リッツ・カールトンならではのサービスを提供するために、以下のような施策を通して企業理念「ゴールドスタンダード」、文化の浸透に取り組んでいる。
- ゴールドスタンダードを毎日1パートずつ唱和し、全世界でのエピソード、実践・模範例を共有
- 全入社者にオリエンテーションでゴールドスタンダードに関わる内容の重点的トレーニングを実施
- 提携企業、派遣常駐スタッフ向けのオリエンテーションでゴールドスタンダードとカルチャーについてのトレーニングを実施
- 入社1ヵ月後、1年後の振り返りで浸透度合いを確認
- 率先して実践する社員を表彰するイベントの開催
- 年1回従業員パーティーを開催
- 社会貢献活動への積極的参加
- 年1回全社員参加のセッションを実施、総支配人からメッセージを発信
毎日、企業理念に関わるトレーニングを繰り返すことでカルチャーを醸成し、率先垂範するスタッフをしっかりと認めていくことに注力している。
部門を超えたナレッジの共有とJ:COMのイズム、DNAの継承をはかる 企業内大学「J:COMユニバーシティ」
ジュピターテレコム(J:COM)は、2017年度に企業内大学「J:COMユニバーシティ」を設立した。7学部を設置し、学部長には経験豊富な定年再雇用人財を任命。主体的にさまざまな講座や学びをプロデュースするなど、シニア人財の活躍の仕組みを構築している。
各講座は15時以降に開催するため、これまで定時までかかっていた業務を効率良くこなし、生まれた時間を学びに換える「働き方改革」推進にも大きく寄与。全社の残業時間が大幅に削減された。また、社員が登壇し、社員同士で学び合うスタイルにすることで、愛社精神の向上にもつながったという。「こんなにすごい社員がいたのか」「他部門の話を聞いて、会社に誇りが持てた」など、社員から評価の声が多数寄せられている。
正社員10,000人のうち、2017年の受講者数はのべ5,700人。ユニークユーザーでも3,200人が受講し、開校初年度で正社員の3分の1が受講した実績は、講座の質の高さと社員の関心の高さを示したといえるだろう。
【企業情報】https://www.jcom.co.jp/
人生100年時代に向けたベテラン・シニア社員のキャリア支援施策「キャリア・カンバス・プログラム」
ソニーは創業以来の理念「自分のキャリアは自分で築く」をベースに、ベテラン社員がいきいきと働きながら、将来のライフ・キャリアプランを主体的に考え、実行に移していくための支援プログラム「キャリア・カンバス・プログラム」を導入している。
【新しい分野への挑戦】
(1)キャリア・プラス(社内兼業)のベテラン層への活用
(2)Re-Creationファンド(学び直しに対し10万円を上限に会社が支援)
【キャリア形成支援】
(3) キャリアメンター制度の拡充(約30名の役職経験者が国家資格キャリアコンサルタントを取得、ベテランメンターとして、研修のフォローアップや各自の課題等についての相談を行う)
(4)ボトムアップ活動導入(社員が大学のサークル活動のように自主的に集まり勉強会、見学会を企画・実行)
いずれも利用する社員の目線で考えた「シナリオのあるパッケージ」であること、分社ごとに異なる事業環境や人事制度にも対応できる柔軟なプログラムであることが大きな特徴だ。
【企業情報】https://www.sony.co.jp/
内製化の波及効果は社内全体に――20代若手グローバルリーダー育成に挑む大鵬グループの企業内大学 Global One Academy
Global One Academyは、リーダーシップを発揮して経営課題を解決できるグローバルリーダーを持続的に生み出すことを目指し、2016年7月に開校された大鵬グループ共通の企業内大学だ。
VUCA時代を担う若手(23歳~32歳)の育成を最優先課題とし、経営企画部と人事部が中心となって独自のカリキュラムを内製。デザインシンキング・プロトタイピング、ビジネスモデルキャンバス、キャリア・デザインなど、最先端の情報を学べる。
