優秀な人材の“メンタル離職”を未然に防ぐ新しい仕組み
精神状態の可視化による最適なアプローチ手法
東京メンタルヘルス株式会社 東京メンタルヘルス 所長/関東心理相談員会 会長
武藤 清栄氏
メンタルヘルス分野で30年の実績がある会社が作った新しい仕組み『コンディションケア』(日本の人事部HRアワード2013ノミネート)。精神状態を可視化することで、職場のコミュニケーションが劇的に変わります。優秀な社員が人間関係の歪みによって、会社から心が離れてしまうその前に、社内外にサポートネットワークを作り、予防します。本講演では実際のデータも参考にしながら、メンタル離職を未然に防ぐための有効なアプローチをお伝えします。
―― 今回の講演のポイントについて、お聞かせください。
武藤:メンタル不調による病気休暇や休職は、どこの事業所でも頭の痛い課題になっています。コミュニケーションが面倒で優秀な人材を失ったり、気持ちを言語化しなくなっために労働意欲の低下や不調に気づかなかったりすることもあります。また、せっかく復職しても再発や再燃を繰り返す人が半数以上もいます。この事態に対して、厚労省は職場のメンタルヘルス対策の指針を出し、その浸透を喚起してきましたが、今一つ効力に欠けています。
こういった事情を背景に弊社では、メンタル離職の予防ツールとしてコンディションケア(コンケア)をエクスブレーン社と開発しました。このツールでは、社員のコンディションをシンプルに毎日記録できます。六つの天気図(晴れマークや雨マークなど)から、出社した時と退社した時に自分のコンディションを考えてその天気図を押します。これによって「ふだんと違う自分や部下に気づく」ことができ、心身の不調が可視化されるのです。ケースによってはプライバシーに配慮しながら必要な人(上司・親しい同僚・家族など)に通知して、支援につなげることもできます。東京メンタルヘルスではそのプロセスに関与し、無料電話相談などでバックアップしています。また、コンケアは仕事や職場の人間関係も投影されるため、働きがいや満足度も理解でき、マネジメントに有効です。これは、メンタルヘルスのイノベーションと考えています。
―― 貴社の強みや特徴について、お聞かせください。
武藤:弊社は不登校やひきこもりを支援する会社として、1985年に設立いたしました。また、社会でいち早く職場のメンタルヘルス対策に取り組み、30年にわたってその歴史を刻んできました。私は4,200回以上におよぶ講演や研修を行うなかで、最近は「新型うつ」についてのカウンセリングやラインケアの研修に力を入れています。忙しくて上司に余裕がない職場や、産業保健スタッフがいない事業所では、メンタルヘルス管理は困難を極めます。そんな状況にあるのなら、ぜひ「コンケア」の仕組みを活用して、経済効果や生産性の向上を図っていただきたいと思います。情報化社会は複雑で、多岐に渡る情報量にコミットメントする必要があり、人々はまさに神経労働を強いられています。一方で人間関係は希薄になり、向き合うコミュニケーションに面倒臭さを感じるようになりました。人と人が解離し、さまざまな弊害も出ています。そんなことから大手企業ではコミュニケーション研修に最も力を入れています。
―― 講演に向けての抱負や、参加される皆さまへのメッセージをお願いします。
武藤:職場は働く場です。しかし、これからは生きがいや働きがいも問われる時代になります。見通しがきかない時代に入っていますが、職場には共有する雰囲気が醸成されていません。東京メンタルヘルスのストレスチェック10万人の結果を見ても、「将来について不安」と答える人が最も多くなっています。
職場の人間関係の再構築が求められている時代だからこそ、弊社はコンケアを通じてそれを実現していきたいと思っています。コンケアは統計学的にもデータが処理され、日本産業衛生学会でも発表することになっており、信頼性と妥当性が保証されています。実際にご利用いただいている事業所のケースをお話ししますので、その成果を確かめていただきたいと思います。
- 東京メンタルヘルス株式会社
東京メンタルヘルス 所長/
関東心理相談員会 会長 - 武藤清栄氏(むとう・せいえい)
- 1976年国立公衆衛生院(現国立保健医療科学院)衛生教育学科卒業。精神科での心理療法担当を経て、1985年東京メンタルヘルス・アカデミー(現:東京メンタルヘルス株式会社)を設立。現在までにカウンセリング述べ1万件以上、約3500回の研修を行い、またメンタルヘルス対策のコンサルテーションも行っている。
- 日本の人事部「HRカンファレンス」事務局
- 〒107-0062 東京都港区南青山2-2-3 ヒューリック青山外苑東通ビル6階
- E-mail:hrc@jinjibu.jp