募集要項の作成から、入試(完全手上げ)、選抜、卒業後OB・OG会立ち上げに至るまで、大学と同じ運営方法で学生の主体的な参加を実現。卒業式では上司の前で卒業証書を授与され、社内外の課題への解決策を経営陣へ提案し判断をもらうなど、1年間の成果を実感できる機会となっている。積極的な広報を通じて全社的な交流を深めることに成功するとともに、独自ツールの作成などを通して対外的な採用広報活動や若手人事部員の成長にも効果を上げている。
【企業情報】https://www.taiho.co.jp/
定年退職後の会社業績に連動したディスコ独自の年金制度「業績連動年金」
「業績連動年金」は、確定拠出年金(DC)・確定給付年金(DB)に加え新設した、ディスコ独自の年金制度。定年退職者を対象に、在職時の業績考課などに基づいて基準額を設定のうえ、半期業績(利益率)に応じて基準額から増減した金額を年金として支給している。
公的年金制度の先行きが不透明な中、定年退職後および再雇用期間終了後の従業員の安定したセカンドライフに寄与する、本制度。在職中の考課が年金額に影響することで、長期的視点でのモチベーションアップにつながるほか、退職後の経営状況に関心が向き、在職時においても後進育成などに注力する意欲の増進が期待できる。
会社経営とのバランスの面でも、業績によって還元率が変化することで、経営に与えるインパクトを小さく押さえることも可能なため、不況時を考慮したリスクヘッジと退職者への福利厚生の両立が可能になるなどのメリットがある。
業務量の平準化、OJTの効果向上
キャリア自律の促進を実現する「HRMD」職の新設
広告業界が長年抱える「長時間労働の是正」という課題に対し、これまでの現場まかせの労務管理・育成から脱却し、適切かつ効果的な仕組みを構築することが急務となっている。
そこで電通クリエーティブXでは、「若手社員の労務管理・育成の仕組みの構築」「全社的な健康経営(業務量の平準化、従業員の健康維持・管理)の実践」「キャリア自律を促すエンゲージメントの高い組織」の三つをゴールに据え、若手社員の労務管理・育成に特化する「Human Resources Managing Director職」を新設した。
現場経験20年以上かつ人望が厚いミドル社員5名を任命し、若手社員への業務アサイン、勤務状況や育成目標、達成指標などのすり合わせ、HRMDとメンターでの役割分担(労務管理・育成プラン・評価/現場指導・相談相手)などを実施したところ、全社的な業務量の平準化、OJTの効果向上、視野の広がりとキャリア自律の促進などに成功。新卒・中途採用の効率化やミドル社員のキャリア選択の拡大にも成果が表れているという。
「留年は、財産だ。」まわり道してでもやりきった人と向き合う「留年採用」
「留年」にあまりいいイメージを持っていない、という人は多いのではないだろうか。採用時に、留年した学生を歓迎しない企業は少なくない。しかし、東急エージェンシーでは、留年してでも何かをやりきる情熱やビジョンを持つ人を対象に「留年採用」を実施。一流(で一留)のクリエイターへの取材や、参加者も登壇社員も留年した人限定の「留年だらけの会社説明会」を開催した。また「留年パスポート」として、内定者が自ら留年を選択し、入社時期を延長できる仕組みも開始。何かを成し遂げてから一年後に入社することまで認めている。
同社では、留年をした人は長期留学やアルバイト、起業など「やりきった人」でかつ多様な人が多いという考えから、留年採用を実施したという。人材の多様性を担保しつつ、企業がこうした人材と向き合い、受け入れる姿勢を示すことで、まわり道をしてでも何かをやり遂げたいという学生の、挑戦の後押しにもつながるだろう。
NEC社会価値創造塾 ~新たなリーダーシップ開発プログラムの実施~
日本電気では2016年度に、それまでクラスルーム中心のMBA的な内容だった幹部人財育成プログラムの大幅な見直しを実施。社会や資本主義の変化、技術潮流などの大局観、日本や新興国の社会の変化に直接触れて学ぶエスノグラフィー的体験、コーチングを活用したリーダー自身の内省と次世代経営者としての覚悟の醸成といった内容へと大きくシフトした。これにより、「正解のない」VUCAの時代における次世代リーダー・経営幹部が育ちつつある。
具体的には、以下のような効果があったという。
1.従来、看過されがちだった「組織のトップ層」の本質的な変化・成長が実現できつつある
2.エスノグラフィー的体験をとおした個人の思考の枠/バイアスの問い直し
3.コーチングを積極的に活用した学びの統合
プログラムは外部に委託せず、全体のコーディネートは自社内の事務局にて実施。新たなリーダーシップ開発プログラムのスタイルとして、注目を集めている。
【企業情報】https://jpn.nec.com/
組織の壁を超えたコミュニケーションをボトムアップで促進する「コミュニケーションサポーター活動」
「組織の壁」に阻まれて社内コミュニケーションが思うようにいかない、という課題を解決するため、野村総合研究所 証券ソリューション事業本部が2016年度に始めたのが「コミュニケーションサポーター活動」 (以下、コミュサポ) だ。各部署から現場のコミュニケーションを活性化する素養のある社員をコミュサポとして選出し、企画チームを組成して組織間の壁を壊すべく活動を行っている。
ジョギングやボーリング大会といったスポーツ系のイベントのほか、マインドフルネス、育児を語る会、読書会といった文科系のイベントなどを毎月実施。家族をオフィスへ招待する「NRIふぁみりー」や現業に直結する情報共有活動なども実施している。
現場の社員が中心となったボトムアップ活動である一方、組織開発の手法で管理職や役員の応援・協力関係も築いている。コミュサポ活動で築いた人と人との「弱いつながり」が組織力の基盤として業務の中で生かされ、お客さまに提供するサービスの品質・生産性向上にもつながっているという。
【企業情報】https://www.nri.com/jp/
既存の枠組みを超える「人材」×「仕掛け」×「時間」の施策
2018年4月から「人材」「仕掛け」「時間」の観点からイノベーションを生むための新施策をスタート。経営戦略と方向性がダイレクトに結びついている点が特徴だ。
●人材
丸紅アカデミア:徹底した議論と思考からイノベーションを創出する場
社外人材交流プログラム:提携先企業へ1~2年派遣
トライアングルメンター:所属部署・世代・性格タイプの異なる3者でトリオを組成
Self-Biz:社員一人ひとりが最適と思う服装を選択・着用する、服装の新ガイドライン
●仕掛け
ビジネスモデルキャンバス:丸紅グループのビジネスモデル・事業資産の見える化
ビジネスプランコンテスト:社内公募型ビジネス提案・育成プログラム
アイディアボックス:新規ビジネスアイディアなどを投稿できる窓口
●時間
業務改善プロジェクト:社内業務プロセスの抜本的な削減
15%ルール:担当業務にかかわらず、就業時間の15%を目安に、新規ビジネスの創造等の活動に利用可
【企業情報】https://www.marubeni.com/jp/csr/human_resources/health/
新卒入社者に対する活躍予測モデルをベースとした配属最適とオンボーディング
リクルート住まいカンパニーは、人事施策のKGI(経営目標達成指標)を「活躍社員を増やすこと」に設定し、活躍社員は「昇格のスピード×評価の高低」をポイント化して判定。これまでの経験則や感覚での意思決定になっていた従業員の配属に対して、データに基づいた判断基準(パフォーマンス確率を算出し定量化と上長相性)を用い、活躍確率の高い組織に最適に配属することを目標にしている。
また、定量データの示唆が正しいかどうかを検証するため、現場と連携してオンボーディングも強化。「職務適応=スキルや業務姿勢の能力スコアの程度」「職場適応=心理的安全性の程度」と置き、新卒および上長へ簡易サーベイとそのサーベイを活用した1on1を毎月1度実施している。
これまでブラックボックス化していた適応のプロセスが、データとOJTが連携することで、適応するための効果的な打ち手として、体系的に設計することができつつあるという。